臨床血液
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Picture in Clinical Hematology
第83回日本血液学会学術集会
学会奨励賞受賞論文
  • 藪下 知宏, 北村 俊雄, 合山 進
    2024 年 65 巻 4 号 p. 209-221
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/04/27
    ジャーナル 認証あり

    DNA脱メチル化薬とされているdecitabine(DAC)の作用機序・耐性機構の本質を明らかにするためにMDS/AML細胞株を用いて,全ゲノムCRISPR-dCas9 activationスクリーニングを行った。その結果,DACの治療抵抗性には有糸分裂制御が関与すること,DACは複数の骨髄系腫瘍細胞株に対して臨床的に達成可能な低濃度で高度な有糸分裂異常を誘導することが明らかになった。また,このようなDACによる有糸分裂進行の障害は,DNMT1の低下やDNA脱メチル化ではなく,DNMT1-DNA架橋によって引き起こされることがわかった。本研究により,DACの骨髄系腫瘍に対する作用機序を考えるうえで,DNA脱メチル化作用のみならず,DNMT1-DNA架橋産物による直接的な影響を考慮する重要性が示唆される。さらに,DACとATR/CHK1阻害薬の併用が多くの骨髄系腫瘍細胞株で有効であること,一部の白血病細胞株においてはHMG-CoA還元酵素阻害薬と相乗的な細胞増殖抑制効果を確認した。これらの併用療法は,DACの治療抵抗性を改善する一助となることが期待される。

第84回日本血液学会学術集会
学会奨励賞受賞論文
  • 大地 哲朗
    2024 年 65 巻 4 号 p. 222-230
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/04/27
    ジャーナル 認証あり

    鉄芽球性貧血はミトコンドリアへの異常な鉄沈着により生じる環状鉄芽球(ring sideroblast, RS)を伴う貧血の総称である。後天性鉄芽球性貧血である骨髄異形成症候群におけるRS増加はSF3B1変異と強く関連するが,変異型SF3B1によるRS形成機序は不明である。筆者らは変異型SF3B1を導入した赤芽球系前駆細胞株HUDEP-2細胞を用いてin vitroでのRS形成を再現し,鉄硫黄クラスター輸送体ABCB7においてスプライシング異常を介した発現抑制が生じていることを示した。さらにABCB7ノックダウンHUDEP-2細胞においてヘム合成の律速酵素ALAS2の翻訳が抑制されていることを示した。ABCB7発現抑制により惹起された細胞内の鉄硫黄クラスター分布異常が鉄代謝の恒常性を乱すことでRS形成に至ると考えた。本稿では鉄芽球性貧血やスプライシング異常について概説し,筆者らの研究成果を紹介する。

症例報告
  • 小山 玄太郎, 川口 岳晴, 佐藤 匠, 濱田 千洋, 原 暁
    2024 年 65 巻 4 号 p. 231-236
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/04/27
    ジャーナル 認証あり

    【症例】69歳女性。【主訴】発熱,咳嗽。【現病歴】発熱,咳嗽のため受診した前医で白血球増多を指摘され,精査目的に当院紹介となった。【経過】骨髄検査の結果急性骨髄単球性白血病と診断した。寛解導入のためCAG療法を開始したが,day27の骨髄検査では芽球は減少せず,治療抵抗性であった。加えて四肢麻痺が出現し,髄液検査で中枢神経浸潤を認めた。FLT3-ITD変異陽性により,gilteritinibを導入しつつ抗がん剤の髄腔内注射も行ったが高度の粘膜障害のため2回で中止した。以降はgilteritinibのみで血液学的寛解を達成し,中枢神経症状も改善した。【考察】中枢神経浸潤を伴うAMLの治療においては,髄腔内注射の効果が示唆されているが,論拠に乏しい。他方gilteritinibは中枢神経浸潤を伴うFLT3変異陽性AMLに奏効したとの報告があり,本症例における中枢神経病変の寛解維持は同剤の中枢神経への移行を示唆するものと考える。

  • 柏木 貴雄, 柏木 祐希, 鈴木 知秀, 新宮 愛美, 柏木 明香, 平田 珠希, 堀 順子, 宮田 恵吉, 武地 美保, 来住 稔, 大西 ...
    2024 年 65 巻 4 号 p. 237-242
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/04/27
    ジャーナル 認証あり

    【症例】48歳,男性。【主訴】体重減少。【現病歴】2022年9月から倦怠感,体重減少が出現し,近医にて高ALP血症,貧血,血小板減少,腎機能障害を指摘され,発熱も認め同年11月当院へ紹介。CTにて肝脾腫,胸腹水と左腋窩リンパ節腫大を認め,骨髄は過形成で巨核球の増加,骨髄細網線維化を認めた。腋窩リンパ節生検ではCastleman病様所見を認め,肝生検では細網線維の増生を認めた。以上よりTAFRO症候群と診断し,prednisolone 1 mg/kgを開始したところ,貧血や血小板減少は改善し,治療開始前に高値であった血清ヒアルロン酸やIV型コラーゲンは24週間後には基準値まで低下,治療開始18週間後には骨髄の細網線維の減少を認めた。【考察】TAFRO症候群において血清ヒアルロン酸やIV型コラーゲンは線維化の指標として有用で,適切な治療介入により肝臓と骨髄の線維化の改善が期待できると考える。

  • 西川 匠, 佐分利 益穂, 長松 顕太郎, 浦勇 慶一, 高田 寛之, 宮崎 泰彦, 大塚 英一
    2024 年 65 巻 4 号 p. 243-248
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/04/27
    ジャーナル 認証あり

    症例1は70歳女性。びまん性大細胞型B細胞リンパ腫に対してHLA半合致血縁者間同種末梢血幹細胞移植を行い,day14にCorynebacterium striatumによる血流感染症(blood stream infection, BSI)を来したが,vancomycinを投与し血液培養は陰性となった。Day63に背部痛が出現し,magnetic resonance imaging(MRI)にてTh8~Th9の化膿性脊椎炎と診断した。血液培養で同菌が検出され,daptomycin(DAP)を2ヶ月間投与し軽快した。症例2は65歳男性。血管免疫芽球性T細胞リンパ腫に対してDR1抗原不一致非血縁者間同種骨髄移植を行い,day3にEscherichia coli,day9にCorynebacterium striatumによるBSIを認め,抗菌薬投与にて血液培養は陰性となった。Day30より腰痛を自覚し,MRIでL4~L5の化膿性脊椎炎と診断した。血液培養は発育なく,先行したBSIの起因菌の薬剤感受性を参考にDAP,clindamycinを半年間投与し軽快した。同種造血幹細胞移植施行後の生着前BSI合併例において,腰背部痛を認めた場合は化膿性脊椎炎を考慮する必要がある。

第85回日本血液学会学術集会
JSH-ASH Joint Symposium
  • 林 嘉宏
    2024 年 65 巻 4 号 p. 249-254
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/04/27
    ジャーナル 認証あり

    骨髄異形成症候群(MDS)は,造血幹細胞に生じた遺伝子異常に起因して発症し,無効造血に伴う骨髄不全症を主病態とする難治性造血器腫瘍である。この10年ほどの間に,MDSクローンにおける自然免疫応答シグナル経路異常が同定され,それに伴う慢性炎症機構が,MDS病態形成において中心的役割を担うことがわかってきた。しかし,多様な遺伝子型のもとで,どのようにしてMDSの病態が生じるのかについての解明は十分には進んでいない。最近,私たちは,新規に樹立したMDSモデルマウスおよび多数例の患者検体の解析から,MDSクローンのミトコンドリアに過剰な断片化が生じていることを見出した。さらに,ミトコンドリア異常がMDSクローンにおける自然免疫応答シグナル経路制御異常のきっかけとなることが明らかとなった。本稿では,MDS病態形成におけるミトコンドリア動態制御異常について概説する。

  • 國本 博義
    2024 年 65 巻 4 号 p. 255-264
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/04/27
    ジャーナル 認証あり

    VEXAS症候群は血液細胞の細胞質空胞,E1ユビキチン活性化酵素をコードするUBA1遺伝子の体細胞変異,X連鎖性発症様式と自己炎症症状の存在を特徴とする新しい疾患概念であり,約30~50%の例にMDSを合併する。VEXAS症候群に合併するMDSの臨床的・遺伝的特性について我々は自験例を含めた解析を行い,芽球比率が低く白血病への移行が稀な低リスクMDSが多いこと,孤発性MDSに比べて症例あたりに検出される遺伝子変異数や高リスク遺伝子変異が少ないことを明らかにした。VEXAS症候群合併MDSの貧血は,治療前の炎症活動性が高い例ほどステロイドが奏効しやすいことも見出した。本稿では,近年血液・リウマチ分野で注目を集めるVEXAS症候群の疾患概念・病態と合併するMDSの臨床的・遺伝的特性について解説し,筆者らの研究成果を含めて最新の知見を紹介する。

Symposium 7
  • 仲宗根 秀樹
    2024 年 65 巻 4 号 p. 265-271
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/04/27
    ジャーナル 認証あり

    同種造血細胞移植は血液悪性疾患の治療法として確立されているが,移植患者は移植片対宿主病(GVHD)など様々な合併症のリスクを背負う。移植後後期に問題となる慢性GVHDは,末梢血幹細胞移植の他,女性ドナーと男性患者間(F→M)での性別不一致移植でもリスクが増加することが知られている。F→M移植の合併症は,男性患者のY染色体上のマイナー抗原(HY抗原)に対する同種免疫応答も一因と考えられる。実際,F→M移植後の一部ではHY抗原に対する抗体(HY抗体)が検出され,その後の慢性GVHDおよび非再発死亡率の増加と有意に関連していることも示されている。本稿では,様々な臨床場面におけるF→M移植の影響に着目し,慢性GVHDや移植片対白血病効果を含む同種免疫応答の臨床的エビデンスを紹介する。GVHDの早期制御と最大限のGVL効果を目指し,F→M移植における研究が今後も進むことが期待される。

  • 杉田 純一
    2024 年 65 巻 4 号 p. 272-281
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/04/27
    ジャーナル 認証あり

    移植片対宿主病(GVHD)予防のための移植後cyclophosphamide(PTCy)はHLA半合致移植に革命をもたらした。PTCyは優れたGVHD抑制効果に加え,安価かつ投与に特殊な技術や機器を必要としないことから急速に普及した。近年,PTCyはHLA半合致移植以外のGVHD予防にも有効である可能性が注目されており,BMT CTN 1703試験では,強度減弱前処置によるHLA適合末梢血幹細胞移植を受けた患者を対象とし,PTCy/tacrolimus/mycophenolate mofetil群は,tacrolimus/methotrexate群よりも,1年後の無GVHD・無再発生存率が有意に良好であった。本邦では,HLA適合または1-2アレル不適合末梢血幹細胞移植後のGVHD予防にPTCyを使用する第II相試験が実施され,有効性と安全性が確認された。PTCyによるGVHDの効果的な抑制は,同種移植の安全性を高め,移植転帰を改善する可能性があり,移植分野におけるより良い患者ケアに希望を与えるものと期待される。

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