臨床血液
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55 巻, 12 号
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Picture in Clinical Hematology
総説
  • ―2013年度全国調査より―
    倉田 美穂, 柳澤 昌実, 熱田 由子, 坂巻 壽, 加藤 剛二, 一戸 辰夫, 田中 淳司, 廣川 誠, 足立 壮一, 井上 雅美, 菊池 ...
    2014 年 55 巻 12 号 p. 2381-2399
    発行日: 2014年
    公開日: 2015/01/07
    ジャーナル 認証あり
    日本の造血幹細胞移植医療は活動性が高く1991年から2012年に実施された移植登録件数は69,298件に及ぶ。移植細胞ソースの多様化や,骨髄非破壊的移植の導入に伴った移植適応年齢の拡大等により移植件数は近年でも増加し続けており,2012年の年間移植数は5,000件を超えた。
    単変量解析による移植年次別生存率は何れの移植種類,年齢層でも向上傾向にある。自家移植後100日の全生存率は近年では50歳未満,50歳以上の何れでも95%を上回った。同種移植後の100日全生存率は,2012年移植では91%(50歳未満),76%(50歳以上)であった。小児白血病標準リスク群での同種移植後100日,365日の全生存率は近年において98.5%および91.3%であった。日本での移植登録データベース(TRUMP)を用いた集計・解析による移植実績の動向は移植医療の向上を目標とした研究の基盤となる重要な情報である。
臨床研究
  • 新井 康之, 近藤 忠一, 北野 俊行, 菱澤 方勝, 山下 浩平, 門脇 則光, 髙折 晃史
    2014 年 55 巻 12 号 p. 2400-2407
    発行日: 2014年
    公開日: 2015/01/07
    ジャーナル 認証あり
    同種造血幹細胞移植後のサイトメガロウイルス(CMV)胃腸炎は,症状や内視鏡所見のみでは診断困難である。生検組織の免疫染色も感度が低く,治療開始が遅れる可能性がある。そこで,消化管粘膜生検検体を用いた定量PCR法が,治療介入に有用かを検討した。移植後に消化器症状を認め,上部(GIF)・下部消化管内視鏡検査(CF)を施行し,CMV胃腸炎を疑い組織定量PCR法を行った症例を対象とした。GIF検体は27例中9例でPCR陽性であった。陽性例のうち8例で抗ウイルス剤を開始し,全例で1週間以内に症状が軽快した。病理では3例でCMV胃炎と診断された。一方で,CF検体では30例中12例でPCR陽性であった。抗ウイルス剤投与によりPCR陽性11例のうち10例で症状改善した。病理では5例でCMV腸炎の所見であった。今回の検討では,複数の免疫染色陰性症例からも組織定量PCR法でCMVが検出され,大半の症例で抗ウイルス剤の効果を認めたことから,PCR陽性例におけるCMV胃腸炎の早期治療介入の有用性が示唆された。
症例報告
  • 國枝 保幸, 松岡 里湖, 菊地 美里, 川村 直樹, 田中 伸哉
    2014 年 55 巻 12 号 p. 2408-2413
    発行日: 2014年
    公開日: 2015/01/07
    ジャーナル 認証あり
    発症時79歳男性。2002年5月,粘膜下腫瘍の経過観察として施行された上部消化管内視鏡検査でファーター乳頭部近傍に白色顆粒状病変の散在を認めたが,組織学的には軽度の炎症細胞浸潤であった。2002年12月再検査時,ファーター乳頭部周辺から肛門側に縦走する顆粒状隆起性病変を認め,生検で濾胞性リンパ腫と診断された。他臓器浸潤は認めず,十二指腸原発濾胞性リンパ腫と診断,2003年1月より全身化学療法としてrituximab 375 mg/m2週1回4週間の治療を開始した。半年後に施行した上部消化管内視鏡検査ではファーター乳頭部は肉眼的に異常はなかったが,病理組織学的にリンパ腫病変の残存が認められ,同年11月同様のスケジュールで治療を行った。以後再燃なく,現在まで10年以上の長期完全寛解が得られている。
  • 高野 弥奈, 長田 薫, 渡邉 大介, 大木 学, 加藤 淳
    2014 年 55 巻 12 号 p. 2414-2417
    発行日: 2014年
    公開日: 2015/01/07
    ジャーナル 認証あり
    症例は72才女性。2001年に慢性期慢性骨髄性白血病(CML)と診断される。Hydroxycarbamideによる治療の後imatinib (IM)を開始し10ヶ月後にはmajor molecular response相当となり,2005年に47ヶ月のIM治療後に中止した。中止時にはnested RT-PCRでBCR-ABLは検出されず,International Scaleでは<0.00138%に相当した。現在まで102ヶ月間無治療でBCR-ABLは検出されていない。なお,経過中にインターフェロン治療は行っていない。CMLはIMで良好な予後が得られるが治癒は証明されておらず,分子遺伝学的寛解後も治療継続が推奨されている。現在IM治療中止試験が進行中で,長期成績が待たれている。本例はIM治療中止後8年以上にわたってdeep molecular responseが維持されている貴重な症例と思われる。
  • 上月 景弘, 加藤 格, 加藤 竹雄, 大封 智雄, 才田 聡, 梅田 雄嗣, 平松 英文, 渡邉 健一郎, 井手 見名子, 吉田 健司, ...
    2014 年 55 巻 12 号 p. 2418-2422
    発行日: 2014年
    公開日: 2015/01/07
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    小児造血細胞移植例におけるHHV-6脳炎の発症率は低いとされており,リスク因子や予後,合併症についての詳細な検討は少ない。今回我々は,臍帯血再移植後早期にHHV-6脳炎を発症し,てんかん性脳症を続発した小児例を経験した。B前駆細胞型急性リンパ性白血病の第2寛期に臍帯血移植を施行したが生着不全となり,臍帯血再移植を施行した。Day 25に短期記憶障害と痙攣発作を認め,血液・髄液のHHV-6 DNA陽性,頭部MRIにて海馬領域の異常信号からHHV-6脳炎と診断した。ホスカルネットを投与したところ,HHV-6 DNA-PCR値や頭部MRI所見は改善したが,診断から5ヶ月後に抗てんかん薬抵抗性のてんかん性脳症を発症した。移植後HHV-6脳炎に続発した小児てんかん性脳症の報告例は珍しく,HHV-6脳炎のリスク因子や予後,合併症についての後方視的解析による症例蓄積が必要である。
  • 永春 圭規, 宮崎 香奈, 今井 裕, 田村 麻子, 海野 啓, 藤枝 敦史, 杉本 由香, 山口 素子, 桝屋 正浩, 片山 直之
    2014 年 55 巻 12 号 p. 2423-2428
    発行日: 2014年
    公開日: 2015/01/07
    ジャーナル 認証あり
    中枢神経系への腫瘍細胞浸潤を伴う原発性マクログロブリン血症(Waldenström's macroglobulinemia)はBing-Neel症候群として認知されているが,標準的治療は確立していない。症例は74歳男性。進行する認知機能障害を主訴に受診し,血液検査にてIgM-κ型M蛋白血症を認めた。骨髄検査では小型の成熟リンパ球を59%認め,同細胞の表面形質はCD19, CD20, CD38陽性,CD138一部陽性,CD5, CD10陰性で,軽鎖はκ鎖優位であった。髄膜炎様の頭部MRI所見と骨髄内腫瘍細胞同様の表現型を示す細胞の脳脊髄液内浸潤所見からBing-Neel症候群と診断した。Methotrexate髄注とcyclophosphamide内服を行うも奏効せず,fludarabine/rituximab療法を実施した。速やかに神経症状は改善し,6コース終了後完全寛解に至った。
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