臨床血液
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51 巻, 2 号
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第69回日本血液学会・第49回日本臨床血液学会合同総会
臨床研究
  • 堀越 泰雄, 小林 良二, 遠藤 幹也, 渡辺 新, 菊田 敦, 小池 和俊, 花田 良二, 細谷 亮太, 小原 明, 生田 孝一郎, 後藤 ...
    2010 年51 巻2 号 p. 104-113
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/04/02
    ジャーナル 認証あり
    製造販売後臨床試験として,再発および難治性の小児急性白血病患児に対するシタラビン大量療法による再寛解導入療法を施行し,その有効性と安全性を検討した。完全寛解(CR)または部分寛解(PR)が得られた症例は,急性リンパ性白血病(ALL)では13例中7例で53.8%であった。一方,骨髄性白血病(AML)では6例中1例(16.7%)にPRが得られたのみで期待された効果は認められなかった。
    高頻度に発現した非血液毒性は,嘔吐,下痢,腹痛等の消化器症状と発熱,頭痛などであった。20例中9例(45%)に感染症がみられた。治療関連死はALL2例に認められ,死因は侵襲性肺アスペルギルス症及び頭蓋内出血・腎不全であった。
    以上の結果から,今回のレジメンは再発ALLに対する再寛解導入療法として有用であるが,感染症対策などの十分な支持療法が必要であると考えられた。
  • 池邉 太一, 緒方 正男, 宮崎 美樹, 宮崎 泰彦, 大塚 英一, 佐分利 能生, 後藤 加奈子, 池脇 淳二, 幸野 和洋, 卯野 規敬 ...
    2010 年51 巻2 号 p. 114-121
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/04/02
    ジャーナル 認証あり
    サリドマイドを使用した多発性骨髄腫患者52例を対象として,効果と有害事象を後方視的に検討した。年齢中央値は70歳で,前治療抵抗例は40例であった。治療法は単独8例,デキサメサゾン併用36例,化学療法併用8例。投与量は42例で100 mg/日であった。部分寛解以上は16例(31%)に得られ,これらの患者では予測生存率が良好であった(p=0.04)。全体でサリドマイド開始時よりの1y-OS 76.2%, 1y-PFS 70.9%であった。Grade 3以上の有害事象として傾眠(3例),便秘(5例),末梢神経障害(1例),深部静脈血栓症(1例),貧血(10例),白血球減少(10例),血小板減少(3例)が認められた。日本人を対象とした過去の検討と同様,骨髄抑制の頻度が高く,末梢神経障害は投与早期に発症する症例があり注意が必要と考えられた。再発難治性骨髄腫においてサリドマイドは有効な治療法と考えられた。
症例報告
  • 井上 徹也, 吉田 正明, 大鷲 和由, 吉田 忠夫
    2010 年51 巻2 号 p. 122-126
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/04/02
    ジャーナル 認証あり
    症例は66歳,女性。2008年9月急性膵炎,黄疸,上腕部腫瘤で入院。原発性膵癌から左肺,左肺門部リンパ節,左上腕筋への転移および左胸膜への播種性転移と考えたが,上腕部腫瘤の生検でびまん性大細胞型B細胞リンパ腫の診断を得た。膵頭部腫瘤に対し膵癌との鑑別のため,超音波内視鏡下吸引針生検(endoscopic ultrasound-guided fine-needle aspiration: EUS-FNA)を施行した。組織診,細胞診より上腕部腫瘤と同様のびまん性大細胞型B細胞悪性リンパ腫と診断した。結果,膵頭部,左上腕部,左縦隔,左胸膜に多発した稀な節外性非ホジキンリンパ腫と考えられた。膵頭部腫瘤の確定診断には超音波内視鏡下吸引針生検(EUS-FNA)が有効であった。
  • 越野 繭子, 工藤 大輔, 大越 靖, 小原 直, 清水 誠一, 向井 陽美, 鈴川 和己, 長谷川 雄一, 小島 寛, 長澤 俊郎, 千葉 ...
    2010 年51 巻2 号 p. 127-131
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/04/02
    ジャーナル 認証あり
    症例は50歳,女性。2007年1月下旬より発熱,下肢の紫斑が出現。2月に近医を受診し,血小板数0.8×104lと低値であり入院となった。変動する意識障害を伴う血小板減少,溶血性貧血より特発性血栓性血小板減少性紫斑病と診断した。ADAMTS13活性は検出されず,ADAMTS13に対する阻害因子を認めた。計21回の血漿交換およびステロイド投与でも臨床症状および検査所見の改善はなく,難治性と判断しrituximabの投与を行った。Rituximabは週1回の間隔で計4回投与した。Rituximab投与に伴う副作用は認めず,1回目の投与後15日で寛解に至った。ADAMTS13活性は14%と改善した。投与後9ヶ月の時点でも再発徴候はなく経過している。
  • 赤羽 弘資, 犬飼 岳史, 根本 篤, 黒田 格, 薬袋 周, 廣瀬 衣子, 本名 浩子, 合井 久美子, 杉田 完爾
    2010 年51 巻2 号 p. 132-137
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/04/02
    ジャーナル 認証あり
    NIMA相補的同胞からの骨髄移植後に慢性GVHDと考えられる多発性漿膜炎の発症を経験した。症例は骨髄異形成症候群の9歳男児。臍帯血移植後の生着不全に対して,HLA 2座不一致でNIMA相補の姉から緊急的に骨髄移植を施行した。生着は順調で,急性GVHDは認められなかった。ウイルス感染症を反復したためtacrolimusを中止したところ,移植後6カ月頃から胸腹水の貯留と浮腫が出現した。methylprednisoloneによるパルス療法で一旦は軽快したが,その後心嚢液の貯留,気胸,体幹の脂肪織炎を認めた。胸水と心嚢液はともに多数のリンパ球を含み,持続的ドレナージで改善した。mycophenolate mofetil (MMF)の導入で症状は軽快し,移植後5年を経てprednisolone 5 mg/dayとMMFの内服で日常生活にほぼ支障はない。GVHDによる多発性漿膜炎の予後は不良であるが,本症例では急性GVHDの発症がなかったこととMMFを投与したことが改善につながったと考えられる。
  • 田近 賢二, 玉井 勇人, 水木 太郎, 中山 一隆, 山口 博樹, 檀 和夫
    2010 年51 巻2 号 p. 138-142
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/04/02
    ジャーナル 認証あり
    症例は64歳,男性。angioimmunoblastic T-cell lymphomaと診断し,化学療法により部分寛解を得た後,骨髄非破壊的前処置による臍帯血移植を実施した。Day70頃より左肩甲骨部に2 cm大の皮下腫瘤が出現し,生検組織の腫瘍細胞はCD20, CD79a, CD30陽性,Epstein-Barr virus latency-associated RNA (EBER)陽性で,EBV-DNAも検出された。EBV血症は認めなかった。腫瘍細胞はドナー由来であり,EBV関連post-transplantation lymphoproliferative disorder (PTLD)と診断し,rituximab投与,放射線照射,免疫抑制剤の減量を行なった。腫瘤は速やかに消失し,現在も無病で経過している。
    本症例はEBV血症を伴わず,皮膚限局性病変で発症し,治療が奏功した極めてまれなPTLD症例である。
  • 田中 宏明, 橋本 真一郎, 酒井 力, 阿部 大二郎, 酒井 紫緒, 高木 敏之
    2010 年51 巻2 号 p. 143-147
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/04/02
    ジャーナル 認証あり
    68歳女性。白血球減少にて当科紹介受診,白血球数800/μl, 好中球数22/μlと高度の白血球・好中球減少およびIgM-kappa型のM蛋白血症が認められた。白血球の90%以上が顆粒リンパ球で占められ,表面マーカーCD3+CD4-CD8+CD16+とTCR遺伝子の単クローン性再構成の結果からT細胞性顆粒リンパ球増多症(T-GLPD)と診断した。G-CSF製剤投与なし。13年間の経過観察中に病態の進行は認められず,また高度の好中球減少にもかかわらず,入院を必要とする重症感染症は1回だけ(肺炎)であった。
    白血球減少症やM蛋白血症の原因としてGLPDを念頭に入れ,顆粒リンパ球増多や表面マーカー解析の結果に注意を払うことが必要と考えられた。また,海外では好中球減少を伴うT-GLPDは感染を繰り返し死因となることも多いとされるが,本邦では感染は非常に稀と言われており,無治療に拘らず長期に渡り重篤な感染を惹き起こさない例も存在することが示唆された。
  • 仲里 朝周, 鈴木 一史, 三原 愛, 真田 幸尚, 吉田 幸子, 柿本 綱之
    2010 年51 巻2 号 p. 148-152
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/04/02
    ジャーナル 認証あり
    症例は47歳女性。平成19年6月,発熱,咳嗽を主訴に当院受診したところ汎血球減少,肝脾腫を認め入院。LDH, 可溶性IL-2レセプター高値であり悪性リンパ腫が疑われたが表在リンパ節腫脹は認めず病理組織学的診断は困難であった。骨髄穿刺・生検を繰り返したところ少数の大型異型細胞の浸潤を認め,生検では血管内にCD79a, CD20陽性の細胞浸潤が認められIntravascular large B-cell lymphoma (IVLBCL)と診断。神経学的所見および髄液所見上は明らかな異常を認めなかったが頭部MRI上橋に異常信号領域を認めIVLBCLの橋浸潤と考えられた。治療は中枢神経浸潤にも効果が期待できるR-hyper-CVAD/R-MTX-Ara-C療法およびMTX髄腔内投与を選択した。計5コース施行し,頭部MRIでは橋の異常信号は消失し完全寛解となりその後現在に至るまで2年間寛解を維持している。IVLBCLは診断が困難かつ中枢神経浸潤を伴うことが多く予後不良の疾患であるが,治療強度の高いR-hyper-CVAD/R-MTX-Ara-C療法にて中枢神経病変も含め治療が奏功したIVLBCLの貴重な一例を経験したので報告する。
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