症例は高血圧, 高脂血症を有する66歳の男性。早期胃癌手術の4ヶ月後に吻合部潰瘍からの出血, 7ヶ月後に顔面の著明な皮下出血を生じ, APTTの著明な延長, 第VIII因子活性の著しい低下, 高力価の第VIII因子インヒビターを認め, 後天性血友病Aと診断した。入院後, 繰り返す出血症状に対し, prednisolone, cyclophosphamideの内服に加え, 遺伝子組換え活性型第VII因子製剤, 活性型プロトロンビン複合体製剤を投与し止血効果を得た。その後, 出血のエピソードのわずか1週間後, 腹痛を伴う水様の鮮血便が出現し, 臨床経過, CT-scan, 内視鏡所見より虚血性大腸炎と診断したが, 保存的治療で軽快した。後天性血友病症例において, 凝固因子製剤や抗線溶薬の非投与時に血栓症を発症した報告は調べうる限り認められないが, 特に血栓症のリスクを有する患者では注意が必要である。
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