症例は診断時28歳の男性。末梢血の白血球数高値から骨髄検査で急性骨髄性白血病(AML-M4)の診断となった。寛解導入療法,地固め治療を行いながら同種造血幹細胞移植の準備を行ったが,移植前の骨髄検査で血液学的再発を来し,コンパニオン診断薬でFLT3-ITD変異陽性が確認された。Gilteritinib単剤療法を開始して再度寛解を得たため,非血縁者間骨髄移植を実施した。移植後1年で再発を来し,gilteritinib投与を再開したが増悪した。次世代シーケンサーを用いた遺伝子パネルによるターゲットシークエンスではFLT3-ITD変異が消失しており,RAS/MAPKシグナル伝達系に関わるPTPN11 p.Glu76Lysの変異が確認された。Gilteritinib投与を中止して救援化学療法により寛解を得たため血縁者間HLA半合致末梢血幹細胞移植を実施したが,移植後早期に再発を来し,病勢コントロールが出来ずに死亡した。ターゲットシーケンスによる遺伝子解析によって,FLT3変異陰性クローンへの交代とそれによる阻害薬の効果減弱を観察しえた症例となった。
症例は27歳女性。Philadelphia染色体陽性急性リンパ芽球性白血病(Ph+ALL)に対しdasatinib(dasa)とprednisoloneによる寛解導入療法を開始。診断時より強い妊孕性温存希望があり,卵子凍結保存を計画した。Progestinにて月経を抑制,血球回復後に調節卵巣刺激を行い,十分量の卵子を採卵した。卵巣刺激症候群(OHSS)の予防としてcabergolineとletrozoleを投与するも,採卵2日後に卵巣腫大と腹水が出現し,中等症OHSSと診断した。循環管理と低分子heparin投与を行ったが胸水も出現したためdasaを休薬した。月経再開後に体液貯留傾向は改善,その後はdasa併用下で地固め療法と臍帯血移植が可能だった。チロシンキナーゼ阻害薬によりPh+ALL診断早期に卵子保存を計画しやすくなる期待があるが,OHSS合併のリスクにも留意が必要である。
症例はサイパン在住の80歳日本人男性。傍大動脈リンパ節,左鼡径リンパ節を含む全身性のリンパ節腫大を認めた。左鼡径リンパ節より生検を施行しびまん性大細胞型B細胞リンパ腫(DLBCL)と診断,さらに同一リンパ節内にHHV-8陽性Kaposi肉腫合併の併発を認めた。なおHIVは陰性,リンパ腫細胞のHHV-8は陰性であった。R-THP-COP療法(rituximab 375 mg/m2,pirarubicin 30 mg/m2,cyclophosphamide 500 mg/m2,vincristine 1 mg/m2,prednisolone 60 mg)を計6コース施行し,DLBCLとKaposi肉腫双方に対し奏効が得られた。同一リンパ節における悪性リンパ腫とKaposi肉腫合併は過去5例の報告があるが,組織型としてDLBCLは本例が初である。
症例は25歳女性,約10年前にB細胞性急性リンパ芽球性白血病治療後経過観察中であったが,末梢血芽球出現のため紹介となった。骨髄検査と合わせ,再発と診断された。白血病は化学療法抵抗性であり,キメラ抗原受容体T細胞(CAR-T)療法(tisagenlecleucel, Tisa-cel)を行う方針としてリンパ球採取を実施した。その後ブリッジング療法として2サイクルのinotuzumab ozogamicin(InO)の投与を行った。その後の骨髄ではポリメラーゼ連鎖反応(PCR)法による微小残存病変(MRD)が残存(PCR-MRD 1.0×10−4)していたが,CAR-T療法後の骨髄ではMRD陰性化を確認した。現在患者は寛解を維持し,MRDのモニタリングを行っている。InOおよびCAR-T療法を連続的に行う治療戦略は,白血病をコントロールし,化学療法による臓器合併症を回避できる点で思春期・若年成人世代のALL治療において有効であると考えられる。
63歳男性。成人T細胞白血病・リンパ腫に対して,HLA遺伝子型一致非血縁ドナーより同種骨髄移植を行った。移植後17日目に両肺下葉に結節影を認め,侵襲性肺アスペルギルス症を疑い,liposomal amphotericin Bで治療を開始し,28日目のCTで肺病変の改善を確認した。腎機能障害が進行し,52日目より抗真菌薬はvoriconazoleに変更した。61日目に意識障害と左上下肢麻痺が出現した。頭部CTで右頭頂葉から後頭葉に皮質下出血を認め,脳浮腫が急速に進行し62日目に死亡した。病理解剖では,アスペルギルスを疑う糸状菌による肺病変と,播種性病変と考えられる真菌性脳動脈瘤破裂の所見を認めた。侵襲性肺アスペルギルス症は同種造血幹細胞移植後に発症するが,本症例のように血行性播種による真菌性脳動脈瘤を合併し,致死的な経過を辿る可能性があるため注意が必要と考えられた。
62歳,女性。卵巣腫瘍術前検査にて血友病A保因者(第VIII因子活性35%)と診断。周術期に遺伝子組み換え型第VIII因子製剤計35,600単位を投与。術後95日目に皮下血腫を形成。APTT 66秒,第VIII因子(FVIII)活性3%,インヒビター1 BU/mlの結果よりprednisoloneによる免疫抑制療法を開始。経過中,関節内出血の合併のため入院・止血治療を必要としたが,cyclophosphamideの併用にて術後438日目以後インヒビターは消失しFVIII活性30%に回復。F8遺伝子解析の結果,CRM+タイプとして既報告の点変異(p.Arg391Cys)のヘテロ接合を認め,インヒビター発生の高リスク変異は認めなかった。FVIII製剤大量投与がインヒビター発生の要因と考え,今後の出血時治療に備えたdesmopressin acetate hydrate試験投与の結果も併せて報告する。
A 72-year-old woman presented with generalized lymphadenopathies and plasmacytosis accompanied by polyclonal hypergammopathy. 18F-fluorodeoxyglucose positron emission tomography (FDG-PET) showed FDG accumulation in the systemic lymph nodes, spleen, and multiple bones. Human immunodeficiency virus antibody was negative. Lymph node histologic findings showed a monotonous population of plasma cells with a starry-sky appearance. The cells were positive for CD19, λ, and Epstein-Barr virus-encoded RNA, and negative for CD20 and CD56. The MIB-1 index was 80%. A diagnosis of plasmablastic lymphoma with plasmacytosis and polyclonal hypergammopathy was made, and complete metabolic response was achieved after six cycles of dose-adjusted-EPOCH therapy (etoposide, prednisolone, vincristine, cyclophosphamide, and doxorubicin).
This study investigated which conditions could be used to identify patients with chronic myeloid leukemia (CML) from a National Health Insurance claims dataset. During April 2012 and September 2018, 1,789,462 employees were enrolled in the dataset for Shizuoka Prefecture residents. The number of patients with the ICD-10 code for CML was 761. Among them, 246 who had been prescribed a tyrosine kinase inhibitor were considered as having true CML. The positive predictive value was calculated as 32.3% when CML was identified by ICD-10 code alone. Combination of ICD-10 code with prescribed drugs was required to accurately identify patients with CML from the insurance database.