臨床血液
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60 巻, 10 号
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Picture in Clinical Hematology
臨床研究
  • 吉識 由実子, 塚田 信弘, 梨本 淳一郎, 余語 孝夫, 宇藤 唯, 佐藤 広太, 宮崎 寛至, 小倉 瑞生, 阿部 有, 岡塚 貴世志, ...
    2019 年 60 巻 10 号 p. 1411-1417
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/11/06
    ジャーナル 認証あり

    若年における多発性骨髄腫の発症は稀であり,報告も極めて限られている。臨床的特徴,予後について定まった見解はまだない。当院で診療した,診断時45歳以下の骨髄腫,多発性形質細胞腫30例につき後方視的に検証した。染色体所見によって標準リスク群,高リスク群,リスク不明群の3群に分けたところ,高リスク群は36.6%と高比率であった。Progression free survival(PFS)35ヶ月,標準リスク群 vs 高リスク群 46 vs 29ヶ月。Overall survival(OS)標準リスク群 vs 高リスク群 到達せずvs 82ヶ月であり,高リスク群は有意にOSが不良であり,PFSも劣る傾向がみられた。ISS stageとOSに相関はみられなかった。若年骨髄腫では染色体高リスク群が多く,骨髄腫全体の患者群と同様,染色体リスクが予後因子として大きな意義をもつことが示唆された。

  • 廣瀨 匡, 徳永 博俊, 清水 里紗, 山田 聖子, 近藤 敏範, 末次 慶收, 中西 秀和, 神田 英一郎, 近藤 英生, 和田 秀穂
    2019 年 60 巻 10 号 p. 1418-1424
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/11/06
    ジャーナル 認証あり

    続発性自己免疫性溶血性貧血(AIHA)の基礎疾患として自己免疫疾患やリンパ系腫瘍が知られている。固形がんも稀ではあるがAIHAの基礎疾患の一つとして報告されている。近年,がん細胞に自己抗原の異所性発現が報告され発症原因として注目されているが,未だ詳細は不明である。今回我々は1995年1月1日から2016年5月31日までの期間に当院および協力施設で経験したAIHA患者100例を対象に悪性腫瘍合併の有無と診断時期について後方視的に検討した。100例中52例が悪性腫瘍を罹患しており,造血器腫瘍39例,固形がん22例,重複がんを含め全67がん種が診断された。さらにAIHA診断時を基準に悪性腫瘍の診断時期を解析したところ,全67がん種中28がん種がAIHA診断の前後6ヶ月間に集中していることが明らかになった。特に寒冷凝集素症(CAD)例では全例で悪性腫瘍に罹患しており,温式AIHAと比べて固形がんの合併が有意に多かった。AIHA診断時には同時に悪性腫瘍の検索が必要と考えられた。

症例報告
  • 西島 暁彦, 野口 侑真, 成川 研介, 高野 弥奈, 押川 学
    2019 年 60 巻 10 号 p. 1425-1430
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/11/06
    ジャーナル 認証あり

    症例は70歳男性。発熱と全身リンパ節腫脹,白血球数増多で当科を紹介受診した。骨髄検査にてCD5弱陽性,CD10陽性,CD19陽性,CD20陽性,CD23弱陽性,TdT陰性,κ»λの異常リンパ球のびまん性増殖あり,それらはIGH/MYC,IGH/BCL2およびIGH/CCND1転座がいずれも陽性であった。Aggressive B細胞リンパ腫として種々の化学療法を行ったがいずれも治療抵抗性であり,診断から6ヶ月後に死亡した。IGH/MYC転座とIGH/BCL2転座,BCL6転座を併せ持つ症例はdoubleもしくはtriple-hit lymphomaと定義され,難治性であることが知られているが,本例のように前二者の転座に加えIGH/CCND1転座を併せ持つ症例の報告は極めて稀であり,最適な治療法の開発には更なる病態の解明と症例の蓄積が必要である。

  • 長尾 陸, 細羽 梨花, 矢萩 裕一, 郡司 匡弘, 瓜生 英樹, 服部 大樹, 桃木 真美子, 山﨑 博之
    2019 年 60 巻 10 号 p. 1431-1435
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/11/06
    ジャーナル 認証あり

    多発性嚢胞腎により1999年より血液透析を導入していた55歳男性。汎血球減少や易感染性を認めたため,骨髄検査を施行したところ,急性前骨髄球性白血病(APL)の診断となった。All-trans retinoic acid(ATRA)を用いて寛解導入療法を施行したが,FISH法でPML-RARA陽性細胞の残存を認め,治療抵抗性APLと判断した。引き続きATRA/arsenic trioxide(ATO)併用療法を導入したところ,分子遺伝学的寛解を確認したため治療を継続し,治療開始2年後も完全寛解を維持している。APL罹患前から嚢胞感染を繰り返していたが,ATRA/ATO併用療法施行中も同様の感染を繰り返すのみで,治療中断に繋がるような有害事象は認めなかった。ATRA/ATO併用療法は,透析患者に合併した治療抵抗性のAPLに対する安全かつ有効な治療法の一つと考えられる。

  • 數本 弘子, 植木 俊充, 北原 茉莉, 植松 望武, 宍戸 努, 桐原 健彦, 佐藤 慶二郎, 廣島 由紀, 住 昌彦, 上野 真由美, ...
    2019 年 60 巻 10 号 p. 1436-1442
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/11/06
    ジャーナル 認証あり

    31歳男性。12歳時に再生不良性貧血と診断されたが,自然軽快した。26歳時に検診で白血球減少を指摘された。血球減少は徐々に進行し,2013年11月(31歳時)骨髄異形成症候群WHO分類refractory cytopenia with multilineage dysplasiaと診断された。G-band法でtrisomy 8を含む染色体異常を認め,2014年8月より口内炎,10月より腹痛が出現し,内視鏡検査でBehçet病類似の回盲部潰瘍を認めた。Adalimumab,ステロイドは無効で2015年6月骨髄非破壊的前処置を併用し臍帯血移植を施行した。移植後36ヶ月現在,皮膚慢性GVHDに対しtacrolimusを内服するのみで,骨髄異形成症候群および口内炎,消化管潰瘍は軽快している。難治性のBehçet病様症状を有する骨髄異形成症候群に対し造血幹細胞移植が有効な治療選択肢となる可能性が示唆された。

  • 上野 志貴子, 野崎 順子, 草野 真一, 河野 和, 菊川 佳敬, 奥野 豊, 畑 裕之, 松岡 雅雄, 内場 光浩
    2019 年 60 巻 10 号 p. 1443-1448
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/11/06
    ジャーナル 認証あり

    凝固第XIII因子はフィブリン安定化因子とも呼ばれ,トロンビンによって活性化されてフィブリンを架橋結合する。XIII因子に対する抗体が産生され,XIII因子活性が低下したものを後天性第XIII因子インヒビターという。今回我々は経過中に多発性骨髄腫を合併した症例を経験した。後天性第XIII因子欠乏に対してステロイドを投与したもののXIII因子活性の回復はみられなかったが,経過中に骨髄腫の合併とともにXIII因子活性の正常化をきたした。患者血漿を用いて吸収試験およびELISA法を行い,初診時にIgG型のXIII因子インヒビターが存在し,それがIgA-λ型の骨髄腫の進行に伴い減少した可能性が示された。骨髄腫の進展に伴って多クローン性の免疫グロブリンと同様に,XIII因子インヒビターも抑制された可能性が考えられる。本症例は極めて稀な合併例ではあるがXIII因子活性の正常化に多発性骨髄腫が関与していることが示唆される興味深い症例である。

  • 中村 桃子, 吉岡 聡, 山下 大祐, 原 重雄, 石川 隆之
    2019 年 60 巻 10 号 p. 1449-1454
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/11/06
    ジャーナル 認証あり

    慢性リンパ性白血病(CLL)はしばしば自己免疫性血球減少症(autoimmune cytopenia, AIC)を合併する。患者は69歳の女性。6年前にCLLと診断され,3年前に貧血とB症状を契機にrituximab(Rituxan®)±fludarabine(Fludara®)による治療を受けた。1ヶ月前から汎血球減少と腎機能障害が進行し,胸水貯留による呼吸困難を主訴に入院した。CLLの骨髄浸潤は明らかではなく,汎血球減少の原因はAICと腎性貧血と診断し,腎生検の結果,腎障害は単クローン性免疫グロブリン沈着症(MIDD)と診断した。M蛋白抑制を目的にibrutinibを投与したところ,1ヶ月後IgM値の低下に並行して,汎血球減少は改善し,治療開始3ヶ月後に支持療法は不要となった。Ibrutinibの抗腫瘍効果あるいは免疫調整効果がAICの改善に寄与したと考えられた。

  • 石川 立則, 福見 拓也, 守山 喬史, 村上 裕之, 永喜多 敬奈, 吉岡 尚徳, 牧田 雅典, 神農 陽子, 角南 一貴
    2019 年 60 巻 10 号 p. 1455-1461
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/11/06
    ジャーナル 認証あり

    64歳,女性。2013年に,びまん性大細胞型B細胞リンパ腫(DLBCL)と診断され,R-CHOP療法8コース後のFDG-PET/CTで完全奏効を確認後,残存した後腹膜腔の軟部陰影に対し局所放射線照射を追加した。2016年初頭からLDH・可溶性IL-2受容体の高値が持続し,再発を疑いFDG-PET/CT撮影行うもリンパ節腫大や異常集積は認めず。同年7月末より発熱・盗汗出現し,血管内リンパ腫を疑いランダム皮膚生検を行ったところ,皮下脂肪織内の血管周囲および血管内に大型の異型細胞の浸潤を認め,細胞形態および免疫染色,免疫グロブリン重鎖遺伝子PCR結果からDLBCLの再発が示唆された。救援化学療法に加えて自家末梢血幹細胞移植併用大量化学療法を行ったが,約15ヶ月後に肺病変を伴い再発し,再度化学療法を行い現在再奏効が得られている。DLBCLが血管内リンパ腫様に再発を来すこともあり,臨床所見や検査所見から疑わしい際は,IVLBCLに準じた検査を検討する必要があると考える。

  • 藤浪 春菜, 楠本 茂, 正木 彩子, 大島 佳子, 立田 卓登, 佐々木 宏和, 丸茂 義晃, 吉田 嵩, 成田 朋子, 伊藤 旭, 李 ...
    2019 年 60 巻 10 号 p. 1462-1467
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/11/06
    ジャーナル 認証あり

    リヒター症候群(Richter syndrome, RS)は,慢性リンパ性白血病(CLL)および小リンパ球性リンパ腫症例において,びまん性大細胞型B細胞リンパ腫(DLBCL)またはホジキンリンパ腫と病理組織学的に診断される。RSに対する標準治療は確立しておらず,一般には転化後の組織病型に準じた治療が施行される。CLLへのibrutinib(IBR)単剤療法の有効性が示されているが,RSに関するエビデンスは限られている。我々は,G分染法/SKY(spectral karyotyping)法によりde novoではなくCLLからDLBCLへ転化したと考えられたRSの2例を経験した。IBR単剤治療により,それぞれ12ヶ月間,10ヶ月間にわたり病勢安定となり,RSへの有用性が示唆された。有害事象として,1例でウイルス性出血性膀胱炎がみられたが420 mg/日から280 mg/日へ減量し継続可能であった。また,IBR治療後に再燃した2症例に対して,救援化学療法後にIBR再投与し,それぞれ5.5ヶ月,2ヶ月の病勢安定を得られ,IBR再治療の有用性が示唆された。

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