化学と生物
Online ISSN : 1883-6852
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60 巻, 9 号
選択された号の論文の10件中1~10を表示しています
巻頭言
今日の話題
解説
  • ビフィズス菌やメタン菌の代謝機能から応用研究への展開
    山田 千早
    2022 年 60 巻 9 号 p. 446-452
    発行日: 2022/09/01
    公開日: 2023/09/01
    ジャーナル フリー

    嫌気的な環境は,水田や深海といった自然環境から,身近なところではヒト・動物の消化管内にまで広く分布している.そこに生息する嫌気性細菌は,様々な基質を利用可能であり発酵や嫌気呼吸によってエネルギーを獲得する.本稿では,二つの内容について解説する.前半にヒトの腸内細菌,特に乳児期から離乳期にかけて形成される腸内フローラにおいて機能する糖質加水分解酵素の局在から見る腸内細菌の種間関係について解説する.後半では,メタン菌などの嫌気性細菌が持つ細胞外電子伝達について解説する.

  • 魚醤の研究動向
    野間 誠司
    2022 年 60 巻 9 号 p. 453-458
    発行日: 2022/09/01
    公開日: 2023/09/01
    ジャーナル フリー

    一般に発酵食品は特定のスターター微生物を添加し,発酵過程に生じる微生物叢や分解物,代謝物の変遷を安定化させて製造される.しかし魚醤においてはスターターを添加せず,多量の塩(食塩>20%)のみによって微生物叢の制御を図る場合が多く,発酵過程の安定性や作製期間の長さなどに課題を残す.魚醤の研究は発酵期間の短縮や減塩など製造プロセスの改良を中心に行われてきたが,近年,次世代シーケンサーや質量分析技術が魚醤の発酵過程中の細菌叢や代謝物の解析に適用され始めた.今後,これらが融合していくことで魚醤発酵過程の全貌解明と製造工程の効率化・安定化につながると期待される.

  • 寄生に特化した根・菌糸状の体を持つ動物の謎
    岡野 桂樹
    2022 年 60 巻 9 号 p. 459-466
    発行日: 2022/09/01
    公開日: 2023/09/01
    ジャーナル フリー

    寄生性フジツボはおぞましい寄生性生物の代表格とされる.それは宿主をフジツボの栄養供給装置,扶育装置,乳母ロボットにしてしまうからである.宿主は栄養を搾取されるだけではなく,その生殖機能が抑制され,甲斐甲斐しく寄生性フジツボとその幼生を育てるために一生を捧げる.寄生された雄宿主の形態は疑似雌化し,フジツボ胚の扶育のために,雌が通常行う抱卵行動と類似の行動を行うようになる.本稿では,寄生性フジツボの概要を解説するとともに,我々が行っているトランスクリプトーム解析の結果を元に,インテルナによる栄養収奪やエクステルナへの栄養の輸送,および宿主制御に関する作業仮説を提示する.

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農芸化学@High School
  • アンピシリンの抗菌効果に関与する化学構造
    荒井 優菜, 金子 聡, 佐藤 真美, 平川 青空
    2022 年 60 巻 9 号 p. 486-489
    発行日: 2022/09/01
    公開日: 2023/09/01
    ジャーナル フリー

    近年,薬剤耐性菌感染症の拡大が問題となっている中,私たちは既存の抗生物質の効果に影響を与える物質をカテキン類やその由来物質の中から探索したいと考えた.(-)-エピカテキン,(+)-カテキン,(-)-エピガロカテキンガレート,(+)-タキシフォリンはアンピシリンの抗菌効果には影響がなかったが,C環がカルボニル基に置換している(+)-タキシフォリンが,条件によっては大腸菌(Escherichia coli)に対してアンピシリンの抗菌効果を促進することができる可能性を見出した.

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