化学と生物
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48 巻, 10 号
選択された号の論文の16件中1~16を表示しています
巻頭言
今日の話題
解説
  • 新規抗C型肝炎ウイルス剤NA255の発見とその誘導体合成法の開発
    川崎 健一, 坂本 洋, 須藤 正幸, 青木 雅弘, 佃 拓夫
    2010 年 48 巻 10 号 p. 674-679
    発行日: 2010/10/01
    公開日: 2011/10/03
    ジャーナル フリー
    C型肝炎ウイルス(HCV)の感染は,重篤な肝臓疾患の主要な原因である.ウイルス除去の標準治療方法であるインターフェロン(IFN)/リバビリン併用療法のさらなる治療成績の向上を目指して,現在多くの新規薬剤が臨床開発段階にある.ここでは,その中でも新たな治療戦略として注目される,宿主因子を標的とした薬剤について,Cell-basedスクリーニングによって見いだした天然由来抗HCV剤,NA255を中心に紹介する.
  • 吉崎 悟朗
    2010 年 48 巻 10 号 p. 680-687
    発行日: 2010/10/01
    公開日: 2011/10/03
    ジャーナル フリー
    生殖細胞は成熟することで卵や精子になり,これらが受精することで個体をつくり出すことが可能である.このことは,生殖細胞を操作する技法が構築されれば多くのバイオテクノロジーの応用が可能であることを意味している.最近になって,魚類においても生殖細胞の研究が進み,始原生殖細胞や精原細胞,さらには卵原細胞を単離し,これを別の宿主(代理親魚)へと移植し,卵や精子を生産する技法が構築された.また,いったん単離した生殖細胞を凍結保存する技法も構築され,これらの凍結細胞を宿主に移植することで卵や精子を生産することも可能になっている.ここでは,これらの技術の背景にある現象・原理とともに,これら各技法の応用の可能性を紹介する.
  • 西澤 智康, 佐藤 嘉則, 藤村 玲子, 太田 寛行
    2010 年 48 巻 10 号 p. 688-694
    発行日: 2010/10/01
    公開日: 2011/10/03
    ジャーナル フリー
    16S rRNA 遺伝子解析が導入される前の時代,土壌細菌研究者の多くは,分離菌株の分類学的位置づけがどのような生態的意味をもつかについて一度は考え悩むときがあったと思う.そのような時代の最初の頃に,栗原は「ecological species(生態学的種)の概念の確立」を説いた(1965年).2000年代に入り,遺伝子変異の観点から細菌のecotype(エコタイプ)や細菌種の見直しが盛んに議論されている.ここでは,まず栗原の考察を読み解き,Cohanが提唱する細菌の「エコタイプ」について解説するとともに,著者らが扱ってきた初成土壌(三宅島2000年噴火火山灰堆積物)に住みつく細菌の分析結果を紹介して,細菌の生態学的種について考える話題を提供する.
  • ジスルフィド結合形成反応中間体の検出
    門倉 広
    2010 年 48 巻 10 号 p. 695-705
    発行日: 2010/10/01
    公開日: 2011/10/03
    ジャーナル フリー
    ジスルフィド結合は多くの分泌タンパク質の構造中に見いだされる分子内架橋構造であり,これらのタンパク質の立体構造形成や活性発現に重要である.近年の,特に大腸菌ペリプラズムにおける研究から,分泌タンパク質に効率よくジスルフィド結合を導入するためには様々な酵素や低分子物質の働きが必要であることが明らかになってきた.しかし,それらの因子が触媒する個々の反応のメカニズムの詳細についてはまだ多くのことが不明である.大腸菌ペリプラズムのジスルフィド結合導入酵素DsbAが分泌タンパク質にジスルフィド結合を導入する過程では,酵素と分泌タンパク質の間に共有結合中間体が形成される.最近,このような反応中間体を実際に生体内で検出することに成功した.その中間体の解析から,ペリプラズムにおけるタンパク質の折りたたみ過程に関して様々な知見が得られた.
セミナー室
  • 鳴坂 義弘, 平塚 和之, 能年 義輝
    2010 年 48 巻 10 号 p. 706-712
    発行日: 2010/10/01
    公開日: 2011/10/03
    ジャーナル フリー
  • 清宮 啓之
    2010 年 48 巻 10 号 p. 713-719
    発行日: 2010/10/01
    公開日: 2011/10/03
    ジャーナル フリー
    多細胞生物の成立は,様々な器官組織を形成する細胞社会の総体的恒常性によって担保されている.がん細胞(腫瘍細胞)は遺伝子の構造や発現様態に異常をもち,無秩序かつ無制限な分裂増殖,組織浸潤・遠隔転移といった,細胞社会の秩序から逸脱した挙動を示す.そのふるまいはあたかも,自己の増殖繁栄のみを目的とした単細胞生物のようである.我が国では1981年よりがんが死因の第1位を占め,今や3人に1人ががんで亡くなる時代である.その背景として,進行がんは外科切除が困難なこと,従来の抗がん剤は副作用が強いうえに治療効果が必ずしも高くないことが挙げられる.このような状況を打開すべく近年研究開発が進んでいるのが,がんに固有の分子変化をピンポイント攻撃する「分子標的治療」である.すでに,がん細胞の増殖・生存シグナルを遮断するキナーゼ阻害剤や,腫瘍抗原を認識して攻撃する抗体医薬などが臨床で大きな活躍を見せている.ただし,分子標的治療薬はその特異性の高さゆえに,当該標的分子をもたないがんには無効である.個々のがんが示す多様な分子個性に応じた,様々な分子標的治療薬の開発が必要である.今回は,本セミナー室第3回までに解説されたテロメア・テロメレースの知識を踏まえ,これらを標的とした抗腫瘍療法の作用原理と最新の開発状況を概説する.
「化学と生物」文書館
農芸化学@High School
  • 排気ガスの浄化と植物育成への応用
    別府 貴晃, 松村 泰悠, 土舘 英也, 及川 光一, 山岸 由佳, 原田 一太郎, 包原 烈, 石川 慧, 安井 雄治
    2010 年 48 巻 10 号 p. 724-726
    発行日: 2010/10/01
    公開日: 2011/10/03
    ジャーナル フリー
    本研究は,平成19(2007)年度日本農芸化学会大会(開催地 東京)において開催された第3回「ジュニア農芸化学会」で発表され,本誌編集委員会から高い評価を受けた.二酸化炭素,窒素酸化物,硫黄酸化物などを含む大気汚染は,地球温暖化と関連しているばかりでなく,人体に影響を及ぼすことも懸念される.本研究は,ある種の植物は大気汚染に強い耐性を有すること,および窒素酸化物を窒素源として利用する能力があることを確認し,このような植物を利用した大気環境の浄化と排気ガスを作物の栽培に応用する斬新なアイデアを提案している.
海外だより
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