植物においては,核酸の塩基配列特異的に起きるRNA分解,ならびにDNAのメチル化やヒストン修飾の変化を伴うエピジェネティックな変化を誘導することが可能である.本稿では,これらの反応経路が明らかになった経緯を概説するとともに,後者の例として,ウイルスベクターを用いてRNA-directed DNA methylationを誘導し,外来遺伝子をもたずに特定の内在性遺伝子の発現が抑制された植物を作出した研究を紹介する.また,遺伝子特異的,あるいは非特異的にエピジェネティックな変化を誘導する方法,ならびにCRISPR/Cas系などによるゲノム編集を含む,新規な植物育種技術の有効性と特徴を論じる.