地球温暖化,化石資源の枯渇から世界的に低炭素化社会の実現が求められており,太陽光,風力,地熱発電などの自然エネルギーが注目されている.その中で,セルロース系バイオマスは,バイオ燃料などのエネルギー源としての利用だけではなく,将来の脱石油社会の中で化成品のカーボン原料として利用可能な炭素循環型の原料として期待されている.アメリカでは,セルロース系バイオマスからの「糖」を原料とした化成品を作る体系を「バイオリファイナリー構想」として進めており,EUにおいては,「ホワイトバイオテクノロジー構想」が展開されている.そのような背景のなか,日本における「バイオリファイナリー構想」においてキーとなるセルロース分解酵素生産微生物「トリコデルマ・リーセイ(
Trichoderma reesei)」の開発は,約30年前のオイルショック後から進められている.最新の次世代シークエンサーを駆使した比較ゲノム解析によって,古典的な変異処理によって改良されてきた「トリコデルマ・リーセイ」の日本型系統樹進化の謎が解明されつつある.
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