化学と生物
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55 巻, 6 号
選択された号の論文の16件中1~16を表示しています
巻頭言
今日の話題
解説
  • タンパク質の分子進化をスパコンで再現する
    田村 隆
    2017 年 55 巻 6 号 p. 385-391
    発行日: 2017/05/20
    公開日: 2018/05/20
    ジャーナル フリー

    ペンギンは南極に住み,シロクマは北極で暮らしている.アフリカのサバンナにはライオンが君臨し,アジアの密林にはトラが潜む.動植物の種の系統は地理的分布と密接にリンクしており,数十億年の地球史を経たものである.では,目には見えない微生物について種の系統は地理的分布とリンクするだろうか.オランダの著名な植物・微生物学者Baas Beckingの定理(1)としてEverything is Everywhere, but the Environment Selects. という有名な警句がある.その定理は,微生物は地球上のあらゆる場所に普遍的に存在しているが,環境に適応した種がそのなかから優占的に増殖するという意味である.この教義によれば,微生物はコスモポリタンであり,一見,地理的な分布と見えるものも単に優占種を選択した環境の違いが反映されたものだということになる.このロジックから「培養して分離した微生物の地理的由来を議論しても意味はない」ということになり,さらに極論として「微生物なんて,どこで採取しても同じ」とまで言われるゆえんである.

  • 生産現場から生まれる成分多様性を見るために
    関山 恭代, 池田 成志, 冨田 理
    2017 年 55 巻 6 号 p. 392-399
    発行日: 2017/05/20
    公開日: 2018/05/20
    ジャーナル フリー

    農産物や食品に含まれる成分の多様性は、栽培現場から食卓に至るまでの環境の多様性を反映して変化し,ヒトの健康やヒトを取り巻く生態系の物質循環にも影響すると考えられる.メタボロミクスはサンプル中の成分多様性を包括的に検出するために有効な手段であり,分析機器の性能の向上や解析技術の発展に伴って,かつては曖昧な部分もあった成分多様性の概観をより高感度・高解像度で捉えることが可能になった.今後は,農業・食品産業現場の試料を対象としたメタボロミクスの需要がさらに増すと期待できる.本稿では,農業・栽培を中心に,現場関係者と連携したメタボロミクスを実施するにあたって必要と思われる確認事項を提案し,NMRによる農業メタボロミクスの実施例を紹介し,今後の展望を議論したい.

  • インスリン様分子の新たな生理機能
    河野 強
    2017 年 55 巻 6 号 p. 400-405
    発行日: 2017/05/20
    公開日: 2018/05/20
    ジャーナル フリー

    「休眠」は多くの生物種における優れた生存戦略の一つである.モデル生物・線虫C. elegansは生育環境の悪化に応答して幼虫時に生育を停止し,休眠ステージに入る.これまでの研究から,①C. elegansの休眠制御にはインスリン様シグナルが関与すること,②40種存在すると推定されるインスリン様ペプチドのうち一部のペプチドがインスリン様シグナルの亢進・抑制を行うこと,③インスリン様シグナルは寿命制御にも関与すること,④インスリン様シグナルによる寿命制御は哺乳動物にも共通であること,などが明らかとなった.本稿ではC. elegansの休眠・寿命を制御するインスリン様ペプチドを中心として,それらの構造と機能などについて概説する.

  • 恋敵に奪われないための二重の戦略
    横井 佐織
    2017 年 55 巻 6 号 p. 406-411
    発行日: 2017/05/20
    公開日: 2018/05/20
    ジャーナル フリー

    多くの動物は,自らの子孫を残すためにさまざまな配偶戦略をもつ.たとえばオスに着目して考えると,オス間競争に勝利し,メスから配偶者として受け入れられる(配偶者選択される)必要があり,これらを単独に研究した例はこれまでに多く存在した.しかしながら,オス間競争とメスの配偶者選択との相互作用については,3個体に着目する難しさからか,不明な点が多く残されている.本稿では,分子遺伝学的手法を利用可能なメダカを用い,オス,オス,メスの三者関係によって誘起される配偶者防衛行動に着目することで,オス間競争とメスの配偶者選択との相互作用の一部について明らかになったことを紹介したい.

  • 医薬品開発研究を中心として
    横井 毅, 織田 進吾
    2017 年 55 巻 6 号 p. 412-420
    発行日: 2017/05/20
    公開日: 2018/05/20
    ジャーナル フリー

    薬物代謝の情報は,医薬品開発におけるリード化合物の選択に,毒性発現の解明に,治験における有用性と安全性の確保に,臨床における個別薬物療法の実践において重要な役割を担っている.近年の医薬品開発を取り巻く状況は,目覚ましい変化の渦中にある.こうした状況下で,薬物代謝や薬物動態の研究成果は,非臨床および臨床研究を広範に支えており,創薬の効率化と加速化に貢献している.本稿では,薬物代謝・薬物動態研究の視点から,今日の医薬品開発研究に関する最近の進歩を中心に解説する.

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