化学と生物
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59 巻, 5 号
選択された号の論文の10件中1~10を表示しています
巻頭言
今日の話題
解説
  • 植物における細胞運命決定機構
    近藤 侑貴
    2021 年 59 巻 5 号 p. 225-232
    発行日: 2021/05/01
    公開日: 2022/05/01
    ジャーナル フリー

    植物の形づくりは,付加的に新しい器官を形成していくことで行われる.このような植物の発生は,近年の分子生物学・遺伝学の普及により,遺伝子のレベルで解き明かされてきた.さらにはそれらの遺伝子の関係性を明らかにし,紐づけることでネットワークとして形づくりの制御メカニズムの研究が進められてきている.それとは対照的に,これまでにわかってきた知見をもとに発生過程を再現し,理解を深めようというのが構成生物学的な観点である.本解説では,植物の物質輸送を担う重要な組織系・維管束について,その発生制御機構に迫る再構成アプローチについて紹介したい.

  • 新型コロナウイルスに効く優れた修飾ヌクレオシドの開発は可能か?
    大類 洋
    2021 年 59 巻 5 号 p. 233-240
    発行日: 2021/05/01
    公開日: 2022/05/01
    ジャーナル フリー

    新型コロナウイルス感染症(Covid-19)のパンデミックによって,私達は未来永劫続くであろう「ウイルスとの闘い」を再認識させられた.ウイルスの発見,特にRNAウイルスの発見は,分子生物学の基本概念である「セントラルドグマ」に修正を迫るなど生命科学に大きな衝撃を与え,2020年のノーベル医学生理学賞は「C型肝炎ウイルスの発見」に授与された.ウイルスの脅威に立ち向かうため,ワクチンや抗ウイルス薬の開発研究が盛んに行われている.抗ウイルス修飾ヌクレオシド薬は,ウイルスの核酸ポリメラーゼ(本解説ではDNAポリメラーゼとRNAポリメラーゼを合わせて核酸ポリメラーゼとします)を阻害するものであるから,すべてのウイルスに対して開発が可能と思われるが実際には難しい.本稿ではこれまでに「ウイルスとの闘い」で顕著な成果を上げている抗ウイルス修飾ヌクレオシド薬の特徴,および問題点などを有機化学的観点から捉え,現在最重要課題である新型コロナウイルスに対する優れた修飾ヌクレオシド薬開発の可能性について考える.本稿を読んで多くの研究者が抗ウイルス修飾ヌクレオシドの開発研究に関心をもってくれることを願っている.

  • クエン酸生産能力の鍵をにぎる輸送体
    二神 泰基, 門岡 千尋, 後藤 正利, 玉置 尚徳
    2021 年 59 巻 5 号 p. 241-246
    発行日: 2021/05/01
    公開日: 2022/05/01
    ジャーナル フリー

    清酒,味噌,醤油などの製造には一般的に黄麹菌が用いられるが,焼酎の製造には白麹菌あるいは黒麹菌が主に用いられる.焼酎造りに用いられる麹菌は,穀類原料の糖化のほかにクエン酸を高分泌生産して雑菌汚染を防ぐ役割を有している.クエン酸の分泌機構については長年不明であったが,近年,クエン酸輸送体についての研究が進展した.見いだされたクエン酸輸送体を黄麹菌にて発現させるとクエン酸の高分泌生産能力を獲得することから,本輸送体がクエン酸の排出において中心的役割を担っていると考えられる.本稿では,白麹菌において見いだされたクエン酸輸送体による排出プロセスの重要性について解説したい.

  • 微弱な通電前処理により後段でのセルロース系廃棄物のメタン生成速度を高める
    佐々木 建吾, 佐々木 大介, 近藤 昭彦
    2021 年 59 巻 5 号 p. 247-253
    発行日: 2021/05/01
    公開日: 2022/05/01
    ジャーナル フリー

    メタン発酵(嫌気性消化)は嫌気的な環境下で複雑な有機物をメタンと二酸化炭素に分解する方法であり,生ごみや余剰汚泥等の有機性廃棄物の処理に応用されている.回収されたメタンガスは発電等に利用されるため,メタン発酵はエネルギー資源回収技術として有効である.メタン発酵は加水分解・酸生成・酢酸生成・メタン生成の4つの過程に分けられ,各過程にかかわる微生物同士が物質のリレーをしながら進行する(図1).メタン発酵の効率を高めるために微生物を保持する固定化担体を設置する発酵槽(fixed film reactor)が開発されており,筆者らは導電性付着担体である炭素繊維を充填した発酵を固定床式発酵と呼んでいる.

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