運動は強度, 頻度などの様々な条件により, 免疫機能に異なる影響を及ぼす. 本研究では, ラットを運動トレーニング群と安静群に分け, 2週間にわたってトレーニングを継続的に行った後に疲労困憊運動を負荷した群と, 全く運動せずに疲労困憊運動を負荷した群の, リンパ組織の抗体産生能の変化について検討した. その結果, 腸間膜リンパ節リンパ球のIgA産生量は, 運動トレーニング群で増加した. また, 安静群および運動トレーニング群のいずれにおいても, 腸間膜リンパ節リンパ球のIgA産生量は疲労困憊運動により減少傾向を示したが, 運動トレーニング群では安静群よりも高い値を維持した. IgG値も同様の傾向を示した. しかし, リンパ球の培養上清中の過酸化脂質濃度は運動群で高い値を示すとともに, 血中のグルタチオンペルオキシダーゼ活性は疲労困憊運動で有意に低下した. 従って, 運動トレーニングは腸間膜リンパ節リンパ球の抗体産生を促進し, 疲労困憊運動による腸管免疫系へのダメージを抑制するが, その作用機構は体内抗酸化能の増強以外のメカニズムによる可能性が示された. 一方, 疲労困憊運動による抗体産生能の低下には, 酸化ストレスが関与している可能性があることから, 運動による抗体産生能の増強と抑制は異なる機構で制御されていると考えられる.
抄録全体を表示