化学と生物
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55 巻, 3 号
選択された号の論文の16件中1~16を表示しています
巻頭言
今日の話題
解説
  • タンパク質で電子デバイスをつくる!
    岩堀 健治
    2017 年 55 巻 3 号 p. 166-173
    発行日: 2017/02/20
    公開日: 2018/02/20
    ジャーナル フリー

    化合物半導体と聞いて何を想像するだろう? バイオ研究者にとってはなかなかなじみのない言葉かもしれないが,おおよそ導体と絶縁体の中間的な物質のことを半導体と呼んでいる.近年の情報化社会を支えているスマートフォン,テレビ,車,洗濯機,エアコンなどの電子機器はもちろん,新幹線,ロケット,宇宙ステーションほとんどの電化製品のなかに半導体素子が存在している.このような半導体素子は無機物でできているため,細胞やタンパク質などとは全く関係ないように思えるが,実は多くの生物がさまざまな無機物を戦略的に利用しながら生存している.本稿では生体分子の機能を活用したバイオマテリアルの作製と利用について述べる.

  • 植物に内在する時計のしくみ
    水野 猛, 山篠 貴史
    2017 年 55 巻 3 号 p. 174-181
    発行日: 2017/02/20
    公開日: 2018/02/20
    ジャーナル フリー

    移動することができない植物にとって季節による日長や気温の変化に適切に対応することは植域を広げながら繁栄するのに必要な性質と考えられる.この点で植物の概日時計が重要な役割を担っていると考えられる.シロイヌナズナの研究から植物の概日時計の実体が明らかにされつつある.これらの知識を基盤にして,筆者らは次のような具体的疑問に答えようと試みている.日長や気温の季節による変化(シグナル)は概日リズムを生む中心振動体の「どの因子」に「どのような機構で」入力されているのだろうか.本稿ではこの問題に焦点を絞り最近の筆者らの成果を解説する.

  • ユニークな酵素で拡がる機能性ジペプチドの世界
    木野 邦器, 木野 はるか
    2017 年 55 巻 3 号 p. 182-188
    発行日: 2017/02/20
    公開日: 2018/02/20
    ジャーナル フリー

    ジペプチドには血圧降下作用や呈味作用などさまざまな機能性を示すものがある.筆者らは長年にわたり,無保護のアミノ酸同士を直接連結することができるL-アミノ酸リガーゼ(Lal)の研究を続けており,Lalを利用した機能性ジペプチドの合成検討を進めている.近年,筆者らは新たな試みとしてジペプチドの呈味性,特に「塩味」に着目し,Lalを用いて合成したジペプチドのライブラリーから塩味増強効果を有するジペプチドを新規に見いだした.さらにはLalの立体構造情報を利用した改変を行い,副生物がなく目的の塩味増強効果を有するジペプチドのみを選択的に合成する改変型Lalの取得に成功したので併せて紹介する.

  • 低リンストレスに対する植物の適応機構
    丸山 隼人, 和崎 淳
    2017 年 55 巻 3 号 p. 189-195
    発行日: 2017/02/20
    公開日: 2018/02/20
    ジャーナル フリー

    リンの不足は植物の生育を大きく制限するが,リンが乏しい土壌で生育する植物の中には,房状の特殊な根を形成して適応するものがいる.この房状の根は,根の表面積を増やして吸収効率を高めるだけでなく,有機態リンを分解するホスファターゼや難溶性リンを可溶化する有機酸の分泌能も高めて,リンの吸収を支えていることが示されている.房状の根を形成する植物は西オーストラリアや南アフリカなど南半球に多く分布し,北半球での例はほとんど報告されていなかった.近年,筆者らの研究により,わが国にもこれらの適応戦略を有した植物種が分布し,実際にリン栄養に乏しい土壌に適応するうえで重要な役割を担うことが示唆された.

  • 原子間力顕微鏡による生体試料の力学的性質の解析
    山岸 彩奈, 中村 史
    2017 年 55 巻 3 号 p. 196-202
    発行日: 2017/02/20
    公開日: 2018/02/20
    ジャーナル フリー

    生体試料の溶液中での観察が可能である原子間力顕微鏡は,生体分子のイメージングだけでなく,分子間相互作用や弾性といった力学的な性質を解析する装置としても利用されている.さらにわれわれは,ダメージを与えずに生きた細胞を解析できる,非常に細い針(ナノニードル)を細胞に挿入することで細胞内部のタンパク質を検出する手法を開発した.細胞に針を刺すことは乱暴な行為に思われるかもしれないが,直径200 nmのナノニードルでは,1時間以上挿入を維持しても細胞を殺すことはなく,100回に及ぶ繰り返し挿入を行っても細胞の分裂速度に影響がない.本稿では原子間力顕微鏡を用いた細胞弾性の測定および1分子の相互作用解析に加えて,抗体修飾ナノニードルを用いた細胞内タンパク質の力学検出に関して紹介する.

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