化学と生物
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53 巻, 3 号
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巻頭言
今日の話題
解説
  • 高木 博史, 那須野 亮
    2015 年 53 巻 3 号 p. 148-155
    発行日: 2015/02/25
    公開日: 2016/02/20
    ジャーナル フリー
    微生物から高等生物まで広く存在する「N-アセチルトランスフェラーゼ」は,さまざまな基質をアセチル化することで,多くの重要な細胞機能の制御に関与している.筆者らは,環状の二級アミンであるプロリンアナログ(L-アゼチジン-2-カルボン酸,シス-4-ヒドロキシ-L-プロリン)を基質とする新規のN-アセチルトランスフェラーゼMpr1を酵母Saccharomyces cerevisiaeに見いだした.また,Mpr1がアルギニン合成を亢進することで一酸化窒素の生成を誘導し,酵母の酸化ストレス耐性に寄与する新しいタイプの「抗酸化酵素」であることを明らかにした.さらに,X線結晶構造解析により,Mpr1のユニークな立体構造と反応機構の解明にも成功した.本稿では,Mpr1の分子構造と生理的役割について概説する.また,Mpr1の酵素特性や生理機能に基づく応用研究の成果も紹介する.
  • 湯本 勳, 松野 敏英
    2015 年 53 巻 3 号 p. 156-163
    発行日: 2015/02/20
    公開日: 2016/02/20
    ジャーナル フリー
    好アルカリ性細菌の系統的および生態学的な分布が多様であるように,その環境適応のために取りうる手段とその強弱も多様であることが予測される.好アルカリ性細菌は,系統学的に中性細菌と比較的近縁な微生物群であることから予想されるように,ほかの微生物がもたない特殊な生体機能を獲得したわけではなく,種々の機能のマイナーチェンジの合わせ技によって環境適応をしていることが好アルカリ性細菌のエネルギー代謝を研究することによって垣間見ることができる.好アルカリ性細菌のチトクロムcは,単に呼吸鎖の成分としてではなく,膜の表面の陰荷電形成に貢献するとともに,電子受容体との間で大きな酸化還元電位差をつくることにより電位差の大きなコンデンサーの役割をするほか,電子移動や膜電位とリンクして膜表面のHの挙動にも影響することが考えられ,特定の好アルカリ性細菌の特定の生育条件における環境適応に対する切り札の一つとして機能しているものと考えられる.
  • 平山 裕一郎, 北 将樹, 木越 英夫
    2015 年 53 巻 3 号 p. 164-170
    発行日: 2015/02/20
    公開日: 2016/02/20
    ジャーナル フリー
    アプリロニンA(ApA)は強力な抗腫瘍活性を示す海洋産マクロリドである.ApAはモノマーのG-アクチンと1 : 1の複合体を形成し,重合したF-アクチンを脱重合させる.しかしApAは細胞内のアクチン骨格に作用するよりも1,000倍以上低い濃度で細胞毒性を示すことから,アクチン以外の第二の標的分子の存在が予想されていた.われわれはApAの分子プローブを合成し,標的分子の同定と相互作用解析を行った.その結果,本化合物が2つの細胞骨格タンパク質,アクチンとチューブリン間の相互作用を誘導することで微小管ダイナミクスを阻害するという,ユニークな作用を示すことを見いだした.
  • 中村 英光, 宮川 拓也, 田之倉 優, 浅見 忠男
    2015 年 53 巻 3 号 p. 171-178
    発行日: 2015年
    公開日: 2016/02/20
    ジャーナル フリー
    ストリゴラクトンは,アフリカで農作物に深刻な被害をもたらし魔女の雑草と呼ばれる根寄生雑草ストライガの種子発芽促進物質として知られていたが,近年,枝分かれ抑制など多様な活性をもつ植物ホルモンであることが知られるようになった.そのため,ストリゴラクトンの受容・シグナル伝達機構の解明は,根寄生雑草防除の点でも,植物の生長制御の点でも重要な課題である.ストリゴラクトンの受容は,ストリゴラクトンの加水分解活性を併せ持つD14タンパク質により行われることが明らかになってきている.本稿では,この数年で分子生物学的手法やタンパク質結晶構造解析により明らかになってきたストリゴラクトンの受容・シグナル伝達のしくみについて解説する.
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