好アルカリ性細菌の系統的および生態学的な分布が多様であるように,その環境適応のために取りうる手段とその強弱も多様であることが予測される.好アルカリ性細菌は,系統学的に中性細菌と比較的近縁な微生物群であることから予想されるように,ほかの微生物がもたない特殊な生体機能を獲得したわけではなく,種々の機能のマイナーチェンジの合わせ技によって環境適応をしていることが好アルカリ性細菌のエネルギー代謝を研究することによって垣間見ることができる.好アルカリ性細菌のチトクロム
cは,単に呼吸鎖の成分としてではなく,膜の表面の陰荷電形成に貢献するとともに,電子受容体との間で大きな酸化還元電位差をつくることにより電位差の大きなコンデンサーの役割をするほか,電子移動や膜電位とリンクして膜表面のH
+の挙動にも影響することが考えられ,特定の好アルカリ性細菌の特定の生育条件における環境適応に対する切り札の一つとして機能しているものと考えられる.
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