化学と生物
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51 巻, 1 号
選択された号の論文の13件中1~13を表示しています
巻頭言
今日の話題
解説
  • 浅井 禎吾, 大島 吉輝
    2013 年 51 巻 1 号 p. 13-21
    発行日: 2013/01/01
    公開日: 2014/01/01
    ジャーナル フリー
    ゲノム解読が進むにつれ,糸状菌には,これまで同定された化合物から予測されるよりも,はるかに多くの二次代謝物を生産する能力が秘められていることが明らかになってきた.二次代謝物生合成遺伝子の大半は,通常の培養条件下では休眠状態にあり,われわれは,その能力の一部しか引き出せていない.最近,急速に解明されつつある,エピジェネティクスを介した糸状菌の二次代謝制御は,休眠遺伝子にコードされる新規物質を取得するうえで重要な鍵になることが期待される.本稿では,糸状菌二次代謝制御にかかわるエピジェネティクス現象を概説するとともに,その概念に基づいた天然物探索について紹介する.
  • 折り畳み研究への応用
    鎌形 清人
    2013 年 51 巻 1 号 p. 22-27
    発行日: 2013/01/01
    公開日: 2014/01/01
    ジャーナル フリー
    タンパク質が機能をもつためには,特定の構造に折り畳むことが必須である.本稿では,タンパク質の折り畳み研究の歴史を振り返り,折り畳み研究における一分子計測の重要性を議論する.さらに,最近私たちが開発した一分子蛍光観測装置を解説し,この装置によって明らかにされたタンパク質の変性構造の物性を解説する.
  • 森 博幸, 塚崎 智也
    2013 年 51 巻 1 号 p. 28-35
    発行日: 2013/01/01
    公開日: 2014/01/01
    ジャーナル フリー
    細菌のタンパク質分泌には,必須の駆動モーターSecA ATPaseと,分泌タンパク質の通り道を形成するSecYEGトランスロコンが中心的な役割を果たす.これらに加え,膜タンパク質複合体SecDFも,タンパク質の分泌能の保持に重要な役割をもつが,その作用機序は長らく不明であった.筆者らは,高度好熱菌由来のSecDFの立体構造をX線結晶構造解析より明らかにし,立体構造情報に基づいた生化学的・生物物理学的な解析を通して,「SecDFは,細胞質膜を挟んで形成されるプロトン駆動力を用い,プロトン輸送と共役した自身の構造変化を介して,膜透過途上の基質タンパク質を自身の膜外ドメインで一時的に捕捉し,膜から引っ張り出すことにより膜透過を促進する.」との作業仮説を提唱した.トランスロコンを挟んで膜の両側に存在する2つの駆動因子(細菌では,SecAとSecDF)の協調的な働きにより,分泌タンパク質の膜透過が促進されるという機構は,すべての生物に観察される普遍的なメカニズムととらえることができる.
  • 上野 琴巳, 滝川 浩郷, 杉本 幸裕
    2013 年 51 巻 1 号 p. 36-42
    発行日: 2013/01/01
    公開日: 2014/01/01
    ジャーナル フリー
    植物ホルモンの一つであるストリゴラクトンを立体制御しないで有機合成すると,少なくとも4つの立体異性体が生成する.これら異性体のなかで高い生物活性を示す立体はある程度限定されているものの,いずれの異性体も高濃度では活性を示すと考えられてきた.しかし生物種によってはストリゴラクトンの立体を厳密に認識し,活性を示した立体以外の異性体は,逆に阻害作用を有することが明らかになってきた.ここではストリゴラクトンの立体異性体とさまざまな生物種に対する活性の違いについて概説する.
セミナー室
「化学と生物」文書館
  • 分解菌の新機能を探る
    古川 謙介
    2013 年 51 巻 1 号 p. 46-51
    発行日: 2013/01/01
    公開日: 2014/01/01
    ジャーナル フリー
  • 糖鎖の人工合成と細胞機能
    木曽 真
    2013 年 51 巻 1 号 p. 52-63
    発行日: 2013/01/01
    公開日: 2014/01/01
    ジャーナル フリー
    およそ37年に及ぶ過去の研究を振り返り,それが産み出された背景,さらにはそれを支えた人脈や社会とのかかわりなど,正式な文書には見られないその時々の生の記録を残すことは,あまりにも重くかつ膨大な作業である.振り返れば,1995年までの主要な研究業績は,恩師・長谷川 明先生の日本農芸化学会功績賞受賞総説「糖鎖生物機能の分子的解析と生命科学への応用」(1)と著書(2)に,また1990年前後から2001年までの研究内容については,本誌「化学と生物」に「ガングリオシドプローブを用いて糖鎖の多彩な機能を探る」(3)と題してその概要を解説させていただいた.本稿では「文書館」の趣旨に従い,研究の背景とそれを支えた人々,学会や社会とのかかわりなどを含め,長谷川先生と筆者,研究室を取り巻く糖質科学研究の歴史的断片のいくつかを,時間軸に沿ってたどってみたい.
顕彰
農芸化学@High School
  • 微生物のいない土壌でミミズが消えるのはなぜか?
    稲村 晋作, 岡島 幹樹
    2013 年 51 巻 1 号 p. 66-67
    発行日: 2013/01/01
    公開日: 2014/01/01
    ジャーナル フリー
    本研究は,日本農芸化学会2012年度大会(京都女子大学)の「ジュニア農芸化学会」で発表された.惜しくも入賞は逃がしたものの,高校生の「なぜ?」に端を発したユニークな研究として紹介したい.さて,ミミズは1日に体重の1/2~同じ重さの土や落ち葉などを食べ,粒状の糞を排泄する.この糞には,窒素やカリウム,マグネシウムなどの肥料成分が植物が利用可能な形態で豊富に含まれている.また,ミミズが掘るトンネルによって通気が促進され,土壌微生物の増殖が促進される,など,ミミズは土壌改良に大きな働きをすることが知られている.かのチャールズ・ダーウィンは40年以上もミミズと土壌の研究をして,これらのことを明らかにしたそうだが,鳥取東高等学校では先輩から研究を引き継いで,土壌微生物とミミズの関係に取り組んだ.
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