およそ37年に及ぶ過去の研究を振り返り,それが産み出された背景,さらにはそれを支えた人脈や社会とのかかわりなど,正式な文書には見られないその時々の生の記録を残すことは,あまりにも重くかつ膨大な作業である.振り返れば,1995年までの主要な研究業績は,恩師・長谷川 明先生の日本農芸化学会功績賞受賞総説「糖鎖生物機能の分子的解析と生命科学への応用」
(1)と著書
(2)に,また1990年前後から2001年までの研究内容については,本誌「化学と生物」に「ガングリオシドプローブを用いて糖鎖の多彩な機能を探る」
(3)と題してその概要を解説させていただいた.本稿では「文書館」の趣旨に従い,研究の背景とそれを支えた人々,学会や社会とのかかわりなどを含め,長谷川先生と筆者,研究室を取り巻く糖質科学研究の歴史的断片のいくつかを,時間軸に沿ってたどってみたい.
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