メタンはこれまで,燃料や化学品原料として利用され,人類社会の発展を支えてきた.ところが近年,地球温暖化に及ぼす影響が大きな温室効果ガスとして着目されるようになった.そのため,農畜産業や廃棄物からのメタン排出量を削減する試みや,カーボンニュートラルなメタンを製造する技術の実用化に向けた動きが進んでいる.より自由自在にメタンを扱えるワザを手にできれば,地球環境へ負荷をかけずに有用なエネルギー・炭素資源であるメタンを使い続けられる.さまざまなメタン変換技術の研究が進んでいる現状において,メタン利用技術の一つであるバクテリアを触媒として利用したメタンからのメタノール合成ついて,本稿では紹介する.
真核生物が産生する分泌型タンパク質や膜タンパク質のほとんどは糖タンパク質である.特に,アスパラギン残基に結合するアスパラギン結合型糖鎖(N-グリカン)は,小胞体中でのタンパク質品質管理系で重要な役割を担っている.その一方で,タンパク質に結合していない遊離型N-グリカン(FNG)が細胞内あるいは細胞外に存在することは以前より知られていた.FNGsの生成機構ついては明らかになりつつあるが,これらFNGsの生理機能に注目した研究はほとんどなく,筆者らは,分化成長中の植物に遍在するFNGsの機能解析の途上,ハイマンノース型FNGsがタンパク質フォールディング誘導活性を有することを見いだした.本解説では,FNGsの生理機能についての新たな知見を紹介させて頂く.
食品の健康機能性研究は健康食品の開発に資するだけでなく,地域食材のPR材料としても一役買っている.筆者らは宮崎県独自の農産品ブルーベリー葉を健康食品素材として提案しているが,この研究では機能性発見に続いて,抽出,分離,精製をしながら機能性評価にフィードバックを繰り返すことで,特定の分子サイズのプロアントシアニジンが重要であることを示した(1).機能性発見から活性成分の特定という流れは,食品機能性研究においては一般的な戦略であり,解析が進むにつれ現象の理解は分子レベルでの思考になる.筆者らは食品機能性研究者として『食品は生物(せいぶつ)である』という視点に立ち戻ってみることにした.
魚の病気を治す薬をつくり,養殖や飼育に役立てるために,魚の腸内細菌から病原菌を不活性化させる物質を出す細菌を発見することを目的として本研究を行った.キダイの消化管から単離した腸内細菌を用いて,細菌間の種間関係を調べる独自の実験のバクテリアバトルを行った.その結果,ブレビバクテリウム属細菌が他の菌を不活性化する物質を出している可能性が示された.そこで,この細菌の魚の病原菌に対する抗菌活性をディスク拡散法で調べたところ,ブレビバクテリウム属細菌が抗菌活性をもつことが示唆された.