ヒトが食品を咀嚼すると,口腔内で食品から香気成分が放散され,それが呼気流にのって鼻腔内へと達して嗅覚刺激が生じる.この現象は一般に「においが鼻に抜ける」と称するもので,顔の正面にある鼻の孔(前鼻孔または外鼻孔)からクンクンと嗅ぐにおいとは区別されている.しかし,咀嚼中の口腔内では,食品から滲み出してきた味成分による舌への味覚刺激も同時に生じており,実際のところ私達は,鼻に抜けたにおいによる嗅覚刺激と味成分による味覚刺激とを区別して感じ取ってはいない.ここでは,以前本誌45巻のセミナー室
(1) でも取り上げられたことのある,この「鼻に抜けるにおい」に関して,特に咀嚼中に発生する事象を対象とした昨今の研究の取り組みにおいて,人パネルと咀嚼モデル装置を用いる方法について紹介する.研究の成果は,食品開発分野や,食育を含む食生活改善の指標づくりなどに応用されるものと考えられている.
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