化学と生物
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47 巻, 9 号
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巻頭言
今日の話題
解説
  • 基質分子デザインから考える糖加水分解酵素による配糖化反応の効率化戦略
    小林 厚志
    2009 年 47 巻 9 号 p. 605-616
    発行日: 2009/09/01
    公開日: 2011/07/21
    ジャーナル フリー
    糖加水分解酵素は他の糖関連酵素に比べ,入手の容易さ,取り扱いの手軽さなどのメリットがあるため,糖鎖合成触媒として多用されているものの,副生成物の生成や生成物の加水分解反応が起きやすいなど問題点も多い.ここでは,これら欠点を克服するために行なわれたこれまでの研究の経緯を概説するとともに,酵素は基本的に野生型を用い,基質の修飾は最小限にとどめるという,基質ベースで配糖化反応の効率化を目指す手段である,基質エンジニアリングという古くて新しい概念を解説する.
  • 東山 哲也, 奥田 哲弘, 筒井 大貴, 椎名 恵子, 武内 秀憲, 金岡 雅浩, 佐々木 成江
    2009 年 47 巻 9 号 p. 617-623
    発行日: 2009/09/01
    公開日: 2011/07/21
    ジャーナル フリー
    植物の受精が成立するためには,めしべの花柱についた花粉から伸びた花粉管が胚珠にたどり着かなければならない.長年,これには胚珠に由来する花粉管誘引物質が関与すると考えられてきたが,最近,トレニアの胚珠から取り出した助細胞由来のcDNAライブラリーのEST解析から,誘引物質ルアーを同定することに成功した.その発見に至る経緯と,発見のインパクトについて紹介する.
  • 小竹 佐知子
    2009 年 47 巻 9 号 p. 624-629
    発行日: 2009/09/01
    公開日: 2011/07/21
    ジャーナル フリー
    ヒトが食品を咀嚼すると,口腔内で食品から香気成分が放散され,それが呼気流にのって鼻腔内へと達して嗅覚刺激が生じる.この現象は一般に「においが鼻に抜ける」と称するもので,顔の正面にある鼻の孔(前鼻孔または外鼻孔)からクンクンと嗅ぐにおいとは区別されている.しかし,咀嚼中の口腔内では,食品から滲み出してきた味成分による舌への味覚刺激も同時に生じており,実際のところ私達は,鼻に抜けたにおいによる嗅覚刺激と味成分による味覚刺激とを区別して感じ取ってはいない.ここでは,以前本誌45巻のセミナー室(1) でも取り上げられたことのある,この「鼻に抜けるにおい」に関して,特に咀嚼中に発生する事象を対象とした昨今の研究の取り組みにおいて,人パネルと咀嚼モデル装置を用いる方法について紹介する.研究の成果は,食品開発分野や,食育を含む食生活改善の指標づくりなどに応用されるものと考えられている.
  • 大槻 崇, 菊地 博之, 石橋 正己
    2009 年 47 巻 9 号 p. 630-637
    発行日: 2009/09/01
    公開日: 2011/07/21
    ジャーナル フリー
    がん選択的なアポトーシスを誘導するTRAILシグナル伝達経路が,がん治療薬の開発において注目されている.しかし,TRAILに対して耐性をもつがん細胞も存在し,TRAILの有効性の低下が問題となっている.多様性に富んだ化合物の発見が期待される天然物を基盤として行なったTRAILに対して感受性を増強する化合物の探索研究の一端を紹介する.
セミナー室
  • 試験管から細胞内へ
    杤尾 豪人, 猪股 晃介, 白川 昌宏
    2009 年 47 巻 9 号 p. 638-643
    発行日: 2009/09/01
    公開日: 2011/07/21
    ジャーナル フリー
    NMRは,溶液中の生体高分子について,(1)立体構造を決定できる,(2)生体高分子の化学構造・立体構造の変化や相互作用を解析しうる,(3)フォールド・アンフォールド過程を含む分子内部の様々なタイムスケールでの運動性や安定性を定量的に解析できる,といった特徴をもつ.これらはすべてアミノ酸残基・原子レベルでの情報取得が基になっており,生体高分子の物理化学的性質や分子認識の解析のためのきわめて多能な測定法であるといえる.NMRによる立体構造解析の方法論は,成書(1) などを参照していただくとして,本稿前半では,溶液NMRによる生体高分子の物性解析法について最近の動向を概説し,後半部分では,筆者らが提案している細胞内タンパク質の直接解析法について紹介する.
  • 田中 千尋, 泉津 弘佑, 吉見 啓, 清水 公徳, 木村 真, 本山 高幸
    2009 年 47 巻 9 号 p. 644-650
    発行日: 2009/09/01
    公開日: 2011/07/21
    ジャーナル フリー
    病原糸状菌はその生活史において様々な環境ストレスに曝される.具体的には,水分活性(浸透圧)ストレスや宿主の抵抗性反応による酸化ストレスなどが挙げられる.病原糸状菌はこのようなストレスを感知し,それに応答するための情報伝達システムや適応メカニズムを有している.これらのうち,浸透圧応答シグナル伝達系が重要な農薬(殺菌剤)であるジカルボキシイミド系やフェニルピロール系剤の作用機構と深く関わっていることが明らかとなり,本シグナル伝達系が新規殺菌剤のターゲットとしても注目されつつある.さらには浸透圧応答シグナル伝達系が病原性などに関与する例も見いだされている.今回は,我が国の研究者が中心となって明らかにしてきた病原糸状菌の浸透圧応答シグナル伝達系に関する知見を紹介したい.
「化学と生物」文書館
トップランナーに聞く
  • 熊谷 日登美, 西村 敏英
    2009 年 47 巻 9 号 p. 654-658
    発行日: 2009/09/01
    公開日: 2011/07/21
    ジャーナル フリー
    ハウス食品は,日本人にとって最も嗜好性の高い食べものの一つであるカレーの原料「カレールウ」で断トツのシェアを誇る食品のトップメーカーである.カレーのおいしさや健康に関する基礎・応用研究を行ない,バーモントカレー,プライムカレーなどのヒット商品を多数出している.最近では,「ウコンの力」が大ヒットし,香辛料や香辛野菜の健康素材研究にも力を入れている.このように多くのヒット商品を出しているハウス食品には,独自の研究姿勢や人材育成があった.ソマテックセンター所長の田口昌男氏に,ハウス食品の「研究に対する姿勢」や「多彩な人材育成プログラム」などをじっくり語っていただきました.
化学の窓
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