臨床血液
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38 巻, 7 号
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第38回総会
会長講演
臨床研究
  • 鶴沢 正仁, 片野 直之, 青山 真理, 藤本 孟男, 西川 健一, 畑江 芳郎, 三宅 宗典, 川上 清, 古山 輝久, 岩井 朝幸, 堀 ...
    1997 年 38 巻 7 号 p. 561-565
    発行日: 1997年
    公開日: 2009/04/28
    ジャーナル 認証あり
    小児急性リンパ性白血病189例の細胞内DNA量をフローサイトメーターにて測定し,予後との関連を調べた。症例をDIにより3群(A群DI=1.0, B群DI 1.01∼1.15, C群DI≥1.16)にわけ,初診時年齢と白血球数で規定されたリスク治療群別に調べると標準リスク群では最大観察期間10年にて,各DI群のEFSはA群62±6%, B群40±21%, C群87±6%で有意にC群の予後が良好であった(p<0.05)。一方,高リスク群のEFSはA群30±5%, B群33±27%, C群60±19%で,やはりC群の予後が有意に良好であった(p<0.01)。この結果は,初診時年齢と白血球数にDIを加えた3つの予後因子により,毒性の少ない標準治療法で治癒が十分に期待できる症例を,現行の標準リスク群の中より治療前に判別できる可能性を示唆している。
症例
  • —G-CSFのin vitro効果—
    加藤 雅子, 高田 雅史, 中山 道弘, 志越 顕, 梅田 正法, 辻 明良
    1997 年 38 巻 7 号 p. 566-571
    発行日: 1997年
    公開日: 2009/04/28
    ジャーナル 認証あり
    骨髄生着後にみられる易感染性の要因を明らかにするため,同種骨髄移植を受けた29歳,AML例の好中球機能を,生着後1, 3, 6, 12カ月目に測定した。急性GVHDはI度であり,慢性GVHDはみられなかった。移植後,上,下気道感染を数回合併したがいずれも1カ月以内に改善した。生着後早期には3種類の遊走因子に対するchemotaxis, random mobility, 貪食能,O2-生成能および殺菌能はいずれも著明に障害されていた。これらの機能は移植後の経過とともに漸次,改善し,生着12カ月目にはいずれの機能も正常化した。生着6および12カ月目の好中球にin vitroで50 ng/mlのG-CSFを加えると,O2-生成能と殺菌能は明らかに亢進した。以上の成績から骨髄移植後1年までにみられる易感染性の一因として移植後早期の複合した好中球機能障害が関与しているものと思われた。また移植後早期の易感染性や難治性細菌感染症の治療に,好中球殺菌活性を高めるG-CSFの使用が望まれる。
  • 大塚 英一, 大野 栄治, 緒方 正男, 廣田 清司, 樋園 和仁, 菊池 博, 那須 勝, 武野 慎祐, 横山 繁生
    1997 年 38 巻 7 号 p. 572-577
    発行日: 1997年
    公開日: 2009/04/28
    ジャーナル 認証あり
    症例は24歳男性。平成6年6月に高度汎血球減少を指摘され,不応性貧血と診断され,9月9日にHLA一致の兄よりbusulfanとcyclophosphamideによる前処置で骨髄移植を行った。平成7年4月初旬より咳嗽,発熱を認め,胸部X線で両側肺門から下肺野に浸潤影が出現した。病変は進行性で,感染症を示唆する所見が得られず,methylprednisolone大量療法を行い著明に改善した。しかし,5月19日に急激に呼吸困難が出現し,胸部X線で粒状斑状影を全肺野に認め呼吸不全にて同日死亡した。剖検にて,全肺野にわたり新鮮な出血を認め,組織学的にも肺胞内出血および肺胞壁の肥厚,浮腫,炎症細胞浸潤を認めた。遅発性の特発性間質性肺炎に伴う肺組織傷害,進行性の血小板減少に何らかの要因が加わり,急激なびまん性肺胞出血を来したものと考えられ,留意すべき合併症の1つであり,有効な治療法の確立が望まれる。
  • 近藤 哲哉, 藤崎 智明, 権藤 久司, 大塚 輝久, 竹中 克斗, 谷本 一樹, 仁保 喜之
    1997 年 38 巻 7 号 p. 578-581
    発行日: 1997年
    公開日: 2009/04/28
    ジャーナル 認証あり
    悪性リンパ腫に対し通常の化学療法を行った後,著明なCMV抗原血症を認めCMV感染を早期診断し,救命できた1例を報告する。症例は65歳男性。T細胞性非Hodgkinリンパ腫の白血化に対する強力な化学療法からの造血回復後に不明熱と軽度の肝機能障害と胸部異常陰影を呈した。ペルオキシダーゼでラベルしたモノクローナル抗体HRP-C7を使用した直接免疫ペルオキシダーゼ法によりCMV抗原血症の分析および特徴的臨床所見から,活動性のCMV感染と診断された。ガンシクロビルとγ-グロブリンによる治療の後,CMV抗原陽性細胞の減少とともに症状,検査所見が改善した。CMV感染の迅速な診断には,CMV抗原を用いた分析が有用であると考えられた。
  • 大西 俊介, 小田 寿, 仲屋 裕樹, 畠山 茂樹, 熊谷 研一, 崔 公賢, 小林 隆彦, 神谷 喜一郎, 宮城島 拓人, 新保 和賢, ...
    1997 年 38 巻 7 号 p. 582-586
    発行日: 1997年
    公開日: 2009/04/28
    ジャーナル 認証あり
    症例は67歳男性。多発性筋炎(PM)と診断され,プレドニンを投与されていた。その後鼻閉が出現し,CTにて上咽頭に充実性の腫瘍を認めた。同部の生検にて非Hodgkin悪性リンパ腫(diffuse medium, B cell type)と診断された。骨髄浸潤を認め臨床病期IVであった。CHOP (cyclophosphamide, adriamycin, vincristine, prednisolone)療法を6コース施行し,完全寛解を得たが,1カ月後に中枢神経浸潤を認め,嚥下性肺炎を併発し死亡した。多発性筋炎/皮膚筋炎(PM/DM)は悪性腫瘍との合併頻度が高いことが知られているが,悪性リンパ腫との合併は極めて稀であるため報告した。
  • 新津 望, 中山 道弘, 加藤 雅子, 梅田 正法
    1997 年 38 巻 7 号 p. 587-592
    発行日: 1997年
    公開日: 2009/04/28
    ジャーナル 認証あり
    非Hodgkinリンパ腫(non-Hodgkin's lymphoma; NHL)に自己免疫性溶血性貧血を合併することはまれではない。今回われわれは,NHLに寒冷凝集素症を合併した2症例を経験した。症例1: 38歳,男性。頚部リンパ節生検により瀰漫性中細胞型NHLと診断。また,Hb 7.6 g/dl, 直接・間接クームス陽性,寒冷凝集素32,768倍,血清ハプトグロビン10 mg/dl以下,IgM 890 mg/dl(I特異性)より寒冷凝集素症と考えられた。COP-BLAM療法により完全寛解(CR)となり,寒冷凝集素の低下および貧血の改善を認めた。症例2: 68歳,女性。鼠径部リンパ節生検にて濾胞性混合型NHLと診断。また,Hb 8.2 g/dl, 直接・間接クームス陽性,寒冷凝集素51,200倍,IgM 920 mg/dl(I特異性)より寒冷凝集素症の合併と考え,Biweekly COP-BLAM療法を施行。CRとなり寒冷凝集素の低下,貧血の改善を認めた。2例ともNHLの寛解と共に寒冷凝集素が低下していることより,リンパ腫による抗体産生系の異常により赤血球自己抗体の産生が起こったと考えられた。
  • 近藤 春樹, 鈴木 秀明
    1997 年 38 巻 7 号 p. 593-598
    発行日: 1997年
    公開日: 2009/04/28
    ジャーナル 認証あり
    68歳女性が右頸部リンパ節腫脹で入院。貧血,白血球減少を示したが血小板数は正常。血清検査は多クローン性高ガンマグロブリン血症を示し,マイクロゾームテスト,サイロイドテスト,抗サイログロブリン抗体が陽性。リンパ節生検組織像はB細胞性びまん性大細胞性リンパ腫(ML)であり,甲状腺自己抗体陽性MLと診断。骨髄は過形成でpseudo-Pelger等核形態異常な好中球,小型巨核球,巨赤芽球様変化を示す赤芽球などが見られ,環状鉄芽球が60%に認められたが,芽球3.2%と正常。この骨髄像より骨髄異形成症候群(MDS, RARS)と診断。放射線,CHOP-Bleo療法により一時寛解が得られたが,白血病移行なしに診断2.5年後リンパ腫再発で死亡。これら三病態の発症機転は不明だが,無治療で発症しているので治療薬が個々の病因となったとは考えられない。多能幹細胞のクローン選択を起こす初期障害が骨髄系にRARSを,リンパ系に免疫異常をおこし,サブクローン選択を起こす続発障害により分化能などが消失し,リンパ腫が発症したとも考えられる。
  • 島野 俊一, 村田 直哉, 土屋 純
    1997 年 38 巻 7 号 p. 599-603
    発行日: 1997年
    公開日: 2009/04/28
    ジャーナル 認証あり
    症例は33歳,男性。1985年,著明な好中球減少症(55/μl)で入院した。精査の結果,自己免疫性好中球減少症は否定された。免疫グロブリン値は正常であったが,CD4+ Tリンパ球は128/μl, CD4/CD8も0.1と低下していた。CD4+ Tリンパ球数は1993年1月までの間に9回測定し,5回で同数値が300/μl以下であった。HIV (type 1とtype 2)は陰性であった。1987年EBウイルス感染症に罹患し,VCA-IgGとEA-IgGの値が約半年間高値を示した。1994年2月,両側鼻腔のポリープ様腫瘍の摘出術を受け,病理診断でBurkittリンパ腫と診断された。EBウイルスのEBER Iを用いたin situ hybridizationでは腫瘍細胞に一致して多数の黒褐色陽性像を認めた。COPBLAM IIIの変法で治療したが,同年6月死亡した。剖検でほぼ全身の諸臓器に浸潤した悪性リンパ腫細胞を認めた。患者は何らかの原因でidiopathic CD4+ T-lymphocytopeniaとなりEBウイルス感染症を併発し,82カ月後にBurkittリンパ腫を発症したものと推定した。
  • 吉田 勝彦, 会田 かやの, 堀部 尚弘, 柏村 琢也, 半田 敦史, 松田 晃, 室橋 郁生, 陣内 逸郎, 猪野 裕英, 別所 正美, ...
    1997 年 38 巻 7 号 p. 604-609
    発行日: 1997年
    公開日: 2009/04/28
    ジャーナル 認証あり
    症例は51歳,男性。1993年12月,全身倦怠感出現。WBC 49,000/μl,(形質細胞36%, 単球35%),Hb 14.5 g/dl, PIt 13.7万/μl。骨髄は過形成で,形質細胞48.7%, 単球22.4%を認めた。末梢血形質細胞はCD38, PCA-1陽性であった。血清Ca 14.4 mg/dl, IgA 2,337 mg/dl, M-CSF 2.7 ng/mlと上昇。免疫電気泳動で,尿Bence Jones蛋白はλ型,血清M蛋白はIgA, λ型であった。免疫グロブリンH鎖,L鎖の遺伝子再構成を認めた。以上より,単球増加症を合併した形質細胞性白血病(IgA, λ型)と診断。IFN-αを含めた多剤併用療法により完全寛解を得たが,1995年2月髄膜再発1996年4月死亡。単球増加の原因は骨髄腫細胞あるいは,活性化B細胞が産生したM-CSFによる単球産生の亢進によるものと考えた。
  • 森本 克, 鹿田 昌宏, 矢部 普正, 矢部 みはる, 服部 欽哉, 清水 崇史, 猪口 貞樹, 辻 公美, 岩崎 克彦, 番場 正博, 加 ...
    1997 年 38 巻 7 号 p. 610-615
    発行日: 1997年
    公開日: 2009/04/28
    ジャーナル 認証あり
    Diamond-Blackfan症候群の5歳女児に対してHLA一致同胞の臍帯血移植を施行した。
    患児は出生直後より顔色蒼白を認めDiamond-Blackfan症候群と診断し,ステロイド,抗リンパ球グロブリン,エリスロポエチンなどの治療を行ったがまったく反応せず,3∼4週ごとの赤血球輸血を必要としていた。患児が4歳時に同胞(弟)が出生し,臍帯血を98 ml採取した。HLAが一致したため臍帯血細胞移植を施行した。胸腹部照射(TAI; 8 Gy), シクロフォスファミド(CY; 50 mg/kg×4), 抗胸腺細胞グロブリン(ATG; 2.5 mg/kg×4)を前処置とし,4.14×107/kgの臍帯血単核細胞を移植した。白血球,網状赤血球の回復はすみやかであったが,血小板回復は遅延した。day+9より皮疹を認め急性GVHDI度と診断し,PSL投与により改善した。骨髄染色体検査ではドナー由来である46 XYを示し生着を確認した。臍帯血移植は造血幹細胞移植の新たな方法となるものと思われる。
  • 吉本 寿美, 八木 啓子, 井上 雅美, 岡村 隆行, 安井 昌博, 茶山 公祐, 中野 崇秀, 土屋 廣幸, 河 敬世
    1997 年 38 巻 7 号 p. 616-621
    発行日: 1997年
    公開日: 2009/04/28
    ジャーナル 認証あり
    造血幹細胞移植後にタクロリムスが原因で白質脳症をおこしたと思われる,モノソミー7を有するMDSの小児例を経験したので報告する。TBIを含んだハイリスクプロトコールにて前処置を行い,HLAミスマッチの父親から採取したCD34陽性細胞を移植した。生着は速やかであり,皮膚のみに出現したGVHDに対してはステロイドパルス療法で鎮静化した。day 27より情緒不安定になりイライラや不眠などの症状がみられday 37に右顔面のみの痙攣を起こした。髄液は異常なく,CTでは明らかな出血や梗塞部位は検出されなかったが,白質脳症の所見が認められた。タクロリムスを中止し一旦は精神症状が改善したが,シクロスポリンの投与で再度同様の症状が認められた。その後ステロイド剤以外の免疫抑制剤を中止したこともあり,GVHDと真菌感染症を併発しday 104に死亡した。
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