臨床血液
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43 巻, 10 号
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総説
臨床研究
  • 高田 覚, 岡本 真一郎, 坂巻 壽, 丸田 壱郎, 金森 平和, 西村 美樹, 青墳 信之, 岸 賢治, 宮脇 修一
    2002 年 43 巻 10 号 p. 904-910
    発行日: 2002年
    公開日: 2009/07/28
    ジャーナル 認証あり
    高齢者に対する同種造血幹細胞移植の現状と治療成績を検討するため,関東造血幹細胞移植共同研究会参加8施設において,年齢50歳から65歳までの患者に対して施行された65例の骨髄破壊的同種造血幹細胞移植の成績をretrospectiveに解析した。年齢の中央値は52 (50-65)歳で,症例の38%は何らかの合併症もしくは臓器障害を有しており,大多数の症例(95%)は造血器腫瘍であった。移植後100日以内の早期死亡は7例であった。II度以上の急性GVHDは,65例中29例(44.6%)に発症した。移植後2年の累積生存率は,全体で50.1%であり,死因は感染症・GVHD・原疾患の増悪の順で多かった。また,54歳以下の症例に関しては,移植後2年の累積生存率は56.3%で,比較的良好な成績であり,この年齢までは骨髄破壊的同種造血幹細胞移植が適応となると思われた。
  • —単一施設における12症例の検討—
    宮田 明, 保田 雪子, 藤井 総一郎, 菊地 武志
    2002 年 43 巻 10 号 p. 911-917
    発行日: 2002年
    公開日: 2009/07/28
    ジャーナル 認証あり
    輸血依存性の骨髄異形成症候群(MDS)患者12例(RA9例,RAEB3例)に免疫抑制療法を行った。8例にcyclosporin A (CyA), 3例にCyAとantithymocyte globulin (ATG), 1例にATGを投与し,顆粒球コロニー刺激因子(G-CSF)を10例で併用した。うち8名(CyA投与4例,ATG/CyA投与3例,ATG投与1例)が輸血非依存性となり,Hbは2例において,血小板数は1例において完全な回復を見た。RAでは9例中8例で奏効したが,RAEB3例は全例無効であった。CyAに反応した症例は薬剤依存性の経過をたどった。治療後,有効例6例でPNH顆粒球(CD11b+CD55-CD59-)を検索し2例で陽性であった。検索し得た有効7症例中5例がHLA-DR15を有しており,免疫抑制療法の有効性との関連が想定された。今回の検討では,(1) 診断より治療開始までの期間が短い,(2) RAである,(3) IPSS Int-1である,(4) 染色体複雑核型を伴わない,(5) ATGが投与されている,症例で有効例が多い傾向にあった。
症例
  • 齋藤 孝, 齋木 実, 井上 満, 石塚 光, 藏 良政, 山崎 哲男, 伊藤 武善, 沢田 海彦, 堀江 孝至
    2002 年 43 巻 10 号 p. 918-923
    発行日: 2002年
    公開日: 2009/07/28
    ジャーナル 認証あり
    症例は70歳,男性。貧血および血小板減少の精査目的にて入院。理学的所見では,肝脾腫を認め,皮疹や神経学的異常は認めなかった。白血球数は10,900/μlで,末梢血液像上,3.5%の芽球と58.5%の好酸球を認めた。顆粒球分画の細胞はCD13, CD33, CD25, HLA-DRが陽性,骨髄穿刺はドライタップ,骨髄生検で骨髄線維症を認めた。染色体検査ではi(17q)を認め,RARαプローブを用いた末梢血有核細胞の間期核FISHでは62%の細胞が3個のRARαのシグナルを認めた。BCR/ABLは認めなかった。二次性の好酸球増多症は否定的で,本例を慢性好酸球性白血病と診断した。好酸球増多に伴う全身臓器症状は認めなかったが,細胞形態,CD25陽性,sIL-2R高値,ECP高値により好酸球の活性化が示唆された。慢性好酸球性白血病として診断された症例が少ないため,好酸球の活性化が証明された貴重な症例と考えられた。
  • 高張 大亮, 松永 卓也, 藤見 章仁, 菊池 智樹, 釋 亮也, 田中 育太, 竹本 尚史, 秋山 剛英, 佐藤 勉, 照井 健, 古川 ...
    2002 年 43 巻 10 号 p. 924-930
    発行日: 2002年
    公開日: 2009/07/28
    ジャーナル 認証あり
    骨髄に線維化を伴う慢性期の慢性骨髄性白血病の2症例に対して,CMLの新規治療薬であるimatinib mesylateを投与した。Imatinib mesylateの投与後,両症例とも血液学的完全寛解が得られるとともに,骨髄の線維化も著明に改善した。両症例の骨髄線維化には,著増していた巨核球からのTGF-βの過剰産生が関与していることが推測された。Imatinib mesylateは,巨核球を減少させることを介して骨髄中のTGF-β濃度を低下させ,骨髄線維化を改善したことが推測された。
  • —血中サイトカインの変動の検討—
    森口 直彦, 佐藤 和歌子, 宮田 曠, 吉岡 加寿夫
    2002 年 43 巻 10 号 p. 931-936
    発行日: 2002年
    公開日: 2009/07/28
    ジャーナル 認証あり
    SLEにhemophagocytic syndrome (HPS)を合併した症例について,血中サイトカインの変動を検討した。症例は15歳の男児で,1998年12月に10日以上続く発熱,両側の耳下腺腫脹のために当科に入院した。入院後小脳失調,意識障害も出現し,血液検査で白血球・血小板減少,肝機能障害,高LDH血症,高フェリチン血症,高サイトカイン血症を認め,骨髄像で多数の血球貪食像がみられた。さらに,抗核抗体陽性,血清補体価低下,蛋白尿,心外膜炎の所見から,HPSを合併したSLEと診断した。メチルプレドニゾロンのパルス療法,プレドニゾロンの投与,さらにシクロスポリンの併用を行った結果,上記臨床症状は軽快したが,以後も血中IL-6, IL-1βの変動と一致して骨髄像での血球貪食像は反復した。今回の検討から,これらの炎症性サイトカインの過剰産生が自己免疫疾患に伴うHPSの発症の機序に関与している可能性が示唆された。
  • 秋山 暢, 大和田 啓, 梶原 耕一, 大竹 浩之, 羽山 弥亨, 郡 美佳, 平 美也子, 新津 望, 堀江 良一, 東原 正明
    2002 年 43 巻 10 号 p. 937-942
    発行日: 2002年
    公開日: 2009/07/28
    ジャーナル 認証あり
    症例は,59歳男性。慢性骨髄単球性白血病(CMML)と診断されて約半年を経過した後,下血により大腸顆粒球肉腫が発見された。内視鏡・注腸造影所見では,横行結腸に約半周にわたる潰瘍を伴った隆起性病変が認められ,潰瘍底の生検にて各分化段階の顆粒球系細胞のびまん性浸潤が認められた。血小板輸血によっても十分な血小板数上昇が得られず,外科的摘出は困難であった。発見より5カ月後にrefractory anemia with excess of blast in transformation (RAEB-T)に進展し,低用量ara-C+aclarubicinの投与を行った。末梢血芽球数は減少したが,顆粒球肉腫は増大した。10カ月後に急性骨髄性白血病へ進展し,腸閉塞,肺炎を併発して死亡した。現在までに9例の大腸顆粒球肉腫が報告されているが,CMMLに合併したものはなく,本例はCMMLに合併した大腸顆粒球肉腫に関する第1報である。
  • 吉田 勝彦, 茅野 秀一, 秋葉 美樹, 岸本 国也, 高橋 直樹, 須賀原 裕一, 川井 信孝, 松田 晃, 平嶋 邦猛, 鈴木 利哉, ...
    2002 年 43 巻 10 号 p. 943-948
    発行日: 2002年
    公開日: 2009/07/28
    ジャーナル 認証あり
    症例は61歳の男性。2000年10月,発熱のため近医受診。芽球様細胞を含む白血球増加と血小板減少を認めたため,11月に当科紹介入院。身体所見では軽度の脾腫を認めたが,リンパ節腫脹は認めなかった。白血球数は10,520/μlと増加し,芽球様細胞が45.0%を占め,血小板数は5.1×104lと減少していた。骨髄でも芽球様細胞を82.0%認め,CD5, 10, 13, 19, 20が陽性であった。骨髄クロット標本の免疫組織化学ではCD5が陽性で,TdT, CD23, cyclin D1はいずれも陰性であった。以上より,CD5陽性びまん性大細胞型B細胞リンパ腫(DLBCL)の白血化と診断した。2コースのCHOP療法で完全寛解を得たが,絞扼性イレウスのため3カ月間治療を中断した。第3コースのCHOP療法後,再発し死亡した。CD5陽性DLBCLは高齢発症で,節外性病変が多く,予後不良であるという特徴をもち,適切な治療戦略の確立が望まれる疾患単位と考えられる。
  • 松原 悦子, 薬師神 芳洋, 野村 哲彦, 岩政 喜久恵, 成見 弘, 酒井 郁也, 安川 正貴, 藤田 繁, 羽藤 高明, 大島 孝一, ...
    2002 年 43 巻 10 号 p. 949-953
    発行日: 2002年
    公開日: 2009/07/28
    ジャーナル 認証あり
    症例は24歳男性。1992年に慢性腎不全と診断され,1999年より透析療法が導入された。2000年8月に母親からのABO不適合生体腎移植と脾摘が施行され,以後FK 506, mPSL, MMFによる免疫抑制療法が続けられていた。2001年4月左頸部に3 cm大のリンパ節腫脹を自覚し,組織検査で悪性リンパ腫と診断され当科へ紹介入院した。組織はCD20陽性のdiffuse large B-cell lymphomaであり,EBV-LMP陽性,EBNA-2陽性からEBV関連posttransplant lymphoproliferative disease (PTLD)と診断し,免疫抑制剤の減量,rituximabの投与により加療を行った。本症例においては,血液型不適合移植のため強力な免疫抑制療法が行われたこと,移植前においてレシピエントがEBV seronegativeであったことが発症の要因と考えられた。
  • 三好 拓児, 大月 哲也, 大嶺 謙, 桐戸 敬太, 永井 正, 和泉 透, 小松 則夫, 窓岩 清治, 三室 淳, 坂田 洋一, 小澤 敬 ...
    2002 年 43 巻 10 号 p. 954-959
    発行日: 2002年
    公開日: 2009/07/28
    ジャーナル 認証あり
    症例:71歳男性 主訴:微熱・出血傾向。初診時WBC 10,400/μl (blast+promyelocyte 90%), DICの合併も認め急性前骨髄球性白血病と診断した。All-trans retinoic acid (ATRA)に化学療法を併用して治療開始。第24病日にWBC 31,000/μl(好中球98%)と急増し,同日急性心筋梗塞発症,その数時間後に急激な意識レベルの低下と両側Babinski反射の出現を認めMRIにて右レンズ核梗塞と診断。Retinoic acid syndrome (RAS)の合併症と判断しATRAを中止しステロイドパルスを開始した。WBCは急速に低下し意識障害もその後回復した。多発性梗塞発症時の血清中IL-6およびPAI-Iの上昇が確認された。本症例においてはATRAによりRASが引き起こされ,それによる血管内皮障害が多発性梗塞をもたらした可能性があると考えられた。
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