臨床血液
Online ISSN : 1882-0824
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52 巻, 7 号
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Picture in Clinical Hematology No.48
特集:分子標的治療薬による血液疾患診療の現状と展望(その1)
第71回日本血液学会学術集会
学会奨励賞受賞論文
第72回日本血液学会学術集会
シンポジウム2
シンポジウム3
症例報告
  • 下地 園子, 瀧内 曜子, 丸岡 隼人, 井上 大地, 木村 隆治, 森 美奈子, 永井 雄也, 戸上 勝仁, 田端 淑恵, 倉田 雅之, ...
    2011 年 52 巻 7 号 p. 535-539
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/08/06
    ジャーナル 認証あり
    症例は73歳の女性。シェーグレン症候群(SjS)の経過中に自己免疫性好中球減少症(AIN)を発症し,大腸癌発症を期に自己免疫性血小板減少症を併発し,さらにこれらが治療抵抗性無顆粒球症および高度血小板減少症に進展した。AIN発症時より末梢血中に多クローン性のT細胞性顆粒リンパ球が10%程度みられた。骨髄細胞の異形性は認めず,骨髄単核球による造血前駆細胞アッセイでは顆粒球および赤芽球のコロニー形成はほぼ正常であった。無顆粒球症および血小板減少に対しprednisoloneの内服,filgrastim, 大量ガンマグロブリン,cyclophosphamide内服,danazol, cyclosporine A内服,rituximabによる治療を順次行ったが顆粒球,血小板はいずれも一過性の軽度上昇を示したのみであった。さらに,治療中に,温式自己免疫性溶血性貧血も併発した。患者は約5ヶ月の経過で肺炎のため死亡した。本例はSjSを背景に顆粒球,血小板,赤血球に対する自己免疫現象が同時に出現し,特に無顆粒球症に進展したという極めて特異な症例である。
  • 野田 昌昭, 三好 夏季, 高田 晋一, 樽谷 美保, 坂井 晃
    2011 年 52 巻 7 号 p. 540-545
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/08/06
    ジャーナル 認証あり
    異なった組織型が異なる臓器に合併するdiscordant lymphomaは稀な病態であるが,われわれはMALTリンパ腫と濾胞性リンパ腫の合併例を2症例経験した。症例1は53歳女性で,左耳下腺部のMALTリンパ腫と十二指腸・小腸の濾胞性リンパ腫を認めた。症例2は38歳女性で,小腸・大腸のMALTリンパ腫と十二指腸・骨髄の濾胞性リンパ腫が確認された。近年,十二指腸原発の濾胞性リンパ腫は病態的にMALTリンパ腫に近い性格を有していることが指摘されており,両症例とも十二指腸に濾胞性リンパ腫を認めている点が注目される。MALTリンパ腫と十二指腸原発の濾胞性リンパ腫との間に共通の病態が存在する可能性が示唆される貴重な症例と考えられる。
  • 今川 潤, 原田 結花, 吉田 徹巳, 樽谷 美保, 木村 昭郎, 松元 加奈, 森田 邦彦, 原田 浩徳
    2011 年 52 巻 7 号 p. 546-550
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/08/06
    ジャーナル 認証あり
    症例は77歳,男性。咳嗽,息切れのため他院入院。好酸球増多,肺野網状浸潤影を認めたことからステロイドパルス療法を受けたが,好酸球増多が持続するため当科へ転院。骨髄の異常好酸球増多,染色体4q12欠失,FIP1L1-PDGFRA融合遺伝子を確認し,慢性好酸球性白血病(CEL)と診断した。低用量イマチニブ投与を開始したが,進行性の浮腫を生じたため中止。少量ダサチニブ20 mg/日で治療再開したところ浮腫は改善し,約3カ月の継続投与後に分子遺伝学的寛解を達成した。本症例は,CELに低用量のダサチニブを使用し,有効であった最初の報告である。ダサチニブ血中濃度はトラフ6.1 nM, ほぼピーク値(Cmax)と考えられる内服後1時間値は55.3 nMであり,in vitroの50%細胞増殖阻止濃度をはるかに超えていた。高齢患者は薬剤不耐容となりやすく,標準量投与が困難な場合が多いため,薬剤血中濃度の評価が効果判定や有害事象の軽減に有用と考えられた。
  • 新井 ほのか, 牧 和宏, 田所 治朗, 仲村 祐子, 佐々木 光, 三谷 絹子
    2011 年 52 巻 7 号 p. 551-555
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/08/06
    ジャーナル 認証あり
    関節リウマチ(rheumatoid arthritis; RA)患者は,一般人口よりも悪性リンパ腫(malignant lymphoma; ML)の発症率が高いことが知られている。メトトレキサートなどの免疫抑制剤使用中に発症する例が多いが,免疫抑制剤の中止により自然退縮する症例も一部に認められ,特にEBV陽性例で高頻度に自然退縮を示す。今回我々はRA加療中に発症したextranodal NK/T-cell lymphoma, nasal typeの症例を経験した。症例はEpstein-Barr virus (EBV)陽性であったが,使用中のメトトレキサート及びエタネルセプト中止後も腫瘍は退縮せず,放射線療法と化学療法を施行し完全奏功に至った。RAに合併したMLはB細胞性が過半数を占めており,NK細胞性は非常に稀であり,更なる症例の集積が必要と考えられる。
  • 相本 瑞樹, 山根 孝久, 一居 充, 森 克仁, 相本 蘭, 井上 恵里, 康 秀男, 中根 孝彦, 武岡 康信, 中前 美佳, 小坂 さ ...
    2011 年 52 巻 7 号 p. 556-562
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/08/06
    ジャーナル 認証あり
    症例は38歳男性。急性リンパ性白血病(第一寛解期)に対して骨髄破壊的非血縁者間骨髄移植を行った。生着確認後,移植後第32病日に上部消化管の急性移植片対宿主病を発症し,第39病日よりステロイド及びmycophenolate mofetil投与を開始した。症状が改善したため,免疫抑制剤を漸減,第421病日に全ての免疫抑制剤を中止した。第491病日にネフローゼ症候群を発症,腎生検にて膜性腎症と診断した。この間,慢性移植片対宿主病を疑わせる症状,臨床検査値異常は認められなかった。第518病日よりステロイドの投与を開始したところ,尿蛋白は著明に改善した。同種造血幹細胞移植後のネフローゼ症候群は非常に稀であり,本症例のように慢性移植片対宿主病を伴わない場合は特発性ネフローゼ症候群との鑑別は困難である。
  • 三橋 健次郎, 志関 雅幸, 石山 みどり, 近藤 年昭, 風間 啓至, 安並 毅, 岡村 隆光, 吉永 健太郎, 森 直樹, 寺村 正尚, ...
    2011 年 52 巻 7 号 p. 563-569
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/08/06
    ジャーナル 認証あり
    症例は70歳男性。2009年10月,発熱,全身リンパ節腫大,低酸素血症を呈し緊急入院した。白血球増多,貧血,血小板減少,高ガンマグロブリン血症を認め,末梢血および骨髄に形質細胞が多数出現し,形質細胞性白血病を疑わせた。しかし,フローサイトメトリー解析により形質細胞は多クローン性の増加パターンを示し,免疫固定法で血清M蛋白も同定されなかった。また,可溶性IL-2受容体高値,血清IL-6およびIL-10高値や血中EBV-DNAコピー数の増加を伴っていた。右鼠径部よりリンパ節生検を施行し,病理所見よりAITLと診断した(TCR-Cβ1遺伝子再構成あり)。CHOP療法を施行し,発熱,リンパ節腫大,血小板減少,高ガンマグロブリン血症,形質細胞増加などすべての臨床所見が改善した。多クローン性形質細胞増生を来たした明確な機序は不明であるが,本症例ではIL-6およびIL-10の高値が病態形成の一因と考えられた。
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