臨床血液
Online ISSN : 1882-0824
Print ISSN : 0485-1439
ISSN-L : 0485-1439
57 巻, 1 号
選択された号の論文の14件中1~14を表示しています
Picture in Clinical Hematology
総説
  • 佐藤 亜依, 山川 奈津子, 幸谷 愛
    2016 年 57 巻 1 号 p. 3-8
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/02/09
    ジャーナル 認証あり
    Epstein-Barr virus (EBV)は成人の9割が既感染を示すγ-ヘルペスウイルス亜科に属するウイルスであり,腫瘍ウイルスとしても知られている。血液分野ではBurkittリンパ腫(BL)・節外性NK/T細胞リンパ腫・Hodgkinリンパ腫(HL)・移植後リンパ増殖性疾患(post-transplant lymphoproliferative disorders, PTLD)・免疫不全関連リンパ増殖症・慢性炎症を伴ったびまん性大細胞型B細胞リンパ腫(DLBCL)などのリンパ系悪性腫瘍の発生に関わるとされている。その中の一つ,加齢性EBV陽性びまん性大細胞型B細胞リンパ腫(加齢性EBV陽性DLBCL)は,本邦より提唱され,DLBCLの新しい亜型としてWHO分類に分類されたリンパ腫のカテゴリーであり,近年各国より知見が集まってきている。本総説ではR-CHOP時代の加齢性EBV陽性DLBCLの臨床的検討に加え,他のEBV関連B細胞リンパ腫について述べる。さらにEBV陽性B細胞リンパ腫疾患に対する新規治療として,抗PD-1抗体の可能性について紹介し,最後に,EBV陽性B細胞リンパ腫における腫瘍由来分泌性小分子RNAについて簡単に自身の研究成果に触れる。
症例報告
  • 葛城 武文, 岩重 淳司, 塚田 順一
    2016 年 57 巻 1 号 p. 9-14
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/02/09
    ジャーナル 認証あり
    近年,methotrexate (MTX)関連リンパ増殖異常症が報告されている。今回,MTX長期投与にて発症した免疫不全関連Burkittリンパ腫を報告する。症例は61歳で,関節リウマチに対して10年間MTX投与中,顎下リンパ節の急速な腫大を主訴とした。骨髄を含め多臓器に腫瘍を認め,血中EBウイルスDNAは著増していた。腫瘍は中型細胞のびまん性増殖で,CD10・CD20・BCL6が陽性,BCL2・MUM1・TDT・CD34陰性で,MIB-1はほぼ100%陽性であった。腫瘍細胞は8番染色体q24異常を中心としたt(8;14)転座を有し,c-MYC/IgH融合シグナル・EBERを認めた。MTX中止とprednisolone (PSL)投与にて血清乳酸脱水素酵素は半減した。全身状態不良のため減量したCHOP-likeレジメン3コースで肺梗塞・くも膜下出血を合併し,以後の化学療法を断念した。しかし,寛解となり6年間無治療で経過良好である。
  • 大山 亘, 山岡 正慶, 横井 健太郎, 岩橋 めぐみ, 稲毛 由佳, 有廣 誠二, 小金井 一隆, 杉田 昭, 井田 博幸, 秋山 政晴
    2016 年 57 巻 1 号 p. 15-19
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/02/09
    ジャーナル 認証あり
    哺乳不良,活気低下,発達遅滞を主訴とする11カ月男児。完全母乳栄養で,離乳食は摂取不良であった。血液検査で汎血球減少と血清ビタミンB12低下,さらに赤血球の大小不同と変形赤血球の増加を認めた。骨髄は正形成で,白血病細胞は認めず,形態異常を伴う赤芽球系細胞の増加を認めた。乳児ビタミンB12欠乏性巨赤芽球性貧血と診断し,ビタミンB12投与により症状は改善した。母親の精査でクローン病が判明したことから,小腸末端でビタミンB12の吸収が阻害され,胎児期から乳児期にわたり児への供給不足が生じたと考えられた。診断時に認めた大脳皮質の萎縮は,1歳10カ月時のMRIで改善したが,3歳時の発達検査では軽度発達遅滞を認めている。本症の乳児期発症は貧血以外に活気低下,発達遅滞などの非特異的な症状を呈するため診断に難渋するが,神経学的後遺症を残さないためにも迅速な診断が求められる。
  • 磯部 玲, 三石 俊美, 表 真由子, 森 勇一, 井田 耕一, 小口 治, 仲井 育子, 小口 正彦
    2016 年 57 巻 1 号 p. 20-24
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/02/09
    ジャーナル 認証あり
    症例は50歳女性。婦人科がん検診で膣壁腫瘤を指摘され,当院を紹介された。造影CT・MRIで,膣壁は高度に肥厚し96 mmに達する腫瘤を形成していた。PET/CTでも同部位に一致して集積を認めたが,他部位には集積を認めなかった。経膣壁的腫瘤生検にて末梢性T細胞リンパ腫,非特定型(PTCL-NOS)と診断した。内視鏡検査では膀胱,直腸への浸潤は確認されなかったが,MRIでは直腸壁への浸潤が示唆された。Biweekly THP-COP療法6コース施行後病変は消失し,局所放射線照射(39.6 Gy)が追加された。膣原発のPTCL-NOSは稀であり報告する。
  • 中川 紀温, 山﨑 宏人, 山下 剛史, 近藤 恭夫, 中尾 眞二
    2016 年 57 巻 1 号 p. 25-30
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/02/09
    ジャーナル 認証あり
    ランゲルハンス細胞肉腫(Langerhans cell sarcoma, LCS)は,ランゲルハンス細胞由来の極めて稀な高悪性度造血器腫瘍である。多臓器病変を伴いやすいものの,中枢神経浸潤例の報告は少ない。今回我々は,化学療法中に新たに出現した中枢神経病変に対し,全脳照射が奏効したLCS例を経験した。症例は60歳女性。全身性のリンパ節腫大を認め,頸部リンパ節生検でLCSと診断された。ESHAP療法2コース後に病変はいずれも縮小した。しかし,FDG-PET/CT検査で右側頭葉に新たなFDG集積が出現し,意識障害が徐々に進行した。脳炎は否定的であったことから,LCSの中枢神経病変と診断し37.5 Gyの全脳照射を施行したところ,意識障害は改善し頭部MRI検査でも病変は不明瞭化した。本例の経験から,LCSの中枢神経病変は,たとえ化学療法に抵抗性であっても放射線照射が有効であることが示唆された。
  • 山口 綾香, 多賀 敦子, 亀井 沙織, 和田 美智子, 藤田 陽太, 和田 英夫, 藤田 浩平
    2016 年 57 巻 1 号 p. 31-35
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/02/09
    ジャーナル 認証あり
    症例は30歳。1回目の妊娠・分娩は問題なかったが,その後2回は広範な絨毛膜下血腫を伴う流産の既往があり,今回の4回目の妊娠でも妊娠6週より性器出血と絨毛膜下血腫を認めていた。妊娠初期のフィブリノゲン活性値が125 mg/dl, 妊娠25週でのフィブリノゲンは活性値で249 mg/dl, 抗原値で320 mg/dlであり,活性/抗原比が低下し,フィブリノゲン機能異常症と診断した。遺伝子検査では,フィブリノゲン機能異常症をきたす遺伝子変異は同定できなかったが,フィブリノゲンAαThr312Ala遺伝子多型(A/G)のGG型を保有することが判明した。治療は安静およびtranexamic acidの投与を妊娠15週まで行い,妊娠経過とともにフィブリノゲン活性値は上昇し,血腫は軽快したが,妊娠16週から凝固能亢進傾向となり,ヘパリンカルシウム投与を開始した。妊娠36週に出血量600 gで経膣分娩した。フィブリノゲン機能異常症合併妊娠では血液凝固系を厳密にコントロールすることで妊娠分娩が可能となる。
  • 石川 哲也, 清水 啓明, 武井 寿史, 小屋 紘子, 入内島 裕乃, 星野 匠臣, 平戸 純子, 小島 勝, 半田 寛, 野島 美久, 村 ...
    2016 年 57 巻 1 号 p. 36-40
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/02/09
    ジャーナル 認証あり
    自家末梢血造血幹細胞移植(ASCT)後にT細胞性monomorphic移植後リンパ増殖性疾患(PT-LPD)を合併した多発性骨髄腫(MM)を報告する。症例は,53歳,男性。2010年6月,MMと診断され,2011年3月にASCTを施行された。2012年1月,発熱,意識障害にて入院。入院時,両側腋窩・鼠径部にリンパ節腫大あり。血中EBウィルス-DNAを4×102 copy/ml認めた。頭部CT, MRIでは異常を認めなかった。髄液の細胞診では腫瘍細胞を認めず,EBウィルス-DNAを5×103 copy/ml認めた。リンパ節生検にてT細胞性monomorphic PTLDと診断した。Methotrexate, cytosine arabinoside大量療法を施行したところ解熱し,意識障害も改善した。CTでは腫大リンパ節は消失し,EBV-DNAも検出感度未満となった。
  • 井田 桃里, 橋本 誠雄, 鈴木 信明, 江部 佑輔, 矢野 敏雄, 佐藤 直子, 小池 正
    2016 年 57 巻 1 号 p. 41-46
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/02/09
    ジャーナル 認証あり
    52歳男性。2006年に急性前骨髄球性白血病(APL)と診断され,レチノイン酸を含む寛解導入療法で寛解に達した。以後アントラサイクリン系抗腫瘍剤とcytarabineの組み合わせによる地固め療法を行い,分子生物学的寛解が維持されていた。2009年にAPL再発と診断され,三酸化ヒ素製剤(ATO)による寛解導入療法で第二寛解となり,さらにATOによる地固め療法を施行した。その後busulfanとmelphalanを前処置として自家末梢血幹細胞移植(auto-PBSCT)を施行した。Auto-PBSCTから4か月後に突然の気胸,急性呼吸不全を発症し,加療を行うも永眠された。剖検所見で肺組織に異型細胞やアポトーシス細胞を認め,これらの変化は全身の多臓器でも認められた。Auto-PBSCT後の呼吸器障害はその原因が特定できず,特発性間質性肺炎と診断されることが多い。本症例は急性呼吸不全の臨床像が前面にでていたが,解剖病理所見では全身多臓器に細胞障害を示唆する異型細胞を認め,auto-PBSCTの前処置で用いたアルキル化剤が関与していると考えられた。
  • 内田 慧美, 渡邉 健, 押川 学, 坂下 千瑞子, 黒須 哲也, 福田 哲也, 新井 文子, 村上 直巳, 三浦 修, 山本 正英
    2016 年 57 巻 1 号 p. 47-51
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/02/09
    ジャーナル 認証あり
    症例は28歳女性。右乳房腫瘤と右腋窩リンパ節腫脹を認め生検を施行。CD4, CD13, CD33, CD68/KP-1陽性の骨髄芽球で占められ骨髄肉腫と診断した。骨髄にも同様の細胞を9%認めた。染色体・遺伝子検査では+8, t(9;11)(p22;q23), +22(リンパ節のみ)を認め,MLL-AF9融合遺伝子陽性であった。寛解導入療法・地固め療法2コース後に完全寛解を確認も,直後の放射線治療中に乳房・骨髄ともに再発した。再寛解導入療法後も乳房腫瘤は残存し同種移植を施行した。骨髄は完全寛解を維持するも,早期に乳房再発を来たし,外科的切除も施行したが増悪し永眠された。乳房骨髄肉腫ではMLL-AF9遺伝子転座や+8が報告されているが,本例では骨髄肉腫にのみ付加的に+22を認め,骨髄起源の腫瘍細胞の髄外進展の可能性を示唆するが,髄外病変が特に治療抵抗性を示した事との関連も考えられる。
短報
  • 宇佐美 信, 村瀬 和幸, 高田 弘一, 飯島 一飛, 吉田 正宏, 舘越 鮎美, 橋本 亜香利, 井山 諭, 佐藤 勉, 小船 雅義, 瀧 ...
    2016 年 57 巻 1 号 p. 52-55
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/02/09
    ジャーナル 認証あり
    Neurolymphomatosis is a rare manifestation of malignant lymphoma. The involvement of peripheral nerves has mostly been described as dissemination of a systemic lymphoma. In contrast, primary peripheral nerve lymphoma is extremely rare. A 68-year-old man presented in January 2014 with a sensory disturbance in the left lower extremity. There were no obvious findings on MRI or CT that could account for his symptoms. After 1 year of symptomatic treatment, the patient was managed conservatively for an additional year. However, his symptoms worsened. FDG-PET/CT showed high FDG uptake in the left sciatic nerve. Biopsy of the lesion revealed diffuse large B cell lymphoma.
  • 鴇田 勝哉, 中村 幸嗣, 礒 桐子, 仲村 祐子, 佐々木 光, 三谷 絹子
    2016 年 57 巻 1 号 p. 56-59
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/02/09
    ジャーナル 認証あり
    We report a 57-year-old man who was diagnosed based on morphological findings as having extraosseous plasmacytoma of the left lower eyelid. Tumor cells were positive not only for CD38 and CD138, but also for CD19 and surface immunoglobulin lambda chain. He obtained a complete remission with irradiation and VAD therapy, but the disease relapsed one year later in the testis and popliteal fossa. Because tumor cells appeared to be blastoid, CHOP therapy was administered, and the patient achieved a temporary remission. Cytoplasmic lambda chain-positive and CD19-negative tumors eventually recurred at multiple sites including the central nervous system but not in the bone marrow. Treatment with the BD regimen and lenalidomide failed, and he died four years after the initial diagnosis.
Introduce My Article
Erratum
feedback
Top