【目的】症候性メッケル憩室は症状が多岐にわたり,下血のような症状がなく急性腹症のみの場合,確定診断に至ることは困難である.そこで,当科で経験した小児症候性メッケル憩室例を後方視的に検討した.
【方法】2001 年1 月から2012 年12 月までに,当科で緊急・待機的開腹手術を行った症候性メッケル憩室を対象とした.検討項目は性別,年齢,主訴,術前診断,術後診断,憩室の部位,病理学的所見,緊急手術の有無,在院日数である.尚,他疾患に対する手術中に偶然発見された無症候性メッケル憩室は除外した.
【結果】対象患者は13 例(男児9 例,女児4 例)であった.発症年齢は日齢20 から14 歳と幅広かったが5 歳未満が8 例(61.6%)と多い傾向にあった.主訴は嘔気・嘔吐が11 例(84.6%)と最も多く,腹痛9 例(69.3%),血便4 例(30.8%)であった.画像診断により術前からメッケル憩室を診断した症例は2 例あり
99mTcO4-シンチグラフィー検査にて診断し得た1 例と,腹部エコーおよび腹部造影CT 検査にてメッケル憩室が同定できた1 例のみであった.13 例中11 例が同日手術となった.術後診断はmesodiverticular band の腸閉塞が5 例(38.5%),臍腸管索での腸閉塞が1 例(7.7%),腸重積2 例(15.4%),メッケル憩室炎3 例(23.1%),メッケル憩室茎捻転1 例(7.7%)であった.憩室の存在部位は回盲弁から口側に20~100 cm(平均59.2 cm)に1 例を除き存在していた.病理学的所見では異所性胃粘膜を8 例(60.2%),胃粘膜とともに異所性膵組織を含むものも1 例(7.7%)認められた.
【結論】症候性メッケル憩室は腸閉塞の原因として発見される症例が多い.また,腸閉塞の原因として術前に本症を同定することは困難な場合が多く,手術を要する腸閉塞症の原因として本症は念頭に置くべき疾患である.
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