日本小児外科学会雑誌
Online ISSN : 2187-4247
Print ISSN : 0288-609X
ISSN-L : 0288-609X
50 巻, 7 号
選択された号の論文の17件中1~17を表示しています
おしらせ
追悼文
原著
  • 橋詰 直樹, 靍 知光, 朝川 貴博, 田中 宏明, 東館 成希, 坂本 早季, 靍久 士保利, 八木 実
    2014 年 50 巻 7 号 p. 1087-1091
    発行日: 2014/12/20
    公開日: 2014/12/20
    ジャーナル フリー
    【目的】症候性メッケル憩室は症状が多岐にわたり,下血のような症状がなく急性腹症のみの場合,確定診断に至ることは困難である.そこで,当科で経験した小児症候性メッケル憩室例を後方視的に検討した.
    【方法】2001 年1 月から2012 年12 月までに,当科で緊急・待機的開腹手術を行った症候性メッケル憩室を対象とした.検討項目は性別,年齢,主訴,術前診断,術後診断,憩室の部位,病理学的所見,緊急手術の有無,在院日数である.尚,他疾患に対する手術中に偶然発見された無症候性メッケル憩室は除外した.
    【結果】対象患者は13 例(男児9 例,女児4 例)であった.発症年齢は日齢20 から14 歳と幅広かったが5 歳未満が8 例(61.6%)と多い傾向にあった.主訴は嘔気・嘔吐が11 例(84.6%)と最も多く,腹痛9 例(69.3%),血便4 例(30.8%)であった.画像診断により術前からメッケル憩室を診断した症例は2 例あり99mTcO4-シンチグラフィー検査にて診断し得た1 例と,腹部エコーおよび腹部造影CT 検査にてメッケル憩室が同定できた1 例のみであった.13 例中11 例が同日手術となった.術後診断はmesodiverticular band の腸閉塞が5 例(38.5%),臍腸管索での腸閉塞が1 例(7.7%),腸重積2 例(15.4%),メッケル憩室炎3 例(23.1%),メッケル憩室茎捻転1 例(7.7%)であった.憩室の存在部位は回盲弁から口側に20~100 cm(平均59.2 cm)に1 例を除き存在していた.病理学的所見では異所性胃粘膜を8 例(60.2%),胃粘膜とともに異所性膵組織を含むものも1 例(7.7%)認められた.
    【結論】症候性メッケル憩室は腸閉塞の原因として発見される症例が多い.また,腸閉塞の原因として術前に本症を同定することは困難な場合が多く,手術を要する腸閉塞症の原因として本症は念頭に置くべき疾患である.
  • 鈴木 完, 魚谷 千都絵, 石丸 哲也, 藤代 準, 杉山 正彦, 岩中 督
    2014 年 50 巻 7 号 p. 1092-1098
    発行日: 2014/12/20
    公開日: 2014/12/20
    ジャーナル フリー
    【目的】新生児-乳児消化管アレルギーは嘔吐・血便などの消化器症状を呈することが多いが,特異的症状がないため診断が難しく治療も難渋することが多い.特に原疾患に消化器外科疾患を有する患児では原疾患との鑑別が問題となる.当院で経験した症例の診断や治療の問題点を検討した.
    【方法】最終的に新生児-乳児消化管アレルギーと診断された5 年間に経験した外科疾患を有する自験の6 例における診療録をもととした後方視的調査研究.
    【結果】男児4 例,女児2 例.超低出生体重児が2 例,他の4 例は満期産児であった.併存外科疾患(重複あり)は,消化器外科疾患が4 例,先天性心疾患が3 例,腹壁形成異常が1 例であった.消化管アレルギーの診断時期は生後1 か月半から1 歳3 か月時まで,発症時症状(重複あり)は血便3 例,水様便2 例,嘔吐1 例,活気不良1 例,体重増加不良6 例であった.診断根拠とした検査結果(重複あり)は,ALST 陽性が6 例,経腸栄養剤に対するDLST 強陽性が2 例,便中好酸球陽性が2 例,腸粘膜生検での好酸球浸潤の証明が1 例であった.治療は,全例食餌アレルゲン除去と低アレルゲンミルクによる栄養管理で消化器症状は消失している.
    【結論】今回の検討例では,新生児期の最初の経腸栄養では症状発現がなく外科的介入やそれに伴う抗生剤の使用などが消化管免疫に影響を及ぼし,乳児期以降の発症につながった可能性がある.また,消化器外科疾患合併の2 例は,retrospective には診断以前の症状もアレルギー症状であった可能性があり,消化管アレルギーを疑う姿勢が重要である.
  • 久山 寿子, 植村 貞繁, 吉田 篤史, 山本 真弓
    2014 年 50 巻 7 号 p. 1099-1103
    発行日: 2014/12/20
    公開日: 2014/12/20
    ジャーナル フリー
    【目的】小児精系水瘤におけるlaparoscopic percutaneous extraperitoneal closure(LPEC 法)の妥当性を明らかにするため,腹膜鞘状突起の開存の有無,手術成績を評価し検討した.
    【方法】当施設で2005 年4 月から2013 年12 月までに小児精系水瘤に対し,LPEC 法による腹腔鏡下手術を行った症例を後方視的に検討した.術中,腹膜鞘状突起の開口部の大きさを鉗子で測定した.診療録から,開口部の大きさ,腹膜鞘状突起の所見,手術成績について評価した.
    【結果】両側7 例を含む96 人に対し腹腔鏡下手術を行った.1 例を除き,全ての症例で肉眼的な腹膜鞘状突起の開存が見られ,開口部の大きさの平均は5.2±2.9 mm であった.LPEC 法にて腹膜鞘状突起を閉鎖後,水瘤が大きく残る症例に対しては水瘤の穿刺排液を行った.術中・術後の合併症や再発は認めていない.
    【結論】小児精系水瘤では,内鼠径輪で腹膜鞘状突起の肉眼的な開存が認められ,腹膜鞘状突起を介した腹水の移動が原因であり,LPEC 法が小児精系水瘤の標準術式となり得る.
症例報告
  • 前川 昌平, 澤井 利夫, 吉田 英樹, 木村 浩基, 八木 誠
    2014 年 50 巻 7 号 p. 1104-1108
    発行日: 2014/12/20
    公開日: 2014/12/20
    ジャーナル フリー
    症例は13 歳,女児.発熱および腹痛を認めたため近医受診し,精査加療目的にて当科紹介となった.当科精査にて腫瘤形成性虫垂炎と診断し,interval appendectomy を施行する方針とし加療目的にて同日緊急入院となった.保存的治療を開始し,症状軽快したため入院後7 日目に一旦退院となった.2 か月後に再度入院のうえ単孔式腹腔鏡下虫垂切除術を施行した.摘出標本の肉眼所見は虫垂体部に炎症を示唆する壁肥厚を認めていたが,その後の病理診断にて虫垂基部のカルチノイドと診断した.切除虫垂の断端リンパ管に侵襲を認めたため断端陽性と診断し,虫垂切除術を施行した3 週間後に回盲部切除術およびリンパ節郭清(D3)を施行した.今回,虫垂切除後に虫垂カルチノイドと診断したが切除断端が陽性であったため追加切除を要した1 例を経験したので文献的考察を加えて報告する.
  • 山根 裕介, 田浦 康明, 小坂 太一郎, 大畠 雅之, 永安 武
    2014 年 50 巻 7 号 p. 1109-1112
    発行日: 2014/12/20
    公開日: 2014/12/20
    ジャーナル フリー
    感染を契機に発見され,胸腔鏡下に切除可能であった孤発性縦隔リンパ管腫の1 例を経験した.症例は14 歳,男児.胸痛,発熱を主訴に来院した.炎症反応が高値で,画像上,前縦隔(左心横隔膜角)に壁肥厚を有する多房性囊胞性病変を認め,囊胞病変内の感染が疑われたため,抗生剤治療を開始した.抗生剤治療により炎症反応は改善したが,胸痛が遷延するため摘出手術を施行した.術後経過は極めて良好で,病理学的にリンパ管腫と診断された.縦隔リンパ管腫は画像での確定診断が困難である.症状を有する場合には,診断を兼ねた治療として手術療法が適当であり,整容性に優れた胸腔鏡下手術は有用であると考えられた.
  • 福井 美穂, 飯干 泰彦, 水野 均, 児玉 匡, 山村 憲幸, 西谷 暁子, 藤井 仁, 今里 光伸, 位藤 俊一, 伊豆蔵 正明
    2014 年 50 巻 7 号 p. 1113-1118
    発行日: 2014/12/20
    公開日: 2014/12/20
    ジャーナル フリー
    膿瘍形成性虫垂炎では保存的治療で軽快し,interval appendectomy(IA)を容易に行える症例がある一方,保存的治療を断念し,緊急手術を要する症例も存在するが,最初に保存的治療の成否を予測する方法は確立していない.保存的治療中に超音波検査で経過を観察できた小児膿瘍形成性虫垂炎の軽快例の特徴について報告する.IA を開始した2008 年から2013 年までに保存的治療を行った膿瘍形成性虫垂炎例は6 例,3 から12 歳で,内1 例は経時的超音波検査にて膿瘍腔の拡大を認めて緊急手術を施行し,他5 例は膿瘍腔の縮小を認めて軽快した.最初の超音波検査における虫垂壁の層構造は,保存的治療の軽快例では穿孔部以外で保たれ,軽快しなかった1 例では破綻していた.虫垂壁層構造の確認と膿瘍腔サイズの経時的観察は,保存的治療の成否の予測と判断に有用となる可能性が示唆された.
  • 福本 泰規, 河野 美幸, 桑原 強, 高橋 貞佳, 押切 貴博, 安井 良僚
    2014 年 50 巻 7 号 p. 1119-1122
    発行日: 2014/12/20
    公開日: 2014/12/20
    ジャーナル フリー
    先天性乳び腹水は稀な疾患である.治療法として中心静脈栄養やリンパ流量を減らす目的で低脂肪の成分栄養剤やmedium chain triglyceride(MCT)ミルクの経口投与等の保存的療法が試みられる.保存療法で効果が得られない場合に手術的治療が選択される.しかし,保存的治療の期間は一定しておらず.手術でのリンパ液漏出部位の同定も困難なことが多い.われわれは先天性乳び腹水に対して99mTc-human serum albumin(HSA)リンパ管シンチグラフィーを経時的に行うことで,リンパ液漏出の減少,胸管へのリンパ液の流れなどの変化を確認できた先天性乳び腹水を経験したので報告する.
  • ―本邦報告例73例の検討―
    渡邉 高士, 瀧藤 克也, 三谷 泰之, 窪田 昭男, 山上 裕機
    2014 年 50 巻 7 号 p. 1123-1127
    発行日: 2014/12/20
    公開日: 2014/12/20
    ジャーナル フリー
    症例は在胎38 週4 日,3,697 g で出生した男児.在胎36 週の胎児超音波検査にて左腹部に28 mmの腫瘤を指摘された.出生後CT で腫瘍内の石灰化を認め,また上部消化管造影とMRI の結果から胃原発の奇形腫と診断し,生後16 日目に摘出術を行った.出生前の腫瘍径は28 mm であったが,生後3 日目に40 mm,手術時には腫瘍径は78 mm と増大していた.胃奇形腫は出生前後で急速に増大することが報告されており,出生前に指摘された場合は,娩出時期や手術時期に注意を要する.また術後の再発症例も報告されており,その再発時期から最低2 年以上は腫瘍マーカーと画像的検索が必要であると思われる.
  • 山本 裕輝, 小森 広嗣, 下島 直樹, 広部 誠一
    2014 年 50 巻 7 号 p. 1128-1131
    発行日: 2014/12/20
    公開日: 2014/12/20
    ジャーナル フリー
    症例は9 歳女児.生後5 か月時より喘鳴が出現し,先天性気管狭窄症および左肺動脈起始異常症の診断で2 歳2 か月時に肺動脈移植術を施行された.術後も労作時の喘鳴が残存し,改善ないため精査目的に当科へと紹介された.気管支鏡にて気管中部から分岐部までの完全気管輪を有する軽度の気管狭窄を認め,その最頭側にらせん状の高度な膜様狭窄を認めた.数回の気管内挿管により,先天性気管狭窄起始部への先あたりにより膜性の狭窄を来したことが喘鳴の原因と考えた.気管支鏡下Nd-YAG レーザー(Dornier Medilas fibertom 5100®)にて膜様狭窄部を蒸散切除した.治療後すみやかに喘鳴は消失し,臨床症状と呼吸機能が著明に改善した.気管膜様狭窄に対してレーザー治療は非侵襲的で効果が高いと考えられた.
  • 升井 大介, 平山 裕, 飯沼 泰史, 飯田 久貴, 内藤 真一, 新田 幸壽
    2014 年 50 巻 7 号 p. 1132-1136
    発行日: 2014/12/20
    公開日: 2014/12/20
    ジャーナル フリー
    先天性十二指腸閉鎖症は予後良好な疾患とされ,術後合併症の発生率も高くない.今回我々はダイヤモンド吻合施行後の晩期合併症として吻合部潰瘍の2 例を経験した.症例1 は10 歳男児.タール便で発症し内視鏡検査で十二指腸吻合部とすぐ脇のポケット様内腔の境界部からの活動性出血を認めた.症例2 は9 歳男児.コーヒー残渣様嘔吐で発症し内視鏡検査で吻合部付近のポケット様内腔盲端と出血性潰瘍を認めた.造影検査では近位十二指腸の拡張所見も有していた.また,2 症例とも自閉傾向を伴うダウン症患児であり幼少期より極度の偏食習慣を有していたことも慢性的な栄養障害と創傷治癒の遅延に影響した可能性があった.いずれも輸血と栄養管理で軽快しその後は貧血や腹部症状の再燃を認めていない.稀ではあるが晩期合併症としての吻合部潰瘍も念頭に置く必要があり,少なくとも小児期における画像検査と栄養評価は継続的に行うべきと考えられた.
  • ―空気整復のpitfall―
    木村 次郎, 佐々木 潔, 野田 卓男
    2014 年 50 巻 7 号 p. 1137-1140
    発行日: 2014/12/20
    公開日: 2014/12/20
    ジャーナル フリー
    4 歳8 か月男児の腸重積に対し空気整復を行ったが,翌日2 度再発した.2 度目の再発時(3 回目の腸重積時)は器質的病変を疑い開腹した.回腸-結腸の腸重積を解除しても,虫垂根部の重積が残り,これが腸重積再発の原因と判断した.非観血的整復では回腸に圧が漏出するため虫垂に圧がかからず,虫垂重積は解除されない.また,空気整復では造影効果が得にくく,虫垂重積症は見落とされやすいと考えられる.
地方会
研究会
総目次
あとがき
feedback
Top