日本小児外科学会雑誌
Online ISSN : 2187-4247
Print ISSN : 0288-609X
ISSN-L : 0288-609X
59 巻, 7 号
選択された号の論文の21件中1~21を表示しています
おしらせ
追悼文
原著
  • 久田 正昭, 池村 絢, 馬場 徳朗, 呉屋 英樹, 金城 忠嗣, 佐辺 直也, 金城 僚, 吉田 朝秀, 家入 里志, 高槻 光寿
    2023 年 59 巻 7 号 p. 1044-1051
    発行日: 2023/12/20
    公開日: 2023/12/20
    ジャーナル オープンアクセス

    【目的】沖縄県では出生前診断された先天性横隔膜ヘルニア(CDH)を含むほぼすべてのCDHは当施設に集約している.今回当施設の全CDHの治療成績を解析し,さらに出生前診断例に重症度分類から再評価を加えた.

    【方法】2002年から2021年までの20年間に,当施設にて診療を行ったCDH 61例を対象とした.また出生前診断された左側isolated CDH 35例に対して重症度分類(北野分類,臼井分類)を行い,周産期・周術期情報,呼吸循環管理,予後について後方視的に解析し,それらを全国調査と比較した.

    【結果】全症例ではECMO使用率18.0%,手術不能例3.3%,全生存率83.6%であった.出生前診断された左側isolated CDH 35例に対する重症度分類別比率は北野分類Group I:77.1%,Group II:17.1%,Group III:5.7%,臼井分類Group A:68.6%,Group B:20.0%,Group C:11.4%であった.これらの35例ではECMO使用率25.7%,手術不能例0%,生存率は91.4%であった.全国調査との比較では,北野分類全体の比較で有意に予後良好であった(p=0.044).当施設の全症例と全国調査との比較では,ECMO使用率が有意に高く,手術不能例が有意に少なかった.また全国調査と比べて当施設の合併症なき退院率が有意に低く,良好な生存率と相反して合併症率が高い結果であった.

    【結論】当施設におけるCDH症例の治療成績は良好であった.ECMO使用率が高く,手術不能例が少ないことが治療成績に寄与していると考えられた.合併症およびQOL改善が今後の課題である.

  • 髙山 慶太, 梅田 聡, 𠮷田 美奈, 堺 貴彬, 宇賀 菜緒子, 前川 昌平, 山道 拓, 臼井 規朗
    2023 年 59 巻 7 号 p. 1052-1057
    発行日: 2023/12/20
    公開日: 2023/12/20
    ジャーナル オープンアクセス

    【目的】先天性横隔膜ヘルニア(以下CDH)術後に発症する漏斗胸に関して,発症のリスク因子を検討した報告は少ない.我々はCDH術後に漏斗胸を発症するリスク因子を検討するために本研究を行った.

    【方法】2001年1月から2018年12月までの18年間に,当施設で新生児期から治療を開始し,術後3年以上経過観察できたCDH症例を対象とし,漏斗胸の発症に関して症例背景やCDHの重症度指標を診療録から後方視的に解析した.

    【結果】対象となったCDH症例は89例であり,うち23例が漏斗胸を発症し,発症率は25.8%であった.漏斗胸発症例と非発症例を比較すると,発症例は一酸化窒素(以下NO)投与例が23例(100%)であったが,非発症例では53例(80%)と,漏斗胸発症例で有意にNO投与例が多かった.人工呼吸管理期間は,漏斗胸発症例で中央値16日(5~44日)であったが,非発症群では10日(1~1,824日),酸素投与期間は,漏斗胸発症例で37日(6~817日)であったが,非発症例では20日(4~1,824日)と,漏斗胸発症例で人工呼吸管理期間および酸素投与期間が有意に長かった.術式は,漏斗胸発症例では16例(70%)でパッチ閉鎖術が施行され,非発症例30例(45%)に比べて多い傾向にあったが,統計学的有意差は認めなかった.その他CDHの重症度指標の各因子については,漏斗胸の発症率との関連性は認めなかった.

    【結論】CDH術後の漏斗胸の発症は,CDHの重症度指標とは必ずしも関連しなかった.CDH術後における漏斗胸は,NO投与や人工呼吸管理,酸素投与といった呼吸管理への依存性との関連性が深いと考えられた.

症例報告
  • 平田 雄大, 眞田 幸弘, 大西 康晴, 岡田 憲樹, 堀内 俊男, 大豆生田 尚彦, 佐久間 康成, 佐田 尚宏
    2023 年 59 巻 7 号 p. 1058-1063
    発行日: 2023/12/20
    公開日: 2023/12/20
    ジャーナル オープンアクセス

    腸管重積型逆流防止弁付加手術を行った胆道閉鎖症(BA)において,挙上空腸狭窄が難治性胆管炎の契機となり,生体肝移植(LDLT)を施行した2例を報告する.【症例1】15歳女児.生後1か月時にBAに対して肝門部空腸吻合術を施行したが,胆汁排泄不良で生後2か月時に逆流防止弁付き再吻合術を施行した.術後15年時に挙上空腸狭窄による難治性胆管炎に対してイレウス管を留置したが,肝内胆管数珠状拡張と黄疸は改善せず,LDLTを施行した.【症例2】26歳男性.生後4か月時にBAに対して逆流防止弁付き肝門部空腸吻合術を施行した.術後25年時に黄疸を伴う胆管炎が出現したため,挙上空腸狭窄に対してENBDチューブを留置したが,胆管炎は改善せず,LDLTを施行した.逆流防止弁は長期BAにおいて挙上空腸狭窄による難治性胆管炎の原因になることがある.

  • 生地 笑子, 坂井 幸子, 谷 眞至
    2023 年 59 巻 7 号 p. 1064-1069
    発行日: 2023/12/20
    公開日: 2023/12/20
    ジャーナル オープンアクセス

    症例は2歳11か月男児.1歳2か月時に右臀部の凹みに気づき前医を受診したが,無症状であり経過観察となった.2歳9か月時に同部から浸出液を認め,2歳11か月時に発赤・腫脹・疼痛が出現した.前医で用手的排膿と抗菌薬投与が行われ改善したが,短期間に感染を繰り返したため当院紹介となった.MRIで右臀部から直腸右側に向かう瘻管と周囲組織への炎症波及を認め,全身麻酔下に可及的に瘻管を切除した.術後2週間で膿瘍再発し,CTで深部膿瘍腔の残存を認めた.局所麻酔下にドレナージと抗菌薬投与を行い,感染が鎮静化した約1か月後に残存瘻管を摘出した.術後1年現在再発なく経過している.病理検査では重層扁平上皮に被覆された管腔構造で,先天性臀部瘻孔と判断したが,症状や病理組織学的に先天性皮膚洞の非正中例としても矛盾しないと考えた.いずれも感染すると再燃することがあり,感染の既往がなくても,手術を治療の選択肢として考慮すべきと考えられた.

  • 藤枝 悠希, 大畠 雅之
    2023 年 59 巻 7 号 p. 1070-1075
    発行日: 2023/12/20
    公開日: 2023/12/20
    ジャーナル オープンアクセス

    症例は10歳男児,回腸・結腸欠損型の短腸で出生し日齢1に人工肛門を造設された.栄養管理が必要になったため,2歳時から中心静脈カテーテル(central venous catheter: CVC)を留置し経口摂取に加え,在宅中心静脈栄養を開始した.何度かカテーテル関連血流感染症(catheter related blood stream infection; CRBSI)を起こし,CVCの入れ替えを行った.2021年に短腸症候群治療薬であるGlucagon-like peptide-2(GLP-2)アナログ製剤のテデュグルチドが保険収載されたため,当院でも投与を開始し1年以上が経過した.内視鏡検査で絨毛の延長が視認でき,便性状が改善した.身長や体重を維持しつつ静脈栄養の依存軽減が可能で,CRBSI発生の頻度が減少した.有害事象として腹痛とストーマパウチ内への排ガスの増加を認めたが,時間経過とともに改善した.人工肛門を造設している短腸症候群患児にテデュグルチドの効果を認めており,経過を報告する.

  • 尾山 貴徳, 宮田 将徳, 向井 亘, 納所 洋, 今治 玲助, 山崎 理恵
    2023 年 59 巻 7 号 p. 1076-1081
    発行日: 2023/12/20
    公開日: 2023/12/20
    ジャーナル オープンアクセス

    インドシアニングリーン(ICG)蛍光法による血流評価を小児絞扼性腸閉塞に行った報告は少ない.症例は生後2か月,男児.下痢,嘔吐を繰り返しウイルス性胃腸炎として入院した.翌日より下痢は改善したが,第3病日に絞扼性腸閉塞と診断され手術を施行した.メッケル憩室とmesodiverticular bandを認め,bandによりメッケル憩室の4 cm口側から回腸末端まで40 cmにわたり回腸が絞扼されていた.絞扼解除後,回盲弁を温存する可能性を探る目的でICG蛍光法を行ったところ,回盲弁より約2 cm口側まで血流を認めた.よって,回盲弁を温存して壊死腸管を切除し回腸を端々吻合した.術後は縫合不全や吻合部の通過障害は認めず,術後11日目に退院した.回盲部の血流を客観的に評価し,回盲弁の確実な温存にICG蛍光法は非常に有用であった.しかし評価法は確立されておらず今後の症例の蓄積が必要である.

  • 高成田 祐希, 竹内 雄毅, 出水 祐介, 矢下 博輝, 森 健, 植村 優, 長谷川 大一郎, 副島 俊典, 畠山 理
    2023 年 59 巻 7 号 p. 1082-1087
    発行日: 2023/12/20
    公開日: 2023/12/20
    ジャーナル オープンアクセス

    小児がん患者へ陽子線治療を行う際に,放射線治療用吸収性組織スペーサ(以下,吸収性スペーサー)を使用してスペーサー留置術を行った経験について報告する.【症例1】1歳男児.腸骨Ewing肉腫.開腹下に下行結腸を授動し,腫瘍腹側を覆うように吸収性スペーサー10 mm厚7×5 cmを留置した.【症例2】9歳男児.仙骨Ewing肉腫.腹腔鏡補助下に直腸を授動し,仙骨右側を覆うように吸収性スペーサー10 mm厚5.5×9 cmを留置した.2例とも術後合併症はなく経過し,吸収性スペーサーの留置により腸管線量の低減を図ることが可能であった.また照射終了後の画像検査で吸収性スペーサーの消失を確認した.小児に対しても吸収性スペーサーを用いたスペーサー留置術は低侵襲で安全と思われた.症例によっては,腹腔鏡操作も有用である.

  • 久万田 優佳, 石井 大介, 石井 聖也, 元木 惠太, 土川 颯, 上野 伸展, 庄中 達也, 宮城 久之
    2023 年 59 巻 7 号 p. 1088-1094
    発行日: 2023/12/20
    公開日: 2023/12/20
    ジャーナル オープンアクセス

    症例は21歳女性.低位鎖肛に対して生後3か月にPotts法による鎖肛根治術を施行したが,8歳以降は当科への通院歴はなく,その後は自己管理となっていた.当院搬送1か月前から便秘があり,1日前に前医入院,入院後に糞便性腸閉塞・腹部コンパートメント症候群・下肢虚血を発症し,当院に救急搬送された.緊急全身麻酔下摘便を施行し,9 kgの糞便を排出した.長期間の集中治療を要したが,後遺症なく軽快し,現在は小児外科と成人診療科で連携し内服および浣腸による排便コントロールを継続している.直腸肛門奇形術後には排便機能障害,尿路系の異常,脊髄の異常,性機能異常などが起こりえるため,長期フォローアップが必要である.時に低位鎖肛であっても,本症例のように致死的状態に陥る危険性もあり,患者・家族への疾患理解や療養方針を考えるべく患者教育を行い,小児外科医療だけでなく,成人医療へのトランジションも不可欠であると思われた.

  • 浅井 武, 岩村 喜信, 新居 章, 浅井 芳江
    2023 年 59 巻 7 号 p. 1095-1100
    発行日: 2023/12/20
    公開日: 2023/12/20
    ジャーナル オープンアクセス

    症例は13歳女児.ランニング中に転倒し地面で腹部を強打し受傷した.同日近医を受診し経過観察となるも,発熱,腹痛,嘔吐が持続したため,造影CTを施行し膵頭/体部の断裂を認め,受傷15日目に当院紹介となった.同日施行した内視鏡的逆行性膵管造影(ERP)では,頭側主膵管からの造影で尾側膵管は造影されず,IIIb型外傷性膵損傷と診断した.体尾部側への内視鏡的経鼻膵管ドレナージ(ENPD)チューブ留置を試みたが断裂部位までの留置となった.絶食,抗菌薬,ガベキサートメシル酸,オクトレオチド酢酸塩の投与を行うもENPDからの排液が減少し腹水の増加と膵仮性囊胞を認めたため,経皮的ドレナージを追加した.その後腹水は減少,膵仮性囊胞も縮小し血中アミラーゼも改善したため受傷86日目に退院となった.IIIb型外傷性膵損傷では一般的に手術が必要と考えられているが,全身状態が安定している場合は非手術療法も考慮すべきである.

  • 梶 祐貴, 中原 康雄, 高橋 雄介, 向井 亘, 人見 浩介, 浮田 明見, 高田 知佳
    2023 年 59 巻 7 号 p. 1101-1104
    発行日: 2023/12/20
    公開日: 2023/12/20
    ジャーナル オープンアクセス

    先天性膵囊胞は非常に稀な疾患であり,治療方針は確立していない.我々は胎児超音波検査で発見した単純性囊胞に対して,待機的に腹腔鏡下腫瘤摘出術を施行し,先天性膵囊胞と診断した1例を経験したので報告する.症例は7歳,女児.在胎38週2日の胎児超音波検査で左上腹部に直径約2 cmの単純囊胞を指摘されていた.在胎39週1日,3,280 gで出生した.出生後は4歳時に膵酵素の上昇を一度認めたが,無症状で経過した.7歳2か月で膵炎などの将来的な合併症予防と診断のため腹腔鏡下腫瘤摘出術を施行した.膵尾部に接した直径約3 cmの囊胞は膵管との交通を有し,安全に囊胞摘出可能であった.囊胞内腔には膵酵素の上昇した内容液とタンパク質からなる粥状物質を多量に認めた.囊胞壁は高円柱状上皮細胞が被覆し,一部乳頭状管状に増生しており,先天性膵囊胞と診断された.術後1年現在,特に問題なく経過している.

  • 中山 智理, 渡井 有, 佐藤 英章, 田山 愛, 大澤 俊亮, 福永 奈津, 木村 翔大, 安達 聖, 富永 美璃
    2023 年 59 巻 7 号 p. 1105-1109
    発行日: 2023/12/20
    公開日: 2023/12/20
    ジャーナル オープンアクセス

    【目的】膵solid-pseudopapillary neoplasm(以下SPN)は若年女性に多い比較的稀な膵腫瘍である.今回,当科で経験した膵SPN小児例をもとに,膵SPNの臨床像について検討した.【対象と方法】2015年から2021年までに当科で経験した膵SPNの小児例を対象とし,診療録をもとに後方視的に検討した.【結果】症例は3例で全例女児,年齢は10~12歳,症状は腹痛,嘔吐,発熱,下痢などであった.発生部位は膵尾部2例,膵体部1例だった.手術術式は脾温存膵体尾部切除術2例,脾合併膵体尾部切除術1例が施行された.術後合併症は全例で認めず,術後在院日数は9~12日であった.術後観察期間は18~78か月で全例無再発生存中である.【結語】当科で経験した膵SPN小児例の術後経過は良好であった.膵SPNは完全切除により良好な予後が得られるが,術式には脾臓温存に努めるべきである.

  • 横山 新一郎, 浜田 弘巳, 橋本 さつき, 西堀 重樹, 縫 明大
    2023 年 59 巻 7 号 p. 1110-1113
    発行日: 2023/12/20
    公開日: 2023/12/20
    ジャーナル オープンアクセス

    von Willebrand病(以下,VWD)のType 2Aが既往にある10代女性が右下腹部痛を主訴に当科を受診した.蜂窩織炎性急性虫垂炎と診断し,出血のリスクを考慮して保存加療を行った.その際の血液検査で,血小板数511,000万,PT-INR 1.04,APTT 40 sec,von Willebrand因子リストセチンコファクター活性(以下,VWF:RCo)<6%,血漿第VIII因子活性(以下,FVIII:C)23%であった.糞石を伴う急性虫垂炎であったことから,再燃のリスクを考え3か月後にInterval appendectomyを予定した.手術待機期間中の月経時に,2020年より本邦で使用可能となった遺伝子組み換えvon Willebrand因子(以下,rVWF)製剤を使用し,その際のVWF:RCo,FVIII:Cから周術期に使用するrVWF製剤量を決定した.周術期はVWDの診療ガイドライン2021年版に準じて準備を行った.腹腔鏡下虫垂切除は通常の手技で行い,周術期の出血イベントはなく安全に施行できた.今回我々はvon Willebrand因子の質的異常であるType 2AのVWDを基礎疾患に持つ虫垂炎症例に対し,rVWF製剤を使用してInterval appendectomyを施行した症例を経験したので報告する.

  • 吉田 眞之, 銭谷 昌弘, 西川 正則, 堺 大地, 竹村 理璃子, 野口 侑記, 松浦 玲, 梅田 聡, 臼井 規朗
    2023 年 59 巻 7 号 p. 1114-1118
    発行日: 2023/12/20
    公開日: 2023/12/20
    ジャーナル オープンアクセス

    主要血管が閉塞した際,代替ルートによる中心静脈カテーテル留置手技が報告されている.今回我々は幼児に対して胸腔鏡補助下に肋間静脈より中心静脈ポートを留置し得たため報告する.症例は4歳男児.短腸症候群のために在宅中心静脈栄養を行っていたが,繰り返すカテーテル関連血流感染症により主要血管が閉塞したため,肋間静脈から奇静脈経由で中心静脈カテーテルを留置する方針とした.右第6肋間静脈を超音波ガイド下に穿刺し,胸腔鏡下にガイドワイヤーを奇静脈から上大静脈へ誘導し,奇静脈弓内にカテーテルを留置した.術後1か月でカテーテルが肋間静脈から逸脱したため右第5肋間静脈経由で上大静脈内に留置した.以後の経過は良好で,再留置後10か月の現在,在宅中心静脈栄養を継続中である.手技に工夫を要するが,主要血管が閉塞した幼児への肋間静脈経由の中心静脈カテーテル留置は有用な方法であると考えられた.

委員会報告
地方会
研究会
総目次
あとがき
feedback
Top