日本小児外科学会雑誌
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49 巻, 1 号
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おしらせ
学術集会記録
原著
  • 林 宏昭, 中村 哲郎, 東 孝, 大野 耕一, 中岡 達雄, 堀池 正樹, 銭谷 昌弘
    2013 年 49 巻 1 号 p. 19-24
    発行日: 2013/02/20
    公開日: 2013/02/20
    ジャーナル フリー
    【目的】乳児胆汁うっ滞症における胆道洗浄の適応および効果を後方視的に検討した.
    【対象と方法】2005 年 5 月~2009 年 4 月までに乳児期に灰白色便および直接ビリルビン優位の黄疸を呈した乳児胆汁うっ滞症例9 例を対象とし,その臨床的特徴と治療経過について検討した.
    【結果】9 例中 5 例に対し全身麻酔下に胆道造影を行った.そのうち 4 例で総胆管末端の通過障害を認めたため,十二指腸へ造影剤が通過するまで生理食塩水による洗浄を繰り返し行った.洗浄を行った 4 例中 2 例はすみやかに改善し,残りの 2 例もステロイドパルスを追加し,改善した.1 例は胆道造影を行ったが,通過障害を認めなかったため,胆道洗浄は行わなかった.この1 例を含む残り5 例は全て保存的加療により改善した.胆道洗浄を行った群と保存的療法にて改善した群を比較すると,胆道洗浄群は有意に絶食期間が長く,高カロリー輸液が施行されていた.また画像検査上有意に総胆管拡張や胆嚢内胆泥といった胆道系の異常所見を認めた.
    【結論】長期絶食および高カロリー輸液を行っている症例で,画像検査上,胆道系の異常所見を認めた場合,胆道洗浄の適応と考えられた.胆道洗浄のみで一定の効果が期待されるが,不十分な場合,ステロイドパルスとの併用が有効であった.
  • 神保 教広, 内田 広夫, 田中 裕次郎, 佐藤 かおり, 高澤 慎也, 出家 亨一, 小岩井 和樹
    2013 年 49 巻 1 号 p. 25-28
    発行日: 2013/02/20
    公開日: 2013/02/20
    ジャーナル フリー
    【目的】腸重積症は乳幼児によくみられる疾患で,約 2 割に観血的整復が必要となる.当院では 2008 年より腹腔鏡下整復術を導入してきたので,その有用性を検討し報告する.
    【方法】2008 年 10 月から2011 年 10 月までに観血的整復術を必要とした腸重積症患児 16 例を対象とした.発症年齢,診断,開腹移行,腸管切除の有無などを検討した.
    【結果】観血的整復術を要した患児 16 例中,非観血的整復時に穿孔した 1 例は開腹手術を行ったため腹腔鏡手術は 15 例に行われた.腹腔鏡下に整復できた 10 例のうち,1 例は自然に整復されており,2 例は先進部病変を認めたが整復可能で,臍部創を利用して病変部の小腸部分切除を施行した.腹腔鏡下に整復困難であった 5 例は開腹しても用手的に整復することはできず,臍部創の延長もしくは病変部直上に皮膚切開を加えて腸切除を行った.整復困難で腸切除を要した 1例に創部感染を認めた以外に腹腔鏡手術を行った 14 例に,術中・術後合併症はみられなかった.
    【結論】腸重積症の整復に関して,腹腔鏡下整復術は開腹手術とほぼ同等に有効と考えられた.腹腔鏡下整復術での問題点として,腹腔鏡下での整復を試みる時間を事前に考慮する必要があると考えられた.腹腔鏡下で整復できなかった症例においても,病変が臍部まで授動できるものは臍部創を利用し,授動出来ない場合も皮切をもっとも適切な位置に置くことができるため,腹腔鏡下整復術は minimally invasive surgery として有用な術式と考えられた.
  • ―Transcatheter Arterial Embolization の有効性―
    橋詰 直樹, 靏 知光, 東館 成希, 七種 伸行, 田中 宏明, 朝川 貴博, 木村 浩二, 鳥井 芳邦
    2013 年 49 巻 1 号 p. 29-34
    発行日: 2013/02/20
    公開日: 2013/02/20
    ジャーナル フリー
    【目的】我々は小児外傷性脾損傷(以下本症)の血管外漏出,仮性動脈瘤に対し,interventional radiology の一つとして積極的に経カテーテル的動脈塞栓術(transcatheter arterial embolization:以下 TAE)を施行し,安定した保存的管理を可能としてきた.
    【方法】1996 年 1 月から2011 年 12 月までの間に当院 ER に搬入された 15 歳以下の本症27 例(男児 23 例,女児 4 例,平均年齢 8.3 歳(1 歳~13 歳),単独損傷19 例)の臨床的検討を行った.
    【結果】重症度は日本外傷学会分類 2008 からIa 1 例,Ib 2 例,II 3 例,IIIa 5 例,IIIb 16 例であった.開腹手術例は 1 例(IIIb),angiography 施行例は 11 例(IIIa 4 例,IIIb 7 例),そのうち TAE 施行例は 5 例(血管外漏出3 例,仮性動脈瘤 2 例)であり全例止血し保存的治療可能であった.単独損傷例は TAE 施行例(4 例)では保存的治療例(15 例)と比較して,来院時 Hb 値(10.5±3.1 vs 11.7±1.4 p=0.244)やrevised trauma score(7.58±0.5 vs 7.75±0.3 p=0.350)は同等であったが,injury severe score は有意差をもって高かった(14.0±3.8 vs 7.93±2.0 p=0.004).
    【結論】解剖学的に重傷度の高い本症に対して TAE を施行することで安定した非手術管理を行うことが可能であった.しかし小児外傷診療体制の確立した施設や緊急 IVR が可能な施設は限られており,今後の普及が期待される.
症例報告
  • 山下 方俊, 伊勢 一哉, 清水 裕史, 石井 証, 後藤 満一
    2013 年 49 巻 1 号 p. 35-38
    発行日: 2013/02/20
    公開日: 2013/02/20
    ジャーナル フリー
    症例は日齢 0 の男児.在胎37 週 2 日,2,090 g で出生.腹壁破裂と回腸末端に 3 か所の離断型閉鎖を認めた.幽門から閉鎖部位までが 35 cm と短腸で,腸管浮腫を認め,口径差による縫合不全や術後の吻合部狭窄を回避するため一期的吻合は行わず,回腸瘻を造設した.腹壁破裂に対しては,回腸瘻の作成部位とその管理に留意し,臍帯被覆による一期的閉鎖を施行した.術後は合併症なく経過良好であった.小腸閉鎖症を合併した腹壁破裂の治療は,病態により治療が困難になることが予想される.治療の選択肢は多岐にわたるが,合併症や術後管理を考慮した術式の選択が必要である.回腸瘻を造設し臍帯被覆による一期的閉鎖術は,選択術式の一つになると考えられた.
  • 吉丸 耕一朗, 上杉 達, 飯田 則利
    2013 年 49 巻 1 号 p. 39-43
    発行日: 2013/02/20
    公開日: 2013/02/20
    ジャーナル フリー
    横行結腸軸捻転症(以下,本症と略)はまれな疾患であるが,脳性麻痺や精神運動発達遅滞児に発症しやすいことが知られている.今回われわれは 13 トリソミー児に発症した本症の 1 例を経験したので報告する.症例は 3 歳,男児.精神運動発達遅滞があり前医に入院中であった.慢性便秘に対して緩下剤が投与されていたが腹部膨満,胆汁性嘔吐のために当科に紹介された.精査にて結腸の絞扼性イレウスの診断で,緊急開腹を行うと,横行結腸が捻転しており捻転解除,壊死結腸切除・吻合,盲腸~上行結腸固定術を施行した.術後経過は良好で 15 日目に前医に転院し,術後24 か月の現在,再発は認めていない.本症の治療方針は非観血的治療と観血的治療に大別され,前者には注腸造影や大腸内視鏡による整復があり,後者には再捻転を考慮した過長腸管切除術や腸管固定術,また基礎疾患を考慮した人工肛門造設術などがあるが,個々の症例に応じた術式選択が必要である.
  • 田村 亮, 横井 暁子, 喜吉 賢二, 船越 徹, 坂井 仁美, 中尾 秀人, 荒井 洋志, 尾藤 祐子, 中尾 真, 西島 栄治
    2013 年 49 巻 1 号 p. 44-47
    発行日: 2013/02/20
    公開日: 2013/02/20
    ジャーナル フリー
    胎児胸水は改善がなければ胎児水腫や肺低形成に至り得る病態である.ダブルバスケットカテーテル(以下カテーテル)を用いた胎児胸腔-羊水腔シャント術(thoraco-amniotic shunting: TAS)は有効な治療法だが,合併症の一つにシャント逸脱がある.バスケットが両側ともに胸壁内に迷入した 1 例を経験した.症例は女児で妊娠 30 週時に胎児胸水にて母体紹介された.妊娠31 週 1 日に両側胸水穿刺を行うも翌日に再貯留を認め,両側 TAS を行った.妊娠 31 週 4 日にも再び両側 TAS を行ったが,妊娠 31 週 6 日に左胸水増加および胎児心拍低下のため帝王切開で出生した.バスケットを体表に認めたカテーテルは用手的に抜去したが,右胸壁内に遺残カテーテルを1 本認めた.胸部CT でバスケットの位置を確認し,右側胸部および背側の 2 方向よりバスケット内に増生した組織を剥離し抜去した.術前に CT でバスケットの位置を確認し同部が両側ともに胸壁内に存在する場合は両側からの剥離が有効と考えられた.
  • 杉山 彰英, 漆原 直人, 福本 弘二, 福澤 宏明, 渡邊 健太郎, 光永 眞貴, 草深 純一, 青葉 剛, 三宅 啓
    2013 年 49 巻 1 号 p. 48-51
    発行日: 2013/02/20
    公開日: 2013/02/20
    ジャーナル フリー
    Prune belly 症候群(本症)に対する腹壁形成術の報告は稀である.今回,我々は腹腔鏡補助下 Firlit 法による腹壁形成術を行った本症の 1 例を経験したので報告する.症例は 12 歳,男児.右側腹部に約 20 cm 大の膨隆を認めた.手術は臍部から5 mm トロッカーを挿入し,10 mmHg で気腹し,腹壁形成不全部の範囲を確認した.気腹下に右側腹の膨隆部に縦の皮膚切開を置き,筋組織が存在する部位まで皮下を剥離した.腹壁の縫縮は腱膜をアリス鉗子で把持牽引しながら,0 号非吸収編糸で水平マットレス縫合した後に,縫縮部の頂点同士を折りたたむように縫合した.腱膜の把持,縫合は腹腔内臓器を損傷しないように腹腔鏡観察下に行った.術後,創の一部に壊死を認めたが,自然軽快した.本術式は気腹により腹壁筋形成不全部の範囲が明瞭となるのみならず,腹腔鏡観察により腹腔内臓器を損傷することなく安全に縫縮でき有用であった.
  • 岩出 珠幾, 高見澤 滋, 瀬尾 尚吾, 町田 水穂, 好沢 克
    2013 年 49 巻 1 号 p. 52-56
    発行日: 2013/02/20
    公開日: 2013/02/20
    ジャーナル フリー
    成人では人工肛門閉鎖時に環状皮膚縫合法を行い,感染制御に優れている事,感染の有無に関わらず創部の整容性に優れている事が報告されているが,小児での報告例は少ない.我々は鎖肛根治術後の結腸人工肛門閉鎖時に環状皮膚縫合法を行ったので報告する.症例は 9 か月男児.中間位鎖肛に対して,生後1 日目に人工肛門造設,生後6 か月時に仙骨会陰式肛門形成術を施行.生後9 か月時に環状皮膚縫合法による人工肛門閉鎖を行った.人工肛門を仮閉鎖し,周囲皮膚を3 mm 程度残す形で環状切開した.腸管を吻合し,腹膜と筋膜は吸収糸にて閉鎖した.皮下は吸収糸で巾着縫合をかけ,皮膚は真皮に 3-0 ナイロン糸で巾着縫合をかけ,5 mm 程度の間隙をドレナージ孔として残した.術後は創感染を認めず,創長は人工肛門の長径のほぼ半分程度であり,創部の整容性に優れていると考えられた.小児の人工肛門閉鎖術における環状皮膚縫合法は,創感染予防において優れた方法と考えられた.
  • 森田 圭一, 津川 二郎, 石井 智浩, 佐藤 志以樹
    2013 年 49 巻 1 号 p. 57-61
    発行日: 2013/02/20
    公開日: 2013/02/20
    ジャーナル フリー
    症例は生後22 日,女児.右頸部腫脹を主訴に当院受診となった.MRI 検査で右頸部から縦隔にかけて 60 mm 大の囊胞性腫瘤を認めた.腫瘤が増大傾向を示したため,生後9 か月時に手術を行うこととした.手術に先立ち硬性気管支鏡検査を行い,右梨状窩瘻と診断した.瘻管内にガイドワイヤーを留置し,右頸部襟状切開で瘻管及び囊胞を完全切除した.術後合併症として右声帯麻痺を発症した.
    頸部へ連続する囊胞性縦隔腫瘤では,稀ではあるが梨状窩瘻が鑑別疾患のひとつとなる.手術は,反回神経損傷に留意する必要がある.
  • 野村 元成, 上原 秀一郎, 大須賀 慶悟, 東原 大樹, 大植 孝治, 福澤 正洋
    2013 年 49 巻 1 号 p. 62-65
    発行日: 2013/02/20
    公開日: 2013/02/20
    ジャーナル フリー
    我々は四肢と肩甲骨部の動静脈奇形(AVM)に対して血管内治療が有効であった 2 例を経験したので報告する.〈症例1〉15 歳男児.13 歳頃より運動時の右肩の疼痛を自覚し,徐々に右上肢挙上が困難になった.症状増悪のため14 歳で前医を受診し,造影 CT にて血管性病変を指摘されて当院紹介受診となった.血管造影にて右肩甲骨付近に nidus を認めたためAVM と診断し,計 3 回の TAE を行った.症状は若干軽快している.〈症例2〉15 歳女児.3 歳頃より左大腿後面に腫脹を認めるも症状なく経過.11 歳時に疼痛を認め,前医での画像検査にて AVM を疑われ当院紹介受診となり,TAE や無水エタノールによる硬化療法など計 3 回の血管内治療を行った.症状も軽快し画像上もnidus は著明に縮小している.AVM の治療目標として症状改善が重要であり,特に小児では低侵襲で複数回治療可能な TAE や硬化療法のような血管内治療が有効と考えられた.
  • 右田 美里, 向井 基, 加治 建, 山下 達也, 桝屋 隆太, 林田 良啓, 義岡 孝子, 松藤 凡
    2013 年 49 巻 1 号 p. 66-69
    発行日: 2013/02/20
    公開日: 2013/02/20
    ジャーナル フリー
    片側付属器切除術,卵巣腫瘍切除術後に対側正常卵巣捻転を発症した 2 例を経験した.症例1 は 11 歳女児.6 歳時に左正常卵巣捻転に対して付属器切除術を行った既往がある.右腰痛のため第 17 病日に当院搬送となった.来院時 3 cm 大であった右卵巣が第 24 病日には 7 cm 大に腫大しており緊急手術を行った.右卵巣は捻転壊死を起こしており,付属器切除術を行った.切除卵巣に腫瘍性病変はみられず正常卵巣捻転と診断した.症例2 は 15 歳女児.4 歳時に右卵巣成熟奇形腫に対して腫瘍切除術を行った.左側腹部痛の精査で左卵巣囊腫茎捻転を疑われ,当院搬送となった.左卵巣捻転を認め捻転解除術及び卵巣固定術を行った.右卵巣は消失していた.術後3 か月時に卵巣機能温存が確認された.正常卵巣捻転は典型的症状を欠き診断が困難である.肉眼的に捻転壊死の状態でも術後機能回復が高率にみられるため付属器を温存すべきである.
委員会報告
地方会
研究会
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