【目的】我々は小児外傷性脾損傷(以下本症)の血管外漏出,仮性動脈瘤に対し,interventional radiology の一つとして積極的に経カテーテル的動脈塞栓術(transcatheter arterial embolization:以下 TAE)を施行し,安定した保存的管理を可能としてきた.
【方法】1996 年 1 月から2011 年 12 月までの間に当院 ER に搬入された 15 歳以下の本症27 例(男児 23 例,女児 4 例,平均年齢 8.3 歳(1 歳~13 歳),単独損傷19 例)の臨床的検討を行った.
【結果】重症度は日本外傷学会分類 2008 からIa 1 例,Ib 2 例,II 3 例,IIIa 5 例,IIIb 16 例であった.開腹手術例は 1 例(IIIb),angiography 施行例は 11 例(IIIa 4 例,IIIb 7 例),そのうち TAE 施行例は 5 例(血管外漏出3 例,仮性動脈瘤 2 例)であり全例止血し保存的治療可能であった.単独損傷例は TAE 施行例(4 例)では保存的治療例(15 例)と比較して,来院時 Hb 値(10.5±3.1 vs 11.7±1.4 p=0.244)やrevised trauma score(7.58±0.5 vs 7.75±0.3 p=0.350)は同等であったが,injury severe score は有意差をもって高かった(14.0±3.8 vs 7.93±2.0 p=0.004).
【結論】解剖学的に重傷度の高い本症に対して TAE を施行することで安定した非手術管理を行うことが可能であった.しかし小児外傷診療体制の確立した施設や緊急 IVR が可能な施設は限られており,今後の普及が期待される.
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