日本小児外科学会雑誌
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51 巻, 2 号
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おしらせ
追悼文
原著
  • 瀬尾 尚吾, 高見澤 滋, 好沢 克, 町田 水穂, 岩出 珠幾
    2015 年 51 巻 2 号 p. 201-204
    発行日: 2015/04/20
    公開日: 2015/04/20
    ジャーナル フリー
    【目的】囊腫型消化管重複症(以下本症)では隣接する正常腸管を含めた全摘術が一般的に行われているが,回盲部温存のために粘膜抜去術が行われることがある.今回,自験例における粘膜抜去術と正常腸管合併切除術の成績について検討した.
    【方法】過去17 年間に当科で治療された9 例の消化管重複症(回盲部5 例,回腸4 例)を対象に,粘膜抜去術施行群(以下I 群),正常腸管合併切除群(以下II 群)に分け後方視的に検討した.
    【結果】全例が囊腫型であった.9 例中I 群は6 例(回盲部3 例,回腸3 例),II 群は3 例(回盲部2 例,回腸1 例)であった.それぞれの平均手術時間は127 分,145 分,平均出血量は42.0 ml,27.3 ml,平均経口摂取開始時期は術後4.0 日,5.3 日であった.II 群の内,回盲部切除を施行した1 例で術後の下痢を認めた.術後の合併症,再発は全例に認めていない.
    【結論】本症の治療において,粘膜抜去術と全摘術との間に明らかな成績の差はなく,粘膜抜去術は特に回盲部切除を回避する目的で選択すべき術式であると考えられた.
  • 矢本 真也, 福本 弘二, 宮野 剛, 納所 洋, 森田 圭一, 三宅 啓, 金城 昌克, 漆原 直人
    2015 年 51 巻 2 号 p. 205-212
    発行日: 2015/04/20
    公開日: 2015/04/20
    ジャーナル フリー
    【目的】先天性横隔膜ヘルニア(CDH)の出生前重症度指標についての数々の報告があるが,主に肺の容積を正確に計測することが重要視されている.今回,胎児心臓超音波を用いて,循環動態の視点から後方視的に検討したので報告する.
    【方法】1997~2012 年に当院で経験したCDH 胎児診断例中,複雑心奇形,多発奇形合併例を除いた左側症例27 例を対象とした.胎児心臓超音波での心胸郭面積比(CTAR),肺動脈弁/大動脈弁弁輪径比(PV/AV 比),三尖弁/僧帽弁弁輪径比(TV/MV 比)を計測し,正常群とCDH 群の比較と,CDH 群での転帰,生後24 時間での動脈管の血流方向について後方視的に検討した.
    【結果】正常群とCDH 群の比較ではCTAR,PV/AV 比,TV/MV 比の全てで有意差を認めた.生存例と死亡例の間にCTAR は有意差を認め(p=0.01),PV/AV 比は有意差を認めなかった.TV/MV 比は週数が進むに連れ,死亡例の値が上昇し,有意差を認めた(p<0.001).動脈管の血流方向では左→右,両方向,右→左でCTAR,PV/AV 比に有意差はなかったが,TV/MV 比で有意差を認めた.右→左の血流方向であった群は32 週以降,TV/MV 比の上昇を認めた.
    【結論】左心低形成の指標であるTV/MV 比は,32 週以降重症度を反映する結果となり,胎児心臓超音波検査はCDH 出生前重症度指標として有用であると考えられた.
  • 畑田 智子, 高見澤 滋, 好沢 克, 吉澤 一貴, 澁谷 聡一
    2015 年 51 巻 2 号 p. 213-217
    発行日: 2015/04/20
    公開日: 2015/04/20
    ジャーナル フリー
    【目的】18 トリソミー児には高率に食道閉鎖症を合併する.当院ではそれらの児に対し,母乳の投与を可能にすることを目的とした外科的介入を行っている.外科的介入を行った児の治療経過について報告する.
    【方法】C 型食道閉鎖症を合併した18 トリソミー児に外科的介入を行った13 例を対象とした.全例に胃瘻造設が行われており,胃瘻に加えて行った手術方法により以下の4 群に分けた.根治群:胃瘻造設+根治術,気管食道瘻(TEF)離断群:胃瘻造設+TEF 瘻離断術,banding 群:胃瘻造設+腹部食道結紮術,胃瘻群:胃瘻造設のみの4 群である.
    【結果】胃瘻造設に付加治療を行った群(根治術群,TEF 離断群,banding 群)では9 例中8 例(88.9%)で経腸栄養を継続することができたが,胃瘻群では4 例中1 例(25%)しか経腸栄養を開始できなかった.さらに,施行期間は2 日間のみであった.
    【結論】18 トリソミー児に食道閉鎖症を合併した場合,胃瘻造設術に加え,根治術やTEF 離断,食道banding 術などの付加手術を行うことにより,多くは栄養を開始・継続することができた.
症例報告
  • 荒井 勇樹, 窪田 正幸, 奥山 直樹, 仲谷 健吾, 大山 俊之, 横田 直樹
    2015 年 51 巻 2 号 p. 218-223
    発行日: 2015/04/20
    公開日: 2015/04/20
    ジャーナル フリー
    Chronic idiopathic intestinal pseudo-obstruction(CIIP)症例の長期生存例は少なく,当科で20歳となったCIIP 症例の治療関連合併症と外科治療の有用性に関して検討した.症例は,胎児期に異常を指摘されず,低出生体重児のためNICU 管理となるも,特に消化器症状を認めなかった.生後2 か月時,絞扼性腸閉塞にて小腸切除・人工肛門造設術が施行され,人工肛門は閉鎖された.しかし,腸閉塞症状を繰り返し,症状増悪時の入退院を繰り返した.9 歳時に当科転院し,経鼻的イレウスチューブと空腸瘻とでは腸管減圧が十分でなく,14 歳時に70 cm の空腸を残して小腸切除,右半結腸切除,空腸横行結腸側々吻合,単孔式空腸瘻を造設した.術後腸管減圧が良好となった.本症例において腸管短縮手術が,腸管内ドレナージを有効とし,静脈栄養関連合併症の発生予防にも有用と考えられた.
  • 古川 泰三, 千葉 史子, 坂井 宏平, 樋口 恒司, 文野 誠久, 青井 重善, 木村 修, 田尻 達郎
    2015 年 51 巻 2 号 p. 224-227
    発行日: 2015/04/20
    公開日: 2015/04/20
    ジャーナル フリー
    症例は,9 歳女児.1 か月前より右鎖骨上部の膨隆に気づき,次第に増大してきたため近医受診.頸部超音波検査にて,腫瘤は35 mm 径の囊腫状で血流を認めた.精査加療目的で当院へ紹介. Dynamic CT にて血流を認めたが,動脈相では造影効果は乏しくvenous aneurysm(VA)が疑われた.その後,怒責時に疼痛を認めるようになったため,摘出術を施行.右外頸静脈に連続する50×35 mm の腫瘤を認め,VA と診断.右外頸静脈を一部合併切除し摘出した.内腔には血栓形成を認めた.術後1 年半経過するが再発は認めていない.VA は,特に小児においては稀な疾患であり,varix とも異なる.頭頸部に発生する症例は無症状であることが多いが,本症例のように疼痛を伴う場合は切除すべきであると考える.
  • 大野 通暢, 中野 美和子, 吉田 史子, 遠藤 昌夫
    2015 年 51 巻 2 号 p. 228-233
    発行日: 2015/04/20
    公開日: 2015/04/20
    ジャーナル フリー
    診断に難渋した腸間膜発症組織球性壊死性リンパ節炎の症例報告.症例は手術歴のない14 歳男児.嘔吐,腹痛,下痢,発熱を主訴として小児科を受診し,腹部単純レントゲン写真で小腸全体に腸管麻痺像が認められたため入院となった.CT では腸管拡張が著明で腹水が貯留.明らかな腸管の狭窄はなく脈管の血栓もなかった.入院第5 病日でWBC 10,480/ml,CRP 6.58 mg/dl,CPK 3,722 IU/ l で,発熱が持続していた.絞扼性イレウスを疑って開腹したところ,混濁した腹水を認め,回腸末端から口側に約20 cm の漿膜発赤を伴う浮腫腸管を認めた.病変部と思われる腸管と腫大したリンパ節を生検して閉腹した.その後症状,検査所見共に著明に改善し,第13病日で退院となった.生検したリンパ節には,濾胞中央の壊死像と,周囲辺縁洞に核を貪食した組織球,腸管壁には散在する筋層の壊死像が認められた.
  • 洲尾 昌伍, 横井 暁子, 中尾 真, 尾藤 祐子, 荒井 洋志, 福澤 宏明, 西島 栄治
    2015 年 51 巻 2 号 p. 234-239
    発行日: 2015/04/20
    公開日: 2015/04/20
    ジャーナル フリー
    外傷性膵損傷のうち,主膵管損傷を伴うIIIb 型の治療方針に関してはいまだ標準的治療が確立されているとは言えず,治療法はそれぞれの施設の方針で異なっている.今回,膵断裂部-胃内瘻化にて,ドレナージ治療,さらに尾側膵温存を試みた2 症例を経験したので報告する.症例は14 歳男児と7 歳男児.いずれも日本外傷学会分類IIIb 型と診断し,保存的治療を試みたが改善せず,急性期の初回手術で膵断裂部のドレナージ,同時に膵断裂部-胃内瘻化を試みた.2 症例ともに術後の膵液瘻や腹腔内膿瘍などの合併症は認めず,ドレナージとしては良好な結果であったが,内瘻化には至らず,尾側膵の萎縮がみられている.膵断裂部-胃内瘻化には術式のさらなる工夫が必要である.
  • 出口 幸一, 曺 英樹, 米田 光宏, 田附 裕子, 山中 宏晃, 野村 元成, 松浦 玲, 福澤 正洋
    2015 年 51 巻 2 号 p. 240-245
    発行日: 2015/04/20
    公開日: 2015/04/20
    ジャーナル フリー
    横行結腸軸捻転症はまれな結腸捻転症の1 つであるが,小児例においては脳性麻痺や精神運動発達遅滞児の占める割合が高いことが知られている.我々はATR-X 症候群に発症した横行結腸軸捻転症の1 例を経験した.症例は17 歳,男児.3 歳時にATR-X 症候群と診断された.腹部膨満,経口摂取不良のため緊急入院となった.下部消化管造影検査にて横行結腸左側で造影剤の途絶を認め,CT にて横行結腸軸捻転と診断.経肛門的イレウス管にて減圧を試みるも捻転解除には至らず,緊急開腹術を行った.横行結腸は著明に拡張し,腸間膜を軸として180 度捻転していた.捻転部の横行結腸を切除し人工肛門を造設した.術後経過は良好で15 日目に経口摂取を再開した.術後6 か月の現在,良好なQOL を得ている.心身障害児の急性腹症では発見や診断が難しく重症化することが少なくない.心身障害児のイレウスにおいては,横行結腸軸捻転症も念頭に積極的に検索を行うことが重要である.
  • 川野 晋也, 千葉 正博, 中神 智和, 鈴木 孝明, 渡井 有, 土岐 彰
    2015 年 51 巻 2 号 p. 246-250
    発行日: 2015/04/20
    公開日: 2015/04/20
    ジャーナル フリー
    症例は日齢2 の女児.満期産,体重3,260 g で出生し,日齢1 に発症した腹部膨満,胆汁性嘔吐のため入院した.単純レントゲン写真で多発拡張小腸像と下腹部のsoap bubble 像,注腸造影でmicrocolon とそれに続く球状盲端を認めた.造影時,盲端は盲腸内に吹き流し様に突出し,注腸圧を下げると肛門側へ翻転した.先天性結腸膜様閉鎖症の診断のもと,上行結腸・盲腸を切開して膜切除を行い,transanastmotic tube に準じたカテーテルを留置の上,チューブ盲腸瘻を作成した.術後は盲腸瘻から減圧しつつ経口摂取を続け,術後66 日で退院した.盲腸瘻は回盲弁の逆流および回腸拡張像の消失を確認後,術後11 か月で閉鎖した.術後4 年の発育は身長・体重ともに正常範囲内である.閉鎖膜が注腸圧の加減により方向を変える逆吹き流し像は初の報告であり,稀な病態である本症の術前診断に有用な所見であった.
  • 臼井 秀仁, 新開 真人, 望月 響子, 武 浩志, 北河 徳彦, 宮城 久之, 中村 香織
    2015 年 51 巻 2 号 p. 251-254
    発行日: 2015/04/20
    公開日: 2015/04/20
    ジャーナル フリー
    先天性十二指腸狭窄症は一般に新生児・乳児期に嘔吐などの症状で発症する.幼児期以降に発症する場合も,消化管通過障害を呈することが多い.今回,通過障害を伴わず,反復性膵炎で発症した本疾患例を経験したので報告する.2 歳9 か月男児.半年前より反復性の背部痛を認めていた.超音波検査で十二指腸下行脚内腔の液体貯留と全周性壁肥厚を認め,上部消化管造影精査で十二指腸膜様狭窄症と診断した.内視鏡下にVater 乳頭対側の点墨と,狭窄部以遠へのelemental diet(ED)チューブ挿入を行い,安全かつ確実に腹腔鏡下膜切除術を施行しえた.
  • ―腹腔鏡下鼠径ヘルニア根治術と同時施行した4例―
    佐伯 勇, 大平 知世, 加藤 怜子, 向井 亘, 今冶 玲助, 秋山 卓士
    2015 年 51 巻 2 号 p. 255-258
    発行日: 2015/04/20
    公開日: 2015/04/20
    ジャーナル フリー
    乳児期に巨大臍ヘルニアを認める症例では,ヘルニア門が閉鎖して臍ヘルニアが治癒した後も余剰皮膚が多く残った状態となったり,臍輪が大きいまま残存したりすることで醜形を来すことが多い.今回乳児期早期に腹腔鏡下鼠径ヘルニア根治術(LPEC 法)を施行した女児のうち,巨大臍ヘルニアに対して同時に臍形成術を施行した4 例の結果を提示する.術前の臍輪のサイズは最大横径がそれぞれ30 mm,28 mm,27 mm,22 mm であったが,手術後1 か月で12~15 mm と全例で著明に縮小を認め,非常に美しい形態の臍となっていた.巨大臍ヘルニアに対して乳児期早期の根治術を行うことで,術後の臍輪の自然な収縮が期待できるため,2 歳を超えて手術をするよりも,明らかに美しい形態の臍を容易に形成することができる.巨大臍ヘルニアを有する児で臍を扱う手術が必要な際は,積極的に臍形成術も施行すべきである.
  • 梅田 聡, 窪田 昭男, 合田 太郎, 田附 裕子, 米田 光宏, 川原 央好
    2015 年 51 巻 2 号 p. 259-262
    発行日: 2015/04/20
    公開日: 2015/04/20
    ジャーナル フリー
    外鼠径ヘルニア修復術後の子宮円靭帯血腫のために行った再手術の際に内性器を腹腔鏡下に観察し,内鼠径輪近傍で卵管の屈曲を認めた1 例を経験したので報告する.症例は1 歳女児.右外鼠径ヘルニアに対しMitchell-Banks 法を施行した.術後2 日目より創部の膨隆が出現し,術後8 日目の超音波検査で右鼠径部に腫瘤像を認め,血腫が疑われ再手術を行った.開創すると,遠位側ヘルニア囊内に子宮円靭帯の血腫を認めた.腹腔鏡で観察すると,卵管は内鼠径輪の近傍に鋭角に屈曲し癒着していた.腹腔鏡下に卵管の屈曲を解除後,ラパヘルクロージャーTM を用いて腹膜鞘状突起を再修復した.鼠径管を開放せず外鼠径輪の外で高位結紮を行うMitchell-Banks 法術後においても年少女児では卵管を巻き込む危険性があり,女児の外鼠径ヘルニア修復術の際には,年齢に応じたヘルニア囊内腔の十分な確認による高位結紮が肝要であると考えられた.
  • 大矢知 昇, 尾花 和子, 鈴木 健之
    2015 年 51 巻 2 号 p. 263-267
    発行日: 2015/04/20
    公開日: 2015/04/20
    ジャーナル フリー
    鼠径部で発症したリンパ管腫が内鼠径輪より後腹膜腔に連続した稀な1 例を経験した.症例は5 歳女児.右鼠径部膨隆を認め鼠径ヘルニアを疑われ当院紹介.画像検査で鼠径管内に多囊胞性病変を認めたが,内鼠径輪直上腹腔側にも病変を認め鼠径管内病変と連続していた.後腹膜腔発症のリンパ管腫を疑い腹腔鏡観察下に手術を施行.後腹膜腔の囊胞性腫瘤は子宮円靭帯に付着しており鼠径部創より鼠径部腫瘤を牽引すると後腹膜腔病変も鼠径管内に滑脱し完全切除が可能であった.病理診断はリンパ管腫であった.手術を行う際,リンパ管腫は再発予防のため完全切除を要する疾患であり,その伸展様式の把握が必要で腹腔鏡下の確認は本症例の診断・治療に有用であった.
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