【目的】先天性横隔膜ヘルニア(CDH)の出生前重症度指標についての数々の報告があるが,主に肺の容積を正確に計測することが重要視されている.今回,胎児心臓超音波を用いて,循環動態の視点から後方視的に検討したので報告する.
【方法】1997~2012 年に当院で経験したCDH 胎児診断例中,複雑心奇形,多発奇形合併例を除いた左側症例27 例を対象とした.胎児心臓超音波での心胸郭面積比(CTAR),肺動脈弁/大動脈弁弁輪径比(PV/AV 比),三尖弁/僧帽弁弁輪径比(TV/MV 比)を計測し,正常群とCDH 群の比較と,CDH 群での転帰,生後24 時間での動脈管の血流方向について後方視的に検討した.
【結果】正常群とCDH 群の比較ではCTAR,PV/AV 比,TV/MV 比の全てで有意差を認めた.生存例と死亡例の間にCTAR は有意差を認め(p=0.01),PV/AV 比は有意差を認めなかった.TV/MV 比は週数が進むに連れ,死亡例の値が上昇し,有意差を認めた(p<0.001).動脈管の血流方向では左→右,両方向,右→左でCTAR,PV/AV 比に有意差はなかったが,TV/MV 比で有意差を認めた.右→左の血流方向であった群は32 週以降,TV/MV 比の上昇を認めた.
【結論】左心低形成の指標であるTV/MV 比は,32 週以降重症度を反映する結果となり,胎児心臓超音波検査はCDH 出生前重症度指標として有用であると考えられた.
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