日本小児外科学会雑誌
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57 巻, 4 号
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おしらせ
原著
  • 内田 豪気, 芦塚 修一, 杉原 哲郎, 梶 沙友里, 金森 大輔, 大橋 伸介, 黒部 仁, 大木 隆生
    2021 年 57 巻 4 号 p. 719-723
    発行日: 2021/06/20
    公開日: 2021/06/20
    ジャーナル フリー

    【目的】Nuss法は,現在多くの施設で漏斗胸に対する第1選択の術式となっているが,Nussバー抜去に関する文献は少ない.当院における手術手技に関して後方視的に検討を行った.

    【方法】1)対象

    当院にてNuss法を行い,2005年8月から2018年12月の間にペクタスバー®(メディカルU&A,以下バー)抜去を行った289例から除外基準として,バー留置継続困難症例,再手術症例,その他疾患同時手術症例,挿入時16歳以上とし最終的に184例を検討した.

    2)手術手技

    両側の創瘢痕よりバーを露出させリムーバルギアでストレート化し抜去している.胸部症状がなければ術後2日の経過観察のみで退院となる.

    【結果】手術時年齢は中央値14歳.平均手術時間は60.6分,出血量は10 ml未満162例,10~50 ml 8例,51~100 ml 11例,101~500 ml 3例であった.術中術後合併症はいずれの症例でも認めず,入院期間の延長を要する症例は認めなかった.

    【結論】計184例,274本のバー抜去を行ったが,合併症なく概ね良好な結果であった.Nuss法術後のペクタスバー抜去の手術手技として妥当であると考える.

  • 楯川 幸弘
    2021 年 57 巻 4 号 p. 724-729
    発行日: 2021/06/20
    公開日: 2021/06/20
    ジャーナル フリー

    【目的】急性虫垂炎の中には,臨床症状や検査所見から保存的治療が行われる症例がある.しかしながら保存的治療にて沈静化したのちに腹痛などの症状が再度出現し,虫垂炎の再燃とみられる症例が散見される.今回当院で経験した小児虫垂炎再燃症例について再燃予測因子について検討した.

    【方法】2014年4月から2019年12月まで,当院小児外科で虫垂炎と診断した135例において,手術例96例,再燃例11例,非手術例28例について後方視的に検討した.解析の分析はMann–Whitney U testおよびFisherの直接法による解析を用い,有意差をp<0.05とした.

    【結果】①年齢:それぞれ2群間で有意差は認めなかった.②腹部所見:それぞれの2群間において,腹部所見は特異的な所見ではなかった.③熱発(38°C以上):手術例―再燃例間と手術例―非手術例間で,有意差を認めた.④白血球数:手術例―非手術例間と再発例―非手術例間でそれぞれ有意差を認めた.⑤CRP値:手術例―再燃例間と手術例―非手術例間でそれぞれ有意差を認め,手術例では高い傾向にあった.⑥糞石の有無:手術例―非手術例間に有意差を認めた.⑦虫垂短径の最大径(超音波,CT):それぞれ2群間で有意差を認めた.再燃例と非手術例に関して,虫垂径8 mmをカットオフ値とすると,虫垂径8 mm以上症例の割合が,再燃例で11例中6例(55%)であり,非手術例28例中5例(18%)に比べ,有意に高率であった.

    【結論】初診時の画像所見で,虫垂短径の最大径が8 mm以上の場合に,臨床所見に乏しく保存的治療を先行し沈静化した後でも再燃の可能性があり,再燃後は積極的に手術を行うことが重要と考える.

症例報告
  • 藤井 俊輔, 増本 幸二, 五藤 周, 産本 陽平, 青山 統寛, 坂元 直哉, 瓜田 泰久, 新開 統子, 高安 肇
    2021 年 57 巻 4 号 p. 730-734
    発行日: 2021/06/20
    公開日: 2021/06/20
    ジャーナル フリー

    骨盤骨原発骨肉腫に対して照射前にスペーサー留置術を行うことで放射線性腸炎を予防できた1症例を経験した.症例は7歳の女児で,右腸骨を原発とする骨肉腫と診断され,化学療法が行われていたが,陽子線治療を併用した治療目的に当院紹介となった.腫瘍は腸管に近接しており,放射線性腸炎を回避するため,腹腔鏡下スペーサー留置術を行う方針となった.スペーサーとしてティッシューエキスパンダーとGore-Tex® sheetを組み合わせることで,固定が難しい部位にスペーサーを固定し,腸管と照射野の間に距離を置くことができた.腹腔鏡下スペーサー留置術は化学療法や陽子線治療の計画を遅延させることなく施行され,放射線性腸炎を発生させることなく陽子線治療を安全に施行することが可能であった.

  • 松久保 眞, 春松 敏夫, 武藤 充, 長野 綾香, 松井 まゆ, 矢野 圭輔, 山田 耕嗣, 山田 和歌, 加治 建, 家入 里志
    2021 年 57 巻 4 号 p. 735-741
    発行日: 2021/06/20
    公開日: 2021/06/20
    ジャーナル フリー

    症例は15歳男児.腹痛で前医を受診したが症状改善なく,同日深夜に当科に紹介受診となった.臨床症状と検査結果には特異的な所見を認めず,急性胃腸炎を疑い入院となった.腹痛は増悪傾向で,頻回の鎮痛剤投与を必要とした.発症45時間後に撮影した造影CT検査で,小腸間膜裂孔ヘルニアによる絞扼性イレウスと診断し緊急手術を施行した.開腹所見は,小腸間膜裂孔に回腸が約90 cm嵌頓し,嵌頓解除後も色調の改善を認めず壊死腸管の切除と裂孔の閉鎖を施行した.術後は良好に経過し,術後11病日に退院した.小腸間膜裂孔ヘルニアの術前診断は困難と言われている.自験例は術前の造影CT検査で小腸間膜裂孔ヘルニアの診断が得られたが,診断の遅れのため小腸切除を余儀なくされた.開腹歴のない腸閉塞例では,鎮痛剤の使用状況を含め症状の経過の注意深い観察の必要性を痛感したことより,反省を含めて報告する.

  • 菅井 佑, 飯沼 泰史, 平山 裕, 愛甲 崇人, 黒沢 大樹
    2021 年 57 巻 4 号 p. 742-747
    発行日: 2021/06/20
    公開日: 2021/06/20
    ジャーナル フリー

    経口内視鏡的筋層切開術(POEM)は成人の食道アカラシアでは第一選択の治療法となりつつあるが,小児の報告例は少ない.今回,内視鏡的バルーン拡張術(拡張術)後にPOEMを施行した小児症例を経験した.症例は15歳女児.1年前から続く嚥下困難感を契機に食道アカラシアと診断した.入院14日目に拡張術を施行したが効果は乏しく,経管栄養を導入し入院21日目に退院した.患児の受験が終わってから腹腔鏡下筋層切開術の方針としたが,精神的苦痛が強く待機困難と判断し,消化器内科の協力を得て初診から2か月後に他施設にPOEMを依頼した.手術では食道体部後壁5時の粘膜下トンネルから食道と胃の内輪筋を7 cm切開した.術後のEckardt scoreは6点から0点となった.術後5か月現在,症状の再燃は認めていない.POEMを行う際は小児外科医と消化器内科医の緊密な連携が求められる.

  • 小林 完, 平林 健, 齋藤 傑, 木村 俊郎, 袴田 健一
    2021 年 57 巻 4 号 p. 748-753
    発行日: 2021/06/20
    公開日: 2021/06/20
    ジャーナル フリー

    症例は8歳女児.1歳時から慢性便秘を呈していたが医療機関は受診していなかった.7歳時に突発的に腹痛を生じ,理学所見および画像検査よりS状結腸軸捻転症(sigmoid volvulus: SV)と診断した.全身麻酔下に内視鏡的捻転解除術が施行され,その後の注腸造影所見からS状結腸過長症の診断を得た.慢性便秘に対し緩下剤や漢方薬内服による排便管理を試みたが改善を認めなかった.初発から10か月後に再度SVを生じ,再び内視鏡的に解除した.SVを反復していること,慢性便秘が保存治療抵抗性であることから外科的治療の方針とした.8歳時に腹腔鏡補助下S状結腸切除術を施行し,S状結腸を20 cm切除した.術後は便秘が著明に改善した.S状結腸過長症はSVや慢性便秘の原因となり,QOLを低下させる要因となり得るため,症状のあるS状結腸過長症に対して外科的治療を選択することは妥当と考えられた.

  • 工藤 裕実, 富田 紘史, 吉田 史子, 中野 美和子
    2021 年 57 巻 4 号 p. 754-758
    発行日: 2021/06/20
    公開日: 2021/06/20
    ジャーナル フリー

    【症例】妊娠分娩経過に異常なく在胎40週で出生した女児.日齢1に突然腹部膨満が出現し,日齢2に腹部膨満の増悪,発熱,呼吸障害を認め当院NICUに搬送された.腹部単純X線写真で腹腔内遊離ガス像を認め,消化管穿孔の診断で緊急開腹手術を施行した.腹腔内は広範囲に汚染しており,十二指腸球部前壁に径5 mmの穿孔を認めた.腹腔内を洗浄後,穿孔部を大網充填術で閉鎖した.術直後からファモチジンを10日間投与し,術後5日目に経口哺乳を開始し,術後14日目に軽快退院した.【考察】新生児における消化管穿孔部位として十二指腸は稀で,手術治療は単純縫合閉鎖および大網被覆が報告されており,予後は他の穿孔部に比べ良好である.成人の消化性潰瘍穿孔においては,安全で必要な運針が少なく,大網の創傷治癒促進効果が得られる大網充填術も有用とされている.新生児十二指腸穿孔に対する大網充填術の報告はなく,文献的考察を加えて報告する.

  • 坂井 幸子, 嶋村 藍, 加藤 久尚, 河合 由紀, 清水 智治, 谷 眞至
    2021 年 57 巻 4 号 p. 759-764
    発行日: 2021/06/20
    公開日: 2021/06/20
    ジャーナル フリー

    正常肛門を有する直腸膣前庭瘻(以下本症)の手術は再発が多いことが問題である.我々は本症に対し会陰体形成による修復術(以下本法)を小児3例に行った.手術は砕石位で会陰部皮膚に横切開を加え深部へ剥離し会陰体に到達,瘻孔を摘出後,会陰体から左右側方に続く結合組織塊である会陰体外側延長部を同定し,これを左右から正中に牽引して深部から層々に縫合閉鎖して会陰体を再形成した.3例中2例で生後1か月時に陰唇腫脹の既往があり,瘻孔は前庭部に開口を認めた.1例は10歳頃に膣からガスが出ることを自覚,12歳時に膣から便がもれるようになり,術中前庭部左から歯状線頭側の直腸に走行する瘻孔を確認した.食事は前日夕まで可,術翌日より経口摂取を開始とし,全例で再発や感染,排便障害なく経過良好である.本法は瘻孔が明確でない症例や再発後の症例に対しても施行でき,周術期管理も簡便で再発が少なく,本症に対して有効な術式と考える.

研究会報告
研究会
あとがき
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