日本小児外科学会雑誌
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51 巻, 7 号
選択された号の論文の23件中1~23を表示しています
おしらせ
症例報告
  • 齋藤 江里子, 東本 恭幸, 佐藤 嘉治, 照井 慶太, 大橋 研介, 岩井 潤
    2015 年 51 巻 7 号 p. 1147-1152
    発行日: 2015/12/20
    公開日: 2015/12/20
    ジャーナル フリー
    症例は9 歳男児.乳児期より長期にわたり便汚染・失禁を認めており,画像検査では直腸を中心とする部分的な腸管拡張と同部位に巨大な便腫瘤をみとめた.摘便を施行後,直腸粘膜生検を施行し,Hirschsprung 病などの器質疾患は否定された.慢性便秘の最重症例として,以後の排便管理が重要と考えたが,父子家庭であること,患児が肛門操作にトラウマがあることなどより,保存治療の長期継続が困難な状況であった.このため家族の希望もあり,拡張腸管切除術を施行した.手術所見ではS 状結腸から直腸Rs 部にかけて著明な拡張を認め,30 cm の腸管切除を施行した.吻合は機械吻合で行った.術後の排便状態は良好で,社会生活における著明なQOL の改善が得られた.術後は内服薬などの保存治療を継続していたが,術後3 年6 か月で治療を終了した.小児重症慢性便秘症において,手術適応や術式には十分な検討が必要であるが,外科治療が有用となる症例があると思われた.
  • 渡邉 俊介, 鈴木 達也, 安井 稔博, 加藤 充純, 日比 将人, 原 普二夫
    2015 年 51 巻 7 号 p. 1153-1157
    発行日: 2015/12/20
    公開日: 2015/12/20
    ジャーナル フリー
    下腹部腫瘤とイレウス症状による急性腹症にて発症した腸間膜原発脂肪腫の6 歳4 か月女児例を経験した.腹部造影CT により,腸間膜の捻転を伴った長径10 cm の脂肪成分よりなる腫瘍が疑われ,腹腔鏡補助下の緊急手術を施行した.腫瘍は小腸間膜内に存在し,腫瘍を原因とした小腸捻転を認めた.腫瘍は腸管壁に接し腸管を圧迫していたため小腸とともに腫瘍を摘出した.病理組織診断は成熟脂肪細胞からなる脂肪腫であった.小児期における腸間膜腫瘍は脂肪芽腫の報告は見られるも,脂肪腫は非常に稀である.そのため術前の画像検査では鑑別は困難であった.術後7 か月経過した現在,再発は認めていない.
  • 城之前 翼, 河野 美幸, 安井 良僚, 押切 貴博, 高橋 貞佳, 桑原 強, 宮本 正俊, 酒井 清祥
    2015 年 51 巻 7 号 p. 1158-1163
    発行日: 2015/12/20
    公開日: 2015/12/20
    ジャーナル フリー
    陰囊部のリンパ管奇形様病変と左下肢浮腫を伴ったabdominoscrotal hydrocele(以下ASH)の乳児例を経験したので報告する.症例は3 か月,男児.母親が1 型糖尿病.在胎39 週,出生体重4,504 g の超巨大児で出生.出生時より陰囊の腫大を認めていた.1 か月健診で陰囊腫大を再度指摘され当科紹介となり,左精巣水瘤の診断で経過観察となった.生後2 か月時に陰囊腫大が増大し,超音波,MRI 検査で左ASH と陰囊部リンパ管奇形が疑われた.急速な増大と左下肢の浮腫が認められたため,ASH に対して根治術を施行した.術後,陰囊部リンパ管奇形様病変と左下肢浮腫の改善を認めた.巨大なASH の圧排が陰囊部・左下肢のリンパ還流と左下肢の静脈還流を障害したことで,陰囊部のリンパ管奇形様浮腫と左下肢浮腫が出現・増強したものと考えられた.
  • 溝田 陽子, 久守 孝司, 仲田 惣一, 田島 義証
    2015 年 51 巻 7 号 p. 1164-1167
    発行日: 2015/12/20
    公開日: 2015/12/20
    ジャーナル フリー
    卵黄囊腫瘍(yolk sac tumor)は3 歳以下の乳幼児に好発する悪性胚細胞腫瘍で,化学療法と手術療法により良好な予後が得られる.症例は,8 か月女児.オムツ内への出血を契機に骨盤内腫瘤を指摘された.画像上,原発部位が膣か子宮頸部かを特定できなかったが,AFP の上昇および開腹腫瘍生検の病理組織所見からyolk sac tumor と診断した.シスプラチン,エトポシド,ブレオマイシンの3 剤併用療法により腫瘍は縮小し,腟鏡および腟造影検査で腫瘍が膣原発であることを確認した.その後,妊孕性を担保するために膣温存腫瘍核出術を行い,術後にビンブラスチン,イフォスファミド,シスプラチンの3 剤併用療法を追加した.治療終了21 か月現在,再発を認めておらず経過良好である.膣原発yolk sac tumor は化学療法反応性が良好であり,妊孕性に配慮した膣温存手術により対処できる可能性がある.
  • 正林 大希, 飯干 泰彦, 西谷 暁子, 宇治 公美子, 山村 憲幸, 藤井 仁, 今里 光伸, 金 浩敏, 位藤 俊一, 伊豆蔵 正明
    2015 年 51 巻 7 号 p. 1168-1172
    発行日: 2015/12/20
    公開日: 2015/12/20
    ジャーナル フリー
    小児の急性胃腸炎に伴う十二指腸穿孔は稀であり,病態も明らかではない.当疾患の経過中に低リン血症を呈した幼児例を経験した.症例は3 歳男児.発熱と嘔吐に続く血性嘔吐で来院した.超音波,CT 検査にて消化管穿孔が疑われて開腹し,十二指腸球部に穿孔を認め,大網充填術を施行した.術前5 日間嘔吐を繰り返して経口摂取不良であったため,術後末梢静脈栄養を開始した.胃腸炎の遷延があり,脱水,電解質異常をきたし,血清リン濃度が2.1 mg/dl と幼児としては低値となった.リン酸ナトリウム投与により正常化した.嘔吐の遷延する急性胃腸炎の幼児で,経口摂取不良が続く場合,リンの計測が重要である.また,リンの基準値は小児では高く,留意すべきである.小児の胃腸炎の多くは重篤な合併症を起こさずに回復するが,低栄養,脱水,リンを含めた電解質異常や十二指腸穿孔を引き起こし,生命にかかわる場合もあり注意を要する.
  • 安井 稔博, 鈴木 達也, 原 普二夫, 渡邉 俊介, 宇賀 菜緒子, 直江 篤樹
    2015 年 51 巻 7 号 p. 1173-1176
    発行日: 2015/12/20
    公開日: 2015/12/20
    ジャーナル フリー
    小児鼠径ヘルニア嵌頓は小児外科領域で緊急手術の必要な急性腹症の1 つである.虫垂嵌頓例はAmyand’s hernia と称され稀である.今回我々が経験した2 例を報告する.症例1:1 か月25日男児.哺乳力低下と繰り返す嘔吐で当院小児科を紹介され腹部レントゲンでニボーがあり外科紹介となった.診察時に右鼠径部から陰囊に腫大あり.用手還納試みるも整復不十分であり,他のイレウスの原因も考慮し緊急手術にて臍部より腹腔鏡で観察したところ,右鼠径輪に虫垂・回盲部が嵌頓していた.腹腔内からの牽引と用手圧迫により整復した.症例2:11 か月男児.以前より左鼠径ヘルニアあり.待機手術の予定であったが,クループを発症して当院小児科へ入院となった.入院中に嵌頓し,用手整復困難なため緊急手術となった.鼠径法でアプローチし,ヘルニア囊内から虫垂・回盲部が認められた.
  • 佐藤 順一朗, 韮澤 融司, 浮山 越史, 渡辺 佳子, 鮫島 由友
    2015 年 51 巻 7 号 p. 1177-1180
    発行日: 2015/12/20
    公開日: 2015/12/20
    ジャーナル フリー
    歯牙腫はその大半が顎骨中に発生するとされ顎骨外に発生する症例は大変まれである.今回,頬粘膜に発生した1 例を経験したので報告する.症例は,日齢13 の男児,在胎41 週1 日,3,462 g で出生.出生時より右頬粘膜部に腫瘤を指摘されていた.哺乳,体重増加は良好で日齢13 に精査加療目的に当科に紹介された.腫瘤は径20 mm 大の弾性硬の有茎性腫瘤で右頬粘膜部を占拠していた.超音波検査では内部に石灰化を伴う類円形の低エコー像を示した.腫瘤の頭蓋内進展を検索するため頭頸部CT 検査を施行すると頭蓋内への進展はなく,口腔内に突出するように存在する石灰化を伴う15×10×17 mm 大の腫瘤を認めた.上顎体の疑いで生後3 か月に全身麻酔下で腫瘤を全摘出した.病理組織学検査で骨外性歯牙腫と診断された.術後経過は良好で現在外来通院中である.骨外性歯牙腫は大変まれな疾患であるが口腔内腫瘤の鑑別の1 つとして考慮すべきである.
  • 高橋 正貴, 藤野 明浩, 武田 憲子, 石濱 秀雄, 山田 耕嗣, 山田 和歌, 渡邉 稔彦, 田中 秀明, 渕本 康史, 金森 豊
    2015 年 51 巻 7 号 p. 1181-1185
    発行日: 2015/12/20
    公開日: 2015/12/20
    ジャーナル フリー
    症例は4 歳3 か月女児.2 日間の嘔吐と上腹部膨満を主訴に受診.単純レントゲンで胃軸捻症が疑われ,挿入に難渋した胃管から大量の血液流出をみとめた.腹部CT 検査で短軸方向の急性胃軸捻転と診断した.直ちに透視下・上部消化管内視鏡下に整復を施行し,捻転解除に成功した.内視鏡では胃体部~幽門部は虚血によると考えられる多発潰瘍を認めた.その後,虚血後変化と思われる瘢痕収縮で胃の通過障害を来し,1 か月後には流動物の通過も不能となった.手術治療も考慮に入れながら中心静脈栄養を併用して経過をみたところ,通過障害は徐々に改善し,4 か月後には食事摂取可能となった.6 か月後の上部消化管造影検査で再捻転のリスクがあるため腹腔鏡にて観察した.初発時の炎症性変化と考えられる胃底部と脾上極の癒着を認めたが,胃は可動性で再捻転の危険があるため,胃固定術を行った.術後経過は良好である.胃の虚血性障害の自然経過と治療について考察を加えた.
  • 牟田 裕紀, 植村 貞繁, 納所 洋, 久山 寿子, 山本 真弓, 吉田 篤史
    2015 年 51 巻 7 号 p. 1186-1189
    発行日: 2015/12/20
    公開日: 2015/12/20
    ジャーナル フリー
    膵・胆管合流異常(以下PBM)の家族性発症は非常に稀であり,その遺伝性は証明されていない.症例は8 歳女児.反復する腹痛のため来院した.家族歴として母に非拡張型PBM の,伯母に先天性胆道拡張症の既往がある.腹部超音波検査で胆囊頸部に先天性胆道拡張症(戸谷分類II 型)に類似した約2.5 cm の囊胞性病変を認めた.MRCP では囊胞に加えてPBM が疑われた.経胆囊的胆道造影を施行したところ胆囊管の囊腫状拡張と8 mm の共通管が描出された.胆囊管拡張を伴うPBM と診断し分流手術を施行した.病理組織学的には胆囊管の拡張と炎症を認めType VI choledochal cyst と診断した.Type VI choledochal cyst は海外での報告は散見されるがこれまでに本邦では報告されていない.またPBM の一部に遺伝性を有する可能性があり,濃厚な家族歴を持つ場合はPBM を念頭においた精査が必要であると考えられる.
  • 大野 幸恵, 菱木 知郎, 齋藤 武, 照井 慶太, 光永 哲也, 中田 光政, 三瀬 直子, 笈田 諭, 吉田 英生
    2015 年 51 巻 7 号 p. 1190-1197
    発行日: 2015/12/20
    公開日: 2015/12/20
    ジャーナル フリー
    胸膜肺芽腫は,胸腔内の間葉組織に由来し主に5 歳以下の小児に発症する稀な悪性腫瘍である.今回我々は,胸膜肺芽腫の治療後に腺腫様甲状腺腫を発症した1 例を経験したので報告する.症例は2 歳女児.左胸部痛,発熱を主訴に近医を受診し,胸部X 線,胸部CT にて左胸腔全体を占拠する巨大な充実性腫瘤を認め当科紹介となった.開胸腫瘍生検にて胸膜肺芽腫(type II)と診断した.遠隔転移は認めなかった.化学療法にて腫瘍の縮小をはかり,根治的腫瘍摘出術後,末梢血幹細胞移植を併用した大量化学療法を行い寛解に至った.治療終了から3 年4 か月後,甲状腺の両葉に多結節性の腫瘤を認め,甲状腺亜全摘術を施行した.術後残存甲状腺に再度多結節性腫瘤を認め,増大傾向であったため前手術から2 年後に甲状腺全摘術を施行した.病理診断はいずれも腺腫様甲状腺腫であった.初療から7 年を経過し胸膜肺芽腫,腺腫様甲状腺腫ともに再発を認めていない.
  • 佐々木 理人, 増本 幸二, 瓜田 泰久, 坂元 直哉, 五藤 周, 新開 統子, 高安 肇, 福島 敬, 須磨崎 亮
    2015 年 51 巻 7 号 p. 1198-1204
    発行日: 2015/12/20
    公開日: 2015/12/20
    ジャーナル フリー
    腫瘍亜全摘とhigh dose dexamethasone pulse 療法が有効であったOpsoclonus-myoclonus-ataxia 症候群(以下OMS)合併神経節芽腫の1 例を経験したので報告する.症例は1 歳男児,両眼の不規則な眼振と就寝直後の四肢痙攣,起立時のふらつきを主訴に当院を紹介受診し,OMS と診断した.原因検索のためのCT 検査で大動脈背側に接して存在する腫瘤を認めた.完全摘出は困難と判断し,可及的な腫瘍亜全摘を行った.病理診断は神経節芽腫であった.術後,経口high dose dexamethasone pulse 療法を開始し,3 クール目に症状の消失を認めた.21 クール施行した現時点で副作用,再発なく経過し,治療の終了を検討している.本症例のような神経芽腫に起因するOMS では,腫瘍全摘が困難な場合でも,可及的な腫瘍切除とその後の抗免疫療法を行うことで,症状の改善が可能と考えられた.
  • 福永 健治, 古川 泰三, 馬庭 淳之介, 三浦 紫津, 東 真弓, 坂井 宏平, 文野 誠久, 青井 重善, 田尻 達郎
    2015 年 51 巻 7 号 p. 1205-1209
    発行日: 2015/12/20
    公開日: 2015/12/20
    ジャーナル フリー
    毛髪胃石は,経口摂取された毛髪が胃で一塊となり残存したもので落下により腸閉塞を引き起こすことがある.今回,毛髪胃石による腸閉塞に対し,腹腔鏡と内視鏡を併用した小開腹術で胃石を全摘出した1 例を経験したので報告する.症例は5 歳女児.腹痛と嘔気のため当院紹介.腹部軽度膨満し,右側腹部に硬い腫瘤を触知.腹部造影CT 所見では腹水増量と腸管拡張を認めたため緊急手術を施行.腹腔鏡にて回腸内に異物が透見されるのが観察されたため,臍創部より閉塞部位を導出し腸管を切開して摘出したところ毛髪胃石を認めた.さらに上部消化管内視鏡で胃内に毛髪胃石が確認されたため,胃体部前壁を臍創部より引き出して切開し胃内毛髪胃石を摘出した.術後経過良好で,退院後も再発は認められていない.
  • 浅井 武, 青山 興司, 中原 康雄, 後藤 隆文, 岩村 喜信
    2015 年 51 巻 7 号 p. 1210-1213
    発行日: 2015/12/20
    公開日: 2015/12/20
    ジャーナル フリー
    症例は9 歳男児.出生時,総排泄腔外反症を認め,5 生日に膀胱腹壁閉鎖・人工肛門造設術(結腸末端)を施行,生後6 か月にチューブ膀胱瘻造設し管理をしていた.しかし,徐々に結腸の拡大を認め,時に入院管理を必要とする排便障害が持続するようになり手術の方針とした.手術はBianchi 法を応用して拡張結腸を長軸方向に2 分割し,片側の腸管で膀胱拡大術を行い,もう片側の腸管は断端を長軸方向に縫合閉鎖し腸管の狭小化を図り,その末端を人工肛門とした.術後経過は良好である.総排泄腔外反症では結腸が短く,水分吸収などを考慮すると初回手術では腸管は切除せず長く温存すべきである.しかし,拡張した短い結腸は蠕動障害や内容物の停滞,異常な腸内細菌の増殖などの腸管機能障害に繋がることも多い.また,閉鎖した膀胱も禁制を保つまで発達は望めない.今回これらの両方に対応すべく,Bianchi 法を応用して拡張腸管の狭小化と膀胱拡大術を施行し非常に良好な結果を得た.
  • 坂本 早季, 橋詰 直樹, 八木 実, 浅桐 公男, 深堀 優, 小島 伸一郎, 七種 伸行, 吉田 索, 西村 美穂, 上田 耕一郎
    2015 年 51 巻 7 号 p. 1214-1219
    発行日: 2015/12/20
    公開日: 2015/12/20
    ジャーナル フリー
    Growing teratoma syndrome(以下GTS)は非精細胞性胚細胞性腫瘍の化学療法施行中や施行後に腫瘍増大を示すも腫瘍マーカーは正常値で,病理学的は成熟奇形腫となる病態である.我々は卵巣原発の未熟奇形腫の術後,腹膜播種の化学療法後に成熟成分が増大したGTS に1 例を経験した.症例は11 歳女児.直径270 mm の腹部腫瘍を認め,卵巣未熟奇形腫と術前診断した.手術所見では右卵巣腫瘍を認め,腹腔内には転移播種が認められたため,右卵巣摘出術および付属器切除術を施行した.病理組織学的には未熟奇形腫であった.術後化学療法にて血清AFP 値は正常化したが,残存播種は増大したため残存腫瘍の減量術を施行し,病理組織学所見よりGTS と診断した.GTS は未熟奇形腫において稀に認められる病態であり,播種部位切除の完全切除困難な症例に関しては複数回の手術を余儀なくされる.自験例に根治切除困難例の治療方針および予後に対する考察を加え報告する.
  • 藤井 俊輔, 増本 幸二, 瓜田 泰久, 小野 健太郎, 佐々木 理人, 五藤 周, 新開 統子, 高安 肇, 田中 秀明
    2015 年 51 巻 7 号 p. 1220-1224
    発行日: 2015/12/20
    公開日: 2015/12/20
    ジャーナル フリー
    膵頭部くり抜きを伴う膵管空腸側々吻合術(以下Frey 手術)は,慢性膵炎に対する安全で効果的な外科的治療法として広く使用されているが,再手術の報告も散見される.今回我々は,小児期にFrey 手術を行い,膵炎再燃をきたし再手術を要した症例を経験した.症例は19 歳男性で,8 歳時より膵管癒合不全による膵炎を繰り返すようになり,11 歳時にFrey 手術が施行された.14 歳頃より膵尾部主体の膵炎を繰り返すようになり,19 歳時に膵尾部切除術が施行された.手術所見では,膵尾部周囲の癒着が強く,脾温存が困難であった.術後経過では,膵液瘻や癒着性イレウスを認め,再開腹を要したが,術後1 年を経過し,膵炎の再燃はない.Frey 手術は小児の慢性膵炎でも適用できる優れた外科的治療法であるが,膵炎再燃による再手術を回避するために工夫の余地があると考えられた.
  • 渡邉 佳子, 韮澤 融司, 浮山 越史, 鮫島 由友, 佐藤 順一朗
    2015 年 51 巻 7 号 p. 1225-1229
    発行日: 2015/12/20
    公開日: 2015/12/20
    ジャーナル フリー
    症例は1 歳,男児.右陰囊腫大を主訴に受診.超音波検査で右精巣内部に27×18×11 mm 大の囊胞様構造を認めた.良性精巣腫瘍を疑い核出術を施行した.病理組織所見は内腔を角化重層扁平上皮で覆われた囊胞で,類表皮囊胞と診断した.精巣類表皮囊胞は小児精巣腫瘍の中の約3%を占める比較的稀な腫瘍であるが特徴的な画像所見により術前診断が可能である.予後良好な疾患であり精巣温存を考慮すべき疾患と考えられる.
  • ―腹腔鏡観察下経膣的異物全摘除の経験―
    古田 繁行, 佐藤 英章, 辻 志穂, 眞鍋 周太郎, 北川 博昭
    2015 年 51 巻 7 号 p. 1230-1233
    発行日: 2015/12/20
    公開日: 2015/12/20
    ジャーナル フリー
    症例は8 歳,女児.半年間持続した膿血性帯下を主訴に来院した.MRI 検査で膣内異物の膣壁穿通を疑う所見を得た.異物の一部の膣外局在確認ならびに腹腔側からの処置に備え腹腔鏡下にダグラス窩を観察したところ,後膣円蓋付近から後腹膜腔に露出した異物と思われる腫瘤様隆起が透見された.膣鏡では膣壁の癒着により異物の観察ができなかったが,子宮鏡を用いて経膣的に異物の確認と全摘除をし得た.摘出異物は長さ1.5 cm の円錐型のプラスティック製玩具であった.異物挿入が性的虐待行為によることも疑われ,児童相談所員が調査したが,その可能性は低いと判断されたため経過観察となった.術後6 か月経過した現在,現在まで性的虐待行為の形跡はなく,帯下の再発も認めない.
委員会報告
地方会
研究会
総目次
あとがき
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