日本小児外科学会雑誌
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60 巻, 7 号
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おしらせ
原著
  • 田村 亮, 伊藤 綾香, 木戸 美織, 西田 翔一, 中村 清邦, 桑原 強, 廣谷 太一, 安井 良僚, 岡島 英明
    2024 年 60 巻 7 号 p. 969-977
    発行日: 2024/12/20
    公開日: 2024/12/20
    ジャーナル オープンアクセス

    目的:少子化のなか適正な小児外科専門医数は重要な問題である.増員は働き方の面などで利点があるが各専門医が経験できる症例数が不十分となることなどが危惧される.適切な議論には専門医の現況に関するデータが必要と考え,学会の専門医リストなどを元に検討した.

    方法:日本小児外科学会ホームページ『小児外科専門医のいる病院(認定施設・教育関連施設A・B・特定教育関連施設)』2024年1月1日版の専門医の卒後年数を厚労省医師等確認検索サイトから算出した.出生数および小児外科施設数と合わせ下記指標を地方毎に求めた.

    A.専門医充足度:1万出生あたりの専門医数

    B.施設集約および専門医集積:1施設あたりの出生数および専門医

    C.専門医の世代間バランス:卒後31年以上の専門医1人に対する卒後20年以下の専門医数

    D.若手教育のリソース:卒後20年以下の専門医1人が経験し得る年間出生数

    また,全調査施設における卒後年数別の専門医数および女性医師の割合を調べた.リストの使用は小児外科学会に確認した.さらに,諸外国における小児外科施設および小児外科医数の現況について検索を行った.

    結果:地方間で検討を行った4種類の項目では,約1.5~4倍の差を認めた.調査施設に在籍する専門医は卒後24年までが多く以後は急激に減少した.他国との比較で,本邦は1万出生あたりの小児外科医は多く,1施設あたりの小児外科医は少ない傾向であった.

    結論:各指標で地方間差を認めた.調査施設には若手専門医が多く,将来のポジションに懸念を認めた.本研究で専門医の現状の一端が明らかになり,今後の議論の一助となることを期待する.

症例報告
  • 柳田 佳嗣, 川嶋 寛, 出家 亨一, 竹添 豊志子, 八尋 光晴, 筒野 喬
    2024 年 60 巻 7 号 p. 978-984
    発行日: 2024/12/20
    公開日: 2024/12/20
    ジャーナル オープンアクセス

    先天性小腸閉鎖症の同胞発生例を経験した.【症例1】男児.35週6日2,860 gで第1子として出生した.出生後より胆汁性嘔吐を呈し,エコーで小腸軸捻転の所見を認め,緊急手術を施行した.所見としてはTreitz靭帯から85 cmの部位に離断型小腸閉鎖症と,同部位を起点とした小腸軸捻転を認めた.捻転解除し拡張小腸切除および吻合を施行した.【症例2】女児.35週1日2,696 gで第2子として出生した.出生後に低血糖を認め,当院搬送となった.レントゲンで拡張腸管を認め,小腸閉鎖症の疑いで緊急手術を施行した.所見としてはTreitz靭帯から100 cmの部位に索状型小腸閉鎖症を認めた.拡張腸管の切除および吻合を施行した.先天性小腸閉鎖症は5,000から10,000出生に1人の頻度で発生する新生児外科疾患である.一般的に家族性はなく同胞発生例は極めて稀であり文献的考察を加え報告する.

  • 原田 七海, 藤井 喬之, 田中 彩, 形見 祐人, 戸田 恵梨, 中條 浩介, 荻野 祐一, 近藤 健夫, 近藤 園子, 下野 隆一
    2024 年 60 巻 7 号 p. 985-989
    発行日: 2024/12/20
    公開日: 2024/12/20
    ジャーナル オープンアクセス

    前皮神経絞扼症候群:Anterior cutaneous nerve entrapment syndrome(ACNES)は10から18歳の慢性腹痛の約13%と一定数存在する.しかし,疾患の認知度はいまだ低いのが現状である.両側ACNESの外科的治療成績は片側例と比較して低い可能性があり,追加の治療が必要になる場合も多い.我々は診断に難渋した両側のACNES患児に対して神経切除術を行い,良好な結果が得られたため報告する.症例は12歳,女児.当科受診の4か月前から臍の左右を中心とした腹痛があった.血液検査や画像検査で異常は認めず,保存的治療は無効であった.Carnett徴候陽性であることや,トリガーポイント注射で一時的に痛みが軽減することからACNESと診断した.腹直筋の前後のレベルで神経切除術を行うと,術直後から痛みは消失した.両側のACNESに対する外科的治療において,腹直筋の前後のレベルで神経切除術を行うことは,根治性を高める可能性がある.

  • 久田 正昭, 馬場 徳朗, 林 裕樹, 狩俣 弘幸, 孝橋 賢一, 家入 里志, 小田 義直, 高槻 光寿
    2024 年 60 巻 7 号 p. 990-996
    発行日: 2024/12/20
    公開日: 2024/12/20
    ジャーナル オープンアクセス

    2歳3か月の女児.腹部膨満で前医を受診,触診で腹部全体に弾性軟の腫瘤が触知された.腹部造影CT検査で腹腔内を大きく占拠する脂肪成分に富んだ腫瘍性病変を認め,MRI検査では腫瘍は膵臓や右腎,右腸腰筋に広く接し,胃を頭側に腸管を左側に圧排して位置し,辺縁は平滑で周囲組織との境界は明瞭で明らかな浸潤所見はなかった.後腹膜もしくは胃結腸間膜や大網原発の脂肪腫または脂肪肉腫,脂肪芽腫が疑われ,開腹手術にて全摘した.腫瘍は胃結腸問膜から大網の右半分に広がるような大網脂肪性腫瘍であり,右胃大網動脈の分枝が栄養血管となっていた.病理所見では脂肪芽腫と診断された.脂肪芽腫のうち,腹腔及び後腹膜に発生するのは5%程度と言われているが,大網に発生する脂肪芽腫は極めて稀である.脂肪肉腫との術前の鑑別が難しく,原則として完全切除が必要で不完全切除例では再発が報告されており,術後経過観察も重要である.

  • 古賀 翔馬, 川久保 尚徳, 近藤 琢也, 馬庭 淳之介, 玉城 昭彦, 濵田 洋, 福田 篤久, 永田 公二, 松浦 俊治, 田尻 達郎
    2024 年 60 巻 7 号 p. 997-1003
    発行日: 2024/12/20
    公開日: 2024/12/20
    ジャーナル オープンアクセス

    症例は17歳女性.下腹部痛を主訴に前医受診し,画像検査の結果,虫垂周囲膿瘍または虫垂腫瘤の疑いで当院紹介となった.術前検査からは確定診断に至らなかったが,虫垂悪性腫瘍の可能性を念頭におき腹腔鏡下回盲部切除術を行った.術中迅速組織検査の結果,adenocarcinomaであることが判明したため,D2リンパ節郭清術,右付属器切除術,後腹膜部分切除術を追加し,一期的に手術を完遂した.病理検査の結果,固有筋層までの浸潤に留まっておりリンパ節転移は認めなかった.頻度は非常に低いが,非典型的な経過や画像所見を認める患者においては,若年者であっても悪性腫瘍の可能性を考慮することが重要である.

  • 小西 快, 井口 雅史, 髙山 勝平, 金 聖和, 文野 誠久, 小野 滋
    2024 年 60 巻 7 号 p. 1004-1008
    発行日: 2024/12/20
    公開日: 2024/12/20
    ジャーナル オープンアクセス

    今回われわれは,残存小腸0 cmの乳児超短腸症候群の1例に対して,初回手術術式の工夫および厳格な栄養管理を行い,良好な経過を得たので報告する.症例は生後8日,女児.腸回転異常に伴う中腸軸捻転による腸管壊死に対して,全小腸および右半結腸を切除し,十二指腸は盲端とし,残存結腸を粘液瘻とした.胃管にて十二指腸盲端を減圧し,2か月時に再開腹したところ十二指腸の拡張と延長を認め,結腸と側端吻合を行った.また,中心静脈カテーテルを3か月毎に左右の内頸静脈を入れ替えて留置し,EQは60~70 kcal/kg/dayと低めに設定し管理した.生後6か月で在宅管理となり,体重増加は平均6.0 g/日であったが,1歳3か月からテデュグルチド投与を開始し,平均18.0 g/日と上昇した.本症例では術式の工夫とテデュグルチド使用により良好な体重増加を得た.引きつづき長期的なフォローアップを行っていく.

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