【目的】胎児期に腸管穿孔などで発症する胎便性腹膜炎(以下, 本症)において, その病態形成が胎盤所見に反映されているのではないかと考え, 小腸閉鎖症および'matched pair'を対照とし, 周産期情報および胎盤所見を検討した.【対象と方法】1982∿98年までの間に手術所見から本症と診断した13例をM群とした.対照として同期間で同様に小腸閉鎖症と診断した21例をI群とし, M群と在胎週齢および出生体重をあわせた非手術例13例をC群とした.在胎週齢および出生体重に3群間で有意差はなかった.周産期情報として前置胎盤, 早期破水, 羊水混濁, 羊水過多, 血中CRP, IgMをI群と比較した.胎盤所見として肉眼的には胎盤重量, 臍帯の長さおよび径, 臍帯の付着異常, 色調異常, 単一臍帯動脈, メコニウム沈着, 血栓・梗塞の合併の有無を, 組織学的には絨毛膜羊膜炎, 臍帯炎, 絨毛炎の合併の有無を選びI群およびC群と比較した.【結果】周産期情報としてM群に特徴的なものは認められなかった.CRP, IgMにも2群間で有意差はなかった.肉眼的胎盤所見では血栓・梗塞の合併がM群に有意に多かった.血栓・梗塞を合併する症例では, 非合併例と比べ出生体重が有意に低かった.組織学的胎盤所見では臍帯炎の合併がM群に有意に多かった.またLorimerの病型別に臍帯炎合併の有無, IgM値の比較を行ったが有意差はなかった.【結論】本症には血栓・梗塞, 臍帯炎の合併の多いことが明らかとなった.特に臍帯炎は胎児由来の炎症反応であり, その病態を考察する上で重要な所見と考えられた.
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