日本小児外科学会雑誌
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51 巻, 1 号
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おしらせ
学術集会記録
原著
  • 田中 彩, 下野 隆一, 久保 裕之, 藤井 喬之
    2015 年 51 巻 1 号 p. 45-50
    発行日: 2015/02/20
    公開日: 2015/02/20
    ジャーナル フリー
    【目的】胃食道逆流症(以下GERD)は重症心身障害児(重心児)に合併することが多く,QOL や生命予後を左右する因子として重要であるが,重心児では症状の訴えが明確でないため診断は容易ではない.これまでGERD の診断にはpH モニタリングが標準的に用いられてきたが,この方法は食道内のpH 変化を測定するためnon-acid reflux は検出できなかった.今回われわれは逆流物のpH に影響されない24 時間多チャンネルインピーダンス-pH モニタリング(MII/pH) を用いて重心児でのGERD の特徴を検討した.
    【対象と方法】6 例の重心児(男:女4:2)においてMII/pH を施行し結果を解析した.年齢の中央値は15.5(12~28)歳で,経口摂取1 例,経鼻胃管栄養4 例,胃瘻栄養1 例であった.各症例においてpH index,bolus exposure index,acid reflux/non-acid reflux 回数,proximal reflux 回数を解析した.
    【結果】6 症例での総逆流回数は499 回でacid reflux は440 回(88.1%),non-acid reflux は59回(13.4%)であった.pH index は5 例がカットオフ値4.0%を超えていた.Bolus exposure index は5 例がカットオフ値1.4%を超えていた.全例でnon-acid reflux が観察されたが,全例でacid reflux の割合が優位であった.また,proximal reflux は3 例で50%を超えていた.
    【結論】重心児のGERD にもnon-acid reflux が関与しており,MII/pH は重心児の胃食道逆流(GER)評価に有用であると考えられた.
  • 高間 勇一, 上野 豪久, 井深 奏司, 上原 秀一郎, 曺 英樹, 臼井 規朗, 福澤 正洋, 奥山 宏臣
    2015 年 51 巻 1 号 p. 51-57
    発行日: 2015/02/20
    公開日: 2015/02/20
    ジャーナル フリー
    【目的】先天性門脈体循環シャントは,門脈血が直接体循環へ流入することで高アンモニア血症,肝肺症候群,肝性脳症などを来す疾患である.無症候性の場合もあるが有症状例にはシャント血流遮断が必要となる.当院で施行した先天性門脈体循環シャントに対する外科治療をまとめ,安全性と有用性について検討する.
    【方法】2000 年1 月から2012 年12 月に外科治療を施行した5 例を対象とした.術前状態,術中門脈圧や術後経過を,診療録をもとに後方視的に検討した.一期的結紮術の適応は,シャント血管結紮後の至適門脈圧に関する明確な基準がないため,我々は結紮後の門脈圧が25 mmHg まで,結紮前後の圧較差が5 mmHg まで,消化管に肉眼的に鬱血所見を認めないこと,の3 点を適応範囲とした.
    【結果】手術時年齢は1 歳7 か月から8 歳.男児4 例,女児1 例.診断契機は高ガラクトース血症が3 例,門脈欠損の疑いが1 例,チアノーゼと肝機能異常が1 例.術前高アンモニア血症(71~134 mg/dl.平均94 mg/dl)は全例に認めた.肝腫瘍,脳症,脳内病変は認めなかった.肺高血圧症は1 例に認めた.シャントは全例肝外シャントであった.術中シャント血管試験結紮時門脈圧は13~30 mmHg(平均20.8 mmHg)であった.術式は,4 例が一期的に結紮を施行し,門脈圧30 mmHg の1 例は開腹バンディングを行った後に二期的に結紮術を施行した.全例術後合併症なく経過した.
    【結論】全例とも術後はシャントによる症状は消失し,また術中術後合併症は認めていない.自験例では今回基準とした適応範囲で先天性門脈体循環シャントに対するシャント血管結紮術は安全有用に施行し得た.
症例報告
  • 大澤 俊亮, 土岐 彰, 千葉 正博, 鈴木 淳一, 杉山 彰英, 菅沼 理江, 中山 智理, 田中 彩, 小嶌 智美, 渡井 有
    2015 年 51 巻 1 号 p. 58-63
    発行日: 2015/02/20
    公開日: 2015/02/20
    ジャーナル フリー
    症例1 は1 歳,女児.右鼠径ヘルニアの診断で手術を行った.臍部より3 mm トロッカーを挿入し,気腹すると,右内鼠径輪左側に4 cm 大の囊胞を認めた.囊胞は開大した内鼠径輪と連続しており,腹腔内に脱出したNuck 管水瘤と考えられた.腹腔鏡下経皮的腹膜外ヘルニア閉鎖術(LPEC)の手技に準じて縫合糸を通した後に,内容液を経皮的に穿刺吸引した.次に臍部創を延長し,3 mm ポートを追加し,囊胞を切離した.腹膜鞘状突起を閉鎖し,手術を終了した.症例2 は1 歳,女児.右Nuck 管水瘤の疑いで,症例1 と同様に腹腔内を検索すると,右内鼠径輪左側に2 cm 大の囊胞を認めた.LPEC 針を腹腔内に穿刺し,囊胞を先端のループに通して牽引しながら切除し,腹膜鞘状突起を閉鎖した.過去に腹腔内囊胞を伴う小児Nuck 管水瘤の報告はみられない.今後,LPEC の普及により発見される機会は増加すると考えられ,対処法を確立する必要がある.
  • 松田 諭, 矢内 俊裕, 済陽 寛子, 川上 肇, 平井 みさ子, 連 利博
    2015 年 51 巻 1 号 p. 64-68
    発行日: 2015/02/20
    公開日: 2015/02/20
    ジャーナル フリー
    症例は2 歳の女児で,約6 週間の発熱を主訴に当院へ紹介となった.右下腹部の上前腸骨棘内側に腫瘤を触知し,超音波検査および造影CT にて長径6 cm 大の右腸腰筋膿瘍を認めた.腹腔鏡にて検索したところ,虫垂および卵巣は正常で,隣接する盲腸にも異常所見を認めず.他の感染源を認めなかったため原発性腸腰筋膿瘍と考えられた.膿瘍の穿刺吸引および抗生剤投与では症状が改善せず,小切開によるドレナージにより速やかに解熱をえた.穿刺やドレナージは,腹腔鏡の所見をもとに腹膜外アプローチで安全に施行することが可能であった.膿の細菌培養検査では起因菌は同定できなかった.自験例を含めた本邦での小児腸腰筋膿瘍17 例の集計では,原発性が53%で,起因菌はS. aureus が53%であり,治療法として切開や穿刺によるドレナージが71%に施行されていた.
  • ―フック型ワイヤーの使用経験―
    奈良 啓悟, 大植 孝治, 上原 秀一郎, 上野 豪久, 大割 貢, 臼井 規朗
    2015 年 51 巻 1 号 p. 69-73
    発行日: 2015/02/20
    公開日: 2015/02/20
    ジャーナル フリー
    腎芽腫微小肺転移巣に対し,フック型ワイヤーを使用しCT ガイド下マーキングを行い摘出した症例を経験したので報告する.症例は3 歳の女児.右腎原発の腎芽腫で,両側肺および骨髄に転移していた.まず原発巣の右腎腫瘍摘出術を施行した.その後,化学療法および放射線治療を行い,骨髄転移は消失したが,肺転移巣が1 か所残存し,治療方針を決定するため摘出することとした.しかし,病巣は小さく,肉眼での確認が困難と考えられたため,CT ガイド下でマーキングをしたのち胸腔鏡下に摘出した.本症例では,肺転移巣は肉眼でも触診でも確認できず,CT ガイド下マーキングは有効であった.
  • 中堀 亮一, 宗﨑 良太, 木下 義晶, 手柴 理沙, 三好 きな, 孝橋 賢一, 田口 智章
    2015 年 51 巻 1 号 p. 74-79
    発行日: 2015/02/20
    公開日: 2015/02/20
    ジャーナル フリー
    Wilms 腫瘍は主に小児にみられる腎悪性腫瘍であり,その中でも腎外性Wilms 腫瘍は稀な疾患である.多くの他の小児悪性腫瘍と同様に,無症状であることが多いが,腹痛時に腹部腫瘤を触知し偶然発見されることもある.症例は6 歳女児,特記すべき既往歴なし.腹痛で近医を受診した際に左側腹部腫瘤が発見され,精査加療目的に当科紹介となった.腹部CT で左下腹部に腎との連続性のない8 cm 大の充実腫瘤を認めたが,遠隔転移は認めなかった.後腹膜原発の悪性腫瘍を疑い,腫瘍切除術を施行したところ,病理組織所見で腎外性Wilms 腫瘍と診断された.腎原発Wilms 腫瘍と比較した腎外性Wilms 腫瘍の予後に関して定まった見解はなく,また本邦においては,その治療法について未だ確立されたプロトコールもないため,治療プロトコールの早期確立が望まれる.
  • 福澤 宏明, 武本 淳吉, 玉城 昭彦, 森田 圭一, 岩出 珠幾, 大片 祐一, 遠藤 耕介, 尾藤 祐子, 横井 暁子, 前田 貢作
    2015 年 51 巻 1 号 p. 80-86
    発行日: 2015/02/20
    公開日: 2015/02/20
    ジャーナル フリー
    先天性胆道拡張症に対する根治術により多くの症例は問題なく経過するが,胆管・膵管に絡む合併症の報告も散見される.胆管系・膵管系合併症例を初回手術時の膵・胆管合流形態を含め後方視的に検討した.1995 年4 月から2013 年12 月に当院で先天性胆道拡張症手術を施行されたのは105 例あり,その中で胆管系合併症を5 例,膵管系合併症を3 例に認めた.胆管系合併症5 例のうち3 例に肝内結石を認め,これらの症例は左右肝管起始部に相対的な狭窄を認めていた.膵管系合併症の2 例に拡張した共通管内に蛋白栓を認めた.これら2 例の膵・胆管合流形態は,拡張した共通管に非常に細い下部胆管が直角に合流する形態(新古味分類Ib)であった.膵管系の合併症のもう1 例は,不完全型膵管癒合不全を合併しており副乳頭切開が施行された.非常に拡張した共通管を持つ症例の中に,術後共通管内に蛋白栓を認め膵炎を発症するものがあり注意が必要である.
  • 中堀 亮一, 岩中 剛, 伊崎 智子, 山内 健, 生野 猛
    2015 年 51 巻 1 号 p. 87-90
    発行日: 2015/02/20
    公開日: 2015/02/20
    ジャーナル フリー
    腹腔鏡下手術後のポートサイトヘルニア(port site hernia:以下PSH)は比較的稀な合併症の1 つであり,10 mm 以上のポート孔や高齢者や女性に多いとされてきた.今回我々は乳児の腹腔鏡補助下手術後に5 mm ポート孔に発生したPSH を経験したので報告する.症例は5 か月男児.高位鎖肛に対して生後1 日目に人工肛門造設,生後2 か月時に人工肛門のprolapse に対し人工肛門再造設術を施行し,生後5 か月時に腹腔鏡補助下腹仙骨会陰式肛門形成術(ハイブリッド手術)を施行した.術後2 日目に左側腹部の5 mm ポート挿入創周囲の腹部膨隆と嘔吐が出現した.イレウスチューブを挿入したが腹部膨隆等に改善は認めなかった.術後4 日目に腹部エコーにてポート挿入創周囲の腹壁内への腸管脱出を認めPSH による腸閉塞と診断した.同日,緊急手術を施行し,ポート挿入部の筋膜の小孔から皮下に脱出した腸管を認め,整復した.PSH は予防し得る合併症のひとつであり,5 mm ポート孔においても,腹膜から筋層を含む筋膜までの確実な閉鎖を行う必要がある.
  • 山根 裕介, 田浦 康明, 小坂 太一郎, 大畠 雅之, 永安 武
    2015 年 51 巻 1 号 p. 91-95
    発行日: 2015/02/20
    公開日: 2015/02/20
    ジャーナル フリー
    直腸脱は骨盤支持組織の脆弱化によって直腸粘膜の一部または直腸全層が肛門より反転脱出する疾患である.保存的治療が優先されることが多いが,無効時には外科治療が選択される.今回,腹腔鏡下直腸固定術を施行した1 例を経験した.症例は5 歳男児.直腸粘膜脱と診断されGant-三輪法が施行されたが,早期に粘膜脱出症状が再燃した.精査加療目的に当科に入院し,診断・治療を兼ねた腹腔鏡手術を選択した.術中所見で深いダグラス窩と長くたるんだ直腸を認め,完全直腸脱と診断し腹腔鏡下直腸固定術を施行した.術後経過は良好で,再発所見を認めていない.直腸脱に対する腹腔鏡下手術は,低侵襲性・整容性の面から有用であると思われた.
委員会報告
地方会
研究会
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