【目的】当科では2001 年以降,食道閉鎖症に対しては基本的に腋窩弧状切開法(以下Bianchi 法)を行ってきた.そこでBianchi 法による食道閉鎖症で手術を行った症例をlong-gap 症例とshort-gap 症例に分け,後方視的にその有用性と問題点を検討した.
【方法】対象は2001 年以降にBianchi 法によりC 型食道閉鎖根治術を行った16 例である.これを食道の上下端の距離(gap)が20 mm 以上の4 例をlong-gap 群,20 mm 未満の12 例をshort-gap 群として2 群に分け,合併奇形,術式,手術時間,術後合併症について後方視的に比較検討した.
【結果】食道閉鎖以外の合併奇形を有する症例の割合はshort-gap 群で42%,long-gap 群で50%であった.手術時間は術中気管支鏡検査の時間を含めてshort-gap 群で平均219.2±49.7 分,long-gap 群で平均291.3±51.4 分であった.術後合併症はshort-gap 群では気管食道瘻(TEF)の再開通と縫合不全に伴う吻合部狭窄を各1 例に認めた(2/12=17%).Long-gap 群では縫合不全を2 例,TEF の再開通を1 例に認めた(3/4=75%).両群とも創部は腋窩に隠れ,また上肢の挙上や胸郭の変形もなかった.
【結論】Long-gap 群はshort-gap 群と比べ手術時間は長く,合併症も多かった.この原因としては視野の悪さが要因の一つであると考えられた.今後,long-gap 症例は腋窩弧状切開後に肋間切開を通常の肋間より尾側の第5,第6 肋間に変更するか胸腔鏡補助下に視野を確保する工夫が必要であると思われた.
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