【目的】我々は,小児虫垂炎に対し,臍切開のみで行うWoundless法(以下本法)を基本術式として施行してきた.今回,本法の有用性を検討したので手技を含め報告する.【対象と方法】本法は,臍切開部から腹腔鏡と鉗子を同時に挿入し,臍より虫垂を脱転し腹腔外にて虫垂切除を行う方法で,切開は臍のみである.対象は,2005年8月から2009年3月までに虫垂炎の診断にて手術を行った86例.本法のみで手術を終えた症例をwoundless群,他の術式へ移行した症例を移行群とした.本稿では重症例を虫垂周囲膿瘍または汎発性腹膜炎を伴っていた症例と定義し,それ以外は軽症例とした.【結果】全86例中,軽症例67例,重症例19例で,woundless群は68例(79.1%)で,移行群は17例(19.8%),巨大膿瘍のため最初から開腹手術を施行した症例が1例(1.2%)であった.Woundless群の内,軽症例が66例,重症例2例であった.移行群は重症例16例で,1例は軽症例であった.Woundless群の手術時間は34.7±12.5分,術後入院期間は2.2±0.9日であった.移行群はそれぞれ92.5±22.0分,4.9±2.9日であった.術後合併症は,遺残膿瘍がwoundless群1例,移行群2例,開腹症例1例の計4症例で,創感染は,Woundless群の遺残膿瘍を認めた1例のみに見られた.【結論】本法は,整容上優れ,軽症例のほとんどの症例において本法のみで切除可能であった.重症度に応じ順次,気腹法および開腹術に移行可能であり,本法は小児虫垂切除において,標準術式になりうると考えられる.
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