日本小児外科学会雑誌
Online ISSN : 2187-4247
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56 巻 , 7 号
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おしらせ
原著
  • 安井 良僚, 木戸 美織, 中村 清邦, 桑原 強, 岡島 英明, 河野 美幸
    2020 年 56 巻 7 号 p. 1055-1060
    発行日: 2020/12/20
    公開日: 2020/12/20
    ジャーナル フリー

    【目的】我々は総排泄腔外反症に対し消化管再建,結腸瘻造設,膀胱形成,尿道形成,骨盤骨切り術を行わずに恥骨接合および腹壁形成を行う一期的修復術を施行している.われわれの行っている術式および術後管理の詳細を呈示し,自験例の術後経過を報告する.

    【方法】1990年より2019年までに経験した6例を対象とした.修復術は出生後48時間以内に行い,術後早期から抗コリン薬内服および清潔間欠カテーテル導尿(CIC)を導入した.術後の合併症や膀胱容量,尿禁制獲得の有無を検討した.

    【結果】男児4人,女児2人で,現在の年齢は3~26歳(平均11.3歳)であった.臍帯ヘルニアを4例,脊髄髄膜脂肪腫など脊髄病変を全例に認めた.全例で骨切り術なしで恥骨の接合は可能であったが,肝脱出を伴う巨大臍帯ヘルニアの1例で術後腹部コンパートメント症候群を生じた.術後早期に尿道カテーテルの事故抜去を起こした症例では尿道狭窄のため膀胱瘻造設を要した.術後遠隔期には2例で腸閉塞解除術,1例で人工肛門再造設術,膣形成術を行った.尿禁制獲得について,3例で7~10歳時に患者本人によるCICが確立し,10~15歳で膀胱容量は200 mlを越え,このうち2例で尿禁制獲得のための手術を要さずにCIC間のdry timeを得られた.

    【結論】当院における修復術後と術後管理により,骨切り術を伴う多段階閉鎖や膀胱拡大術など複数回の手術を行わず尿禁制を獲得できる可能性がある.

  • ―糞石の有無と切除虫垂内2点からの塗擦液の細菌培養結果の検討から―
    渡邊 峻, 松寺 翔太郎, 山口 岳史, 谷 有希子, 荻野 恵, 中島 政信, 森田 信司, 山口 悟, 土岡 丘, 小嶋 一幸
    2020 年 56 巻 7 号 p. 1061-1067
    発行日: 2020/12/20
    公開日: 2020/12/20
    ジャーナル フリー

    【目的】急性虫垂炎において,虫垂内の糞石より盲端側は閉鎖腔を形成しているとされる.しかし,糞石の有無と虫垂内腔の細菌叢の関連は十分に解明されていない.そのため,小児急性虫垂炎症例における,切除虫垂内2点から採取した塗擦液の細菌培養結果と糞石の有無の関連の後方視的検討から,糞石を有する症例における抗菌薬選択を検討した.

    【方法】2017年10月1日から2019年9月30日までの2年間,当科で急性虫垂炎に対し急性期に虫垂切除術を施行した15歳以下の全症例を対象とした.切除虫垂の断端(根部)に滅菌済みスワブを挿入した後,小切開した虫垂先端(端部)からも別のスワブを挿入し内腔を塗擦し,それぞれ細菌培養した.画像上明瞭な糞石を有する群を有石群,有しない群を無石群とし,患者背景,塗擦液の細菌培養でコロニーを形成した菌種について後方視的に検討した.

    【結果】対象症例は有石群15例,無石群12例であり,平均在院日数が有石群で長期であったほか,患者背景に有意差はなかった.組織学的に評価した病期にも有意差はなかった.塗擦液の細菌培養の検出数上位9菌種の分布を比較検討すると,有石群の根部と有石群の端部,有石群の端部と無石群の端部の比較において,有石群の端部で有意に多く偏性嫌気性菌であるBacteroides属が検出されていた.検出された菌種の総計では好気性菌よりも嫌気性菌の方が多かったが,いずれも検出部位には差を認めなかった.

    【結論】有石性虫垂炎ではBacteroides属が病態に関与している可能性があり,特に糞石を有する穿孔性虫垂炎ではその感受性を考慮して抗菌薬を選択する必要があると考えられた.

  • 大野 幸恵, 岩井 潤, 文田 貴志, 勝海 大輔, 光永 哲也
    2020 年 56 巻 7 号 p. 1068-1073
    発行日: 2020/12/20
    公開日: 2020/12/20
    ジャーナル フリー

    【目的】小児慢性機能性便秘症(以下本症)では,はじめに便塞栓の有無を診断し,その除去を確実に行うことが重要とされる.今回,便塞栓例の臨床像と経直腸治療を中心とする便塞栓除去法の有効性について検討した.

    【方法】当科を受診した1歳以上の本症138例中,便塞栓を呈した48例を対象とし,患者背景,症状・徴候,便塞栓除去法とその有効性について後方視的に検討した.便塞栓除去方法は,患児・家族に十分に説明を行った上で家庭での経直腸治療(グリセリン浣腸(以下GE)もしくはビサコジル座薬)と経口緩下剤内服を基本とし,約2週後の外来受診時に治療効果を判定した.

    【結果】初診時年齢は2歳,発症年齢は1歳前後が多く,病悩期間は約90%が1年以上であった.本邦の本症診療ガイドラインに記載されている便塞栓を疑うべき症状・徴候の頻度は,「画像上直腸に便塊を認める」が96%と最も高く,また90%の症例で合致項目が2項目以上であった.外来治療を行った44例中39例はGEを施行,5例は座薬を使用し,40例(90.9%)で便塞栓が除去された.便塞栓除去不成功4例中3例はGEが施行できておらず,そのうち1例は再度の教育により施行を徹底することができたが,2例は受容困難であった.もう1例はGEのみでは効果不十分で摘便を追加した.

    【結論】GEもしくは座薬による便塞栓除去治療は,事前に十分な説明・教育を行うことでほとんどの本症患児が受容可能であった.また,約90%の例で便塞栓除去に成功し,有用な方法と考えられた.

  • ―自験343例の前方視的検討―
    伊藤 泰雄
    2020 年 56 巻 7 号 p. 1074-1081
    発行日: 2020/12/20
    公開日: 2020/12/20
    ジャーナル フリー

    【目的】哺乳障害を伴う新生児,乳児に対する舌小帯切開および上唇小帯切開の有用性を前方視的に検討する.

    【方法】2015年7月からの4年間に武蔵野徳洲会病院小児外科で手術した哺乳不良,乳頭痛,乳腺トラブルを伴う舌小帯,上唇小帯短縮症343例を対象に,病型分類,重症度評価,手術術式,術後の症状改善率,親の満足度を前方視的に検討した.舌小帯短縮症の手術適応は独自に考案した舌小帯評価スコア(10点満点)で7点以下,上唇小帯はKotlow分類でClass III以上とした.両小帯とも表面麻酔あるいは局所麻酔後に眼科用剪刀で切開した.

    【結果】男児は女児の1.5倍と多く,遺伝性を48%に認めた.受診理由は,哺乳不良312例,乳頭痛148例,乳腺トラブル110例,体重増加不良23例であった.手術術式の内訳は舌小帯のみ切開41例,舌小帯と上唇小帯の両小帯切開271例,上唇小帯のみ切開31例であった.舌小帯の病型は舌先端型14%,前方膜型48%,テント型20%,後方型18%であった.舌小帯スコアの平均は4.5点だった.術後1か月の症状改善率は哺乳不良92.5%,乳頭痛80.9%,体重増加不良61.9%であった.哺乳不良と乳頭痛の改善率に術式による差はみられなかったが,上唇小帯のみの切開でも哺乳不良と乳頭痛がそれぞれ85%,81.2%改善した.手術1か月後の満足度調査では30.6%が「満足」,66.2%が「とても満足」と回答した.

    【結論】舌小帯および上唇小帯切開によって哺乳障害が高率に改善され,親の高い満足度が得られた.また舌小帯切開の適応はなくても上唇小帯が乳頭歯肉に達している場合は上唇小帯切開が哺乳障害を改善することが示された.

  • 田中 聡志, 服部 健吾, 岩渕 瀬怜奈, 髙成田 祐希, 渡部 彩, 辻 恵未, 久松 千恵子, 津川 二郎, 西島 栄治
    2020 年 56 巻 7 号 p. 1082-1087
    発行日: 2020/12/20
    公開日: 2020/12/20
    ジャーナル フリー

    【目的】小児縦隔気腫は比較的稀な病態で,その背後に外傷による気管・気管支損傷,食道穿孔などが潜んでいる可能性から入院加療とすることが多い.治療は安静が基本で,縦隔炎予防のため抗菌薬を投与されることがあるが,明確な治療指針は確立されていない.当院での小児縦隔気腫症例を検討し,治療指針を提案する.

    【方法】2005年9月から2018年11月の間に当院で縦隔気腫と診断された小児症例を対象に,患者背景,臨床症状,誘因,画像検査,経過等について診療録から後方視的に検討した.

    【結果】対象は男児8例,女児1例.発症年齢は4歳から14歳(中央値7歳).主訴は胸痛が5例と最多で,その他背部痛や咽頭痛がみられた.誘因は喘息発作が5例と最多で,外傷が2例,大声を出したことによると思われるものが1例,原因不明が1例であった.全例胸部レントゲンで診断しており,6例はさらに胸部CT,うち1例は外傷による臓器損傷の有無を確認するために造影CTを施行した.また嚥下困難を訴えた1例では食道造影を行った.入院は8例で,外傷の1例と重症喘息発作1例が小児集中治療室(PICU)に入室した.入院期間は3~8日(中央値4日)で,全例安静のみで症状は改善し,4例で抗菌薬の投与が行われた.いずれも縦隔炎の併発及び縦隔気腫の再発は認めなかった.

    【結論】縦隔気腫は安静のみで軽快し,入院日数は喘息の治療や外傷などの経過観察により規定されていた.近年,小児縦隔気腫に対しては必ずしも入院加療は必要ではないという報告があり,バイタルサインや誘因によって治療方針を決定することを提案する.

症例報告
  • 三村 和哉, 青井 重善, 竹内 雄毅, 坂井 宏平, 東 真弓, 文野 誠久, 古川 泰三, 田尻 達郎
    2020 年 56 巻 7 号 p. 1088-1092
    発行日: 2020/12/20
    公開日: 2020/12/20
    ジャーナル フリー

    特に既往歴のない11歳男児が,2日前からの嘔吐と腹痛を主訴に前医を受診した.腹部造影CT検査で内ヘルニアによる腸閉塞を認め,当科へ転院後,緊急開腹術を施行した.術中所見で腸回転異常症および,Treves’ fieldに生じた前葉欠損型の腸間膜内ヘルニアと最終診断した.腸回転異常症に合併する内ヘルニアは,右傍十二指腸ヘルニアが大半を占めるが,ヘルニア囊が大きく,またヘルニア門が十二指腸近傍まである場合は,腸間膜内ヘルニアも似た術中所見を認めるため,慎重な鑑別を要する.

  • 鈴木 琢士, 本多 昌平, 河北 一誠, 荒 桃子, 武冨 紹信
    2020 年 56 巻 7 号 p. 1093-1098
    発行日: 2020/12/20
    公開日: 2020/12/20
    ジャーナル フリー

    【はじめに】小児の腸重積症は,年齢とともに発症頻度は低下するが,器質的疾患を伴う頻度は増加すると報告されている.今回われわれは,悪性腫瘍を先進部とした年長小児の腸重積症を2例経験したので,文献的考察を加えて報告する.【症例1】13歳男児.1年前から認めていた腹部症状が増悪し精査したところ,多発小腸腫瘍,回腸結腸型の腸重積症の診断となり手術を施行した.先進部は骨髄肉腫であった.【症例2】13歳男児.2か月前から腹痛を認め,精査にて回腸結腸型の腸重積症の診断となり手術を施行した.先進部はBurkittリンパ腫であった.【結語】年長小児の腸重積症においては,悪性疾患を含めた器質的疾患の存在を疑い検索を行うことが重要である.

  • 竹内 優太, 井上 成一朗, 小高 明雄, 牟田 裕紀, 菊地 淳, 別宮 好文, 加部 一彦, 馬場 一憲
    2020 年 56 巻 7 号 p. 1099-1103
    発行日: 2020/12/20
    公開日: 2020/12/20
    ジャーナル フリー

    女児で稀な先天性会陰部脂肪腫を2症例経験したので報告する.症例1は出生体重3,442 gの女児.在胎19週の胎児超音波で会陰部腫瘤を指摘された.在胎40週5日経腟分娩で出生した.肛門縁に連なる腫瘤を認められた.会陰部脂肪腫と診断し,日齢30に腫瘤切除術を施行した.病理組織所見上,腫瘍は主に成熟した脂肪細胞で構成され一部に筋型血管や末梢神経に類似した構造も含まれた.症例2は出生体重3,462 gの女児.在胎30週の胎児超音波で会陰部腫瘤を指摘された.在胎41週3日経腟分娩で出生した.腫瘤は会陰から突出し,基部は大陰唇に連続していた.中間位鎖肛の合併を認め,まず人工肛門を造設し,日齢35に腫瘤切除術を施行し,日齢196に鎖肛根治術を施行した.病理組織所見上,腫瘤は主に成熟した脂肪細胞組織からなり,一部に脂肪芽細胞や異所性軟骨を含んでいた.鎖肛合併の有無に対応し,それぞれ手術術式と時期を選択した.形状や病理組織所見には異なる特徴を認めた.

  • 橋本 晋太朗, 片山 修一, 内田 皓士, 豊岡 晃輔, 大倉 隆宏, 今井 剛
    2020 年 56 巻 7 号 p. 1104-1109
    発行日: 2020/12/20
    公開日: 2020/12/20
    ジャーナル フリー

    小児外科領域において,肝外グリソン鞘一括先行確保による肝切除術の報告は過去にない.今回我々は肝芽腫腫瘍破裂に対する肝切除術において,肝外グリソン鞘一括先行確保により安全に手術を施行し,術後合併症なく経過した症例を経験したので報告する.症例は,生来健康の4歳男児で,腹痛と頻回の嘔吐を主訴に当院救急外来を受診し,腹部造影CTならびにMRIで肝左葉を占める巨大な腫瘍を認め,肝芽腫腫瘍破裂の診断(PRETEXT II)となった.血液検査所見,全身状態が落ち着いていたため化学療法先行の方針となったが,化学療法開始翌日に腫瘍の再破裂を来たしたため,緊急で肝左葉切除術を施行した.術中,肝外グリソン鞘一括先行確保の後に肝切除を行い,安全な手術が可能であった.術後も合併症は特に認めず良好に経過し,術後5か月目に退院となった.術後3年現在,再発は認めておらず生存中である.

  • 北田 智弘, 林 宏昭, 諸冨 嘉樹
    2020 年 56 巻 7 号 p. 1110-1113
    発行日: 2020/12/20
    公開日: 2020/12/20
    ジャーナル フリー

    多房性囊胞性腎腫(multilocular cystic nephroma)は腎の囊胞性疾患のなかでは非常に稀な良性腫瘍である.症例は肉眼的血尿を主訴に来院した1歳女児で診察にて手拳大の腹部腫瘤を発見され,血液検査にてCA19-9高値,超音波,CT,MRIで尿管瘤を合併したmultilocular cystic nephromaと診断.腎摘出術を行い術後3年再発なく経過しており,ここに報告する.

  • 野村 皓三, 梶原 啓資, 植村 光太郎, 鮫島 由友, 河原 仁守, 磯野 香織, 森田 圭一, 福澤 宏明, 中尾 真, 前田 貢作
    2020 年 56 巻 7 号 p. 1114-1122
    発行日: 2020/12/20
    公開日: 2020/12/20
    ジャーナル フリー

    胸骨裂は胸骨の先天異常により発生する比較的稀な疾患である.症例1:2歳女児.呼吸時に頸部が突出するため当科を紹介受診した.上部胸骨裂と診断し,手術を行った.胸骨櫛の軟骨膜を剥離したが,緊張が強く,一部肋軟骨を切離した.胸骨下部癒合部は楔状切除し,軟骨膜,大胸筋膜を閉鎖後,胸骨閉鎖を行った.術後8日目に退院した.症例2:2か月女児.出生後より胸骨上窩の陥凹に気づかれ,当科を紹介受診した.完全胸骨裂と診断し,手術を行った.軟骨膜を剥離・閉鎖後,下部はほとんど癒合を認めず,完全に離断した.胸腺右葉を摘出し,一部肋軟骨を切離し,胸骨を閉鎖した.初回閉鎖時に血圧低下を認め,カテコラミン投与下に閉鎖を行った.術後9日目に退院した.胸骨裂は診断がつき次第,新生児・乳児期の手術が望ましいとされているが,周術期の呼吸循環管理に難渋する症例も散見されるため,手術時期,術式の検討が肝要である.

  • 鈴木 健斗, 文野 誠久, 古川 泰三, 竹内 雄毅, 竹本 正和, 坂井 宏平, 東 真弓, 青井 重善, 田尻 達郎
    2020 年 56 巻 7 号 p. 1123-1127
    発行日: 2020/12/20
    公開日: 2020/12/20
    ジャーナル フリー

    Tension gastrothoraxは,遅発性横隔膜ヘルニアに起こりうる病態で,胸腔内に脱出した胃に,食道胃接合部の捻れと胃流出路閉塞が出現することで,胃拡張から縦隔偏位,閉塞性ショックを来し,初診時対応が遅れると重篤な経過を辿りうる.当院でこれまで治療を行った3例について報告する.2か月男児においては左気胸を疑われて胸腔穿刺されたところ胃内容が吸引され救急搬送となり,緊急開腹術を施行した.3歳男児においては,腹痛と嘔吐で発症し胃腸炎の診断で入院となったが,第3病日に腹痛増悪と意識状態悪化を認め,搬送途中で心肺停止となり死亡した.4か月男児では嘔吐と機嫌不良で発症しその後頻呼吸を呈し,胃管による緊急減圧の後に胸腔鏡下根治術を施行した.Tension gastrothoraxの救命には,診断が疑われれば,ただちに胃管挿入を試み,それが不能な症例は躊躇なく胸壁より胃を穿刺して緊急減圧処置を行うことが最も重要と考えられた.

  • 小野 健太郎, 産本 洋平, 増本 幸二
    2020 年 56 巻 7 号 p. 1128-1132
    発行日: 2020/12/20
    公開日: 2020/12/20
    ジャーナル フリー

    症例は5歳男児.在胎41週,2,990 gで出生後,肛門皮膚瘻の診断で日齢0に会陰式造肛術が施行された.その際,尿道と瘻孔の剥離が十分できず,肛門を前方気味に形成する結果となった.術後便秘に対して3歳時にanterior sagittal anorectoplasty(ASARP)法で外肛門括約筋の中心に肛門を再形成したが,その後も浣腸によってしか排便が得られず,S状結腸の過長および直腸の高度拡張を呈していた.これらの病的腸管における蠕動障害が便秘の原因であると判断し,5歳時に拡張直腸のtaperingを伴う開腹S状結腸切除術を施行した.術後経過は問題なく,術後12日目に退院した.術後3年の現在,定期的な浣腸は不要となり,緩下剤の頓服のみでほぼ毎日排便が得られ,QOLが著しく向上した.過長なS状結腸および拡張直腸の切除は,その他の疾患が除外された難治性便秘例では,非常に有効である可能性が考えられた.

  • 鳥飼 源史, 松久保 眞, 春松 敏夫, 大西 峻, 山田 耕嗣, 川野 孝文, 義岡 孝子, 連 利博, 加治 建, 家入 里志
    2020 年 56 巻 7 号 p. 1133-1138
    発行日: 2020/12/20
    公開日: 2020/12/20
    ジャーナル フリー

    症例は日齢60女児.日齢40頃より灰白色便と黄疸を認めるようになり,前医で胆道閉鎖症(以下本症)を疑われ,当科に入院となった.身体所見で全身の黄疸と肝腫大を認め,血液検査で直接ビリルビンの上昇と肝機能異常を認めた.超音波検査で胆囊の萎縮とtriangular cord signが確認され,胆道シンチでは核種の腸管内排泄を認めなかった.本症が強く疑われたため,日齢67に試験開腹術を施行した.術中所見では萎縮した胆囊と索状の肝外胆管,肝門部の結合組織塊を認め,本症(III-b1-ν)と診断し葛西手術を施行した.病理検査では肝門部結合織内の微小胆管構造の周囲に異所性軟骨組織を認めた.異所性軟骨を伴った本症の症例報告はこれまでにも散見され,発生学的異常や炎症による軟骨化生などが発症要因として推測されているが,原因は明らかとなっていない.異所性軟骨を伴った本症の症例報告をまとめて文献的考察を行った.

  • 川野 正人, 武藤 充, 長野 綾香, 松井 まゆ, 矢野 圭輔, 大西 峻, 山田 耕嗣, 山田 和歌, 加治 建, 家入 里志
    2020 年 56 巻 7 号 p. 1139-1143
    発行日: 2020/12/20
    公開日: 2020/12/20
    ジャーナル フリー

    遊走脾と脾臓固定不良に起因する胃軸捻転の合併はよく知られるが,脾臓固定のみで胃軸捻症状が制御可能かどうかは不詳である.我々は,retroperitoneal pouch法による遊走脾固定術後に胃壁固定の追加を要した2例を経験した.【症例1】3歳女児.脾結腸間膜と脾腎間膜の欠損,胃脾間膜の伸展をみとめた.臓器軸性胃捻転解除と脾固定を行った.食思不振と胃泡の拡張が残り,術後43日目に胃壁固定を追加した.【症例2】9歳男児.脾固定時,脾臓支持靭帯は4つ全て欠損していた.吃逆,腹痛が解消せず胃軸捻転と自然整復を繰り返していると想定し術後337日目に胃壁固定を追加した.遊走脾固定のみではいずれもゆるい臓器軸性胃捻転が残り,患児らの愁訴を解消できなかった.胃脾間膜の異常は,脾臓固定後も胃軸捻転素地として留意すべきであると考えた.遊走脾固定手術の際には,胃壁固定も同時に行うことが望ましいと考えられた.

  • 髙澤 慎也, 西 明, 小山 亮太, 則内 友博, 菊地 健太, 外松 学
    2020 年 56 巻 7 号 p. 1144-1149
    発行日: 2020/12/20
    公開日: 2020/12/20
    ジャーナル フリー

    症例は上腹壁腫瘤を主訴とする4歳3か月の男児.画像検査上腫瘤は筋層にあり,境界不明瞭で約4×2 cm大であった.生検で診断後に切除縁をつけて肉眼的に全摘したが,術後4か月で腫瘤再発を認めた.再発腫瘤を左肋弓合併広域切除し,術後に低用量のvinblastineとmethotrexateによる化学療法が施行されたが,再手術後5か月で腫瘤の再々発を認めた.再々発腫瘤を可及的切除した後にvincristine, actinomycin D, cyclophosphamide(VAC)療法と放射線療法(60 Gy)を行ったところ,画像検査で腹壁に異常信号の残存を認めるものの腫瘍増大を抑えることができた.その後7年経過し,照射野外で腫瘍が2 cm大に増大してきたので切除,放射線照射(60 Gy)を行ったが,さらに照射野外に再発を認め,追加照射(50 Gy)を行って経過をみている.

  • 菅沼 理江, 森井 真也子, 蛇口 琢, 渡部 亮, 東 紗弥, 山形 健基, 林 海斗, 水野 大, 大塚 美穂子, 吉野 裕顕
    2020 年 56 巻 7 号 p. 1150-1155
    発行日: 2020/12/20
    公開日: 2020/12/20
    ジャーナル フリー

    症例は7歳男児.腹痛と嘔吐を主訴に小児科を受診.腹部単純X線検査でイレウス像,腹部超音波検査で腹腔内充実性腫瘍を認め,入院した.CTとMRIで腸間膜脂肪腫と診断,保存的治療で腸閉塞は軽快し,待機的手術を施行した.回腸末端より80 cm口側の小腸間膜に境界明瞭で辺縁平滑な被膜を有する黄色調の弾性軟腫瘍を認め,腫瘍を含めた小腸合併切除術を施行した.腫瘍は大きさ8.5×8.0×3.0 cm,病理組織学的検査で成熟脂肪細胞よりなる腸間膜脂肪腫と診断された.本症は弾性軟の脂肪腫が可動性のある腸間膜に発生し,大きさや局在により腸閉塞の発症と解除を繰り返すことがある.本症例では,幼児期より認めた反復する腹痛が手術により改善し,体重増加が得られた.腸間膜脂肪腫は稀な疾患であるが,繰り返し発症する腸閉塞により小児の成長発育障害をきたす可能性がある.小児における反復性腹痛や発育不良は器質的疾患を疑うべき重要な所見であると考えられた.

  • 都築 行広, 北河 徳彦, 新開 真人, 山崎 雄一郎, 望月 響子, 臼井 秀仁, 下木原 航太, 藤井 俊介, 河北 一誠, 篠原 彰太
    2020 年 56 巻 7 号 p. 1156-1160
    発行日: 2020/12/20
    公開日: 2020/12/20
    ジャーナル フリー

    Amyand’s hernia(AH)は,虫垂を内容とする鼠径ヘルニアを病態とした稀な疾患で,術前診断は難しいとされる.精巣上体炎との鑑別に苦慮するも,CTで術前診断できた症例を経験したので報告する.症例は1歳3か月,男児.右鼠径部の膨隆,右陰囊の発赤腫脹を主訴に来院した.精巣上体炎と診断し,経口抗菌薬で保存的加療を開始したが,臨床所見は改善しなかった.第6病日に,超音波画像で認めた鼠径管内索状物の精査目的に造影CTを撮影し,虫垂炎を伴うAHと診断,手術を施行した.鼠径法でアプローチすることで,鼠径管内の膿瘍による汚染を腹腔内へ波及させることなく,虫垂切除術と鼠径ヘルニア手術を同一術野から完遂した.精巣上体炎と診断した初診時の超音波検査を後方視的に検討すると,鼠径管内に脱出した虫垂が細い索状物として同定できたが,この時点でAHと確定診断することは難しく,CTが術前診断に有用であった.

  • 田中 尚, 新開 統子, 増本 幸二
    2020 年 56 巻 7 号 p. 1161-1166
    発行日: 2020/12/20
    公開日: 2020/12/20
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    症例は日齢30の女児.在胎37週4日,2,160 gで出生.28週の胎児超音波検査では異常は認めなかった.黄疸と心不全徴候の精査加療目的に日齢30に当科入院.入院時血液検査で黄疸と胆道系酵素の上昇を認めた.腹部超音波検査で最大径20 mmの囊腫状拡張した総胆管を認め,肝内胆管の拡張はなく先天性胆道拡張症(Todani Ia型)と診断した.また,囊腫内には最大径18 mmの蛋白栓を認めた.心不全に対し動脈管閉鎖術を先行させ体重増加を待つ間,減黄と蛋白栓の溶解目的にウルソデオキシコール酸と塩酸ブロムヘキシンの内服を行い,日齢75,体重3,300 gで肝管空腸吻合術を行った.術中胆道造影では,共通管は12 mmあり膵・胆管合流異常(新古味分類Ia型)を認めた.術中所見では囊腫内の蛋白栓は消失していた.蛋白栓を伴う先天性胆道拡張症の新生児症例は稀であり,体重増加を待つ間の術前管理として蛋白溶解療法が有効であった.

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