日本小児外科学会雑誌
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58 巻, 2 号
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おしらせ
追悼文
秋季シンポジウム記録
症例報告
  • 増田 吉朗, 中村 晶俊, 田口 匠平
    2022 年 58 巻 2 号 p. 173-177
    発行日: 2022/04/20
    公開日: 2022/04/20
    ジャーナル フリー

    治打撲一方は外傷による腫脹疼痛に用いられる漢方薬で,近年では術後腫脹・血腫に対する使用が報告されている.今回,我々は停留精巣固定術後の陰囊部腫脹に対し,治打撲一方を使用した症例を経験したので報告する.2017年6月から2019年12月に当科で精巣固定術を行った43例のうち,本剤を処方した25例を検討した.手術時年齢中央値2歳(0歳7か月~13歳),体重は中央値10 kg(7.6~53 kg),投与期間は中央値7日(6~56日).本剤の処方量は0.2~0.3 g/kg/日であった.外来主治医が陰囊部の腫れを3段階(陰囊部及び精索の腫脹がいずれも改善:A,陰囊部の腫脹は改善し,精索肥厚のみ残存:B,陰囊部および精索の腫脹がどちらも残存:C)で評価した.局所の腫脹改善の程度は,A:15例(60%),B:7例(28%),C:3例(12%)であった.当科での経験では治打撲一方の投薬により術後牽引指導の際に問題となり得る皮下血腫を伴う術後陰囊部腫脹の改善を認めた.

  • 田山 愛, 高瀬 洪生, 髙山 慶太, 金 聖和, 梅田 聡, 山道 拓, 市川 千宙, 位田 忍, 曹 英樹, 臼井 規朗
    2022 年 58 巻 2 号 p. 178-182
    発行日: 2022/04/20
    公開日: 2022/04/20
    ジャーナル フリー

    中心静脈カテーテル留置の合併症に抜去困難がある.我々は栄養管理目的に15歳でカテーテルの最終入れかえを行い23歳時にカテーテルが抜去困難となり左内頸静脈から上大静脈にかけて遺残した症例を経験した.最終カテーテルの留置期間は14年8か月だった.感染を契機に呼吸状態が悪化し,同時に消化管出血に伴う腎前性腎不全が進行し30歳で死亡した.病理解剖で,カテーテル周囲は瘢痕組織で取り巻かれ,その瘢痕組織内に異物が散在していた.また末梢肺動脈内に線維性の狭窄ないし閉塞を認め,カテーテルの断片と思われる異物が認められた.年数が経つにつれカテーテルの一部が自然に剥離し異物として飛散する可能性が示唆された.遺残したカテーテルは,将来血管内に飛散する異物になり得ることを認識し,長期間の生命予後が見込める症例では,開心術を含めたカテーテル摘出を検討することが必要と考えられた.

  • 前田 翔平, 永田 公二, 三好 きな, 宗崎 良太, 田口 智章
    2022 年 58 巻 2 号 p. 183-187
    発行日: 2022/04/20
    公開日: 2022/04/20
    ジャーナル フリー

    症例は2歳5か月,女児.腸重積症に対し高圧浣腸による整復を行ったが,3日間で4度再発し,5回整復した.整復時に造影剤が回腸末端へ流入するものの,盲腸に陰影欠損が残るため,虫垂の器質的疾患を疑い,全身麻酔下に大腸内視鏡検査と内視鏡外科手術を行った.まず大腸内視鏡検査で大腸を観察したところ,盲腸内に虫垂粘膜が内腔へ翻転した隆起性病変を認めた.続いて腹腔内を観察したところ,虫垂根部が重積して埋没していたため,虫垂間膜を牽引して臍より虫垂を脱転して重積を解除し,根部で切除した.今回,虫垂重積症を合併した稀な腸重積症を経験したため,文献的考察を行い報告する.

  • 後藤 俊平, 池田 太郎, 加藤 礼保納
    2022 年 58 巻 2 号 p. 188-193
    発行日: 2022/04/20
    公開日: 2022/04/20
    ジャーナル フリー

    限局性腸管拡張症(以下SDI)は,1959年にSwensonらが初めて報告した比較的稀な疾患である.今回我々は,ヒルシュスプルング病(以下H病)を合併したSDIと考えられた1例を経験したため報告する.症例は日齢0,女児.在胎38週6日,出生体重2,396 gであった.出生後に呼吸障害のために新生児搬送となった.排便障害を認め,単純レントゲン写真では,骨盤内腫瘤を疑わせる腸管ガスの異常分布を認め,注腸造影検査にてS状結腸の著明な拡張と直腸の狭窄を認めた.SDIおよびshort segment typeのH病を疑い,日齢8に直腸全層生検術および人工肛門造設術を施行後,月齢10に根治術を施行した.根治術後,自力排便を認めるようになり現在に至る.SDIの治療は病変部の切除であるが,他の器質的疾患が併存する可能性も否定できず,診断および手術治療について十分注意する必要がある.

  • 鴨打 周, 田口 匠平, 橋口 晋一郎, 平木 由佳
    2022 年 58 巻 2 号 p. 194-200
    発行日: 2022/04/20
    公開日: 2022/04/20
    ジャーナル フリー

    症例は女児.生下時より,会陰部左側にくびれを伴う表面は周囲皮膚と同様な腫瘤を認めた.出生前に腫瘤の指摘はなかった.1生月時のMRIでは腫瘤は径1.5 cm大であり,その深部に径0.5 cm大の骨様結節を認めた.腫瘤は肛門括約筋や肛門挙筋群とは接していなかった.潜在性二分脊椎や直腸肛門奇形,泌尿生殖器奇形の合併はなかった.体重増加を待って,腫瘤摘出術を予定した.9生月時に,腫瘤摘出術を施行し,腫瘤およびその深部の結節を摘出した.組織学的に腫瘤は脂肪腫,深部の結節は軟骨,骨組織であった.術中,肉眼的に腫瘤と深部の結節の連続性を認め,結節を含む脂肪腫が疑われた.先天性会陰部脂肪腫は稀な疾患で,様々な合併奇形を伴うことがあるほか,自験例のように脂肪腫に軟骨,骨組織を伴うことがある.術前にMRIなどで,腫瘤の性状,軟骨や骨成分などの混在の有無,また合併奇形の有無について,十分に評価することが必要である.

報告
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あとがき
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