日本小児外科学会雑誌
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50 巻, 1 号
選択された号の論文の17件中1~17を表示しています
おしらせ
学術集会記録
原著
  • 牟田 裕紀, 植村 貞繁, 吉田 篤史, 山本 真弓, 久山 寿子
    2014 年 50 巻 1 号 p. 60-65
    発行日: 2014/02/20
    公開日: 2014/02/20
    ジャーナル フリー
    【目的】近年の内視鏡手術の器具や手術手技の進歩に伴い,小児領域においても鏡視下手術の普及が著しく,様々な疾患にその適応は拡大している.2005 年以降当科では,循環動態が安定し気腹操作が可能であると考えられるイレウス症例に対しては腹腔鏡下イレウス解除術を標準術式としている.これまでに腹腔鏡下イレウス解除術を施行した症例のうち,癒着性イレウスに対し腹腔鏡下癒着剥離術を施行した症例を8 例経験したので報告する.
    【方法】2005 年から2012 年の期間に経験した術後癒着性イレウスに対して腹腔鏡下癒着剥離術を施行した8 例の診療録を,患者背景,手術時間,術後経口摂取開始までの期間,術後入院期間,合併症について後方視的に検討した.
    【結果】平均年齢は8.4±4.4 歳(3 か月~16 歳),男児4 例,女児4 例であった.8 例中6 例を完全腹腔鏡下で施行した.2 例は腹腔鏡補助下に小切開で手術を行った.1 例で腸切除を必要とした.平均手術時間は118.1±67.9 分,術後経口摂取開始までの期間は3.8±1.6 日,術後平均入院期間は10.0±7.0 日であった.術後合併症はなく,癒着剥離術後のイレウスの再発も認めていない.
    【結論】術後癒着性イレウスに対する腹腔鏡下癒着剥離術は,開腹癒着剥離術と比較し侵襲が小さいため術後の腸管蠕動運動の回復が速やかであり早期の経口摂取開始が可能である.また,術後に癒着性イレウスの再発は認めておらず,術後癒着性イレウスの再発を防ぐ方法として有用と考えられる.しかし,十分なコンセンサスは得られておらずその適応に関し今後とも引き続き検討が必要である.
症例報告
  • 高安 肇, 田中 潔, 武田 憲子, 渡辺 栄一郎, 渡邊 昌彦
    2014 年 50 巻 1 号 p. 66-70
    発行日: 2014/02/20
    公開日: 2014/02/20
    ジャーナル フリー
    女児鼠径ヘルニアにおいて卵管滑脱,卵巣脱出に加えて子宮も脱出しているヘルニア(本症)はまれである.本症3 例を経験したので報告する.症例1:日齢40 に左鼠径部に還納不可能な大小二つの腫瘤を触れた.超音波検査より本症が考えられ,手術所見で確認された.Woolley 法にて手術した.症例2:新生児期に左鼠径部に小腫瘤を二つ触れた.子宮がヘルニア囊後壁を構成していたため,高位結紮できず筋層と横筋筋膜を用いて内鼠径輪を閉鎖した.症例3:7 か月の女児.超音波検査にて左の卵巣と卵管の脱出が疑われた.手術時に子宮も滑脱していることが確認されWoolley 法にて手術した.文献報告17 例と併せて検討したところ本症は生後3 か月以内に発症した例,左側ヘルニア例が多かった.特に3 か月未満の女児において左鼠径部に複数の腫瘤を触れた場合,本症が疑われる.超音波検査にて診断を得,嵌頓の兆候がなければ待機的に手術をすることが可能である場合が多い.
  • 小沼 憲祥, 池田 太郎, 杉藤 公信, 石岡 茂樹, 井上 幹也, 萩原 紀嗣, 越永 従道
    2014 年 50 巻 1 号 p. 71-75
    発行日: 2014/02/20
    公開日: 2014/02/20
    ジャーナル フリー
    小児腸間膜裂孔ヘルニアは,腸閉塞の原因として稀である.我々は,絞扼性イレウスを伴った小児腸間膜裂孔ヘルニアの1 例を経験した.症例は,2 歳の女児.腸閉塞の診断で当院へ紹介となった.腹部超音波検査とCT 検査にて腸内容の貯留を伴った小腸の拡張と腹水を認めた.絞扼性イレウスの診断で緊急開腹術を施行した.小腸間膜に1×2 cm の欠損孔を認め,欠損孔に130 cm にわたる回腸末端が入り込み壊死していた.小腸壊死部を切除し,欠損孔を修復した.小児腸間膜裂孔ヘルニアについて,文献的考察を含めて報告する.
  • 竹内 雄毅, 樋口 恒司, 坂井 宏平, 文野 誠久, 青井 重善, 古川 泰三, 木村 修, 田尻 達郎
    2014 年 50 巻 1 号 p. 76-80
    発行日: 2014/02/20
    公開日: 2014/02/20
    ジャーナル フリー
    11 歳女児.初潮以降3 回の月経周期に伴う右下腹部痛,腹部腫瘤および同部位圧痛を主訴に近医を受診したところ,腹部超音波にて骨盤内腫瘤を認め,精査目的に紹介となった.腹部CT にて重複子宮・膣と右膣閉鎖による右子宮膣留血腫を認めた.また右腎は無形成であった.Herlyn-Werner-Wunderlich 症候群(HWWS)と術前診断し,待機的手術を施行した.右膣閉鎖と膣壁膨隆を認め,膣中隔切開・内容液ドレナージ後,膣壁形成を施行した.以降,下腹部痛と腹部腫瘤は消失し,術後経過,月経発来も順調である.HWWS は,見かけ上,月経が正常に起こるため他の女性性器奇形(処女膜閉鎖,膣閉鎖)よりも診断が遅れることがある.治療は膣中隔切除と留血腫ドレナージで良好な成績を得られる.下腹部腫瘤と片側腎無形成を伴う二次性徴期女性の急性腹症に対しては,HWWS を考慮に入れて診断と治療を行うべきである.
  • 出口 幸一, 吉田 洋, 梅田 聡, 野口 侑記, 田中 康博
    2014 年 50 巻 1 号 p. 81-85
    発行日: 2014/02/20
    公開日: 2014/02/20
    ジャーナル フリー
    会陰部杭創は転落・転倒などにより生じる稀な鈍的外傷である.我々は2 例の小児会陰部杭創を経験したので報告する.〈症例1〉9 歳男児.入浴中風呂の湯かき棒(樹脂製)が肛門に刺入した.自ら抜去したが,出血,腹痛が持続するため翌朝当科受診した.CT 検査で腹水,遊離ガス像を認め,会陰部杭創による穿孔性腹膜炎の診断で緊急手術を施行した.開腹すると直腸前壁が穿孔していた.穿孔部は縫合閉鎖し,S 状結腸に人工肛門を造設した.〈症例2〉3 歳女児.箸(木製)を持って転倒した際,箸が右会陰部に刺入した.CT 検査で異物を骨盤腔内に認めたが,明らかな臓器損傷は認めなかったため,X 線透視下に異物を抜去した.折れた箸先端が7 cm 刺入していた.創部を縫合閉鎖し第5 病日に退院した.会陰部杭創では症例により損傷臓器とその程度がさまざまであり,受診後速やかにそれらを把握したうえで,治療方針を決定することが重要である.
  • 大割 貢, 米倉 竹夫, 山内 勝治, 神山 雅史, 森下 祐次, 木村 浩基, 太田 善夫
    2014 年 50 巻 1 号 p. 86-91
    発行日: 2014/02/20
    公開日: 2014/02/20
    ジャーナル フリー
    症例は9 歳男児.自転車による自己転倒,腹部打撲にて救急搬送された.腹部所見にて左下腹部に圧痛,反跳痛,筋性防御を認め,血液検査でも炎症所見を認めたが,翌日には症状が消失したため受傷後6 日に退院となった.しかし受傷後11 日にイレウス症状を認めたためイレウス管を挿入し,受傷後16 日に造影CT 検査とイレウス管造影を行ったが狭窄所見を認めず再び退院となった.受傷後32 日に再々度のイレウス症状にて入院となったため単孔式腹腔鏡補助下手術を行った.腹腔鏡では器質的異常を認めなかったため,臍創部から小腸を授動して直視下にて精査を行った.Treitz 靭帯から190 cm の部位に触診で内腔の輪状狭窄を認め,小腸部分切除術を行った.小児の鈍的腹部外傷後による遅発性小腸狭窄は診断・治療に苦慮するが臍部から単孔式腹腔鏡補助下手術を行い,次に臍部小切開創から腸管を体外に授動して触診することによって有効な診断・治療が可能であった.
  • 高見 尚平, 中原 さおり, 武山 絵里子, 石田 和夫
    2014 年 50 巻 1 号 p. 92-95
    発行日: 2014/02/20
    公開日: 2014/02/20
    ジャーナル フリー
    症例は1 歳3 か月女児.生後5 か月頃より1 ~2 日持続する嘔吐が月に1 回程度あったが,成長・発達に問題ないため経過観察されていた.1 歳3 か月時,噴水様の胆汁性嘔吐が出現した.腹部超音波検査・上部消化管造影にて空腸狭窄と診断した.開腹するとトライツ靭帯より16 cm の部位に狭窄部を認めた.同部にはwind sock 様に肛門側に伸展された膜が確認され膜切除を行った.空腸膜様狭窄は通常新生児期に腹部膨満,胆汁性嘔吐,胎便排泄遅延で発見されるが,狭窄の程度・部位によっては,離乳食開始など食事形態の変化によって乳幼児期になって症状が発現することがある.幼児期に発見される空腸膜様狭窄は稀ではあるが繰り返す嘔吐の鑑別疾患として重要であると考えられる.
  • 照井 慶太, 籏持 淳, 光永 哲也, 齋藤 武, 中田 光政, 照井 エレナ, 小林 真史, 笈田 諭, 秦 佳孝, 吉田 英生
    2014 年 50 巻 1 号 p. 96-102
    発行日: 2014/02/20
    公開日: 2014/02/20
    ジャーナル フリー
    15 歳,女児.3 度の繰り返す大腸穿孔に対する原因精査を目的に当科を受診した.1 歳時に内反足,11 歳時にS 状結腸穿孔,13 歳時にS 状結腸憩室穿孔,15 歳時に吻合部穿孔の既往がある.現症として前胸部血管の透見・末端早老症を認めた.以上より血管型Ehlers-Danlos 症候群(血管型EDS)が疑われ,皮膚生検で得られた培養線維芽細胞の生化学・遺伝子検査により確定診断に至った.その後,術後腸閉塞に対し2 回の手術を要した.血管型EDS はIII 型コラーゲン遺伝子の変異により血管・腸・子宮などの破裂をおこしうる疾患で,古典型EDS にみられるような皮膚の過伸展や関節弛緩は軽微である.本症の存在を認識することが重要であり,鑑別診断として念頭におくことが早期診断・治療につながると思われた.
  • 大植 孝治, 高間 勇一, 上原 秀一郎, 中畠 賢吾, 臼井 規朗
    2014 年 50 巻 1 号 p. 103-107
    発行日: 2014/02/20
    公開日: 2014/02/20
    ジャーナル フリー
    症例は6 歳男児.腹部超音波検査,CT にて左後腹膜に9×7 cm 大の腫瘍を認め,神経芽腫が疑われて開腹生検を施行したが,病理組織診断はganglioneuroma であった.しかし腫瘍マーカー高値が持続するため中央病理診断に再検討をお願いし,最終的にganglioneuroblastoma との診断を得た.INSS Stage 2a で,JNBSG LI-B による化学療法3 クール施行後,腫瘍摘出術を施行した.摘出腫瘍の割面は肉眼的に白色調と褐色調の部分が混在して不均一で,組織所見では白色調の部分は生検時の組織に類似していたが,褐色調の部分はN/C 比の高い神経芽細胞や神経節細胞が多数残存していて,腫瘍内にheterogeneity が認められた.術後化学療法は施行せず,2 年間無病生存中である.腫瘍内にheterogeneity が存在する場合,1 か所からの腫瘍生検では正確な病理組織診断が困難な場合があり,注意を要すると考えられた.
  • 谷 有希子, 岡本 健太郎, 荻野 恵, 山口 岳史, 土岡 丘, 加藤 広行
    2014 年 50 巻 1 号 p. 108-113
    発行日: 2014/02/20
    公開日: 2014/02/20
    ジャーナル フリー
    炎症性筋線維芽細胞性腫瘍inflammatory myofibroblastic tumor(以下IMT)は線維芽細胞や筋線維芽細胞の増殖と炎症細胞浸潤を特徴とする中間悪性腫瘍と定義される.今回,我々は腹腔内遊離腫瘍として診断に難渋したIMT の1 例を経験した.症例は1 歳男児,黒色便,貧血を主訴に受診し,腹腔内の移動性腫瘍と診断した.術中所見では腫瘤は他の臓器との連続性を認めず,遊離腫瘤であった.腸間膜に赤色硬結部を認め,腫瘤の茎であった可能性を考え一部切除した.摘出腫瘤では病理診断が困難であり,赤色硬結部よりIMT と病理診断された.IMT は完全切除が唯一の治療法とされているが,遊離腫瘤であったため発生部位を同定できず,腸間膜に腫瘍が残存している可能性がある.今後,再発や転移の可能性も十分に考え,長期的な画像検査による経過観察が必要である.
委員会報告
地方会
研究会
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あとがき
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