小児歯科学雑誌
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29 巻 , 4 号
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  • 後藤 哲哉, 田中 輝男, 中田 稔
    1991 年 29 巻 4 号 p. 665-675
    発行日: 1991/12/25
    公開日: 2013/01/18
    ジャーナル フリー
    ラット臼歯生理的遠心移動による歯根吸収の増齢的変化と,破歯細胞の成熟過程を明らかにするために,本研究を行った.結果は次のとおりである.
    1.ラット上顎第2臼歯遠心頬側根には,生理的遠心移動により破歯細胞が現れ,歯根を吸収していた.吸収窩に認められる破歯細胞数は,生後4週から7週にかけて増加するが,その後,10週,13週となるに従い次第に減少した.
    2.光学顕微鏡所見により,歯根の吸収段階は,歯根吸収初期,歯根吸収期,歯根吸収末期に分けられた.
    3.歯根吸収初期は大小の吸収窩が生じ,破歯細胞,単核の紡錘型細胞,線維芽細胞等の細胞が認められ,歯根膜(腔)に多数の血管,線維芽細胞が認められた.歯根吸収期では吸収窩が大きくなり,大型の破歯細胞が認められた.歯根吸収末期では破歯細胞はほとんど認められず, セメント質による吸収窩の修復, 歯根膜腔の拡大, および歯根膜線維の規則的な走行が認められた.
    4.歯根吸収初期の破歯細胞については,電子顕微鏡観察を行った.歯根に接してからセメント質を吸収している時期までの破歯細胞は,はっきりと明帯と刷子縁に分化していない中間的な構造の吸収帯を形成していた.また,吸収窩表面にはコラーゲン細線維の断端が認められた.成熟して象牙質を吸収している状態になると,破歯細胞の刷子縁構造が明確になり,吸収窩にはセメント芽細胞様細胞による新生セメント質の添加も認められた.
  • 細矢 由美子, 池田 靖子, 高風 亜由美, 安藤 匡子, 後藤 讓治
    1991 年 29 巻 4 号 p. 676-687
    発行日: 1991/12/25
    公開日: 2013/01/18
    ジャーナル フリー
    牛幼若永久歯切削エナメル質に対するレジンの接着性について,サーマルサイクリング試験の影響をエッチング時間別に観察した.37%正燐酸ゼリーで,0,10,20,30及び60秒間エッチングを行った.レジンは,3M社製Scotch BondとSiluxを使用した.サーマルサイクリング試験後に剪断接着試験を行い, 接着強さを測定するとともに,剪断試験後のエナメル質面とレジン面をSEMで観察し,下記の結論を得た.
    1)接着強さが最も高かったのは,エッチング時間が60秒(33.40±5.75MPa)の場合であった.
    2)接着強さの平均値は,エッチング時間の延長に伴い増加した.
    3)エッチング群については,エッチング時間が10秒の場合とエッチング時間が20秒,30秒及び60秒の場合の接着強さ間に有意差がみられ,いずれの場合も10秒で低い値を示した.また,エッチング時間が20秒の場合と60秒の場合の接着強さ間に有意差がみられ,60秒の場合が高かった.
    4)サーマルサイクリング群と非サーマルサイクリング群の接着強さをエッチング時間別に比較すると,エッチング群においては,すべてのエッチング時間について両群間の接着強さに有意差がみられ,サーマルサイクリング群の方が低かった.
  • 篠口 杏子, 白川 哲夫, 三浦 真理, 小口 春久
    1991 年 29 巻 4 号 p. 688-697
    発行日: 1991/12/25
    公開日: 2013/01/18
    ジャーナル フリー
    レーザードップラー血流計を用いて幼若永久歯の歯髄血流を無侵襲的に測定し,歯根の形成段階別に歯髄血流の変化を検討するとともに,歯髄の生死を決める判断基準および電気歯髄診との関係について検討した.
    その結果,生活歯において,歯髄血流波形に心拍と同期した規則的な拍動が認められ,歯根未完成歯では,歯根完成歯と比較して血流量が多い傾向が認められた.また電気歯髄診で反応が認められなかった歯根未完成歯においても歯髄血流測定が可能であった.
    一方,硬組織でのレーザー光の散乱や歯肉血流の影響により,失活歯であっても血流測定値がゼロにならない場合があり,歯髄の生死を正確に診断するためには,血流量の比較だけでは不十分であることが明らかになった.そこで,歯髄血流と心電図を同時に測定し,両者の波形についてスペクトル解析を行った.
    その結果,生活歯の歯髄血流においては心拍のスペクトル成分に一致したスペクトルが認められたが,失活歯においては認められず,生活歯と失活歯を明確に判別することが可能であった.
    レーザードップラー血流計を心電計と併用し,それぞれの波形についてスペクトル解析を行うことにより,確実な歯髄の生死の診断が可能であることが明らかになった.
  • 大岩 利子, 岩崎 光孝, 林 正浩, 殿岡 泰, 小口 久雄, 小沢 偉敦, 尾崎 哲則, 吉田 茂
    1991 年 29 巻 4 号 p. 698-706
    発行日: 1991/12/25
    公開日: 2013/01/18
    ジャーナル フリー
    糖クリアランスを実施する際,唾液の採取には,口腔底に貯留させた唾液を採取するspitting法が一般的に用いられてきた.この方法は,唾液の貯留に時間がかかり,被験者への負担も比較的大きい.そこで貯留することなく,一時点の唾液を吐出させ採取するspot法を試み,この両者について比較検討した.sucrose負荷濃度は5,10,20%を用い, 負荷後のSucroseの消長とlactateおよびglucoseの動態について成人7名を用い,検討した結果,以下の結論を得た.
    1.Sucroseの消長はspot, spittingともに二相性の消長を示し,spotではspittingに比べてsucroseは高く推移し,負荷濃度が高いほど口腔内のsucroseの停滞性は遅延した.
    2 . Lactateの推移はlactateが増加しその後減少するという山型の推移を示し,そのピークの時間は5~7分であった.しかしspotではspittingよりも各負荷濃度によって差異が認められlactateが高かった.
    3. Glucoseの推移はspot,spittingともに差異はみられなかった.
    4 . 負荷後のsucrose,lactateおよびglucoseの三者の関係は従来のspittingよりもspotでより明らかにみられた.以上のことから微量検体で測定できる酸素電極法によるsucroseクリアラソスではspotはspittingよりも検体採取が容易であり,しかも臨地応用への有用性が示唆された.
  • 下飛田 道子, 二木 寿子, 緒方 哲朗, 兼行 菜穂子, 山崎 桂子, 中田 稔
    1991 年 29 巻 4 号 p. 707-719
    発行日: 1991/12/25
    公開日: 2013/01/18
    ジャーナル フリー
    福岡県大野城市において1歳6カ月児歯科健診を受けた1歳6カ月児361名(男児:193名,女児168名)ならびにその母親を対象として,齲蝕の有無に関与する要因の分析を行った.
    幼児に対しては一般健康診査,口腔診査に加え,齲蝕活動性試験としてカリオスタット,MSBBテスト, RDテストの3種を実施した.母親に対しては同種の齲蝕活動性試験に加えて, 保育環境, 歯口清掃習慣, 母親の歯科的意識の水準などに関するアンケート調査を行った.これらの調査項目に対して林の数量化理論第II類を用いて幼児の齲蝕の有無を外的基準とする多変量解析を行った.その結果,1歳6カ月における齲蝕罹患群と健全群との判別には,「幼児のカリオスタットpH値」「MSBB結果」, 「歯磨き習慣」に関する要因が強く関わっていた(相関比0.335).
    さらに齲蝕罹患傾向の予測を行うことを目的として,これらの幼児のうち3歳児歯科健診を受診し経時的な資料が得られた3 歳1カ月の幼児190名(男児103名,女児:87名)の口腔診査結果を用い,以下のような分析を行った.すなわち,林の数量化理論第I類を用いて,幼児の3歳時の齲蝕罹患歯面率を目的変数とし,1歳6カ月時の調査項目の中から,齲蝕との関わりが比較的強いと思われる34項目を説明変数とする分析である.その結果,3歳児の齲蝕罹患状況に関わりの深い1歳6カ月時での調査項目は, 「幼児のMSBB結果」,「母親のカリオスタットpH値」などであった(重相関係数0.601).
  • 辻 裕子
    1991 年 29 巻 4 号 p. 720-737
    発行日: 1991/12/25
    公開日: 2013/01/18
    ジャーナル フリー
    乳歯列過蓋咬合の診断基準を探る目的で,乳歯列における前歯部の垂直的被蓋量と歯,歯列弓,歯槽基底弓との関連性を検討した.資料は,日本歯科大学小児歯科学教室所蔵の経年資料のうち齲蝕がなく,咬耗の少ない男児42名,女児43名,合計85名(平均年齢3歳8ヵ月)の乳歯列石膏模型である.これらの資料の左側乳中切歯の垂直的被蓋量の大きさと歯および歯列弓,歯槽基底弓の大きさならびに歯の形態,歯間空隙との関係について比較検討し,以下の結論を得た.
    1)歯の大きさは,被蓋の深いものでは上顎前歯部と上下顎第2乳臼歯の歯冠長が大きい傾向が見られた.
    2)歯列弓,歯槽基底弓の大きさでは,被蓋の深いものは特に下顎乳犬歯間歯列弓幅径が小さかった.
    3)乳臼歯咬合面面積は,被蓋の深さとの間に有意差は認められなかった.
    4)乳歯列においても切端・咬頭頂連続曲線は明らかに存在し,被蓋が深くなるにしたがってその曲線の攣曲は強くなり,咬合状態と深く関連していた.
    5)歯間空隙は,被蓋の深いものでは上下顎ともに閉鎖型歯列弓が多く,特に下顎の閉鎖型歯列弓は被蓋を深くする原因のひとつとなっていた.
    6)下顎第1乳臼歯の形態変異の発現頻度は被蓋の深いものでは63.4%と多く認められ,下顎第1乳臼歯の歯の大きさ,歯列弓,歯槽基底弓の大きさが異なり,下顎第1乳臼歯の形態変異は乳歯列において被蓋を深くする因子と考えられた.
  • 立川 義博, 黄 郁杏, 野中 和明, 立野 麗子, 國武 哲治, 中田 稔
    1991 年 29 巻 4 号 p. 738-742
    発行日: 1991/12/25
    公開日: 2013/01/18
    ジャーナル フリー
    隣接面齲蝕予防に有効なフロッシング間隔についての研究を行った.調査対象は,九州大学歯学部付属病院小児歯科外来にて定期診査を継続している患児の中から,フロッシング習慣がなく,健全な隣接面をもつ小児25名の77隣接面部を選択した.初回にベースラインのプラークを採取し,次にフロッシング後の来院間隔をかえて,同一隣接面部からプラークを採取した.これらをカリオスタット試験液中で培養し,24時間判定値によってフロッシング間隔の影響を比較したところ,以下の結果を得た.
    1)隣接面の齲蝕活動性は,フロッシング間隔が2週から1週へと短くなるにしたがい有意に低下した.しかし,1週以内の場合には有意差はなかった.
    2)ベースライン値が1.5以下の場合には,フロッシング後1週のカリオスタット値は1.0末満に低下したが,ベースライン値が2.0以上の場合では,1.0以上であった.
    以上の結果から,フロッシング間隔の目安は次のようになる.隣接面のベースライン値が1.5以下の場合には, 最低週1 回のフロッシングが必要である.しかし, ベースライン値が2.0以上の場合には,週1回のフロッシングだけでは不十分と思われた.
  • 木村 光孝, 牧 憲司, 木村 京子, 松井 秀成, 週 適宏, 児玉 昭資, 宮崎 圭一, Raymond L. Braham
    1991 年 29 巻 4 号 p. 743-754
    発行日: 1991/12/25
    公開日: 2013/01/18
    ジャーナル フリー
    生後3週齢の離乳期に相当するWistar系雄ラットにカルシウム欠乏食を与え,虚弱骨を惹起させた後,食餌療法による歯槽骨に及ぼす影響を走査電顕的に観察し,次のような結論を得た.
    1.対照群(標準飼料)では,骨層の内部においては,骨小腔の周囲基質はコラーゲン原線維束,コラーゲン原線維と石灰化球や未石灰化なコラーゲン原線維で形成されていた.
    2.カルシウム欠乏食群は,対照群(標準飼料)に比べ広範囲にわたる骨吸収像や骨髄の拡大が見られ虚弱化していた.骨層の内部は骨吸収部の占める部分が多く存在していた.吸収窩底は浅く,境界は不明瞭であった.
    3.カルシウム欠乏食・標準食群では,カルシウム欠乏食群に比べ活発な骨の改造を呈し,骨層の内部は骨基質形成部では,ほぼ一定方向に走行するコラーゲン原線維束が認められるようになった.
    4.カルシウム欠乏食・高カルシウム食群では,大幅に骨髄は縮小し,骨層の内部では,骨のremodelingが行われ,対照群に比べ骨基質形成部は不完全な所見も見られるが,コラーゲン原線維束が豊富に分布していた.
    以上のことから,虚弱骨に対する食餌療法はカルシウム欠乏食・高カルシウム食群が最も骨の改造による骨構築は促進されていた.
  • 美島 達平, 田村 康夫, 宋 政文, 吉田 定宏
    1991 年 29 巻 4 号 p. 755-766
    発行日: 1991/12/25
    公開日: 2013/01/18
    ジャーナル フリー
    本実験は成長発達にともなう咀嚼筋活動の変化を総筋活動量に対する側頭筋,咬筋筋活動の割合で検討したものである.
    乳歯列期小児10名,混合歯列期小児10名,永久歯列期成人10名を用い,各被検者にカマボコ,ガム及びスルメの3食品を咀嚼させ,その時の咀嚼筋筋活動を観察した.計測は作業側と平衡側に分け,4筋(作業側側頭筋,咬筋;TW,MW:平衡側側頭筋,咬筋;TB,MB)について行い,さらに総筋活動量(TAM)に占める4筋の筋活動量の割合(%)について検討した.その結果,
    1)作業側,平衡側及び側頭筋,咬筋の4筋の各筋活動量で検討すると,有意な筋差が認められた(p<0.01).
    2)各筋の歯列群差はMWについて認められ,MWの筋活動量が歯列の成長に伴い増大していた(p<0.01).
    3)TAMに対する各筋筋活動量の占める割合で検討した場合,3食品間で有意差は認められなかった.
    4)乳歯列期は活動の順で検討すると,1型(TW-TB)が40%と最も多く,混合歯列,永久歯列期では3型(MW-TW)を示すものが50%,70%と最も多くみられた.
    5)歯列群で検討した場合,成人はMWの占める割合は有意に増大し,逆にTBの占める割合が有意に低下していた(p<0.01).
    以上の結果より, 乳歯列期から永久歯列期にかけて咀嚼筋の機能的な使い分けが行われ,これには歯列の成長にともなう解剖学的な筋の成長と共に機能的成熟も関係していることが示唆された.
  • 石黒 裕茂, 会田 栄一, 今村 基尊, 小野 俊朗, 今村 しのぶ, 入野田 芳子, 黒須 一夫
    1991 年 29 巻 4 号 p. 767-776
    発行日: 1991/12/25
    公開日: 2013/01/18
    ジャーナル フリー
    乳歯列下の後継永久歯における萌出ならびに歯根形成の推移について詳細に究明するために,連続的に撮影されたイヌ32頭のX線規格化写真を用いて観察を行った.すなわち,健全乳歯下の後継永久歯(健全群),感染先行乳歯を抜歯した場合(感染抜歯群),健全先行乳歯を抜歯した場合(健全抜歯群)の3群において,歯冠移動率,歯根形成率について検索し,以下の結果を得た.
    1.後継永久歯の歯冠移動率
    1)健全乳歯下の萌出では,週齢と歯冠移動率においてS字様曲線を示す傾向を認めた.
    2)感染乳歯を抜歯した後継永久歯において先行乳歯が健全な場合や健全乳歯を抜歯した場合に比べ,歯冠移動率に著明な促進を認めた.
    3)健全乳歯を抜歯した場合の後継永久歯において先行乳歯が健全な場合と歯冠移動率に差は認められなかった.
    2.後継永久歯の歯根形成率
    1)健全乳歯下の歯根形成では,週齢と歯冠移動率において一定の成長状態を示す傾向を認めた.
    2)感染乳歯を抜歯した後継永久歯において先行乳歯が健全な場合や健全乳歯を抜歯した場合に比べ,歯根形成率に促進を認めた.しかし,歯冠移動率ほど著明ではなかった.
    3)健全乳歯を抜歯した場合の後継永久歯において先行乳歯が健全な場合と歯根形成率に差は認められなかった.
  • 藤井 悟, 加藤 栄行, 藤井 真由美, 加藤 文子, 齋藤 健志, 山田 博, 赤坂 守人
    1991 年 29 巻 4 号 p. 777-783
    発行日: 1991/12/25
    公開日: 2013/01/18
    ジャーナル フリー
    咽頭扁桃・口蓋扁桃肥大症は咽頭部に位置し,舌,口腔周囲筋に影響を及ぼすことより,歯列・咬合異常の誘因になるといわれている.そこで今回,咽頭扁桃切除,口蓋扁桃摘出術の既往がなく,歯列咬合に大きな異常のない109名(3歳~9歳)の側貌頭部X線規格写真を用いて,咽頭扁桃・口蓋扁桃肥大および咽頭部気道の成長変化の検討を行い以下の結論を得た.
    1)咽頭扁桃の大きさは,増齢による変化が明瞭ではなかったが3歳から6歳まで増齢とともに増加し,6歳をピークにして8歳まで減少し9歳で再び増加する傾向を示した.
    2 ) 咽頭鼻部の気道の大きさは,3歳から4歳にかけて減少し4~6歳で最も狭窄を示し,6歳以後増加を示した.
    3)咽頭鼻部の気道の大きさは,3歳から9歳ではSkeletal nasopharnyxおよび咽頭扁桃肥大の大きさの影響を受けるが,その影響は咽頭扁桃のほうが強いと思われた.
    4)Lower pharynx(咽頭口部)の大きさは,年齢によってほとんど成長変化がみられなかった.
    5)Lower phafynxの大きさは,Adenoid area, Airway percentageと正の相関がみられ,咽頭扁桃肥大との関係がみられた.
  • 南 貴洋, 青野 亘, 武井 勉, 吉田 俊彦, 新谷 誠康, 泉谷 明, 大嶋 隆, 祖父江 鎮雄
    1991 年 29 巻 4 号 p. 784-790
    発行日: 1991/12/25
    公開日: 2013/01/18
    ジャーナル フリー
    パラチノースおよびその縮重合物を主成分とするパラチノースオリゴ糖の齲蝕誘発能をin vitroおよびin vivoの実験系において検討した.その結果,パラチノースオリゴ糖は,ミュータンス・レンサ球菌による酸産生の基質とはならなかった.また,パラチノースオリゴ糖はミュータンス・レンサ球菌のグルコシルトランスフェラーゼによるスクロースを基質としたグルカン産生を抑制し,ミュータンス・レンサ球菌体のスクロース依存性平滑面付着を阻害した.ミュータンス・レンサ球菌を感染したSPFラットにおいて,パラチノースオリゴ糖は齲蝕誘発能を示さず,さらに,S. sobrinus.によるスクロース誘発齲蝕に対しては抑制効果を示した.
  • 黒川 泉, 下岡 正八
    1991 年 29 巻 4 号 p. 791-813
    発行日: 1991/12/25
    公開日: 2013/01/18
    ジャーナル フリー
    歯科医療体制の整わない地域の同一個体小児の9年間における経年的な齲蝕罹患状況を分析した.さらに齲蝕活動性試験(カリオスタット)が,齲蝕罹患状況を予測する目的で,同一個体の齲蝕活動性とその後の齲蝕罹患状況とその関連を検討した結果,以下の結論を得た.
    1)齲蝕罹患状況は,乳歯・永久歯とも県平均より高い値であった.齲歯数の経年的変化では,6歳前後が最も多く,11歳頃まで減少し,その後また増加する傾向を示した.
    2)カリオスタットの判定結果により,最も齲蝕活動性の高い時期は6,7歳であり,またCSIを指標とした時,実施時点の齲蝕虫罹患状況を最も良く表現していた.
    3)乳歯列期のカリオスタット判定結果とCSI・df+DMF歯数は,混合歯列開始から4年後まで正の相関が認められ,その後相関は消失し,永久歯列完成時には再び認められるようになった.DMF歯数とは永久歯萌出開始時から3,4年後まで,また永久歯列完成1,2年前より関連性が認められた.
    4)混合歯列期のカリオスタットの判定結果は,永久歯列期の齲蝕罹患状況と相関が認められた.特に,永久歯萌出開始時の判定結果と最も有意な正の相関が認められた.
    以上より,乳歯列期および混合歯列期,特に永久歯萌出開始時のカリオスタットの判定結果は,永久歯列期の齲蝕罹患状況を予測する指標として有効であることがわかった.
  • 外木 徳子, 町田 幸雄
    1991 年 29 巻 4 号 p. 814-823
    発行日: 1991/12/25
    公開日: 2013/01/18
    ジャーナル フリー
    小児の歯槽骨は歯牙の交換やそれ自体の成長発育に伴う変化があるため,初期歯周炎による病的変化との鑑別は容易でない.そこで今回,臨床的に正常な歯周組織を有すると診断された小児40名について,定期診査のため乳歯列期から永久歯列期まで年1回撮影した下顎臼歯部の口腔内エックス線写真を用いて成長発育に伴う変化を観察した.その結果,
    1)各歯牙に隣接する歯槽骨縁の高さは歯牙の萌出および交換により変化し低下する.そして, 小臼歯部は第二小臼歯萌出完了後1~2 年まで増加し,その後, ほぼ安定する.第一大臼歯近心部は第二小臼歯萌出完了5年後に安定した.
    2)槽問中隔の骨頂部の形態は,両部位とも乳歯列期では,平坦型と緩斜面型が多いが,歯牙交換期には多様化する.そして第二小臼歯萌出完了とともに再び平坦型と緩斜面型になる.第一小臼歯と第二小臼歯間は第二小臼歯萌出完了後3年から4年,第二小臼歯と第一大臼歯間は第二小臼歯萌出完了後5年で全て平坦型に移行する.
    3)歯槽硬線は,第二小臼歯萌出完了後も特に骨頂部で不明瞭なものが多く,槽間中隔の形態と考え合わせると槽間中隔の完成は第一小臼歯,第二小臼歯問では第二小臼歯萌出完了後3~4年,第二小臼歯,第一大臼歯間では第二小臼歯萌出完了後5年以降であると思われる.従って,この時期に同部位の病的吸収と生理的変化を鑑捌することは極めて慎重に行わなけれぽならない.
  • 高見 澤豊, 大森 郁朗
    1991 年 29 巻 4 号 p. 824-828
    発行日: 1991/12/25
    公開日: 2013/01/18
    ジャーナル フリー
    脳性麻痺に罹患しており,気管切開を受けている3歳10カ月の女児が脱落した下顎右側乳中切歯を誤嚥し,その後無症状に経過していた.当該歯は偶然に撮影された胸部X線写真上で発見され,吸引によって気管支より摘出された.この下顎乳中切歯について,実体顕微鏡,光学顕微鏡による観察を行った.これらの観察により,以下の結果を得た.
    1.下顎乳中切歯には歯根吸収がみられた.歯根吸収の程度は推定される下顎乳中切歯の歯根長の約2/3に及んでいた.この歯根吸収面の形態は明らかに生理的歯根吸収の場合と異なっていた.下顎乳切歯の生理的歯根吸収では,根尖側領域の舌側面から吸収されるため,舌側での吸収が唇側に対して常に進んだ形態を示すことが多いが,被検歯では,根尖からの歯根吸収が歯根外側から進み,その結果,根管をとりまく歯質が根尖方向に突出した形態となっていた.
    2.歯根吸収の原因となるような齲蝕や咬耗は認められなかった.
    3.根管壁の一部に内部吸収を思わせる像が若干認められた.
    誤嚥事故の予防の観点から,心身障害児では,誤嚥しやすい動揺のある歯,例えば脱落期にある乳歯,あるいは本症例のように異常な歯根吸収のみられる歯は,早期に抜歯する必要があると思われた.
  • 信家 弘士, 中島 正人, 城所 繁, 長坂 信夫
    1991 年 29 巻 4 号 p. 829-838
    発行日: 1991/12/25
    公開日: 2013/01/18
    ジャーナル フリー
    我々は本学歯学部小児歯科学講座が収集した晩期残存乳歯の中の5症例をとりあげ,脱灰してセロイジン包埋後,ヘマトキシリン・エオジン染色,アザン染色及びチオニン・ピクリン酸染色による病理組織標本を作成して検鏡し次の結論を得た.
    1.残存乳歯はどの症例も1歯の残存であり,また後継永久歯の欠如が認められたのは1症例のみで,そのほかには後継永久歯の位置異常が認められた.
    2.歯髄壁は第二象牙質の形成が著しく認められたが,象牙芽細胞を認めない症例がほとんどであった.
    3.固有歯髄では正常な歯髄像を呈した症例はなく,ほとんどの症例で吸収部から侵入したと思われる歯根膜を認めた.また後継永久歯が欠如した1症例で歯髄構造が認められたものの,萎縮,変性,線維化など退行性変化を呈していた.
    4,全症例に歯根吸収を認めたが,その吸収程度は歯根がほぼ吸収しているものから根尖部が少しのみ吸収されているものまで認められた.
    5.吸収部にはハウシップ窩のような典型的な吸収窩を認めたものは1症例であったが,ほとんどの症例には吸収窩にセメント質またはセメント質様硬組織の添加が認められ,特に歯冠部の歯髄壁にも著明なセメント質の添加が認められる症例があった.
  • 甲原 玄秋, 衣川 直子, 佐藤 研一
    1991 年 29 巻 4 号 p. 839-844
    発行日: 1991/12/25
    公開日: 2013/01/18
    ジャーナル フリー
    骨髄移植患者は免疫反応を抑制するといった治療の性格上呼吸器,口腔を含めた消化管からの感染を生じ易く適切な口腔管理が必要となる.今回Myelodysplastic syndromeの9歳男児の口腔診査,管理を行った.口腔管理は3期に分けて考えた.すなわち
    1期:骨髄移植前,
    2期:骨髄移植後より顆粒球数回復まで,
    3期:頼粒球回復後,である.
    1期においては主として患者,家族,看護スタッフへのコンサルト,歯垢,歯石除去,歯面清掃,刷掃指導を行った.
    2期は無菌室での管理となり,抗生剤,抗真菌剤,抗ウイルス剤の投与が行われ,食後の刷掃,0.35%ポビドンヨード含漱などで口腔の清潔保持に努めた.この時期には血小板数低下時の一時的な歯肉出血,免疫抑制剤による歯肉増殖を認めた.
    3期は歯垢,歯石除去,刷掃指導と定期検診を行った.全経過を通じ細菌,真菌,ウイルスによる感染はみなかった.これは 1)小児科医による抗菌剤,抗ウイルス剤の予防的投与, 2)無菌室下の管理, 3)口腔の刷掃指導清掃,含嗽などの結果と思われた.
  • 小林 良一, 長畠 駿一郎, 鶴田 敬司, 貞森 平樹, 谷崎 明弘, 新谷 浩成, 佐々木 浩司
    1991 年 29 巻 4 号 p. 845-853
    発行日: 1991/12/25
    公開日: 2013/01/18
    ジャーナル フリー
    口腔領域に発生した単純性骨嚢胞の報告例は比較的少ない.今回,われわれは小児の下顎骨に発生した単純性骨嚢胞の1例を経験したので概要を報告する.
    患者は12歳女児で左側下顎骨の精査依頼にて当科を紹介され来院した.全身的に特記すべき事項はなかった.パノラマX線写真で 7後方部に境界やや不明瞭な単胞性の淡い透過像がみられ, 下顎骨骨体撮影で 7 の根尖は透過像内に突出した像を示したが, デンタルX線撮影で歯槽硬線の消失は認められなかった.左側下顎骨嚢胞の臨床診断のもと,局麻下で掻爬し閉鎖創とした.骨腔内は血液様内容液と底部に一部下歯槽神経血管束が露出しており,肉芽,嚢胞壁など認めず,周囲骨壁も平滑であった.以上の所見から単純性骨嚢胞と診断した.術後経過は良好である.
  • 関 玲子, 前野 弘美, 富沢 美恵子, 野田 忠, 鈴木 誠
    1991 年 29 巻 4 号 p. 854-861
    発行日: 1991/12/25
    公開日: 2013/01/18
    ジャーナル フリー
    新潟大学歯学部附属病院小児歯科外来において,2歳3カ月の女児の上顎歯肉に,臨床的には先天性エプーリスとして認められ,組織学的検索ではいわゆる平滑筋腫性過誤腫の像を呈した,きわれてまれな症例を経験し,次のような所見を得た.
    1) 患児は2歳3カ月の女児で, 既往歴, 家族歴, 全身所見に特記すべき事項はなかった.
    2)口腔内所見では左右上顎乳中切歯の口蓋側歯肉部に8×5×4mm程度の,有茎性,表面平滑で,やや赤味を帯びた歯肉色の腫瘤を認めた.
    3)X線所見では特記すべき異常所見は認められなかった.
    4)病理組織学的には線維性結合組織の中に平滑筋組織のほか,筋性血管,神経線維束も認められ,いわゆる平滑筋腫性過誤腫の像を呈していた.茎部には軟骨様組織,粘液腫様組織も認められた.顆粒細胞は認められなかった.
    5)処置方法は,局所麻酔下にて周囲骨膜を含め摘出した.術後の経過は良好であり,再発は認められない.
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