小児歯科学雑誌
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34 巻 , 5 号
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  • 田村 康夫, 仲岡 佳彦, 松原 まなみ, 青木 浩子, 中島 謙二, 松田 成彦
    1996 年 34 巻 5 号 p. 1001-1006
    発行日: 1996/12/25
    公開日: 2013/01/18
    ジャーナル フリー
    吸啜時の口腔周囲筋筋活動の詳細な活動様式を検討する目的で,新たに筋活動積分値平均移動曲線による観察方法を考案し,乳児9名を対象にその時間的精度と再現性について検討した。その結果,以下の結論を得た。
    1.移動曲線を用いることにより,1吸啜サイクル時間の時間経過による各筋筋活動量の活動の増加・減少が明瞭に観察できるようになった。
    2.吸啜波から計測した吸啜サイクル時間は平均647.8ms,移動曲線から計測した吸啜サイクル時間は平均653.3msと両者に差を認めなかった。
    3.被検者内および被検者間それぞれの平均変動も両計測間で差はみられなかった。
    以上の結果から積分値平均移動曲線を用いることにより吸啜時の協調パターンを明瞭に観察し詳細な定量分析が可能となった。
  • 野坂 久美子, 駿河 由利子, 佐藤 輝子, 塚本 暁子, 甘利 英一
    1996 年 34 巻 5 号 p. 1007-1016
    発行日: 1996/12/25
    公開日: 2013/01/18
    ジャーナル フリー
    幼若永久歯における歯肉の状態を,末梢血管の微小循環動態から検索するために,レーザー血流計を用いて,血流量の測定を行った。対象は6歳から14歳までの小児147名であり,それを,6-7歳(I群),8-9歳(II群) ,10-14歳(III群)の3群に区分した。測定歯種は,上顎右側および下顎左側の中切歯ならびに上顎右側および下顎左側の第一大臼歯である。測定部位は,それぞれの歯種の唇(頬)側歯肉の近心,中央,遠心部である。まず,歯肉の状態を肉眼的所見からGingival Index(GI)を用いて判定した。その後,各GIにおける血流量を男女合計で求め,次の結果を得た。
    1)血流量と歯肉炎との間に,明らかな関連性は認められなかった。
    2)年齢群別,GI別にかかわらず,上顎の中切歯,第一大臼歯の遠心部歯肉の血流量は近心部より有意に多かった。
    3)第一大臼歯における歯肉の血流量は,中切歯の同一部位に比較し,約2倍の血流量であった。
    4)中切歯,第一大臼歯ともに,近心部歯肉で,下顎の方が上顎よりも血流量が多かった。
    5)上下顎第一大臼歯の中央部あるいは遠心部ではIII群が,下顎中切歯の遠心部ではI群が,それぞれ他の年齢群より少ない血流量を示した。すなわち,若年者ほど,臼歯遠心部の歯肉の血流量が多く,これらの部位では創傷治癒や組織再生力がより活発であることを示唆しているものと思われた。
  • 駿河 由利子, 野坂 久美子, 甘利 英一
    1996 年 34 巻 5 号 p. 1017-1028
    発行日: 1996/12/25
    公開日: 2013/01/18
    ジャーナル フリー
    生活環境や食生活の変化によって,小児が罹患する疾患も多様化して来ている。また,これらの疾患は,小児の口腔内の状態や歯科治療時の対応に大きくかかわっていることから,今回は,小児疾患の実態について調査を行った。対象は,岩手医科大学歯学部小児歯科外来を訪れた1298名であり,資料として初診時の問診表と健康記録,問診にて作成した初診録を用いた。これらの資料を下に,既往的疾患から現疾患に至るまでを調査し,次の結果を得た。
    1)疾患別罹患状態では,ウイルス感染症が57%で最も多く,アレルギー性疾患は38%認められた。
    2)ウイルス感染症は6歳未満に多く,種類では水痘が多かった。
    3)細菌感染症は0-3歳未満で多く罹患し,中でも肺炎は細菌感染症の中で51.4%を占めていた。
    4)アレルギー性疾患は,3-6歳未満が最も多かった。また,アレルギー性疾患の半数以上がアトピー性皮膚炎と湿疹であった。
    5)喘息や食物,薬物アレルギーは,他のアレルギー性疾患との併発が多く,しかも加齢的に増加していた。
    6)歯科処置時にアレルギー様症状が認められた9例中6例は,アトピー性皮膚炎の既往があった。また,大半の小児が歯の形成時期に種々の小児疾患に罹患し,アレルギー性疾患は,同一小児に対して加齢的に種々の形で出現しているため,歯科治療時には,十分な問診が必要である。
  • 内藤 真理子, 川原 玲子, 森本 彰子, 西川 康博, 鶴田 靖, 吉永 久秋, 古沢 ゆかり, 木村 光孝
    1996 年 34 巻 5 号 p. 1029-1035
    発行日: 1996/12/25
    公開日: 2013/01/18
    ジャーナル フリー
    児童の食嗜好を検討する目的で,北九州市内の公立小学校に通学する3年から6年までの児童,男児1,336名,女児1,248名,計2,584名を対象に,質問票による調査を行った。全般的に野菜の嗜好度は低く,学年の上昇につれて,その傾向はより顕著であった。動物性食品は植物性食品と比較して,一般的に高い嗜好度を示し,特に肉においてその傾向は顕著であった。食品別では,ヨーグルトや果実類に著しく高い嗜好度が示された。学年間における各食品に対する嗜好度の変動は,ニンジン,生魚,パン,インスタントラーメン等に顕著であり,学年の上昇に伴い,嗜好度の著しい低下が認められた。性別による嗜好度の違いに有意差は認められなかった。学年間で偏食の多寡に関する比率に著しい変動は認められず,多いと回答した率は15%前後であった。
    今回の結果から,現代の食生活上の問題点が散見される一方,一部の食品を除き,学年間における嗜好状況の変化はほとんど認められなかった。また,生魚や特定の野菜を嫌う傾向は学年の上昇に伴って顕著になっていることからも,より早い時期における「食育」の必要性が示唆された。
  • 中川 佳昭, 金本 優香, 武井 勉, 井上 友紀, 西原 有美, 大嶋 隆, 祖父江 鎭雄
    1996 年 34 巻 5 号 p. 1036-1043
    発行日: 1996/12/25
    公開日: 2013/01/18
    ジャーナル フリー
    幼若永久歯に認められた中心結節に対し,その発現状況および接着性レジンによる破折予防処置の効果を調べた。また中心結節の破折をきたして歯内療法を施した歯については歯根の成長と根尖の閉鎖状況について調査を行った。
    大阪大学歯学部附属病院小児歯科を受診し,中心結節を認めた41名の患者(男児22名,女児19名,平均年齢12歳5か月)の94歯を対象とした。
    歯種別には下顎第二小臼歯が43歯(45.7%)と最も多く,約4:1で下顎に多く認めた。
    1人あたりの中心結節本数は平均2.3歯で,1人あたり2歯以上の結節を認めた78歯のうち同顎左右同名歯に結節を認めたのは64歯(83.3%)であった。
    模型から測定した中心結節の大きさの平均は近遠心径,頬舌径は下顎第二小臼歯が最も大きく,それぞれ2.31mm,2.04mmであった。
    接着性レジンによる中心結節の破折予防処置は平均観察期間32.8か月で53歯のうち1歯にしか破折を認めなかった。
    中心結節が破折し根尖未閉鎖でVitapex®にて歯内療法を施した18歯のうち11歯に根尖の閉鎖が認められ,また9歯には根尖の伸長が認められた。
  • 岡田 貢, 光澤 佳浪, 桑原 さつき, 鈴木 隆子, 鈴木 淳司, 香西 克之, 三浦 一生, 長坂 信夫
    1996 年 34 巻 5 号 p. 1044-1051
    発行日: 1996/12/25
    公開日: 2013/01/18
    ジャーナル フリー
    中学生における歯周疾患をスクリーニングするためにOral Rating Index (ORI:+2~-2)による評価法の有効性を検討した。広島市内の中学生357名を対象に調査を行った。要旨は以下の通りである。
    1.ORIはGingival Index(Loe and Silness),Plaque Index(Sileness and Loe),Probing DepthおよびBleeding Indexと0.1%の危険率で負の相関性を認めた。
    2.男女別によるORIの評価では,女子の方が男子よりも口腔内状態は良好であった。学年別では,男女共に学年が上がるにしたがってORIが減少し,口腔内状態が不良になる傾向にあった。
    3.ORIの評価によって生徒を歯周状況に対応したグループに分類することが可能であり,しかもデータの集計が容易であった。この診査法は,従来の歯周状況を表す指数を用いて診査するよりも所要時間が短くて済み,また,診査後生徒に対して具体的な口腔衛生指導を行う可能性が示唆された。
    以上の結果より,中学生における歯周疾患のスクリーニングにはORIの有効性が示唆され,また集団を対象とした調査にも充分応用できうる評価法であった。
  • 簡 妙蓉, 永田 綾, 佐牟田 毅, 石川 隆義, 長坂 信夫
    1996 年 34 巻 5 号 p. 1052-1060
    発行日: 1996/12/25
    公開日: 2013/01/18
    ジャーナル フリー
    治療の進行にあたり,診療室に入室した母親は術者に何らかの心理的ストレスを与えると考えられる。小児歯科診療時において,母親の態度や言語が術者に心理的ストレスをどのようにどの程度与えるかについての検索を3段階のステップをふまえて因子を抽出し,最終的に20問からなるアンケート形式の尺度を考案した。そして,そのアンケートが有効であるかについて,信頼性と妥当性の観点から検討を行い,以下の結果を得た。
    1.因子分析することによって把握された因子構造は,『要求過剰な母親』『コミュニケーンヨン不全の母親』『厳格・神経質な母親』『過保護な母親』『心配症な母親』『多弁な母親』『感情的な母親』の7つであった。
    2.小児歯科診療時における母親が術者に及ぼす心理的ストレス反応尺度において,内的一貫性と経時的安定性の両面より高い信頼性を得た。
    3.日常生活における一般的な心理的ストレスを測定するPSRSの分類より,高ストレス群に属する人は,小児歯科診療時における心理的ストレス得点も高く,低ストレス群に属する人は,小児歯科診療時における心理的ストレス得点も低かったことより,妥当性を得た。
    以上のことより,今回考案した心理的ストレス反応尺度が,小児歯科診療時に母親が術者に及ぼす心理的ストレスを測定する尺度として有効であることが示された。
  • 内藤 真理子, 川原 玲子, 斎藤 朗, 村上 辰郎, 忽那 博雅, 塚本 計昌, 木村 光孝
    1996 年 34 巻 5 号 p. 1061-1068
    発行日: 1996/12/25
    公開日: 2013/01/18
    ジャーナル フリー
    児童の食嗜好を検討する目的で,北九州市内の公立小学校に通学する3年から6年までの児童,男児1,336名,女児1,248名,計2,584名を対象に,質問票による調査を実施した。調査結果より,主食と主菜を兼ねた料理の嗜好度が著しく高く認められた。全般的に,魚や野菜主体の料理あるいは酸味のある料理に対して低い嗜好度が示された。また,料理の嗜好は味に大きな影響を受けることが示唆された。各料理に対して「好き」あるいは「普通」と肯定的に回答した率には,学年間の著しい変動は認められなかった。しかし,「好き」と回答した率単独では,ほとんどの伝統的料理において,学年の上昇に伴う率の減少が有意に認められた。各料理に対して「知らない」と回答した率は,学年の上昇とともに減少する傾向にあった。
  • 高松 恒美, 嘉藤 幹夫, 大東 道治
    1996 年 34 巻 5 号 p. 1069-1080
    発行日: 1996/12/25
    公開日: 2013/01/18
    ジャーナル フリー
    小児期の乳歯の外傷は,上顎前歯だけではなく下顎前歯にも発現する。また,乳歯根の吸収程度により損傷程度が異なると考えられる。そこで,下顎乳中切歯の外傷について,乳歯根吸収程度の相違により下顎乳中切歯,歯周組織,下顎骨および後継永久歯歯胚がどのように影響を受けるかについて,有限要素法を用いて変位および応力の発現変化を解析し,外傷の損傷様式を探求する目的で研究を行なった。その結果,
    1.下顎乳中切歯の外傷は,歯根完成期から歯根吸収1/3期までは,乳歯の脱臼および後継永久歯の歯冠部への影響が発現する。
    2.歯根吸収1/3期から歯根完全吸収期では,歯槽骨骨折を伴う乳歯の脱落および後継永久歯の歯根部への影響や萌出障害が発生しやすくなると考える。
    乳歯の外傷は,受傷時から後継永久歯の形成および萌出まで経過観察することが必要であると思われる。
  • 川端 明美, 川端 宏之, 岩崎 浩, 林 于昉, 宮沢 裕夫
    1996 年 34 巻 5 号 p. 1081-1088
    発行日: 1996/12/25
    公開日: 2013/01/18
    ジャーナル フリー
    本学小児歯科外来に来院した6歳から9歳までの80名を対象とし,保護者の仕上げ磨きに電動歯ブラシを用いることの有効性について検討した。方法は荒木の萌出分類を準用し,萌出程度別に第一大臼歯を分類し,3種類の電動歯ブラシを用いて各stageごとの小児自身の刷掃と保護者の仕上げ磨きの刷掃効果の違いを比較検討した。
    1.小児自身の刷掃では,手用と比較した場合stage1では反転式,併用式,stage2,3では全ての電動歯ブラシで清掃効果は高く,stage1では手用と反転式,併用式の間で,stage2,3では手用と全ての電動歯ブラシの間で,有意差が認められた。
    2.保護者による仕上げ磨きでは,萌出程度の低い第一大臼歯で小児自身の刷掃と比較した場合全ての歯ブラシで高い清掃効果を示し,stage1では手用と振動式,併用式の間で,有意差が認められた。
  • 武田 康男, 竹辺 千恵美, 野中 歩, 藤村 良子, 平野 洋子, 尾上 敏一, 下川 浩
    1996 年 34 巻 5 号 p. 1089-1098
    発行日: 1996/12/25
    公開日: 2013/01/18
    ジャーナル フリー
    口唇口蓋裂児と親の支援に関する療育チームと産科医との連携を再考することを目的に,福岡,山口,大分,佐賀4県の産科医にアンケート調査を行った。同時に当センターを受診した症例から両親の出生前告知に関する評価を分析した。その結果以下の結論が得られた。1.215人(83.7%)の産科医が口唇口蓋裂児の分娩を経験していた。2.分娩経験のある産科医のうちHotz床を知っている82人,Hotz床を使用したことがある17人であった。3.出生前の超音波断層法診断によって産科医の70人(27.2%)が口唇口蓋裂の存在を確認している。診断を行った最も早い週齢は在胎18週であった。4.診断後,〈 出生前に告知〉40人,〈 出生後に告知〉68人,〈 ケースバイケース〉など15人であった。また,出生前告知の40例のうち,〈 診断確定時点に告知〉28人,〈 出生直前に告知〉6人であった。5.告知時期の判断に関与する要因は,母親の性格,父親の包容性,上の児の子育てに関する両親の協力度の順で多かった。6.当センター症例中,12例が出生前診断と告知を受けた。現在,〈 出生後の対応についての説明があれば出生前告知が良い〉と答えた両親が最も多く12人,〈 いかなる条件のもとでも出生前に聞いた方が良い〉が4人で,母親7人中3人は無条件に出生前告知を選んだ。
  • 武田 康男, 竹辺 千恵美, 野中 歩, 藤村 良子, 平野 洋子
    1996 年 34 巻 5 号 p. 1099-1106
    発行日: 1996/12/25
    公開日: 2013/01/18
    ジャーナル フリー
    北九州市立総合療育センターの口唇口蓋裂児に対する早期療育に関し,両親にアンケート調査を行った。その結果以下の結論を得た。
    1.多くの両親が形成手術,発達,保育などに関する適切な情報と支えを出生後直ぐに必要とし,当センターの早期療育を評価した。
    2.家族カウンセリング時の説明で役に立った内容は,形成手術,言語発達,哺乳改善,言語訓練の順で多かった。
    3.家族カウンセリング時にもっと聞きたかった内容は口唇口蓋裂の成因,遺伝が多く,とくに母親の回答にこの傾向が強かった。
    4.家族カウンセリングの時期の評価に関して,実施した生後日数が早いほど両親ともに〈 時期が良かった〉と一致した回答が増えている。すべての生後日数で,母親が父親より〈 遅い〉と回答する者が多かった。
    5.家族の理解と援助に関しては約80%の両親は協力が得られたが,孤立した母親も少数ながら存在していた。また,地域の中でも母親の方が不適応状態に置かれる傾向が強かった。
    6.医者や看護婦による支援の有無に関して父親の29人,母親の34人が〈 放置されたままであった〉と回答した。
    7.1995年12月現在,ピアカウンセリングを受けた症例は19例であった。
    8.ピアカウンセリングに関して,双方の母親から有意義であるという回答が得られた。
    9.ピアカウンセリングを含めた母親の支援を最優先する専門医療機関間の連携の形成が必要と考える。
  • 仲井 雪絵, 吉田 登志子, 松村 誠士, 下野 勉
    1996 年 34 巻 5 号 p. 1107-1112
    発行日: 1996/12/25
    公開日: 2013/01/18
    ジャーナル フリー
    歯科診療に対し小児が示す不安・恐怖などの情動を発達心理学的な観点から検討するために成人と小児の情動反応の相違点を調べる目的で,22~38歳の男子64名女子16名計80名,3~5歳の男児17名女児15名計32名を対象とし研究を行った。本研究では,歯科診療に対する不安・恐怖の生理学的反応の指標として鼻部皮膚表面温度を用い,その反応様式について成人と小児を比較した。
    その結果,成人の対象について浸麻針刺入前後5分間ずつの温度変化は温度上昇を示す者と比較して,温度低下を示す者の方が88.4%と高い割合を示した。
    一方小児の対象については,成人とは逆に温度上昇を示す者の方が高い割合を示した。すなわち小児と成人のストレス反応としての生理学的反応様式には相違点が見られた。
  • 重田 浩樹
    1996 年 34 巻 5 号 p. 1113-1127
    発行日: 1996/12/25
    公開日: 2013/01/18
    ジャーナル フリー
    対照群12名と雑音群12名および疼痛群12名を対象に安静時における皮膚表面温度の評価と咀嚼運動負荷によるM部の温度変化の評価を行い,サーモグラフィーが顎関節症の診断に応用できるかどうかを検討した。1.安静時における左右の温度差は,各測定部位において対照群と雑音群,疼痛群で有意差を認めなかった。よって,左右の温度差を顎関節症の診断として応用することは困難であることが示唆された。2.対照群の偏咀嚼の有無による安静時の左右の温度差は各咀嚼筋部において有意差を認めなかった。また,雑音群,疼痛群の症状側と偏咀嚼との間でも有意差を認めなかった。よって,左右の温度差の要因として偏咀嚼の関与を明確にすることはできなかった。3.TMJ部温度と顎関節内の血流量変化とは有意な相関を認めなかった。よって,TMJ部温度を顎関節症の診断として応用することは困難であることが示唆された。4.咀嚼運動負荷によるM部の最大温度変化量は対照群と比較し,疼痛群で有意に低値を示した。よって,最大温度変化最は顎関節症の診断として有効であることが示唆された。5.咀嚼運動負荷後の左右側の一致性は,対照群と比較し,雑音群,疼痛群で有意に低値を示した。さらに最大温度変化量到達時期は,対照群と比較し疼痛群の症状側で有意に遅れて発現した。よって,左右側の一致性と最大温度変化量到達時期とは顎関節症の診断として有効であることが示唆された。
  • 佐藤 輝子
    1996 年 34 巻 5 号 p. 1128-1140
    発行日: 1996/12/25
    公開日: 2013/01/18
    ジャーナル フリー
    第二大臼歯まで萌出の完了した永久歯列92症例を正常,叢生群に分類し,その乳歯列時の平行模型を資料として,歯冠幅径,歯列弓ならびに歯槽基底弓の大きさを計測した。さらに乳歯とその後継永久歯の大きさの相関性についてそれぞれ分析し,検討した結果,次のような結論を得た。
    1.乳歯の歯冠幅径は,男子では上下顎どの歯種においても,正常,叢生群間の差に有意差は認められなかったが,女子ではその差が明らかであり,上顎では全歯種,下顎では乳中切歯と乳側切歯において,叢生群は正常群よりも有意に大きい値を示した。
    2.歯冠幅径における乳歯とその後継永久歯との相関は,女子の方が男子よりも正の相関を示す歯種が多く認められた。
    3.歯列弓幅径は,男子においては,叢生群が上下顎ともにD-D間,E-E間で有意に正常群より小さな値を示した。しかし女子では,正常,叢生群間に差は認められなかった。
    4.歯列弓長径は,男女ともに,正常,叢生群間に差は認められなかった。
    5.歯槽基底弓幅径ならびに歯槽基底弓長径は,男子において幅径は叢生群の方が,長径は正常群の方が小さい傾向が認められたが,有意差は下顎B-M2間のみであった。
    6.将来の永久歯列の正常あるいは叢生の形成に影響を与える乳歯列の要因には,男子では歯列弓幅径が,女子では歯冠幅径の大きさが大きく関与するものと思われた。
  • 福田 理, 栁瀬 博, 河合 利方, 戸田 久美子, 中野 崇
    1996 年 34 巻 5 号 p. 1141-1147
    発行日: 1996/12/25
    公開日: 2013/01/18
    ジャーナル フリー
    本研究は,ミダゾラム舌下投与鎮静法の小児歯科臨床への応用の可能性を探るための基礎的検討を行った。すなわち,成人ボランティア8名を対象に,ミダゾラム0.2mg/kg舌下投与後の血中濃度および鎮静度の推移,循環・呼吸系への影響,歩行機能の回復過程,副作用について調査し,以下の結論を得た。
    ミダゾラム血中濃度は,投与30分後に平均71.7ng/mlと最高濃度を示し,鎮静効果が充分期待できる血中濃度が維持されていた。また,投与25分後から60分後にかけて安定した鎮静効果が認められ,投与150分後には全症例が通常の状態に回復していた。歩行機能の回復過程では,投与60分後には全ての症例にふらつきが観察されたが,時間経過と共に回復傾向を示し,150分後に全ての症例で正常な歩行が可能になっていた
    。循環系・呼吸系の変化では,ミダゾラム投与後,対照値に比べ血圧および経皮的酸素飽和度の低下が認められたが,全て正常範囲内の変化であり,臨床的に問題となる循環系・呼吸系への影響は認められなかった。さらに,経過を観察した全ての過程において重篤な副作用は認められなかった。
  • 鬼頭 秀明, 戸松 ゆう子, 山根 典子, 渡辺 直彦, 井上 三枝, 土屋 友幸, 黒須 一夫
    1996 年 34 巻 5 号 p. 1148-1156
    発行日: 1996/12/25
    公開日: 2013/01/18
    ジャーナル フリー
    本研究は,小児の歯科治療後の体感音響装置による歯科医のリラクセーション効果を検討した。リラクセーション効果の判定には,脳波記録分析装置(IBVA)を用いた。この装置は,脳波ならびに眼球運動の変化をパーソナルコンピューターを用いて周波数分析できるものである。脳波と眼球運動の記録分析は,小児の歯科治療時(治療時),体感音響装置によるリラクセーション時(安静時B),体感音響装置を機能させないリラクセーション時(安静時N)について行った。被験者は,本学小児歯科に常勤している歯科医師8名(男性5名,女性3名,延べ30名)で,うち30歳未満5名(17名),40歳以上3名(13名)である。その結果を要約すると,
    以下のようであった。
    眼球運動の発現率は治療時>安静時N>安静時B,θ 波とα波は安静時N>安静時B>治療時,β 波低域とβ波高域は安静時B>安静時N>治療時の順であった。治療時の各指標の発現率は,眼球運動(p<0.01),θ 波(p<0.05)は30歳未満が高く,α 波,β 波低域,β 波高域は40歳以上が高くなっていた(p<0.01)。安静時Bでは,眼球運動,θ 波,β 波低域は30歳未満が,α 波とβ波高域は40歳以上が高くなっていたが,有意差は認められなかった。安静時Nでは,眼球運動,θ 波,β 波高域は30歳未満が,α 波とβ波低域は40歳以上が高くなっていたが,有意差は認められなかった。
  • 土屋 友幸, 高橋 淳, 渡辺 直彦, 鬼頭 秀明, 井上 三枝, 磯村 文質, 黒須 一夫
    1996 年 34 巻 5 号 p. 1157-1163
    発行日: 1996/12/25
    公開日: 2013/01/18
    ジャーナル フリー
    本研究は,齲蝕に罹患していない小児と,軽度の齲蝕に罹患した小児の咬合力を比較検討するとともに,齲蝕に罹患した群の歯冠修復後の咬合力を検索することを目的として行った。被験者は,3歳から6歳の健全群の男児20名,女児18名の計38名と充填処置群の男児30名,女児28名の計58名,総計96名である。咬合力の測定は,咬合力計(日本光電社製:MPM-3000)を使用した。結果を要約すると,以下のようであった。健全群の咬合力は,右側第二乳臼歯で20.l±1.9kg,左側第二乳臼歯で19.5±2.4kg,右側第一乳臼歯で18.9±2.4kg,左側第一乳臼歯で18.3±2.8kgであり,第二乳臼歯部の方がやや高い値を示した。充填群の咬合力は,右側第二乳臼歯で処置前14.6±3.7kg,処置後18.8±2.5kgであった。左側第二乳臼歯は処置前14.7±35kg,処置後18.4±2.6kgであった。右側第一乳臼歯は処置前13.9±2.7kg,処置後17.8±2.3kg,左側第一乳臼歯は処置前14.2±3.1kg,処置後17.3±2.7kgであった。各部位の処置前と処置後の咬合力の平均値の差の検定では,いずれの部位においても有意差が認められ,処置後の方が明らかに高い値を示した(p<0.01)。
  • 松本 大輔, 河野 英司, 広瀬 弥奈, 五十嵐 清治, 市田 篤郎, 中垣 晴男
    1996 年 34 巻 5 号 p. 1164-1170
    発行日: 1996/12/25
    公開日: 2013/01/18
    ジャーナル フリー
    幼若永久歯の萌出後の成熟にともなうエナメル質表層フッ素濃度の経時的変化を明確にするために,萌出直後の下顎中切歯6歯を用い,唇面のCa/P(重量比),酸溶解性,および一定の深さ(1.0,3.0,5.0,10.0,20.0μm)におけるフッ素濃度を測定した。また,成熟を終えた歯周病により抜歯された披去歯の値とフッ素濃度を比較検討した。
    1)Ca/Pは一般にいわれている重量比平均2.08という値に比較し,萌出直後の(幼若)下顎中切歯の値は4層の平均で1.96と低い値であった。
    2)酸溶解性についてはフッ素濃度の高い表層で低い値を示し,エナメル質表層フッ素濃度と酸溶解性との間には負の相関関係がみられた。
    3)萌出直後の(幼若)下顎中切歯(唇面)のエナメル質においてもフッ素濃度は表層で高く,内層ほど低くなる濃度勾配が認められた。
    4)充分成熟した抜去歯とフッ素濃度を比較したところ,全ての深さにおいて半萌出歯の値は抜去歯の値の約1/2倍の低い値であり,3μmより深層では,その差は有意であった。
  • 永田 めぐみ, 山崎 要一, 峰松 清仁, 藤瀬 多佳子, 早崎 治明, 中田 稔, 豊島 正三郎, 小椋 正, 熊坂 純雄, 内村 登, ...
    1996 年 34 巻 5 号 p. 1171-1180
    発行日: 1996/12/25
    公開日: 2013/01/18
    ジャーナル フリー
    小児の咬合機能の発達過程を解明する共同研究の一環として,六大学の小児歯科が協力し,下顎第一大臼歯の萌出開始期から萌出終了に至る間の経年的な咬合接触状態の推移をデンタルプレスケールを用いて,6か月毎に計4回調査することとなった。初回採得資料(下顎第一大臼歯の初期咬合時,平均7歳2か月)の分析結果は以下のとおりであった。
    1.下顎第一大臼歯の咬合接触面積の増加に伴い,下顎第二乳臼歯の咬合接触面積と咬合力には増加の傾向が認められた。下顎第二乳臼歯の平均咬合圧には一定の傾向は認められなかった。
    2.下顎第一大臼歯の咬合力は,咬合接触面積が広くなるほど増加し,逆に平均咬合圧は小さくなる傾向がみられた。
    3.下顎第一大臼歯の歯根長と咬合力には,正の相関が認められた。下顎第二乳臼歯の歯根長と咬合力の間には相関は認められなかった。
    4.歯列全体の咬合接触面積と咬合力は,下顎第一大臼歯の咬合接触面積が広いほど増加する傾向が認められた。平均咬合圧には一定の傾向は認められなかった。
  • 張 野, 後藤 讓治
    1996 年 34 巻 5 号 p. 1181-1203
    発行日: 1996/12/25
    公開日: 2013/01/18
    ジャーナル フリー
    ヒト乳臼歯髄室床部の組織構造および副根管の状況を解明する目的で,小児頭蓋骨から得られた乳臼歯76歯を用い,連続切片標本により組織学的観察を行うと共に,コンピューターの画像処理により髄室床部の組織構造の観察および副根管の大きさの計測を行い,コンピューターの三次元的構築により副根管の走行形態を観察した。また,歯根未完成乳臼歯と歯根完成乳臼歯との相違を比較し,加齢的変化を究明した。
    1)歯根完成乳臼歯髄室床部には,2層構造が認められたが,歯根未完成乳臼歯髄室床部には,上層象牙質は認められなかった。歯根完成乳臼歯髄室床部の厚径は,歯根未完成乳臼歯のそれより有意に大きかった(p<0.01)。
    2)乳臼歯髄室床部すべてに副根管が認められた。歯根未完成乳臼歯と歯根完成乳臼歯との間に,副根管の発現歯数と発現個数には統計学的有意差は認められなかった。
    3)副根管の走行形態を1~4型に分類した。歯根完成乳臼歯より歯根未完成乳臼歯において交通型副根管(3型)が有意に多かった(p<0.01)。
    4)副根管の長さおよび内径については,歯根未完成乳臼歯と歯根完成乳臼歯との間に,有意差は認められなかった。交通型副根管(3型)の長さと内径はともに,非交通型副根管(1,2,4型)より大きかった。また,細い副根管より太い副根管の方が長く走行する傾向が認められた。
    5)副根管の形状については,管状と珊瑚状の2種類が認められ,管状副根管の方が多かった。
  • 井下田 繁子, 朝田 芳信, 前田 隆秀
    1996 年 34 巻 5 号 p. 1204-1208
    発行日: 1996/12/25
    公開日: 2013/01/18
    ジャーナル フリー
    人体に対する侵襲を最小限に留め,患児の不安を助長することのないハブラシによるDNA抽出法を考案し,以下の結論を得た。
    1.被験者全てからゲノムDNAを抽出することができた。
    2.被検部位については,歯肉,頬粘膜に比較し,舌からのDNA回収量が有意に高かった。
    3.すべての被検部位において,1ストロークより10ストロークの方が,回収量が多い傾向を示した。
    4.ヒトDNAに特異的に反応するプライマーによりDNAを増幅できたことから,今回抽出されたDNAは,分子遺伝学的研究に用いることが可能なヒト高分子DNAであることが示唆された。
  • 鈴木 康弘, 道本 篤, 岡本 和久, 朝田 芳信, 前田 隆秀
    1996 年 34 巻 5 号 p. 1209-1214
    発行日: 1996/12/25
    公開日: 2013/01/18
    ジャーナル フリー
    樋状根出現率が異なる近交系マウス7系統において,下顎第1臼歯(以下M1),第2臼歯(以下M2),ならびに第3臼歯(以下M3)の歯冠頬舌径,歯冠近遠心径および歯根長を計測した。その中で,樋状根出現率が高値を示すC57BR/cdJ(以下C57BR)およびC57L/J(以下C57L)の2系統において,樋状根の出現が認められたM2の歯冠頬舌径,歯冠近遠心径および歯根長が絶対的または相対的に退化傾向を示すか否かを検討したところ,以下の結論を得た。
    1.各臼歯の歯冠頬舌径ならびに歯冠近遠心径については,樋状根出現率が高い値を示す2系統が,中間型および低い値を示す系統と比較し,矮小化あるいは長大化傾向を認めなかった。
    2.各臼歯の歯冠近遠心径の総和(以下M1+M2+M3)に対するM2の近遠心径の割合については,系統差が存在するものの,樋状根出現率が高い値を示す2系統が中間型および低い値を示す系統と比較し,倭小化あるいは長大化傾向を認めなかった。
    3.樋状根の出現が認められるM2の歯根長については,樋状根出現率が高い値を示す2系統の頬側ならびに舌側歯根長が,中間型および低い値を示す系統と比較し,有意に長根を示した。
    以上の結果から,マウス樋状根成因は,退化現象の1つとして現れたものではなく,ある突然変異遺伝子による小奇形として出現したものと考えるのが妥当と思われる。
  • 宮新 美智世, 片野 尚子, 菊池 小百合, 松村 木綿子, 江橋 美穂, 竹中 史子, 桔梗 知明, 橋本 吉明, 石川 雅章, 高木 裕 ...
    1996 年 34 巻 5 号 p. 1215-1225
    発行日: 1996/12/25
    公開日: 2013/01/18
    ジャーナル フリー
    幼若永久歯の歯根吸収について調査することを目的として,外傷や歯の萌出の異常,嚢胞などに伴って観察された歯根吸収歯59歯について,吸収に関わった病変や治療と,後の転帰などの経過を分析した。
    外傷歯においては,50歯に外吸収と内吸収とが観察され,以下のように5型に分類した。なお,これらの症例の経過観察期間は平均9年であった。
    臨床的正常歯髄歯の外吸収は脱臼歯や歯根破折部位などに見られ,自然に停止した(I型5歯)。歯髄炎や歯髄壊死に随伴した吸収のうち,内吸収は歯内治療後は停止していた(II型4歯)。
    外吸収では,歯内治療後に吸収が停止したもの(III型13歯)と,停止しなかった吸収(IV型11歯)があり,さらに低位化を伴った外吸収(V型18歯)も認められた。低位化にはトンネル吸収も伴い,吸収や低位化は停止も観察された。
    なお,外吸収の発現は受傷後2か月以内に最も多く,1年以内に見られ始めた。内吸収は1年以後も発現する可能性があった。なお,自家移植歯はIII型に準じた吸収を示していた。また,このほかに,萌出余地不足の症例において,上顎犬歯などの萌出にともない,隣在歯の歯根吸収がみられた。
    また,含歯性嚢胞が近接した大臼歯近心根に,水平性の歯根吸収が疑われた。これらは原因と見える歯や嚢胞が除去された後は吸収停止が観察された。
  • 黒川 泉, 松井 大介, 下岡 正八
    1996 年 34 巻 5 号 p. 1226-1238
    発行日: 1996/12/25
    公開日: 2013/01/18
    ジャーナル フリー
    新潟県北魚沼郡広神村の同一個体432名を対象に,9年間の経年的調査結果を資料とし,第一大臼歯齲蝕に影響を与える乳歯列期の乳臼歯処置,未処置状況を検索した。第一大臼歯が齲蝕に罹患するまでの健全期間別に乳臼歯処置,未処置状況を調査した。各健全群の健全期間に第一大臼歯が齲蝕に罹患したものを非健全群とし,健全群か非健全群かの項目と各年度ごとの乳臼歯処置,未処置状況との間でX2独立性の検定を行い,次のような結果を得た。
    1.第一大臼歯の萌出を確認後1年以内に齲蝕に罹患した群では処置,未処置とも有意な関連は認められなかった。
    2.第一大臼歯健全に寄与し関連性の強い歯種は,処置では第一乳臼歯であり,特に下顎に多く認められた。未処置では第二乳臼歯との関連性が強く,萌出後1年間健全であった群は下顎第二乳臼歯のみの関連であり,健全期間が長くなるにつれ上顎乳臼歯との関連が認められた。
    3.各検定において最大の寄与率を示した処置はすべて健全側に属し,乳歯列期乳臼歯の処置は第一大臼歯の健全との間に関連が認められた。処置別では齲蝕進行抑制剤塗布が2年健全群に限局し,それ以上健全であった群は充填および修復処置であった。
    4.各検定において最大の寄与率を示した未処置のうち,C1はすべて健全側に属していた。C3,C4は非健全側に属し,2年以内に齲蝕に罹患する群のみであった。
  • 松永 幸裕, 田中 光郎, 小野 博志, 門磨 義則
    1996 年 34 巻 5 号 p. 1239-1243
    発行日: 1996/12/25
    公開日: 2013/01/18
    ジャーナル フリー
    エッチング効果を有しながらも,親水性のエタノールや水を全く含まずそれ自体がシーラントとなりうる疎水性のセルフエッチングシーラントの開発を目的として基礎的検討を行った。その第一段階として試作リン酸モノマー組成物のエッチング効果を検討するために,歯の主成分であるハイドロキシアパタイトの溶解に関する実験を行った。その結果以下のような結果が得られ,シーラント材一液によってすべての処置が行える〈 オール・イン・ワン・システム〉の可能性が示唆された。
    1.試作リン酸モノマー組成物(試作シーラント材)は乾燥状態において,ハイドロキシアパタイトを溶解し得た。
    2.反応初期において,その溶解量はハイドロキシアパタイトの湿潤状態に大きく影響され,リン酸モノマー:希釈モノマー=5:5の系では湿潤させたものの方が乾燥状態のものと比べ,反応開始1時間で約9倍,2:8の系では同じく約18倍の溶解を示した。
    3.ハイドロキシアパタイトの溶解量はリン酸モノマーの量に依存していた。
  • 関口 浩, 櫻井 正治, 久保 周平, 藥師寺 仁, 町田 幸雄
    1996 年 34 巻 5 号 p. 1244-1251
    発行日: 1996/12/25
    公開日: 2013/01/18
    ジャーナル フリー
    下顎乳中切歯21歯について横断連続切片標本を作製し,その根管形態について検索した結果,以下の結論を得た。
    1.横断面形態は,根管のいずれの部位においても単型が最も多く認められたが,中央1/3部,根端1/3部では峡状型がそれぞれ約28%認められた。
    2.側枝は21歯中2歯(9.5%)に認められ,その発現部位は,いずれも根端1/3部のみであった。
    3.根端分岐を認めた症例は皆無であった。
    4.全被検歯21歯中,壁着性象牙質瘤を認めた症例は皆無であった。一方,21歯中有髄歯であった5歯について,遊離性象牙質瘤を認めた症例が3歯(60.0%)あり,その発現部位は3歯とも根端1/3部および中央1/3部の両部位であった。
    5.根管の唇舌幅径および近遠心幅径の平均値は,冠側1/3部で1.14mmおよび0.79mm,中央1/3部で0.84mmおよび0.51mm,根端1/3部で0.47mmおよび0.31mmであった。
    6.根管壁最薄部厚径は,いずれの部位においても1mm未満であった。
    7.根管の立体的形状についてみると,全被検歯21歯中18歯(85.7%)が単純根管で,3歯(14.3%)が不完全分岐根管であった。
  • 小出 武, 山賀 まり子, 覚道 健治, 田中 昭男, 大東 道治
    1996 年 34 巻 5 号 p. 1252-1258
    発行日: 1996/12/25
    公開日: 2013/01/18
    ジャーナル フリー
    Sturge-Weber症候群と診断された6歳3か月男児の歯科治療終了後,13年間にわたり口腔管理を継続し,以下の様な所見を得た。
    顔面の母斑,緑内障および脳症状のtriasを備えた典型例で,頭部エックス線写真撮影により,脳の両側に鎌状に迂回した二重の屈曲石灰化陰影像を認めた。全身の発育は極めて悪く,19歳時の体重は,20kgであった。母斑は顔面のほぼ全面に両側性に存在し,上,下口唇は赤色を呈し,肥厚していた。口蓋粘膜や歯肉の随所に赤色斑が認められた。また,癲癇の治療のためフェニトインの服用により歯肉は肥大し,多数歯の萌出が遅延していた。また,転位歯などの歯列不正も認めた。さらに歯肉の数箇所に腫瘤が形成され,ブラッシング時などに同部から出血したため,2箇所で歯肉を切除した。切除した歯肉の腫瘤を病理組織学的に観察したところ,血管腫性エプーリスの像を呈していた。
  • 中村 美保, 桑原 未代子, 杉山 知子, 根来 道恵
    1996 年 34 巻 5 号 p. 1259-1266
    発行日: 1996/12/25
    公開日: 2013/01/18
    ジャーナル フリー
    粘液嚢胞の処置については,一般的に外科処置が行われているが,再発率が高い。今回,本学病院歯科口腔外科において1988年12月から1995年9月の6年10か月間に来院し,小唾液腺由来の粘液嚢胞と診断され,習癖が発症誘因と考えられた小児患者に習癖を除去するために床装置を応用した。本研究ではその予後が確認できた18例を報告する。なお,口腔診査の結果,習癖と明らかな関連が認められたのは8例,他の10例に関しては習癖の関与が疑われるものの,それを特定できなかった。
    床装置は主に片顎用の床副子型,またはFKO型を使用した。効果判定は1か月後に行い,消失または縮小し,その状況が2週間以上継続していたものを「有効」,変化のないものを「無効」とした。
    結果は有効13例,無効5例であった。有効症例には3か月以上床装置の継続使用を指示した。無効症例は外科的処置を行ったが,再発を予防するため処置後も床を継続装用させた。現在,最短4か月から最長約5年の経過観察を行っているが再発は認められていない。
  • 三浦 真理, 小島 寛, 佐々木 あずさ, 小口 春久
    1996 年 34 巻 5 号 p. 1267-1273
    発行日: 1996/12/25
    公開日: 2013/01/18
    ジャーナル フリー
    第一大臼歯に萌出障害をきたした4症例の原因,処置,治療経過および萌出誘導期間について検討した。
    1)萌出障害と診断された時点の患児の年齢は7歳11か月から9歳6か月であった。
    2)萌出障害の原因となったものは第一大臼歯の歯冠上あるいはその周囲に存在し,歯牙様硬組織1症例,複雑性歯牙腫1症例,集合性歯牙腫1症例,エナメル上皮線維歯牙腫1症例であった。
    3)3症例は,原因除去後一定期間を経過した時点で骨削除を含む開窓を行い,萌出をみた。1症例は,原因除去後4か月経過した時点で牽引を試みたが著効なく,牽引を中止したが,その1年後に萌出をみた。
    4)萌出誘導には7か月から1年7か月を要した。
  • 立野 麗子, 松本 敏秀, 立川 義博, 中田 稔
    1996 年 34 巻 5 号 p. 1274-1280
    発行日: 1996/12/25
    公開日: 2013/01/18
    ジャーナル フリー
    表皮水疱症は,先天的素因により,比較的軽微な機械的刺激により皮膚や粘膜に水疱を生ずる疾患である。種々の病型にわけられるが,その中でも口腔周囲の皮膚および粘膜の瘢痕・萎縮により開口障害等を有している栄養障害型は,口腔清掃が困難であり,多数歯にわたり重度の齲蝕発症がみられる。さらに,その歯科治療を行うにあたっては,開口障害を有しているために極めて困難であり,齲蝕予防がとくに重要となる疾患である。
    そこで今回,8年間にわたり管理を行っている本疾患患児について,以下の結果を得たので報告する。
    1.歯磨きが困難な歯肉と頬粘膜の癒着がみられる臼歯部の頬側面に歯ブラシを挿入し,また口角部の亀裂や口腔粘膜の水疱を悪化させることなく歯磨きを行うためには,刷掃部位に応じて歯ブラシの形態を改良することが必要であった。
    2.口腔内の水疱形成や食道狭窄等の合併症のために軟食中心の食事であり,齲蝕罹患性は高いと考えられるので,暫間的予防填塞やフッ化物洗口等の齲蝕予防も併せて行った。
    3.8年間齲蝕の新生がみられなかったのは,上記のような工夫に加え,患児と家族の意識の高さおよび熱意によって,患児の口腔衛生状態が改善されたことによると思われる。
  • 岩崎 浩, 川端 宏之, 川端 明美, 林 于昉, 宮沢 裕夫
    1996 年 34 巻 5 号 p. 1281-1286
    発行日: 1996/12/25
    公開日: 2013/01/18
    ジャーナル フリー
    小児歯科臨床において,乳歯癒合歯は高い頻度で認めることができる。しかし,永久歯癒合歯における頻度は乳歯に比べ低率である。今回,著者らは12歳1か月,男児の永久歯癒合歯の中でも比較的稀な上顎前歯部(右側中・側切歯)の癒合歯を認めた1例を経験し,歯科的検討および文献的考察を行った。
    1.問診より乳歯列時の異常所見は認められなかった。
    2.〓〓〓歯_の冠近遠心幅径を分割計測した結果1では-3 S.D.より小さい値を示したが,2は平均値内であった。
    3.〓〓〓よおび5を除く,上顎の歯牙の歯冠近遠心幅径は,平均値内であった。
    4.頭部エックス線規格写真分析より上顎骨および下顎骨の大きさはほぼ平均値内であったが下顎骨の後方回転が認められた。
  • 星野 佐智子, 渋井 尚武, 大出 祥幸
    1996 年 34 巻 5 号 p. 1287-1293
    発行日: 1996/12/25
    公開日: 2013/01/18
    ジャーナル フリー
    齲蝕処置を主訴に来院した4歳5か月の男児に対し,齲蝕処置終了後に定期診査を行っていたが,9歳7か月時に下顎左側臼歯部の無痛性の腫脹を訴えたため,口腔内診査ならびにエックス線診査,病理組織学的検査を行い,下顎左側第二小臼歯の歯胚を含む濾胞性歯嚢胞と診断した。また,上顎左側第一小臼歯の歯胚を含む濾胞性歯嚢胞もオルソパントモグラムから発見し,処置として両部位とも開窓療法を施した。術後10か月には,下顎第二小臼歯の煩側および舌側の咬頭頂が視診で確認できるまで萌出したが,空隙不足のため第一大臼歯の遠心移動を行い歯列弓内へ誘導した。
    上顎第一小臼歯は術後3か月に歯冠の1/3以上が萌出したが,近心傾斜し犬歯の萌出余地不足を生じたため,遠心移動を行い犬歯および第一小臼歯を歯列弓内へ誘導した。
    術後10か月のオルソパントモグラムでは,嚢胞部分の透過像は大豆大にまで縮小され,新生骨で置換されつつあることが想像できる。
    術後3年8か月の上顎第一小臼歯,下顎第二小臼歯の歯根は,対照側と比較すると短く湾曲しているが根尖部は閉鎖され,歯根形成が完成し,予後は良好であるといえる。
    以上の経験から,濾胞性歯嚢胞における開窓療法は若年者の外科的処置法として非常に有効であり,適切に対処すれば偏位していた歯胚も歯列弓内に誘導できることがわかった。
  • 中村 美どり, 中村 浩志, 上村 幹男, 宮沢 裕夫
    1996 年 34 巻 5 号 p. 1294-1302
    発行日: 1996/12/25
    公開日: 2013/01/18
    ジャーナル フリー
    Sotos症候群は脳性巨人症とも言われ,巨大頭蓋,精神発達遅滞を伴う成長過剰と末端肥大症に類似した症状を示す症候群であり,口腔領域の所見では上下顎前突,高口蓋が特徴的である。病因は不明であるとされているが,常染色体優性遺伝の可能性が高いと考えられている。
    本症例は現在10歳6か月の男児で,全身所見では身長129.5cm,体重28kg,脊柱側彎を合併しているため,身長が全国平均138.7±5.9cmより低い値を示した。また,漏斗胸,前頭部突出,眼間開離といったSotos症候群に合併する症状を認めた。
    口腔内所見は,臼歯部の咬合はAngleのII級で上顎前突の状態を示し,高口蓋が認められた。また上下左右第二小臼歯の歯胚の欠如が認められた。10歳6か月時の頭部エックス線規格写真分析結果よりSNP,SNBは-1SDより小さく,SNAは平均値内であるが,上下顎とも劣成長で頭蓋底に対し後方に位置していた。また,Gonial Angleは平均値内であるが,下顎の後方への回転がみられた。
  • 土屋 友幸, 高橋 淳, 渡辺 直彦, 大橋 淳, 内田 隆徳, 山内 芳裕, 黒須 一夫
    1996 年 34 巻 5 号 p. 1303-1307
    発行日: 1996/12/25
    公開日: 2013/01/18
    ジャーナル フリー
    ボルヒール®は,血液凝固の最終段階で形成されるフィブリンの作用を利用して,組織の接着,閉鎖を行うものであり,フィブリノゲン,血液凝固第XIII因子,トロンビン,塩化カルシウムおよびアプロチニンの5つの成分から構成されている。
    われわれは,1992年4月から1993年11月まで,本学歯学部小児歯科外来およびたけの子歯科外来において,小児患者の上顎前歯部埋伏過剰歯の抜歯5症例について,生体組織接着剤(ボルヒール®)の応用効果を調査した。
    調査の対象とした小児は,5歳4か月から7歳3か月の男児4名,女児1名で,平均年齢は6歳5か月である。結果を要約すると以下のようである。
    1)5症例の内,4症例(男児3症例,女児1症例)は,順生の完全埋伏過剰歯であり,歯冠形態はいずれも単錐型であった。また1症例は,完全埋伏過剰歯と萌出過剰歯であり,いずれも順生で歯冠形態は単錐型であった。
    2)ボルヒールは過剰歯摘出後の口蓋粘膜剥離面にボルヒール調剤器セットを用い,スプレー式塗布法を行った
    。3)抜歯後の不快症状は,全く認められなかった。
    4)ボルヒールによる止血効果,創傷治癒促進効果が認められた
  • 菊原 智恵, 蓜島 桂子, 河野 美砂子, 富沢 美恵子, 鈴木 誠
    1996 年 34 巻 5 号 p. 1308-1314
    発行日: 1996/12/25
    公開日: 2013/01/18
    ジャーナル フリー
    Hand-Schuller-Christian病は組織球系細胞の増殖を特徴とし,骨病変,眼球突出,尿崩症を三主徴とする。歯科的には,口腔粘膜の炎症,歯の動揺や脱落,顎骨の腫脹・疼痛などが報告されているが,いずれも発病中の所見である。今回我々は,本疾患の治癒後に歯列不正,永久歯萌出遅延を主訴に来院した,13歳1か月女児の一症例を経験し,以下のような所見を得た。
    1)身長・体重は標準値の-2SDを下回っており,骨年齢は暦齢に比べ2年程遅れていた。
    2)中顔面部の劣成長が認められた。
    3)全ての第一大臼歯は萌出が遅延していた。
    4)下顎第二小臼歯の位置異常が認められた。
    5)〓〓〓に認められた歯根の形態異常,〓〓〓に認められた形態異常・形成不全の発症時期は,患児の顔面神経麻痺や丘疹の発症時期とほぼ一致していた。
    6)下顎第二小臼歯,第二大臼歯の病理組織学的検索では,エナメル質の部分的な欠如や象牙細管の走行の乱れが認められた。
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