小児歯科学雑誌
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48 巻 , 6 号
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総説
  • 中島 美砂子, 庵原 耕一郎
    2010 年 48 巻 6 号 p. 653-658
    発行日: 2010/12/25
    公開日: 2015/03/13
    ジャーナル フリー
    象牙質・歯髄再生においては血管新生・神経再生を考慮する必要がある。私どもは,多分化能,高い遊走能,増殖能を有する歯髄CD 31SP 細胞およびCD 105細胞を分取した。この細胞を下肢虚血部モデルに移植すると,血流の回復ならびに血管新生促進作用がみられた。この細胞は虚血部位において血管内皮細胞へ分化して組み込まれるのではなく,新生血管周囲に集積し種々の血管誘導因子を発現していた。この細胞の培養上清は血管内皮細胞の増殖促進,抗アポトーシス効果を有していた。よって,下肢虚血部においてはパラクリン的に血管新生を促進している可能性が示唆された。一方,この細胞を脳梗塞モデルに移植すると,神経前駆細胞が梗塞部周囲に集積し,神経栄養因子を高発現し,神経細胞の分化促進作用がみられた。また,細胞移植により運動麻痺の劇的回復がみられた。さらに,イヌの生活歯髄切断面上にCD 31SP 細胞を自家移植すると,切断面上の窩洞内は血管新生および神経再生がみられ完全に歯髄組織で満たされていた。さらに,イヌの抜歯後,完全抜髄を行い,根管内に自家の歯髄CD 31SP 細胞あるいはCD 105細胞をSDF-1 とともに注入し再植すると,14 日後には根管内は血管新生および神経再生がみられ,完全に歯髄組織で満たされていた。この再生歯髄は分子生物学的ならびに蛋白化学的解析により,正常歯髄とほぼ類似していることが明らかとなり,これらの歯髄幹細胞の歯髄再生への有効性が示唆された。
  • 白川 哲夫
    2010 年 48 巻 6 号 p. 659-666
    発行日: 2010/12/25
    公開日: 2015/03/13
    ジャーナル フリー
    スペシャルニーズのある子どもたち,といえば,一般には明らかな発達の遅れや身体障害があってさまざまな支援を必要としている子どもたちのことをいい,「障がい児」とほぼ同義と考えてよい。一方,歯科治療をスムースに,また的確に行えるか否かという基準で考えると,「障がい児」の範疇に含まれなくても,本人,あるいは養育者に対して特別な配慮や対応をしなくてはならないケースがしばしばある。小児歯科の臨床においては「健常児」と「障がい児」という区分よりも,「特別な対応」をどの程度必要としているのかによって診療の中身を検討し,振り向けるエネルギーやマンパワーを見積もるのが適切のように思われる。もちろん障害が重度であればあるほど,おおむねそれに比例して「特別な対応」の必要性も高くなり,医療の質を維持する上でより多くの知識と経験が求められる。本総説は,第48 回日本小児歯科学会学術大会での「宿題報告」の内容を基に,スペシャルニーズのある子どもたちに今日的な歯科医療を提供するうえでの留意点と,歯科麻酔医や小児科医,療育の分野で障がい児と関わりの深い職種との連携について,今後の展望を含めて述べさせていただいた。
原著
  • 荒井 千鶴, 巻口 あゆみ, 高橋 雅, 斎藤 亮, 田中 光郎
    2010 年 48 巻 6 号 p. 667-672
    発行日: 2010/12/25
    公開日: 2015/03/13
    ジャーナル フリー
    小児歯科臨床において注目すべき,齲蝕と関連する要因を明らかにすることを目的として,齲蝕治療後の定期健診時に収集した様々な因子についてのデータと齲蝕との相関性について検討を行ってきた。前回,乳歯列期小児についての調査を行い,齲蝕経験と有意に相関がある要因として,プラーク中および唾液中のミュータンスレンサ球菌(SM)量,プラーク量,飲食回数,食事内容,唾液中の乳酸桿菌(LB)量,キシリトール利用の頻度が挙げられた。今回,混合歯列期を対象として同様な調査を行い,第一大臼歯の萌出,年齢の増加がどのように影響を与えるのかを乳歯列期との比較において検討した。その結果,齲蝕経験に最も相関がある因子は,乳歯列期同様,混合歯列期においてもSM 量であった。プラーク量と相関がある因子は,乳歯列期と同様にSM 量が重要であったが,混合歯列期では,それに加えて,飲食回数,仕上げ磨きの有無で相関が認められた。フッ化物応用に関しては,乳歯列期と同様に,フッ化物の種類が増しても齲蝕抑制効果に影響は認められなかった。また,乳歯列期では年齢と共に刺激唾液量,唾液緩衝能は増加していたが,混合歯列期においては年齢との相関は認められなかった。第一大臼歯の齲蝕発生に関しては,SM との相関は認められず,仕上げ磨き,寝かせ磨きの有無のみに相関があったことは,保護者による仕上げ磨きを推奨する年齢を考える上で参考になるデータであった。
  • 何 陽介, 岡本 佳三, 松家 茂樹
    2010 年 48 巻 6 号 p. 673-680
    発行日: 2010/12/25
    公開日: 2015/03/13
    ジャーナル フリー
    炭酸ガスレーザーの導光路には2 種類あり,マニピュレータータイプとファイバータイプに分けられる。しかしながら,導光路の違いにおける影響についての報告は少ない。そこで,著者らは導光路の違いによる照射特性の違いについて検討した。1 .蒸散穴面積および黒径面積はマニピュレータータイプ,ファイバータイプ共に出力の上昇と共に増大した。面積はいずれもファイバータイプの方がマニピュレータータイプと比較して2~3 倍程大きい値を示した。2 .照射エネルギーは,マニピュレータータイプが一点集中型に対して,ファイバータイプが多点分散型である事が示唆された。3 .パルス波(SP 1, SP 2 モード)の照射の方が,蒸散穴面積,黒径面積共に連続波(CW モード)より大きかった。以上の事からマニピュレータータイプはピンポイントでの処置に有効でファイバータイプは広い面積に効率良く照射するのに有効である事が示唆された。
  • 玄 松玉
    2010 年 48 巻 6 号 p. 681-688
    発行日: 2010/12/25
    公開日: 2015/03/13
    ジャーナル フリー
    小児期における咬合能力と全身機能の関連性を把握することは口腔機能を健全に管理するうえで重要である。本研究により,小児の咬合能力,運動能力,土踏まず形成および重心動揺の関連性について調べた。保育園児225 名(3~5 歳)を対象とし,身長と体重および土踏まず形成,咬合接触面積と咬合力,運動能力(ソフトボール投げ,立ち幅跳び,25 m 走,開眼片足立ち)と重心動揺総距離と総面積の測定を行った。各年齢群で咬合力の上位群25%と下位群25%の運動能力および重心動揺を比較した。また,重心動揺の安定群25%と不安定群25%の運動能力および咬合能力を比較した。さらに,土踏まず形成群と未形成群の咬合能力,運動能力と重心動揺を比較した。以上より以下の結論を得た。1 .各年齢群で咬合力上位群が下位群より重心動揺の値が小さかった。5 歳児では咬合力上位群のほうがソフトボール投げの値が有意に大きかった。2 .各年齢群で重心動揺安定群が不安定群より開眼片足立ちの値が大きく,3 歳児では有意差が認められた。3, 5 歳児では重心動揺安定群のほうが咬合能力の値が有意に大きかった。3 .3 歳児の土踏まず形成群は未形成群より咬合能力の値が大きく,重心動揺の値が小さかった。4, 5 歳児では土踏まず形成群のほうが咬合能力と運動能力の値が大きく,5 歳児では重心動揺の総距離が有意に少なかった。
  • 白井 裕子, 荒井 清司
    2010 年 48 巻 6 号 p. 689-695
    発行日: 2010/12/25
    公開日: 2015/03/13
    ジャーナル フリー
    乳歯用既製金属冠は,歯冠崩壊の大きい乳臼歯や歯髄処置を施した乳臼歯や保隙装置の支台歯などに使用されている。またフッ化物の小児への局所応用は頻繁に行われており,齲蝕治療経験児においてもフッ化物の応用が積極的に行われている。乳歯用既製金属冠の装着後のフッ化物応用を想定して,in vitro におけるフッ化物の乳歯用既製金属冠への影響を調べたところ以下の知見を得た。フッ化物により乳歯用既製金属冠からニッケルイオンの溶出を認めることが明らかとなった。特に,ニッケル含有量が多い乳歯用既製金属冠からは,ニッケル含有量が少ない乳歯用既製金属冠より多くニッケルイオンの溶出を認めた。ニッケルイオンの溶出量ならびに乳歯用既製金属冠の金属表面の走査型電子顕微鏡観察から,腐食にはフッ化物の酸性度が関与することが明らかとなり,ニッケル含有量が多い乳歯用既製金属冠は,ニッケル含有量が少ない乳歯用既製金属冠より金属表面の腐食が強かった。
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