小児歯科学雑誌
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42 巻, 5 号
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  • 生田 剛史, 中村 均
    2004 年 42 巻 5 号 p. 615-622
    発行日: 2004/12/25
    公開日: 2013/01/18
    ジャーナル フリー
    HSV-1は,新生児ヘルペス,ヘルペス性角膜炎,ヘルペス性脳炎,口唇ヘルペスなどを引き起こす病原微生物として知られている。小児歯科外来においても,しばしば,顕性なHSV-1の初発感染症状として疱疹性歯肉口内炎に遭遇する。一方,回帰発症の症状として青年期以降においては口唇ヘルペスなどが観察される。過去の報告にHSV-1症状消失後も唾液中へHSV-1が無症候性排泄されているというものがあり,唾液中に微量であったとしてもHSV-1が検出されることは,常に唾液に触れながら多くの小児の口腔内を触れる小児歯科医にとって感染を起こす危険性を含んでいる。そこで最近の小児期におけるHSV-1の潜伏の有無の状態を知り,HSV-1感染者が減少傾向にあるか否かを知ることは,時に重症化する疱疹性歯肉口内炎への診断,治療,予後を含めた対応を行う小児歯科医にとって極めて重要である。しかしながら,唾液中のHSV-1の検出率を向上させた検査法を用いて小児期における年齢別の潜伏感染状況を検討した報告は認められない。そこで,著者らは今回の研究を行った。
    微量なHSV-1DNAの検出率を向上させるNested PCR-リアルタイムPCR法を用いて3歳6か月から12歳5か月の健康小児における唾液中HSV-1の検出率を検討した。各年齢群のHSV-1の検出結果は,3歳6か月-4歳5か月児においては4.2%,4歳6か月児-5歳5か月児においては21.2%,5歳6か月-6歳5か月児においては35.1%,6歳6か月児-7歳5か月児においては26.7%,7歳6か月児-8歳5か月児においては73.1%,10歳6か月児-11歳5か月児においては76.7%,11歳6か月児-12歳5か月児においては84.4%であった。各年齢群におけるHSV-1検出状況が一定かどうかX2検定を用いたところ危険率0.1%において有意に一定ではなかったことから,各年齢群においてHSV-1検出率に違いが有ることが明らかとなった。なお,男女別の検出結果は,男女比は0.9:1.0であり,有意差は認められなかった。従来2歳未満の低年齢児においてHSV-1に初発感染し,稀ではあるが疱疹性歯肉口内炎が発症すること。さらに低年齢児での発症は重症であることがいわれていた。しかし,本研究結果から低年齢児の検出率は少なく,学校生活が始まる7歳ごろから急激に検出率が増加していることから重症な疱疹性歯肉口内炎は減少するが,低年齢児での非感染者が多いことが示唆されており,疱疹性歯肉口内炎に罹患した患児が来院した際に感染させない配慮が必要であることが明らかとなった。
  • 峯田 淑江, 永石 恵子, 落合 慶信, 宮内 啓子, 長谷川 信乃, 田村 康夫
    2004 年 42 巻 5 号 p. 623-632
    発行日: 2004/12/25
    公開日: 2013/01/18
    ジャーナル フリー
    幼児の最大開口量について調査することを目的として,1,2歳児186名を対象に最大開口量の測定を行い,さらに最大開口量の変化と身長,体重との関連についても検討を行った。その結果,男児では1歳児の最大開口量は28.2mm,2歳児で33.6mm,女児では1歳児27.7mm,2歳児33.8mmであり,最大開口量は男児,女児ともに1歳から2歳にかけて有意に増加していた(P<0.001)。しかし,いずれの年齢群においても性差はみられなかった。最大開口量と身長,体重の間では,1歳児で相関は低かったが,2歳児で有意な相関がみられた。
    これらのことから,1,2歳児における最大開口量は増齢とともに増加し,身長,体重と関連することが明らかになった。
  • 佐久間 信彦
    2004 年 42 巻 5 号 p. 633-641
    発行日: 2004/12/25
    公開日: 2013/01/18
    ジャーナル フリー
    診療室で過去にフッ化物洗口指導を行い,調査時点において3か月以上経過した小児患者の保護者に対し,家庭でどのように洗口を行っているか調査した。洗口継続家庭数は121,非継続家庭数は60であった。洗口継続家庭では,62.8%が「子どもが自発的に洗口している」と回答した。保存容器からの洗口液の採取および洗口時間の測定(時計等の使用・数を数える)を子ども自身で行う(行っていた)家庭の割合は洗口継続家庭の方が非継続家庭よりも高かった。また洗口継続家庭において洗口の効果について実感している保護者は37.3%にすぎなかった。以上の結果から,洗口の継続には子ども本人の自発性が重要であること,および洗口の効果を実感しにくいことが洗口の中断につながる可能性が明らかになった。そこで,洗口指導には洗口の目的や方法を単に説明するだけでなく,再受診時に子ども・保護者に対しその努力をスタッフが十分にほめて,子どもの自発性を伸ばすとともに,洗口の効果が出ていればその状況を正確に伝え,励ましながらさらなる継続につなげていく必要性が示唆された。
  • 黒田 暁洋, 白瀬 敏臣, 荻原 和彦
    2004 年 42 巻 5 号 p. 642-652
    発行日: 2004/12/25
    公開日: 2013/01/18
    ジャーナル フリー
    根未完成永久歯の自家移植における移植歯の歯根表面性状が移植歯とその支持組織におよぼす影響をビーグル犬を用い研究した。
    根未完成上顎第二切歯を脱離させ,右側第二切歯の歯根膜を剥離し(実験歯),左側第二切歯はそのまま(対照歯)でそれぞれ互いに反対側同名歯の歯槽窩に移植し,一定期間飼育後,歯周組織に起こる変化を病理組織学的に観察した。
    臨床観察としては,動揺度の測定,口腔内写真,規格化エックス線写真の撮影を行った。組織観察には,蛍光標識を施した非脱灰水平断連続研磨切片を作製し,マイクロラジオグラム,蛍光顕微鏡,偏光顕微鏡を用い,移植歯とその支持組織におこる変化を比較検討した。
    1.移植歯の動揺度は,移植後5週目で実験歯が対照歯に比べ大きく有意差が認められた。
    2.歯根の外部吸収は対照歯と比較し実験歯で多く認められた。
    3.歯根膜腔の幅は,対照歯では歯根全周にかけて均一でみられたが,実験歯では不均一で狭窄し,骨性癒着が認められた。
    4.対照歯では歯根膜線維走行が広範囲に認められたが,実験歯ではわずかに認められるに過ぎなかった。
    5.実験歯は対照歯と比較し,相対的に隣在歯間で遠心唇側に偏位し植立していた。
    以上より,イヌの根未完成永久切歯の自家移植において,移植歯の根表面性状が歯根膜の再生に大きく関与しており,歯根膜が歯槽窩における歯の相対的な位置の補正に重要な役割をはたしていることが示唆された。
  • 堀 稔
    2004 年 42 巻 5 号 p. 653-660
    発行日: 2004/12/25
    公開日: 2013/01/18
    ジャーナル フリー
    近年,接着性レジンシステムのエッチング,プライミング,ボンディングの操作を簡便に一度に行えるall-in-one adhesiveの研究開発が盛んである。これらの材料を小窩裂溝填塞材(シーラント)として使用する可能性を検討するため研究を行った。その結果,all-in-one adhesiveのエナメル質に対する接着力はシーラント材の接着力と有意差はなく,齲蝕予防効果に必要なフッ素の徐放と取り込みの機能が付与されていた。これらの材料は酸性モノマーを含有するため,細胞毒性試験では未重合モノマーの細胞培養液中への溶出によりpHの低下を示し,細胞毒性がわずかに発現した。xeno CF II Bond と AQ Bond plusの細胞毒性が強かった。all-in-one adhesiveは十分なエナメル質接着力を示し,小窩裂溝に侵入し,操作が簡便であるためシーラント材として応用が可能である。
  • 佐橋 喜志夫, 近藤 俊
    2004 年 42 巻 5 号 p. 661-667
    発行日: 2004/12/25
    公開日: 2013/01/18
    ジャーナル フリー
    上唇小帯の付着位置は口唇閉鎖に影響を及ぼすことが推察されるが,未だその詳細は明らかにされていない。本研究では4歳1か月から18歳9か月までの259名(男119名,女140名)を年齢別に5群に分類し,口唇閉鎖力,上下の口唇圧および上下口唇圧比を口唇運動の指標として,上唇小帯の付着部位との関連を調べた。その結果,
    1.5群すべてにおいて,上唇小帯の付着位置と口唇閉鎖力との間に有意な正の相関関係を認めた。
    2.5群すべてにおいて,上唇小帯の付着位置と上下の口唇圧との間にいずれにも有意な相関関係を認めなかったが,上下口唇圧比との間に有意な正の相関関係を認めた。
    3.さらに,上唇小帯の付着位置と有意な相関関係を認めた口唇閉鎖力や上下口唇圧比の相関係数はいずれの群間においても有意差を認めなかった。以上のことから,小児の上唇小帯の付着位置が高位であると口唇閉鎖機能は低下することが示唆された。
  • 富沢 美恵子, 三富 智恵, 松山 順子
    2004 年 42 巻 5 号 p. 668-674
    発行日: 2004/12/25
    公開日: 2013/01/18
    ジャーナル フリー
    悪性腫瘍に罹患した小児の口腔病変の発現状態とその経過を明らかにする目的で,新潟県立ガンセンター新潟病院小児科に入院中の悪性腫瘍に罹患した小児54名について,定期的に口腔診査を行った。また,化学療法などの治療による全身状態の悪化に伴って発症しやすい口腔カンジダ症の予知のためカンジダ検査を行い,以下の結果を得た。
    1.症例は,男児33名,女児21名で,年齢は,生後6か月から15歳1か月に分布していた。
    2.診断の内訳は,急性リンパ性白血病22例,急性骨髄性白血病12例,悪性リンパ腫7例,神経芽腫4例,その他9例であった。
    3.口腔病変は54名中32名(59%)に観察され,歯肉の発赤・腫脹13例,口内炎10例,毛舌7例,口腔カンジダ症4例,出血斑3例,びらん・潰瘍2例,移植片対宿主病2例,アフタ1例であった。口内炎は,化学療法終了後5-7日目に多く発現していた。
    4.カンジダは,54例中9例(17%)で検出された。4例は口腔カンジダ症を発症しており,うち2例は,連続して頻回に検出されたことから,定期的なカンジダ検査と口腔診査の有効性が示された。9例中6例は要治療齲蝕歯を有していた。
    5.小児悪性腫瘍は一旦治療が開始されると歯科治療が困難になるため,治療開始前の歯科診査と治療開始後の定期的な口腔ケアが重要である。
  • 林 秀, 久保山 博子, 川口 稔, 宮崎 光治, 本川 渉
    2004 年 42 巻 5 号 p. 675-679
    発行日: 2004/12/25
    公開日: 2013/01/18
    ジャーナル フリー
    コンポジットレジンのフッ素イオン徐放性を制御する目的で,水溶性フッ化物であるFBNaの表面をシランカップリング剤であるMPTS(2%,5%)で処理してポリシロキサンコーティングを行った。このコーティングフッ化物を配合したコンポジットレジンのフッ素イオンの溶出量と機械的性質について検討した。フッ化物の表面をコーティングすることによって28日間のフッ素イオン積算溶出量は,非コーティングフッ化物を配合した場合の1/2以下に減少させることができた。また溶出速度についても同様の効果が得られ,経時的な溶出速度の変動の小さい持続的な溶出特性を示した。
    機械的性質については,曲げ強さおよび曲げ弾性係数ともに非コーティングの場合と大差ない値を示した。本研究の結果から,フッ化物表面をポリシロキサンでコーティングすることによって,コンポジットレジンのフッ素イオン溶出速度を制御することが可能であることが示唆された。
  • 住吉 智子, 佐野 富子, 田邊 義浩, 野田 忠
    2004 年 42 巻 5 号 p. 680-688
    発行日: 2004/12/25
    公開日: 2013/01/18
    ジャーナル フリー
    本研究の目的は,歯科治療の音である切削音と小児の歯科恐怖の関係を明らかにすることである。方法は,新潟大学医歯学総合病院小児歯科診療室に定期診査のために受診した4-15歳の男児52名,女児52名,計104名(平均年齢8歳5か月)の小児患者に対し,切削音の印象をFaces Pain Rating Scaleを用いて評価し,その後CFSS-DSの質問紙に回答した。結果をもとに検討し,以下の結論を得た。
    1.低年齢群,高年齢群の平均値を比較するとコントロール音は2群ともほぼ同様の値であったことに対し,雷雨の音,切削音は2群ともに高い値であり,切削音は小児にとって不快な音であることが示唆された。
    2.因子分析の結果,低年齢群では切削音は雷雨の音と関連を認めた。一方高年齢群では,切削音はCFSSDSの歯科受診に関する恐怖と関連を認めた。
    3.低年齢群では切削音を自然界の不快な音と同様に「音」の恐怖と捉えており,歯科経験を重ね高年齢となると,切削音を歯科に関係する恐怖として認識するようになると推察された。
    4.従来の報告と同様,女児は男児よりも音刺激により概念的歯科恐怖を持つ傾向が示唆された。
  • 石川 紀子, 中村 均, 菅野 亜里早, 澤野 和佳, 前田 隆秀
    2004 年 42 巻 5 号 p. 689-693
    発行日: 2004/12/25
    公開日: 2013/01/18
    ジャーナル フリー
    もやもや病(Willis動脈輪閉塞症)は,脳血管写上頭蓋内内頸動脈末端部から前および中大脳動脈の起始部にかけ狭窄ないし閉塞を認め,その近傍に異常血管網が動脈相で認められる疾患である。わが国では欧米に比べて発症率が高く,決して稀な病気ではないが,原因不明の脳血管疾患であり,病態を解明するには至っていない。小児例では,過呼吸を伴う動作によって誘発される脳虚血発作が典型的であるが,低年齢であるほど脳の発達に伴う旺盛な脳代謝を支えるために高い脳血流量が必要とされ,そのため要求される正常脳血流量と発作時脳血流量とのギャップが大きく,意識障害,脱力発作,感覚障害などが重症化しやすい。もやもや病患児では号泣が虚血発作の誘因となることが知られており,歯科治療時の号泣が患児の脳の発達を阻害する可能性がある。
    今回著者らは,広範性に重度齲蝕を有するもやもや病患児に対して,患児の身体的心理的状態に応じて母親を交えた行動変容技法を用いて,全身麻酔導入および覚醒時には母親も一緒に入室させた全身麻酔下集中歯科治療を行った。その結果,重篤な合併症を回避することができた。しかし最も大切なことは,患児のカリエスリスクを下げることに努め,定期健診によって積極的な口腔疾患の予防に努めることであると考える。
  • 小平 裕恵, 川島 あすか, 井出 正道, 朝田 芳信
    2004 年 42 巻 5 号 p. 694-700
    発行日: 2004/12/25
    公開日: 2013/01/18
    ジャーナル フリー
    低年齢児は何にでも興味を持ち,身の回りのあらゆる物を口に入れる特性がある。当診療室に来院した低年齢児で,口腔内異物が認められ,除去した2例について報告する。症例1:1歳8か月の男児は下顎右側乳中切歯の歯肉腫脹,歯槽骨吸収を主訴に来院した。歯肉縁下にストローと考えられる異物が嵌入しており,異物を切断しながら除去した。歯槽骨の吸収は重度であり,下顎右側乳中切歯の挺出も認められた。異物除去6か月後に歯槽骨の再生がみられ,現在,経過観察を継続している。
    症例2:2歳1か月の男児は,縫い針の口腔軟組織への迷入のため来院した。口腔内診査では迷入部位が特定できなかった。エックス線写真検査により迷入位置を確認して摘出した。予後は良好であった。
    異物除去を行う際には,異物の材質や位置の特定に有効な診査法を選択し,的確な診断のもとに処置することが肝要である。
  • 2004 年 42 巻 5 号 p. 701-707
    発行日: 2004/12/25
    公開日: 2013/01/18
    ジャーナル フリー
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