1)歯根の歯頸部および歯根施部における平均的形態については,乳中切歯は歯頸部,歯根施部ともに近遠心径の大きい楕円形であるのに対して,乳側切歯は唇舌径の大きい,唇面に底辺をおく三角形ないし長方形をなし,歯根施部では同様に唇舌径の大きい卵円形を呈している。また乳犬歯は歯頸部,歯根施部ともに隅角部の丸い正三角形を呈している。
2)歯頸部および歯根施部における根管の形態については,乳中切歯は歯頸部,歯根施部ともに近遠心径の大きい楕円形で,歯根形態よりなお一層圧平されたものとなっている。これに対して,乳側切歯の根管形態は歯頸部でほぼ円形であるが,歯根施部では唇舌径の大きい卵円形を呈している。また,乳犬歯の根管は歯頸部,歯根%部ともにほぼ円形を呈している。
3)根管および歯根の形態的特徴をとらえるために,これらの根ならびに根管の唇舌径と近遠心径の比を求めたところ,乳中切歯は根尖方向に向かって根管の唇舌方向への圧平が歯根の形態より顕著に見られ,乳側切歯は逆に根尖方向に向って根管の近遠心方向への圧平が著しいことが示されていた。また乳犬歯では,歯頸部から歯根施部に向かって根管の長径が近遠心径から唇舌径へと変換している。
4)臨床的に歯頸部の根管形態から歯根施部の形態を推測する必要があることから,歯頸部における根管の唇舌径および近遠心径と,歯根施部の根管の唇舌径および近遠心径のそれぞれの比を求めた結果,乳中切歯では根管の唇舌径および近遠心径は,歯根施部で歯頸部の値のそれぞれ60%および80%の値となると推測された。乳側切歯については,これらの値はそれぞれ80%および50%となることが推測された。また乳犬歯についても同様に,これらの値は70%および50%と推測された。
5)乳前歯用のScrew-postを作成するための基礎資料として上顎乳前歯の歯根および根管の形態について,それぞれ歯頸部および歯根施部の横断面の観察を行ない,その結果について報告した。
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