小児歯科学雑誌
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55 巻 , 4 号
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原著
  • 佐野 哲文
    2017 年 55 巻 4 号 p. 419-426
    発行日: 2017/11/25
    公開日: 2018/11/25
    ジャーナル フリー

    埋伏過剰歯は上顎前歯部に好発し,歯列不正などの一因となりうる。しかし,埋伏過剰歯が隣在歯の位置にどのような影響を及ぼすかについての検討は不十分である。そこで,cone­beam computed tomography (CBCT)画像をもとに埋伏過剰歯と上顎中切歯の位置関係について統計学的に検討した。 平成25 年10 月から1 年1 か月の間に,上顎前歯部埋伏過剰歯と診断された5~8 歳の小児34 名の34 歯を用いた。 評価項目として,埋伏過剰歯の歯軸方向,垂直的位置,中切歯歯軸傾斜角度,埋伏過剰歯と中切歯間および埋伏過剰歯と口蓋部骨表面間の距離を検討した。 埋伏過剰歯の垂直的位置は,上顎歯槽骨頂から鼻腔底下縁最上方点と最下方点を結ぶ直線(鼻腔底下縁線)までの距離を3 等分し,鼻腔底下縁線から上,中,下位の範囲1/3 をそれぞれPosition 1, 2, 3 とした。 また埋伏過剰歯に近い上顎中切歯を患側中切歯,反対側を健側中切歯とした。矢状面断における鼻腔底下縁線を基準線とし,患側または健側中切歯の歯軸となす角度を各々患側・健側中切歯歯軸傾斜角度とした。 埋伏過剰歯は,逆生と順生が各々24 例と10 例であった。患側中切歯歯軸角度と健側のそれとの間には,有意な差があった。患側と健側の中切歯歯軸傾斜角度の差は各Position 間では有意な差はなかった。 埋伏過剰歯と中切歯間の距離は,埋伏過剰歯がPosition 2 に存在する例と比較してPosition 3 に存在する例で有意に大きかった。また埋伏過剰歯と口蓋部骨表面間の距離は,埋伏過剰歯がPosition 1 に存在する例はPosition 3 に存在する例より有意に大きかった。

  • 小西 俊成, 嶋津 京子, 大原 紫, 間 和彦, 光畑 智恵子, 香西 克之
    2017 年 55 巻 4 号 p. 427-434
    発行日: 2017/11/25
    公開日: 2018/11/25
    ジャーナル フリー

    ワイン製造時に発生する圧搾粕(パミス)に含まれるオレアノール酸は,in vitro 試験にて抗齲蝕性を示す。今回,我々はパミス抽出物をオレアノール酸として12 mg 含むタブレット(1 粒1g)を作製し,対照品としてパミス抽出物を含まないタブレット(プラセボ)を用いて,二重盲検クロスオーバー法にてヒトにおける齲蝕予防効果を検証した。 被験者(n=58,平均年齢23.4 歳)はタブレット3 粒を就寝前の歯みがき後に5 日間の試験期間のうち最初の4 日間連続して摂取し,さらに試験開始日(1 日目)および終了日(5 日目)の昼食2 時間後に唾液を採取した。採取した唾液を用いて口腔内におけるStreptococcus mutans(以下S. mutans)の増殖を調べ,各タブレット摂取におけるS. mutans 数の変化率を比較した。その結果,プラセボ群と比較してパミス抽出物摂取群ではS. mutans の増殖が有意に抑制されていた(P<0.05)。 パミス抽出物を摂取することで齲蝕原性菌とされるS. mutans の増殖が抑制されたことから,パミス抽出物はヒトにおいて齲蝕予防効果を持つことが示唆された。

  • 海原 康孝, 笹原 妃佐子, 新里 法子, 山崎 健次, 香西 克之
    2017 年 55 巻 4 号 p. 435-441
    発行日: 2017/11/25
    公開日: 2018/11/25
    ジャーナル フリー

    現在,小学校には児童虐待の早期発見努力義務が課され,関係機関と連携し虐待防止に取組むことが求められている。また,歯科医療関係者の児童虐待防止への関与が期待されている。 そこで,学校歯科健康診断の結果が児童虐待の早期発見のためのスクリーニング指標となりうるかどうかについて検討し,以下の結論を得た。

    1 .学校歯科健康診断を受けた小学生総計3,569 名(男児1,843 名,女児1,726 名)のうち,虐待を受けた児童(「虐待あり」群)は89 名(男児43 名,女児46 名)であった。

    2 .「虐待なし」群および「虐待あり」群のそれぞれ約90%が,乳歯の未処置歯数が2 本以下であった。

    3 .「虐待なし」群の95.00%,「虐待あり」群の93.26%が,永久歯の未処置歯数が0 本であった。

    4 .「虐待なし」群の84.94%,「虐待あり」群の87.64%が,歯垢状態のスコアが0 であった。

    5 .「虐待なし」群の87.04%,「虐待あり」群の91.01%が,歯肉状態のスコアが0 であった。

    以上より,「虐待あり」群と「虐待なし」群との間で口腔内の状態に違いが認められないことから,学校歯科健康診断の結果だけで児童虐待のスクリーニング指標とすることは困難であることが示唆された。したがって,歯科医療関係者が児童虐待の早期発見・防止に貢献するためには,診療室での診察のようにある程度時間をかけて児童の口腔内や言動,保護者の様子などを観察できる状況が必要であると考えられた。

  • 鹿児島 暁子, 中村 由紀, 花崎 美華, 村上 望, 澤味 規, 松枝 一成, 鈴木 絢子, 左右田 美樹, 中島 努, 野上 有紀子, ...
    2017 年 55 巻 4 号 p. 442-450
    発行日: 2017/11/25
    公開日: 2018/11/25
    ジャーナル フリー

    2015 年度に某小児医療センター歯科診療室を受診した患者を対象に歯科治療の実態調査を行い,初診時年齢,調査時年齢,障害の種類,受診状況,受診時の歯科診療内容等について調査を行い以下の結果を得た。

    1 .2015 年度に来院した患者数(実人数)は449 名,うち男性271 人,女性178 人であった。

    2 .初診時年齢0~24 歳のうち,1 歳が30.0%と最も多く,0~5 歳で全体の78.2%を占めていた。調査時年齢は,0~59 歳の範囲に分布し,平均年齢が16.4±8.3 歳であった。

    3 .継続受診期間は,5 年以内が23.8%と最も多く,次いで10~15 年20.9%,5~10 年19.8%であった。

    4 .患者の障害およびその原因疾患は,脳性麻痺が28.1%と最も多く,次いで広汎性発達障害が20.9%,精神発達遅滞が10.9%,ダウン症候群9.8%,その他神経系疾患9.6%,てんかん8.0%等であった。

    5 .調査した全患者の初診時から最新受診時までにおける総受診回数は17,033 回,調査対象とした処置の総回数は20,934 回,うち予防填塞が33.7%と最も多く,次いで歯石除去が29.8%,修復処置が23.7%であった。

    6 .障害によって処置内容の割合に有意差を認めたが,いずれの障害においても予防填塞,歯石除去,歯冠修復が上位3 位を占めていた。

    7 .処置内容によって,処置を受けた年齢に有意差を認めた。

  • 横井 由紀子, 山木 貴子, 江花 照夫, 河村 純, 岡藤 範正, 大須賀 直人
    2017 年 55 巻 4 号 p. 451-457
    発行日: 2017/11/25
    公開日: 2018/11/25
    ジャーナル フリー

    下顎第一乳臼歯が早期に喪失した場合,保隙のためにクラウンループが適用されることが多い。ループの先端の形状により,ループが歯肉にくい込むこと,歯から離脱することが報告されている。本研究の目的は,有限要素法を用いたシミュレーションから,異なるループ先端形状(3 つの形状,W 形状,I 形状,U 形状)のクラウンループが歯およびクラウンループの動きに及ぼす影響をシミュレートすることであった。 計算方法は以下の通りである:近心方向の力を第二乳臼歯に適用した場合および,近心方向と同時に舌側方向に力を加えた場合,歯とクラウンループの移動について有限要素法を用いてシミュレーションした。 その結果,以下の結論を得た。

    1 .クラウンループに近心方向の力が負荷されると,第二乳臼歯は近心傾斜する。その結果,クラウンループ先端は歯頸に向かって沈下した。その沈下量は,W 形,I 形,U 形の順に増加した。

    2 .クラウンループに近心方向と同時に舌側方向に力を負荷すると,U 形では,ループ先端が沈下するとともに,舌側方向へ移動した。その結果,ループ先端は乳犬歯から離脱した。

    3 .W 形ループの場合,ループ先端の舌側移動は極めて小さく,乳犬歯からの離脱を防止できることが判明した。

  • 岸 岳宏, 塩野 康裕, 佐伯 桂, 谷口 礼, 森川 和政, 牧 憲司
    2017 年 55 巻 4 号 p. 458-466
    発行日: 2017/11/25
    公開日: 2018/11/25
    ジャーナル フリー

    咬合誘導や矯正治療の領域において,口腔周囲の軟組織の客観的な評価方法については一般的な手法として普及している評価方法は確立されていない。そこで我々は客観的評価の確立や臨床病態把握への応用を目的として,正常咬合児と上顎前突児の口唇閉鎖力について多方位的に測定を行った。あわせて舌圧にも着目し比較検討を行った。また,齲蝕の罹患状況とアンケート調査による患児の日常的な口唇閉鎖習慣状況についても評価を行った。調査の対象は九州歯科大学付属病院を受診した8 歳から11 歳までの小児期の患者から正常咬合者15 名,上顎前突者15 名とした。多方位口唇閉鎖測定装置の結果から,正常咬合児の方が総合的な口唇閉鎖力が上顎前突児に比較して有意に大きいことが分かった。両群間に多方位的な口唇閉鎖力の有意な差は認められなかった。舌圧の測定からも両群間に有意な差は認められなかった。舌圧と口唇閉鎖総合力の相関についても相関関係を認められなかった。齲蝕の罹患状況については正常咬合児と上顎前突児に有意差を認めなかった。総合口唇閉鎖力と齲蝕の罹患状況の相関関係は正常咬合児が相関関係を認めなかったのに対して,上顎前突児では負の相関関係が認められた。質問紙調査による口唇閉鎖習慣の評価では,上顎前突児は日常的に口が開きやすいことが分かり,アレルギー体質と上顎前突の関連は認められなかった。以上の結果から,上顎前突児の口唇閉鎖力は上口唇と下口唇の多方位的な口唇閉鎖力の不釣合いよりも,口唇全体の総合的な口唇閉鎖力の脆弱さにより関連していることが今回の研究より示唆された。また,上顎前突児は口唇閉鎖力の脆弱さが齲蝕の罹患原因の一つになっていることが示唆された。質問紙調査では上顎前突児が必ずしも鼻閉による口唇閉鎖不全を伴わない事が示唆された。

臨床
  • 三瓶 伸也, 市川 智巳, 廣岡 沙由梨, 黒木 稔明, 芳野 素子, 関本 恒夫
    2017 年 55 巻 4 号 p. 467-474
    発行日: 2017/11/25
    公開日: 2018/11/25
    ジャーナル フリー

    小児歯科臨床において歯の外傷に遭遇する機会は多い。しかし,障害児における歯の外傷への対応および長期的な予後について言及した報告は少ない。今回,著者らはDown 症候群患児が遭遇した上顎右側中切歯の脱落歯に対し,再植を行った。患児はDown 症候群に特有な歯の先天欠如や短根などが見られた。 再植歯を固定するには不利な条件であったが,必要十分な固定となるように配慮し,ワイヤーと接着性レジンセメントを用いて3 週間固定を行った。再植より4 か月後,歯髄壊死が確認されたため,直ちにアペキシフィケーションを行った。再植より1 年5 か月後,硬組織による根尖閉鎖を確認した。ガッタパーチャポイントにより根管充填を行い,以後3~4 か月間隔で経過観察を行った。再植より3 年後,打診音はsharp­ clear となり,生理的動揺が消失したため骨性癒着と判断した。再植後10 年間の経過観察において置換性吸収は認められない。今後さらに経過観察を継続する必要があると考える。

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