象牙質・歯髄再生においては血管新生・神経再生を考慮する必要がある。私どもは,多分化能,高い遊走能,増殖能を有する歯髄CD 31
−SP 細胞およびCD 105
+細胞を分取した。この細胞を下肢虚血部モデルに移植すると,血流の回復ならびに血管新生促進作用がみられた。この細胞は虚血部位において血管内皮細胞へ分化して組み込まれるのではなく,新生血管周囲に集積し種々の血管誘導因子を発現していた。この細胞の培養上清は血管内皮細胞の増殖促進,抗アポトーシス効果を有していた。よって,下肢虚血部においてはパラクリン的に血管新生を促進している可能性が示唆された。一方,この細胞を脳梗塞モデルに移植すると,神経前駆細胞が梗塞部周囲に集積し,神経栄養因子を高発現し,神経細胞の分化促進作用がみられた。また,細胞移植により運動麻痺の劇的回復がみられた。さらに,イヌの生活歯髄切断面上にCD 31
−SP 細胞を自家移植すると,切断面上の窩洞内は血管新生および神経再生がみられ完全に歯髄組織で満たされていた。さらに,イヌの抜歯後,完全抜髄を行い,根管内に自家の歯髄CD 31
−SP 細胞あるいはCD 105
+細胞をSDF-1 とともに注入し再植すると,14 日後には根管内は血管新生および神経再生がみられ,完全に歯髄組織で満たされていた。この再生歯髄は分子生物学的ならびに蛋白化学的解析により,正常歯髄とほぼ類似していることが明らかとなり,これらの歯髄幹細胞の歯髄再生への有効性が示唆された。
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