小児歯科学雑誌
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36 巻 , 5 号
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  • 簡 妙蓉, 石川 隆義, 長坂 信夫
    1998 年 36 巻 5 号 p. 729-737
    発行日: 1998/12/25
    公開日: 2013/01/18
    ジャーナル フリー
    小児歯科診療にあたり,術者は小児から何らかの心理的ストレスを受けると思われる。ストレッサーを受けた後,人はストレスを適切に処置し,統制していこうとする対処行動(コーピング)を行う。そこで,小児歯科診療において小児が術者に及ぼす術者の心理的ストレスとその対処行動に焦点を当て,どのような関連性をもっているかについて検討を行い,以下の結果を得た。
    1.小児歯科診療における小児から受ける術者の心理的ストレス得点は,そのストレスに対する対処行動の頻度とは1%レベルの危険率で有意な相関が認められたが,全体量と強度とは有意な関連が認められなかった。
    2.問題中心型では,対処行動の全体量,頻度,強度において高ストレス群と低ストレス群の間で有意差は認められなかった。情動中心型では,対処行動の全体量および頻度において高ストレス群と低ストレス群との問で有意差が認められ,全体量では5%,頻度においては1%レベルの危険率で有意差が認められた。
    3.対処行動の6タイプからの検討では,全体量において,「気持ちを何かで紛らわす型」で高ストレス群と低ストレス群との間で5%レベルの危険率で有意差が認められた。頻度については,「気持ちを何かで紛らわす型」と「じっとしている型」が1%で,この2タイプにおいて両群間に有意差が認められた。強度は,全てのタイプにおいて有意差が認められなかった。
    以上のことより,小児から受ける術者の心理的ストレス得点とそのストレスに対する対処行動得点には関連性があり,心理的ストレスが増せば対処行動の機会も増すことが示された。
  • 中山 聡, 今野 喜美子, 竹内 瑞穂, 岩崎 浩, 宮沢 裕夫
    1998 年 36 巻 5 号 p. 738-745
    発行日: 1998/12/25
    公開日: 2013/01/18
    ジャーナル フリー
    幼若永久歯小窩裂溝部初期齲蝕への対応法は従来から様々な方法が提唱されてきた。今回,著者らは臨床応用の前段階として,抜去歯の小窩裂溝部をダイヤモンド付きスクラッチポイントにて開削し,その清掃・開削状況および酸処理後の裂溝部歯面の走査型電子顕微鏡(SEM)による観察,エックス線マイクロアナライザー(XMA)による開削後の裂溝部歯面の成分分析,実体顕微鏡による小窩裂溝填塞材の填塞状態の観察,冷熱サーマルサイクリング負荷による微細漏洩の検討を行い以下の結果を得た。
    1)SEM像による開削状態は,スピッツ状を呈し,有機性残留物の存在は認められなかった。また,酸処理後の裂溝底部のエナメル小柱が明瞭に認められた。
    2)XMAによる成分分析では,歯質固有成分が著明で有機性残留物の存在は認められなかった。
    3)小窩裂溝填塞材の填塞状態は,裂溝開口部より底部まで充填されていた。
    4)冷熱サーマルサイクリング負荷1か月後の歯面と小窩裂溝填塞材との間にメチレンブルーの浸透はなく,微細漏洩は認められなかった。
    5)裂溝部の開削は最小限に留めることができた。
  • 穂坂 一夫, 小笠原 正, 塚田 久美子, 太田 慎吾, 高井 経之, 野村 圭子, 小山 隆男, 平出 吉範, 渡辺 達夫, 笠原 浩
    1998 年 36 巻 5 号 p. 746-750
    発行日: 1998/12/25
    公開日: 2013/01/18
    ジャーナル フリー
    低年齢児の歯科治療への適応性を予測する方法を確立するために,日常臨床でも応用が可能な発達検査のなかから有用な検査項目を検索した。対象は,松本歯科大学病院特殊診療科,和田村国保歯科診療所および伊那市開業医を受診した小児125名で,平均年齢は4歳1か月±1歳6か月(女児58名,男児67名)であった。方法は,歯科手技シミュレーションを行い,その際の対象児の外部行動と,遠城寺式乳幼児分析的発達検査のそれぞれの検査項目との関連性を赤池情報量規準(AIC)に基づき分析した。
    結果は以下のとおりであった。
    1.遠城寺式乳幼児分析的発達検査のそれぞれの検査項目は,AICの値がすべて負を示し,歯科治療への適応と関連性が認められた。
    2.最も強い関連性が認められた検査項目は手の運動の「ボタンをはめる」であった。以上により,検査項目「ボタンをはめる」は小児の歯科治療への適応状態の予測として有用であると考えられた。
  • 野中 歩, 竹辺 千恵美, 藤村 良子, 平野 洋子, 武田 康男
    1998 年 36 巻 5 号 p. 751-757
    発行日: 1998/12/25
    公開日: 2013/01/18
    ジャーナル フリー
    本研究はダウン症候群(以下DSと略)の離乳に関する母親の不安とその内容に関して調査し,同時に歯科スタッフと栄養士による共同の栄養指導の実際について検討したものである。離乳開始期と進行期の2相に分けて,離乳不安および不安内容をアンケート調査した。結果は対面調査を行ったDS児52名(DS群)の母親と急性の疾病の既往以外に基礎疾患を持たない対照群143名の母親の2群に分けて検討した。
    1.両群の不安の有無を比較すると,離乳開始期,離乳進行期のいずれも,統計学的に有意な差をもってDS群の母親の不安が大きいことが分かった(X2,p<0.01)。
    2.DS群の母親の不安は離乳の経過とともに拡大する傾向があった。
    3.DS群の不安内容は対照群に比較して離乳開始期では,先天性心疾患(以下CHDと略)手術群で離乳食の開始時期に関する項目が顕著に多かった。
    4.離乳開始時期は,CHD手術群が最も遅く,続いてCHD観察群,非CHD群,対照群の順であった。
    5.栄養指導の傾向として,離乳前期では調理相談が多く,離乳形態が上がるにつれて栄養やその他の相談内容が増加した。
    以上の結果は,DS群の摂食と栄養指導に関して,歯科スタッフと栄養士の連携が離乳前から後期においてまで重要であることを示している。
  • 鈴木 祥子
    1998 年 36 巻 5 号 p. 758-767
    発行日: 1998/12/25
    公開日: 2013/01/18
    ジャーナル フリー
    副作用として無顆粒球細胞症の発症が認められる経口強心薬ベスナリノンを用い,アポトーシス誘導シグナルであるセラミドの無顆粒球細胞症発生機序に対する関与を検討した。顆粒球に分化可能なHL-60細胞では,ベスナリノン添加時に細胞内セラミドが増加し,分化誘導およびアポトーシス誘導による細胞増殖抑制を認めた。一方,線維芽細胞HFL-1では,ベスナリノンまたはC2-セラミドの添加により,フォルボールエステル(TPA)を介するインターロイキン-6(IL-6)の分泌が抑制された。
    以上の結果より,ベスナリノンは細胞内セラミド増加を介する分化とアポトーシスによる細胞増殖抑制,並びに造血微少環境を構成する線維芽細胞からの造血性サイトカイン分泌量の減少による細胞成熟阻害との二つの機序が相乗的に作用し,顆粒球系前駆細胞の増殖と成熟を阻害することが示唆された。
    破骨細胞が造血細胞に,造骨細胞がストローマ細胞に発生起源を同じくすることより,ベスナリノンによる血液造血環境の影響を詳細に検討することは,歯科関連の骨発生機構解析の手がかりになると考えられる。
  • 細矢 由美子, 堀内 礼子, 釜崎 陽子, 嘉数 恭子, 福本 敏, 西口 美由季, 後藤 讓治
    1998 年 36 巻 5 号 p. 768-776
    発行日: 1998/12/25
    公開日: 2013/01/18
    ジャーナル フリー
    光照射時間を変えて硬化させたコンポジットレジンの色彩とヌープ硬さを,硬化1日後の試料と5年間経過した試料について測定し,レジンの硬さが経時的変色に及ぼす影響を観察した。直径10mm,厚さ1mmのレジン試料をSilux plus(3M社)を用い,厚さ1mmのガラス板を介して20秒,40秒及び120秒間光照射して作製した。レジン色は,U,Y,DY,L,G,UO,YOの7色を用いた。硬化1日後の試料(1日群)と37℃ の人工唾液中に5年間浸漬後の試料(5年群)について,測色値とヌープ硬さ値を比較した。
    1.1日群と5年群の試料のヌープ硬さを光照射時間別に比較すると,20秒群のYO,40秒群のUとDY並びに120秒群のDYを除くすべてのレジン色で,5年群のヌープ硬さの方が有意に高かった。
    2.1日群と5年群の両者ともに,120秒群では,L*値が高いレジン色ほど高いヌープ硬さ値を示す傾向が観察された。
    3.1日群と5年群の試料について,不透明度とヌープ硬さをレジン色別に比較すると,1日群の20秒群と5年群の40秒群において,不透明度が高いレジン色ほどヌープ硬さ値が高い傾向を示した。
    4.5年群について,硬化直後に対する5年後のΔE*ab値とヌープ硬さ値をレジン色別に比較すると,120秒群については,ヌープ硬さ値が高いレジン色ほどΔE*ab値が低い傾向を示した。
  • 宮新 美智世, 江橋 美穂, 高木 裕三, 小野 博志, 岩崎 直彦, 高橋 英和, 西村 文夫
    1998 年 36 巻 5 号 p. 777-789
    発行日: 1998/12/25
    公開日: 2013/01/18
    ジャーナル フリー
    根管治療を受けた幼若永久歯は,破折が高頻度に観察されている。
    本研究は,各種修復法が幼若永久歯の物理的強度に与える影響を調べ,より良い方法を検討することを目的として行った。ウシ下顎幼若永久前歯から歯髄を除去し,根管口と根管腔を,象牙質接着システムとコンポジットレジン,接着性レジンと金属インレー,さらに象牙質接着システムとコンポジットレジンならびにステンレス製ポストを用いて修復した。その後,修復歯の歯冠舌側面に歯軸にたいして45° の方向から外力を加え,破折実験を行った。これにより得られた破折時の荷重は,各実験群で統計的に処理し比較した。
    その結果,試験機の加圧部に細く幅広の加圧子を装着し加圧した際に,臨床で観察されるヒト切歯の斜め破折に類似した破折形態が多く得られた。この破折方法を用いて破折させた場合,天蓋除去後に何も充填しない群に比べ,コンポジットレジン単独充填を行った歯と,一部の象牙質接着システムにコンポジットレジン充填を併用した歯は,破折に対して有意に強かった。また,金属インレーを装着した場合や,より深い窩洞へと充填した場合は,歯根歯頸部の破折頻度が増加した。さらに,全根にわたるポストと接着性レジンを用いた群では他の群に比べて,破折時荷重は有意に高かった。しかし,これらの歯のほとんどに歯根の不完全破折が合併していた。
  • 野坂 久美子, 謝 雪峻, 駿河 由利子, 佐藤 輝子, 阿部 英一, 甘利 英一
    1998 年 36 巻 5 号 p. 790-803
    発行日: 1998/12/25
    公開日: 2013/01/18
    ジャーナル フリー
    日本人と中国人(北京市)における,乳歯ならびに永久歯の歯冠と歯列弓.歯槽基底弓の大きさについて,石膏模型を用いて,咬合力との関連性から比較検討を行った。その結果,次のような結論を得た。
    1.歯冠幅径の大きさについて,中国人小児の乳歯は,日本小児歯科学会調査による日本人小児の乳歯よりも,とくに第二乳臼歯において小さかった。永久歯では,男子の下顎第一,第二大臼歯で,女子では,全歯種で日本人の方が大きかった。上下顎同名歯間の相関性は,中国人小児の乳歯では乳中切歯と第二乳臼歯で,永久歯では日本女子の全ての歯種と中国人男女の全ての歯種に相関性がみられた。しかも,中国人の方が日本人よりも高い相関性を示した。
    2.歯列弓・歯槽基底弓の大きさについて,乳歯列弓幅径は,3~5歳まで日中間に差はなかったが,歯列弓長径は,日本人小児の方が中国人小児よりも大きかった。永久歯列弓の幅径と長径は,日本人の方が中国人より大きい傾向にあるが,長径での差は,より明らかであった。永久歯列歯槽基底弓幅径は,女子で,日本人の方が中国人より大きいが,歯槽基底弓長径は,上顎で中国人の方が大きく,下顎では日本人の方が大きかった。
    以上のことから,日本人よりも大きい咬合力をもつ中国人と比較すると,日中間の歯冠や歯列弓・歯槽基底弓の大きさの違いは,咬合力と大きく関わっているとは考えられなかった。
  • 塚本 暁子
    1998 年 36 巻 5 号 p. 804-817
    発行日: 1998/12/25
    公開日: 2013/01/18
    ジャーナル フリー
    生後2~6か月の雑種幼犬31頭を用いて,生理的な歯根吸収が認められる乳歯と歯根未吸収の乳歯における歯根膜リンパ管の構造ならびに分布状態について検索した。
    研究は,ペントバルビタールによる腹腔麻酔下で,総頸動脈より潟血し,0.8~0.9%加墨汁硝酸銀水溶液ならびに墨汁溶液を注入する方法で行った。その後,4%パラフォルムアルデヒドにて浸漬固定を行い,上下顎骨を分離し,マイクロラジオグラムを撮影し,歯根の位置と吸収を確認した。さらにPlank-Rychlo脱灰液で脱灰後,上下顎骨を20ブロックに分割した。脱灰終了後,パラフィンにて包埋した。試料は40~50μm厚で頬舌側断で連続切片を作製し,紫外線に暴露した。
    その結果,歯根膜のリンパ管の走行は,歯根の吸収に拘わらず,歯頸側では歯軸に沿って歯槽骨寄りを走り,根尖側では,網状に分布していた。分岐した枝は,歯槽骨中のフォルクマン管を経て,骨髄のリンパ管と交通していた。歯根膜のリンパ管は,大多数が血管と伴行していた。リンパ管の分布数は,近心側より遠心側が,前方乳臼歯より後方乳臼歯が,頬側より舌側がそれぞれ多かった。生理的歯根吸収部位では,吸収窩に血管網が形成され,この血管網の周囲に近接して,リンパ管が存在している部位が多数認められた。以上のことから,リンパ管の進行ならびに分布は,根尖病巣の進行や根管治療の予後を左右する重要な因子であることが示唆された。
  • 荒木 啓伸, 吉田 昌史, 高橋 康男, 駱 嘉鴻, 内田 淳, 山口 武人, 中島 一郎
    1998 年 36 巻 5 号 p. 818-822
    発行日: 1998/12/25
    公開日: 2013/01/18
    ジャーナル フリー
    脳性麻痺者における咀嚼筋活動と下顎運動の関連性を明らかにする目的で,開口動作を規定動作とした場合の反応時間課題を応用し,脳性麻痺者における咀嚼筋活動のPremotor timeおよびMotor timeを健常者のそれと比較検討した。被験者は,脳性麻痺者6名,健常者6名であった。Premotor timeおよびMotor timeの検討には,被験者に予告音刺激および命令刺激を提示し,下顎安静位からすばやく開口させて測定を行い,以下の結果を得た。
    1)反応時間課題における筋電図反応時間値では,CP群ではPMTは435.7±112.6msecおよびMTが94.7±26.5msecであった。一方,健常群のPMTは310.3±73.0msecおよび59.3±15.3msecであった。PMTおよびMTにおいてCP群は健常群よりも有意に(p<0.05)遅延していた。
    以上のことから,脳性麻痺者における運動出力ステージおよび筋張力の発言過程延長していることが示唆された。
  • 川端 明美, 川端 宏之, 矢ヶ崎 アンジェリ, 岩崎 浩, 宮沢 裕夫
    1998 年 36 巻 5 号 p. 823-830
    発行日: 1998/12/25
    公開日: 2013/01/18
    ジャーナル フリー
    幼若永久歯の修復処置における歯髄への外来刺激を遮断する目的で象牙質にレーザーを照射し,細管閉塞が可能な条件を満たすものは著者らの研究では,炭酸ガスレーザーが有効であった。そこで得られた照射条件をもとに炭酸ガスレーザーを臨床応用するための基礎的研究として,象牙質の厚さの違いによる歯髄への熱影響を歯髄側象牙質の温度変化より検討を行った結果,以下の結論を得た。
    1.Normalpulse照射,Superpulse照射ともに照射時間が長くなり,平均出力が大きくなるに従い,また,試料の厚径が薄くなると上昇温度値は高くなる傾向を示した。
    2.Superpulse照射はNormalpulse照射に比べ照射開始から照射終了までの上昇温度値は低いものであった。
    3.照射時間が同じであっても1秒間のパルス数が多い場合は,上昇温度値は高くなる傾向を示した。
  • 浅里 仁, 井上 美津子, 古山 公英, 向井 美惠, 佐々 竜二
    1998 年 36 巻 5 号 p. 831-838
    発行日: 1998/12/25
    公開日: 2013/01/18
    ジャーナル フリー
    乳幼児の口腔機能発達に適した食物物性を検討するためには,乳幼児の口腔の形態に基づいたプランジャーと容器を用いた試験方法の開発が必要と考えた結果,舌での食物の認知や押しつぶしの際の口蓋と舌運動との関係を考慮したプランジャーと容器の開発を行った。プランジャーと容器の作製にあたって,出生後5か月から12か月までの間に,同一個人で少なくとも4か月以上継続して採得できた9名(男子4名,女子5名)の上顎石膏模型(48個)を資料として用いた。口腔模型計測より,プランジャーは,幅径を傍歯槽堤部幅径の計測結果から16mmに,プランジャーの形態を舌が口蓋に押しつけられた時の形から球状に,プランジャーの接触面を舌が食物を介在して口蓋に押しつけるように接触していることから,球の最下点から2mmで輪切りにすることによってできる直径10.7mmの円とした。
    容器は,計測結果の歯槽弓の最大幅径から,直径35mm円とし,上顎結節部に相当する歯槽の最後縁部を結ぶ長さより30mmで後方部を切った形とし,容器の高さは,内側半球の高さを傍歯槽部高径から7mmに,容器の底面からの高さを最大歯槽堤口蓋高径から10mmとした。内側半球の中心点は前方部口蓋長径の計測結果より,容器外形の円の中心から5mm前方においた。さらに,内側半球の底面(平面)の直径はプランジャーの接触面と同様に直径10.7mmの円とした。このプランジャーと容器の作製により,乳児の摂食にとって一番重要であり,基本となる舌で食物を口蓋に押しつけるといった動きに類似させた物性試験システムの構築が可能となった。
  • 海原 康孝, 天野 秀昭, 三浦 一生, 長坂 信夫
    1998 年 36 巻 5 号 p. 839-847
    発行日: 1998/12/25
    公開日: 2013/01/18
    ジャーナル フリー
    小児歯科臨床において,小児の歯列および咬合について把握することは重要である。また,それらは三次元的に診断を行うことが望ましいと思われる。
    本研究は視診により正常咬合,前歯部反対咬合および臼歯部交叉咬合,開咬と診断された模型について,著者らが独自に考案した三次元模型計測システムを用いて計測を行い,小児の不正咬合を三次元的に診断する新しい方法の有用性と実用化について検討した結果,以下の結論を得た。
    1.咬合のプロフィログラムによる分析により,歯列の咬合状態を多方向から分析することができた。また正常咬合を有する小児の症例と重ね合わせて比較検討することも可能であった。
    2.歯列の幅,深さ,および高さに関する情報を,数量化されたデータにより客観的に分析することが可能であった。
    以上より,本計測システムは,術者の経験の有無にかかわらず,客観的に高精度で小児の不正咬合の診断が行え,極めて有用かつ実用的であることが示唆された。
  • 海原 康孝, 天野 秀昭, 三浦 一生, 長坂 信夫, 石田 房枝
    1998 年 36 巻 5 号 p. 848-860
    発行日: 1998/12/25
    公開日: 2013/01/18
    ジャーナル フリー
    従来日本では,背臥位による育児が一般的であったが,近年はうつぶせ寝で育てられるケースも多くみられ,その様相の解明が望まれている。
    我々は,研究用模型の三次元計測により,乳児期にうつぶせ寝で育てられた小児の歯列および咬合について検討した。その結果,うつぶせ寝で育てられた小児の歯列には以下のような傾向が認められた。
    1)犬歯および臼歯部の歯列弓幅径が小さい。
    2)上顎の歯列弓長径とoverjetが大きい。
    3)切端咬頭頂連続曲線は直線的である。
    4)歯列弓高径は前歯部,臼歯部ともあおむけ寝で育てられた小児との差は認められない。
    5)左右対称的で正中の偏位はなく,いわゆるV字型の歯列弓形態をしている。
  • 辻野 啓一郎, 黒須 美佳, 片根 智子, 望月 清志, 米津 卓郎, 藥師寺 仁
    1998 年 36 巻 5 号 p. 861-866
    発行日: 1998/12/25
    公開日: 2013/01/18
    ジャーナル フリー
    従来から,乳歯癒合歯が存在する場合,約40~50%の頻度で後継永久歯のうち1歯が先天性に欠如するといわれており,乳歯癒合歯の歯種により後継永久歯の欠如する頻度に差がみられることが報告されている。乳歯癒合歯と後継永久歯欠如の発現率を歯種別に調査することは,特にエックス線撮影が困難である集団歯科健診時における保護者への指導などに有用な参考資料となる。今回著者らは,1986年4月から1997年3月まで東京歯科大学水道橋病院および千葉病院小児歯科を受診した患児のうち乳歯癒合歯を有し,しかも後継永久歯の状態が確認できた小児152名(男児79名,女児73名)の癒合歯182歯(男児100歯,女児82歯)について調査を行い以下の結論を得た。
    乳歯癒合歯の歯種により,後継永久歯の欠如率に大きな差が認められ,下顎BC癒合歯における後継永久歯の欠如率は71.1%と,他の歯種の癒合歯に比較し最も高かった。次いで上顎AB癒合歯で70.6%と高く,しかも後継永久歯が認められた症例であっても,その多くは形態異常を呈していた。また,下顎AB癒合歯では後継永久歯の欠如率が11.1%と最も低かった。
    男女児別では,男児で下顎AB癒合歯の,女児で下顎BC癒合歯の発現率が他歯種の癒合歯に比べ有意に高かったが,後継永久歯の欠如率には有意差がみられなかった。さらに,左右側の同名癒合歯間では後継永久歯の欠如率に差はみられなかった。
  • 大塚 義顕, 渡辺 聡, 石田 瞭, 向井 美惠, 金子 芳洋
    1998 年 36 巻 5 号 p. 867-876
    発行日: 1998/12/25
    公開日: 2013/01/18
    ジャーナル フリー
    乳児期に獲得される嚥下機能の発達過程において,舌は中心的役割を果たしている。しかしながら,吸啜時の動きから固形食嚥下時の動きへと移行する舌の動きの経時変化の客観評価についての報告はほとんど見られない。そこで,生後20週から52週までの乳児について,超音波診断装置を用いて顎下部より前額断面で舌背面を描出し,舌の動きの経時的発達変化の定性解析を試みたところ以下の結果を得た。
    1.生後20週には,嚥下時の舌背部にU字形の窪みが見られ,舌全体が単純に上下する動きが観察された。
    2.生後26週には,嚥下時の舌背正中部に陥凹を形成する動きがはじめて見られた。
    3.生後35週には,上顎臼歯部相当の歯槽堤口蓋側部に舌背の左右側縁部が触れたまま正中部を陥凹させる動きが確認できた。
    4.生後35週から52週までの舌背正中部の陥凹の動きは,ほぼ一定で安定した動きが繰り返し観察できた。
    5.舌背正中部にできる陥凹の動きの経時変化から安静期,準備期,陥凹形成期,陥凹消失期,口蓋押しつけ期,復位期の6期に分類することができた。
    以上より,前額断面での舌運動は,舌の側縁を歯槽堤口蓋側部に接触固定し,これを拠点として舌背正中部に向けて食塊形成のための陥凹を形成する発達過程が観察できたことから,食塊形成時の舌の運動動態がかなり明らかとなった。
  • 山本 誠二, 新谷 智佐子, 石黒 延枝, 中村 隆子, 島袋 郁子, 壼内 智郎, 下野 勉, 滝川 雅之, 竹本 弘枝
    1998 年 36 巻 5 号 p. 877-882
    発行日: 1998/12/25
    公開日: 2013/01/18
    ジャーナル フリー
    乳幼児から成人にわたる継続した口腔内管理を実現すべく,平成5年4月に産科に併設して,歯科医院を開設した。現在まで,小児歯科を中心とした取り組みを行い,地域歯科医療に貢献してきている。今回,当院の歯科保健システムを紹介するとともに,平成8年1月から平成9年12月までに当院を受診した初診患者の動態を調査したので報告する。
    1)調査期間に受診した初診患者は,男児650人,女児571人,計1,221人であった。
    2)平均年齢は2歳11か月であり,全対象者に対して1~2歳児の割合が約60%を占めていた。
    3)併設する産科を出生場所とした対象者の割合は53%であった。
    4)初診時の主訴では,口腔内の予防に関することを主訴として受診した者の割合は46%であり,齲蝕に関することを主訴として受診した者の割合は39%であった。
    5)全対象者のうち齲蝕経験のないものの割合は33%であり,重症齲蝕を有するものの割合は19%であった。
  • 楊 秀慶, 大出 祥幸, 荻原 和彦
    1998 年 36 巻 5 号 p. 883-895
    発行日: 1998/12/25
    公開日: 2013/01/18
    ジャーナル フリー
    再植した根未完成永久歯に対し歯髄処置をしない場合,再植歯とその歯周組織に及ぼす影響を知るために,ビーグル犬の上顎左右第2切歯を用い以下の方法で実験した。上顎左右第2切歯を脱離後,再植・固定を行い,左側再植歯は歯髄をそのままにし実験歯とした。一方,右側再植歯は再植後1週目に歯髄除去し,水酸化カルシウム製剤を貼薬して対照歯とした。実験期間中は,定期的に動揺度と歯肉炎症指数の測定,口腔内写真撮影さらに上顎前歯部のエックス線撮影を行い,対照歯と実験歯を比較観察し以下の結果を得た。
    1.対照歯と実験歯の動揺度および歯肉炎症指数を統計処理したところ,再植直後から再植5週目までは有意な差を認めないが,再植後5週目以降では対照歯と実験歯のあいだで有意な差を認めた。
    2.口腔内写真で歯肉の状態について実験開始時と終了時を比べると,対照歯に対し実験歯の歯肉では炎症が継続していた。
    3.経日的に撮影したエックス線写真の観察では,実験歯の歯周組織は対照歯に比べ再植後5週目から再植後7週目でエックス線透過性が増加し,歯根膜腔も拡大していた。以降は歯根及び歯周組織に顕著な吸収がみられ,炎症は拡大していた。
    以上より再植した根未完成歯に対する歯髄処置の有無は,再植5週目までに診断することが重要である。
  • 内藤 真理子, 春岡 誠, 有住 隆史, 楠崎 晴規, 上田 和茂, 木村 光孝
    1998 年 36 巻 5 号 p. 896-901
    発行日: 1998/12/25
    公開日: 2013/01/18
    ジャーナル フリー
    骨粗鬆症に関して,学童期からの予防に対する認識と生活習慣の実態を把握する目的で,北九州市の大学に通学する健康な女子大学生48名を対象に,質問票による調査を実施した。設問は,学童期から現在に至るまでの食習慣,運動習慣および骨粗鬆症予防に関する本人および周囲の認識を問うものとした。そして,18歳までの生活習慣と本人および周囲の骨粗鬆症予防に関する認識について検討し,以下の結果を得た。
    1)骨粗鬆症予防に関して,家族や教師からアドバイスを受けた経験を持つ学生は全体の54%であった。内容はカルシウム摂取に関するものが最も多く,全体の47%を占めた。
    2)18歳までに骨粗鬆症に関するアドバイスを受けた学生は,小魚を毎日摂取する習慣を持っていたことが有意に示された。また,学童期から18歳まで,給食以外で乳・乳製品を毎日摂取する習慣を持つ傾向も同時に認められた。
    3)18歳までに家庭でカルシウムを含む食品の摂取を薦められた経験を持たない学生は,レトルト食品を頻回に摂取する習慣を持つ傾向があったことが示された。
    4)健康の維持増進に関する具体的な知識を与えることが食習慣の改善に有効である可能性が示唆された。
  • 岡崎 好秀, 田中 浩二, Tserensodnom Bazarragchaa, 東 知宏, 久米 美佳, 宮城 淳, 壺内 智郎, 中村 ...
    1998 年 36 巻 5 号 p. 902-909
    発行日: 1998/12/25
    公開日: 2013/01/18
    ジャーナル フリー
    幼稚園の3~6歳児73名を対象として,カリオスタット®検査(三金工業)の再現性について調査した。歯垢を2本の綿棒で採取した場合の,同一判定者間,異なる判定者間での一致率について検討を加えた。
    1.対象児の齲蝕罹患者率は60.3%(44/73),1人平均d歯数は2.45歯,1人平均df歯数は4.18歯,平均齲蝕重症度指数(Caries Severity Index)は9.23であった。
    2.カリオスタット値は,1人平均d歯数,1人平均df歯数,齲蝕重症度指数と高度の相関を示した(P<001)。
    3.24・48・72時間における同時2本採取時の分布に差は認めなかった。また48時間判定の一致率は,63.0%(46/73)であり,判定誤差±05は31.5%(23/73),1.0以上のものは5.5%(4/73)に認められた。
    4.同一判定者におけるカリオスタット値の分布に,差は認めなかった。48時間における一致率は,83.6%(61/73)で,±05の判定誤差は16.4%(12/73)に認められた。
    5.異なる判定者間におけるカリオスタット値の分布に,差は認めなかった。48時間における一致率は,78.1%(57/73)で,±0.5の判定誤差は21.9%(16/73)に認められた。以上よりカリオスタット検査には,再現性があると考えられた。
  • 池上 明雄, 一瀬 智生, 森本 英樹, 長坂 信夫
    1998 年 36 巻 5 号 p. 910-916
    発行日: 1998/12/25
    公開日: 2013/01/18
    ジャーナル フリー
    移転歯とは「歯の位置異常の一つで,それぞれの歯が互いに,その位置を交換して萌出している状態と定義され,その発現頻度は非常に稀である。移転歯の診断においては歯の唇・舌側転位,傾斜等によって,見かけ上歯冠部のみが移転状態にあるものと区別するため,パノラマエックス線写真により歯根の位置関係を確認することが必要であり,また,その治療方針の決定において不可欠なものである。
    今回,因島市医師会病院歯科外来にて3と4の移転した症例に遭遇し,各歯牙の歯根の位置関係を考慮し,側方歯を移転した状態の435の順序で配列した。その結果,4舌側咬頭を咬合調整することで咬合干渉も生ずることなく患者にとって満足される外観を得ることができた。
  • 井出 正道, 加賀谷 桂, 大森 郁朗
    1998 年 36 巻 5 号 p. 917-931
    発行日: 1998/12/25
    公開日: 2013/01/18
    ジャーナル フリー
    骨格性反対咬合は日本人小児において最もよく認められる咬合異常の一つである。また,上顎中切歯の埋伏も比較的多く認められるが,これらの異常に加えて,永久歯胚の先天欠如や上下顎のディスクレパンシーが認められた小児の咬合管理を8歳0か月から永久歯列が完成するまで行ったので,その咬合管理の経過について報告した。
    骨格性反対咬合に対しては,整形力を用いたchin capを装着した。chin capの使用期間は8歳2か月から15歳2か月までであった。初診時には,上顎両側第一大臼歯は未萌出であり,上顎右側中切歯は埋伏していた。未萌出の大臼歯は,その発育状態と歯冠形態から第二大臼歯と判断し,上顎両側第一大臼歯は先天欠如と判定した。上顎両側第二大臼歯は9歳後半に第一大臼歯の位置に萌出した。上下顎に認められたディスクレパンシーに対しては,上顎は右側中切歯の摘出により対応し,下顎は左側中切歯を抜歯することにより対応した。最終的な咬合治療にはmulti-brackets装置をchin capと併用した。中切歯の位置に排列した上顎右側側切歯には,中切歯の形態を付与したジャケット冠を装着し,審美的および機能的に満足できる永久歯咬合が得られた。
  • 猪狩 和子, 黒田 洋史, 真柳 秀昭
    1998 年 36 巻 5 号 p. 932-938
    発行日: 1998/12/25
    公開日: 2013/01/18
    ジャーナル フリー
    Alagille症候群は,慢性肝内胆汁うっ滞を主病変とし,特徴的顔貌,心血管奇形,脊椎骨奇形,成長発育遅延,性腺機能低下,精神発達遅滞などを合併する症候群である。我々は,Alagille症候群の患児4名(初診時年齢2歳8か月~4歳3か月)の口腔管理を経験し,以下の所見を得た。
    1)全症例で灰黄色あるいは灰緑色の着色乳歯が認められた。
    2)全症例において初診時の歯肉粘膜は黄染し易出血性の歯肉炎がみられた。
    3)4症例中3症例では乳歯齲蝕の多発が認められた。
    4)4症例中3症例で,歯冠の大きさに比し大きな歯髄腔を持つ乳歯が観察された。抜去歯の組織学的検索では,広い象牙前質層と球間象牙質の著明な出現がみられた。
    5)側方頭部エックス線規格写真の評価を行い得た2症例で,下顎骨の形態において短い下顎枝と下顎角の開大が共通所見としてみられた。
    6)管理中には,外傷や交換期の乳歯に由来する持続性の歯肉出血を経験した。
    7)9歳7か月時に部分生体肝移植を受けた症例では,術後に歯肉炎の改善がみられた。
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