小児歯科学雑誌
Online ISSN : 2186-5078
Print ISSN : 0583-1199
ISSN-L : 0583-1199
41 巻 , 5 号
選択された号の論文の15件中1~15を表示しています
  • 及川 栄郎, 清水 武彦
    2003 年 41 巻 5 号 p. 797-804
    発行日: 2003/12/25
    公開日: 2013/01/18
    ジャーナル フリー
    21系統のSMXAリコンビナント近交系マウスと,親系であるSM/JおよびA/Jの骨格標本を作製し,上顎骨の切歯孔前縁と蝶形骨基底部後縁の距離,下顎骨のオトガイ部と下顎角相当部の距離,および上下顎第一臼歯歯冠近遠心幅径を計測した。各計測部位の大きさに関わる遺伝要因について検討したところ以下の知見を得た。
    1.上下顎第一臼歯歯冠近遠心幅径および上下顎骨の前後幅径は23系統内で分布に偏りがない値を示し,これらの大きさの決定に多遺伝子が関与していることが示唆された。
    2.上顎第一臼歯と下顎第一臼歯の歯冠近遠心幅径において小さい値から大きい値への系統の順位はほぼ同一であり,両者の相関係数は0.90であることから,第一臼歯歯冠近遠心幅径の決定には上下顎共通した遺伝子群の影響が強いことが示唆された。
    3.上顎骨と下顎骨の前後幅径において小さい値から大きい値への系統の順位は,歯冠近遠心幅径ほどではないが同一傾向にあり,両者の相関係数が0.77であることから,顎骨の前後幅径の決定には上下顎共通した遺伝子群の影響が強いことが示唆された。
    4.上顎第一臼歯歯冠近遠心幅径と上顎骨前後幅径の系統別順位ならびに下顎第一臼歯歯冠近遠心幅径と下顎骨前後幅径の系統別順位は,ともに一致性がみられなかった。また,それぞれ大きさに相関関係もなく,歯と顎骨の大きさの決定には独立した遺伝子群が影響していることが示唆された。
  • 三穂 蓉子, 池田 正一, 井上 吉登, 山口 敏雄
    2003 年 41 巻 5 号 p. 805-812
    発行日: 2003/12/25
    公開日: 2013/01/18
    ジャーナル フリー
    小児白血病治療の晩期障害として歯の形成障害が起こる。著者らは,12歳未満で白血病と診断された31名に対し,パノラマエックス線写真を用いて,永久歯の発育段階別に歯の形成障害と白血病の治療内容との関連性について調査を行った。歯の形成障害の分類として歯の欠如,矮小歯,歯根短縮とした。さらに歯根短縮にっいては,形態および短縮程度により5種類に分類した。
    1.歯の形成障害は,治療開始後約4年経過するとエックス線写真上で観察されることが判明した。
    2.化学療法による歯の形成障害と発育段階との関連は,石灰化開始前で95.5%が矮小歯となった。また,歯冠完成期では約80%にU2型歯根短縮が認められた。
    3.造血幹細胞移植療法による歯の形成障害と発育段階との関連は,石灰化開始前で83.3%に歯の欠如,16.7%に矮小歯が認められた。咬頭形成期では90%以上に矮小歯が認められた。歯根短縮は歯冠3/4完成期から歯根1/2完成期にかけてなんらかの形で100%認められた。V1型は歯冠3/4完成期で76.5%,V2型は歯冠完成期で45.9%,Y型は歯根1/4完成期で31.3%,U1型は歯冠完成期で33.3%,U2型は歯根3/4完成期で68.2%に認められた。
  • 遠藤 敏哉, 小貫 まゆみ, 島田 路征, 小島 功嗣, 下岡 正八
    2003 年 41 巻 5 号 p. 813-822
    発行日: 2003/12/25
    公開日: 2013/01/18
    ジャーナル フリー
    永久歯列期における叢生の顎顔面形態の偏位,ならびにその偏位と下顎歯列弓のディスクレパンシーとの関係を究明し,混合歯列期における叢生の治療目標を確立することを目的として,本研究を行った。
    症例は下顎左右第三大臼歯を有するHellmanの歯齢IVA,AngleI級女子叢生20例(平均年齢17歳8か月,叢生群)である。資料は叢生群の側面,正面および左右45゜ 斜位頭部エックス線規格写真,ならびに下顎歯列模型である。
    叢生群では頭蓋底角と下顎角の狭小,下顎枝高の短小,下顎骨の前方および上方偏位,犬歯・第一小臼歯・第二小臼歯・第一大臼歯の近心傾斜,犬歯・第一小臼歯・第二小臼歯の低位が確認された。叢生群のアンテリオールディスクレパンシーは犬歯の近心傾斜と高位,第二大臼歯の遠心傾斜と相関があり,ポステリオールディスクレパンシーは第二小臼歯と第一大臼歯の遠心傾斜と相関があった。この形態的偏位の抑制が混合歯列期における叢生の治療目標である。
  • 松根 健介, 黒瀬 絵里奈, 北川 博恵, 山崎 道子, 松永 利恵, 生田 剛史, 早川 徹, 根本 君也, 前田 隆秀
    2003 年 41 巻 5 号 p. 823-829
    発行日: 2003/12/25
    公開日: 2013/01/18
    ジャーナル フリー
    市販レジン系シーラント材およびグラスアイオノマー系シーラント材のエナメル質に対する接着性を比較検討するとともに,両者の違いをより理解するためにレジン系シーラント材のエナメル質前処理材(リン酸エッチング)およびグラスアイオノマー系シーラント材の前処理材(コンディショナー)の組み合わせを相互に変化させたときの接着性についても検討した。その結果,以下の知見が得られた。
    1.FE-SEM観察から,エナメル質に対する侵襲はエッチング処理の方がコンディショナー処理よりも強いことが解かった。
    2.メーカー指示通りに填塞した時の接着強さは,レジン系シーラント材の方がグラスアイオノマー系シーラント材よりも有意に高かった。
    3.シーラント材と前処理材の組み合せによって接着強さが異なり,特にレジン系シーラント材の場合にその傾向が強かった。
    4.レジン系シーラント材を用いた場合,リン酸エッチング処理の方が機械的な維持力が大きく発揮され,その結果,接着強さが高くなった。一方,グラスアイオノマー系シーラント材を用いた場合,シーラント材自体の物性が弱いために,維持力が十分に発揮されなかった。
  • 阿部 倫子, 白川 哲夫, 小口 春久
    2003 年 41 巻 5 号 p. 830-842
    発行日: 2003/12/25
    公開日: 2013/01/18
    ジャーナル フリー
    ニューロペプチドY(NPY)は摂食亢進ペプチドであり,弓状核は視床下部での主要なNPY合成部位である。成熟ラットの弓状核のNPY mRNAは絶食により増加し,再摂食により平常レベルに戻る。しかしながら,吸啜期の脳内のNPYと摂食行動との関連については不明な点が多い。今回,吸啜期ラットの視床下部および脳幹におけるNPY mRNA発現を,自由摂食および絶食条件下でin situハイブリダイゼーション法により検討した。
    生後2,7,10日(P2,7,10)の新生ラットを3群に分類した。「自由摂食群」は常に母ラットとともに飼育し,「絶食群」は母ラットから分離し絶食としたのち脳を摘出し,「絶食後摂食群」は絶食後母ラットに哺乳させたのち脳を摘出した。絶食群の弓状核でのNPY mRNA発現量は,いずれの日齢においても自由摂食群より多かった。また,絶食後摂食群では,自由摂食群と絶食群の中間の発現レベルを示した。孤束核のNPY mRNA発現量はP2では絶食群で増加していたが,P7および10では変化は認められなかった。
    以上の結果より,吸啜期でも絶食により弓状核のNPY mRNAの発現が増加し,摂食後に減少すること,また孤束核では,P2の絶食時にNPY mRNA発現が増加することが示された。NPYを介する摂食調節に,P2では弓状核および孤束核の両者が関与し,P7以降では弓状核がより主要な働きをしている可能性が示唆された。
  • 平川 貴之
    2003 年 41 巻 5 号 p. 843-854
    発行日: 2003/12/25
    公開日: 2013/01/18
    ジャーナル フリー
    小児における歯科恐怖および不安について,多くの疫学調査がなされているが,その評価方法と基準は多岐にわたり,各調査集団間での比較を困難にしている。そこで本研究では,諸外国との比較を可能にすべく,国際的に認知度が高く,他国語版ですでに有用性が確証され,小児用の歯歯科恐怖調査に用いられているDental Subscale of Children's Fear Survey Schedule(CFSS-DS)を用い,小児における歯科恐怖の実態を調査し,特性不安との関連性および歯科受診行動に対する影響について分析,検討し,以下の結論を得た。
    1.日本語版CFSS-DSは,高い信頼性と妥当性を示した。
    2.本研究対象者の約20%が歯科に対する恐怖心を有していた。また,男児よりも女児の方が歯科に対する恐怖度が有意に高く,歯科恐怖者の占める割合も有意に高かった。
    3.歯科受診未経験者は受診経験者よりも歯科に対する恐怖度が高い傾向にあった。
    4.歯科に対する恐怖度が高い者は,特性不安も有意に高いことが示された。
    5.歯科恐怖度に関して,日本はアジア,米国より低かったが,北欧諸国よりは高かった。
  • 石川 雅章, 高橋 昌司, 藤田 晴子, 高木 裕三
    2003 年 41 巻 5 号 p. 855-859
    発行日: 2003/12/25
    公開日: 2013/01/18
    ジャーナル フリー
    特記すべき全身的疾患がなく,第三大臼歯を除く永久歯を4本以上先天的に欠如したoligodontia12名について,パノラマエックス線写真により特定した欠如歯を左右一緒に歯種ごとに集計し,欠如歯総数として算出した。このうち,代生歯である上下顎中切歯から第二小臼歯までの欠如歯総数の多寡と,ヒトにおける欠如歯出現様式を理論的に説明した藤田の末端退化説との一致度を検討した。
    上顎歯列では中切歯の欠如が1例もなく,欠如歯総数は側切歯から第二小臼歯へと遠心方向に向かって順次増加していった。一方,下顎では欠如が1例もなかった犬歯を中心として,近心方向に向かって側切歯,中切歯,遠心方向に向かって第一小臼歯,第二小臼歯の順に欠如歯総数が増加していった。
    以上の結果は,上顎中切歯と上顎犬歯を鍵歯とし,下顎を先行させて上下顎を一線に連ねることを前提とする藤田の末端退化説とは必ずしも一致しなかった。そこで,藤田説の改訂を試み,上下顎を別個のものとし,鍵歯は上顎歯列では中切歯のみであり,下顎歯列では犬歯であると想定した。すると本研究の結果は,上下顎とも鍵歯を中心とした歯群の末端にいくほど欠如歯総数が多くなり,「退化は各歯群の前端および後端から起こる」という藤田理論の中枢と矛盾なく合致した。
  • 田畑 太, 菊入 崇, 吉村 善隆, 吉田 英史, 白川 哲夫, 小口 春久
    2003 年 41 巻 5 号 p. 860-868
    発行日: 2003/12/25
    公開日: 2013/01/18
    ジャーナル フリー
    破骨細胞は骨吸収を担う多核細胞であり,単球・マクロファージ系細胞の前駆細胞から分化することが知られている。今回著者らは,炎症性サイトカインの一つであるマクロファージ遊走阻止因子(MIF)が,破骨細胞分化過程にどのような影響を及ぼすかについて検討を行った。マウス骨芽細胞様細胞(E1細胞)とマウス骨髄細胞との共存培養によって破骨細胞を誘導し,TRAP陽性細胞の出現数・破骨細胞分化因子(RANKL)の発現量・破骨細胞抑制因子(OPG)の産生量・硬組織吸収能についてMIFの影響を調べた。その結果,TRAP陽性多核細胞の出現数は,MIF濃度に依存して減少することが判明した。一方,E1細胞におけるRANKLの発現およびOPGの産生に,MIFの影響は確認されなかった。TRAP陽性細胞1個中に含まれる核数の分布を調べたところ,MIF作用群では対照群と比較し,多核化が抑制されていることが明らかになった。また,象牙質切片上に形成された吸収窩を観察したところ,MIF作用群では形成された吸収窩の大きさが明らかに小さかった。
    以上の結果より,MIFは分化・成熟過程にある破骨細胞の融合過程を阻害することで,成熟した破骨細胞の出現を抑制しているものと考えられた。
  • 大河内 昌子, 向井 美惠
    2003 年 41 巻 5 号 p. 869-879
    発行日: 2003/12/25
    公開日: 2013/01/18
    ジャーナル フリー
    摂食機能の発達を行動発達と関連させて,より広範な発達評価の構築を目的に,離乳期の乳児を対象に摂食動作と行動観察による発達検査の結果との関連性について検討したところ以下の結果を得た。
    1.「改定・離乳の基本」の離乳期の区分と摂食機能評価との関連から,生活年齢(以下C.A.)と摂食機能評価との間の差は,離乳中期~ 後期に相当する児が他の離乳期と比べ多くみられた。また,発達年齢(以下D.A.)と離乳時期との関連では,離乳の後半でD.A.が離乳区分の生後月数より高い児が多くみられた。
    2.摂食機能発達を基に分類した離乳時期とC.A.および発達検査の領域別D.A.との関連から,離乳各期ともC.A.よりD.A.の方が大きい傾向にあり,食事領域以外のD.A.は,食事領域のD.A.に比べて有意差は認められないものの全ての領域で大きかった。
    3.各摂食機能評価項目におけるC.A.とD.A.との関連を検討したところ,C .A.とD.A.は各離乳期の多くの項目に強い関連性が認められたが,離乳中期までの口角の牽引と舌の動きを評価基準とした項目においてC.A.とD.A.との関連性が弱い傾向にあった。
  • 小野寺 妃枝子, 加藤 めぐみ, 村田 典子, 小林 慶一, 中島 一郎, 赤坂 守人
    2003 年 41 巻 5 号 p. 880-886
    発行日: 2003/12/25
    公開日: 2013/01/18
    ジャーナル フリー
    乳歯列期反対咬合におけるムーシールドおよびチンキャップの治療評価を行った。被蓋改善した乳歯列期反対咬合症例ムーシールド群12名,チンキャップ群9名について,両装置の治療前と治療後の顎顔面形態変化および舌位の変化を側面頭部エックス線規格写真を用いて比較検討し,以下の結論を得た。
    1.ムーシールド群は上顎前歯の唇側傾斜,咬合平面の平坦化,舌位の後方および挙上の変化が認められた。
    2.チンキャップ群は下顎骨の後方位,下顎角の減少および舌位の後方変化が認められた。
    3.ムーシールドによる機能の変化は骨格系の成長旺盛な時期に機能面から骨格系に影響を及ぼすことが推測された。
  • 韓 娟, 清水 武彦, 前田 隆秀
    2003 年 41 巻 5 号 p. 887-892
    発行日: 2003/12/25
    公開日: 2013/01/18
    ジャーナル フリー
    口唇裂,唇顎口蓋裂および口蓋裂の発症の原因となる遺伝子を連鎖解析によって解明するにあたり,自然発症率ならびに誘発条件を付加した発症率が異なるモデル近交系マウスの確立をめざした。
    A/WySnマウスはこれらの奇形の自然発症ならびにコルチゾン誘発発症が高いことが知られていることから,高発症マウスとしてA/WySnマウスを選んだ。一方,低発症マウスとしてC3H/Heマウスが用いられるかを検討した。2系統のマウスにおける口唇裂,唇顎口蓋裂および口蓋裂の発症率の比較を行ったところ以下の結果を得た。
    1.A/WySnマウスにおいて,口唇裂および唇顎口蓋裂の自然発症が認められ,口蓋裂の自然発症は認められなかった。
    2.A/WySnマウスの口唇裂の自然発症率は3.7%であり,唇顎口蓋裂自然発症率は10.8%であった。
    3.C3H/Heマウスにおいて,口唇裂,唇顎口蓋裂および口蓋裂の自然発症は認められなかった。
    4.コルチゾン投与によりA/WySnマウスには唇顎口蓋裂および口蓋裂の発症が認められ,口唇裂の発症は認められなかった。
    5.コルチゾン投与によりC3H/Heマウスでは口蓋裂の発症のみが認められた。
    6.コルチゾン投与によりA/WySnマウスの口蓋裂発症率は40.6%,C3H/Heマウスでは16.7%であり,コルチゾンに対してA/WySnマウスが高い感受性を示した。
    以上のことから,A/WySnマウスは自然発症の口唇裂および唇顎口蓋裂の疾患モデルマウスとしてまた,コルチゾン誘発によって唇顎口蓋裂と口蓋裂の疾患モデルマウスとして有用であることが示唆された。ならびにC3H/Heマウスが低発症マウスとして用いられることが明らかとなった。さらに,自然発症の唇顎口蓋裂とコルチゾン誘発唇顎口蓋裂の原因遺伝子が同一か否か解明することが可能となった。
  • 坂部 留可, 田中 一, 坂部 潤, 中島 一郎, 林 邦雄, 赤坂 守人
    2003 年 41 巻 5 号 p. 893-899
    発行日: 2003/12/25
    公開日: 2013/01/18
    ジャーナル フリー
    本研究は,授乳期の小児の口腔内におけるlactobacilliの齲蝕原性を明らかにすることを目的とし,小児の唾液から分離されたLactobacillus属の4菌種7菌株を試料とし,1名の成人の提供者からの唾液を用いて,hydroxyapatite beads(HA)を歯面にみたて,skim milkおよび唾液で処理したHA(mix-HA),skimmilkのみで処理したHA(milk-HA)ならびに唾液のみで処理したHA(s-HA)に対し,付着能を有する菌株を検索した。
    その結果Lactobacillus paracasei Japan Collection of Microorganisms 1133株(L.paracasei JCM 1133株)のみが,milk-HAとmix-HAおよびs-HAに対して付着能を有することが示された。
    さらに,L.paracasei JCM 1133株は,複数の小児および成人の提供者からの唾液を用いて処理したs-HAに対しても付着能を有することが示された。
    以上の結果から,L.paracasei JCM 1133株は,乳幼児期の歯の表面にペリクルを介し付着する可能性が示された。さらに,離乳後に母乳または人工乳を摂取する機会が減じたヒトの歯の表面に対しても,同様に付着能を有することが示唆された。
  • 松本 弘紀, 船津 敬弘, 浅川 剛吉, 原田 利佳子, 田中 光郎
    2003 年 41 巻 5 号 p. 900-905
    発行日: 2003/12/25
    公開日: 2013/01/18
    ジャーナル フリー
    永久歯歯冠の大きさの年代的な変遷については相反する報告がなされており,その実態はいまだに明確となっていない。本研究は混合歯列期の小児の石膏模型を用いて,代生歯である中切歯と加生歯である第一大臼歯を代表として取り上げて,その歯冠近遠心幅径および唇(頬)舌径を計測し,20年前と現在との歯冠の大きさの変化について比較検討した。対象は1995年から2000年までに岩手医科大学小児歯科に来院した小児55名(男児28名女児27名)と1975年から1980年までに来院した小児59名(男児30名女児29名)から採得した石膏模型であり,計測の結果,以下の知見を得た。
    1.歯冠近遠心幅径は20年前と比較して,第一大臼歯では,男児で小さくなっており有意差が認められた。中切歯では,男児の上顎で大きくなり,男児の下顎,女児の上顎,下顎では小さくなる傾向を示したが,有意差は認められなかった。
    2.歯冠唇(頬)舌径は20年前と比較して,第一大臼歯では男女ともに殆ど変化なく有意な差は認められなかった。中切歯では,男児の上顎で大きくなっており有意差が認められた。
    3.永久歯を代表させて,中切歯と第一大臼歯についてのみ計測を行ったが,一定の明確な傾向を明らかにすることはできなかった。今後永久歯の他の歯種についても調査の必要性があると思われた。
  • 甲原 玄秋
    2003 年 41 巻 5 号 p. 906-911
    発行日: 2003/12/25
    公開日: 2013/01/18
    ジャーナル フリー
    血管腫の治療には種々の方法がある。とりわけ顔面の血管腫は審美的な要素を考慮した治療が必要である。今回乳児の上唇にみられたイチゴ状血管腫に対してエタノール局所入注療法を行い,良好な結果を得たので報告する。
    1か月の女児が上唇部に赤い点状の病変をもち紹介され来院した。初診時は3つの帽針頭大の病変であったが,それは徐々に増大し,8か月時には上唇の2/3以上を占めるようになってきた。8か月時に生検を行い毛細血管性血管腫の病理診断を得た。腫瘍は月単位で増大しているため,その制御のためエタノール局所注入療法を検討し,血管腫の赤色の消失と縮小を治療目標とした。生後11か月時にエタノール0.4mlを腫瘍に注入した。次回は1歳2か月時に0.7mlを使用し,その後,4回にわたり0.7~2mlを追加した。6回目の使用は2歳7か月時であった。これらの治療で赤色は消失し腫瘍は縮小したが,上唇に膨隆が残存した。口唇の形態の修正のため3年8か月で口唇形成術を行った。口唇は左右対称となり口唇の動きや知覚の異常もなく11歳の現在腫瘍の再発はみられない。
    エタノール局所注入療法はその使用量が適切であれば,血管腫の部位によっては有用な治療法といえる。
  • 西野 華子, 井出 正道, 朝田 芳信
    2003 年 41 巻 5 号 p. 912-917
    発行日: 2003/12/25
    公開日: 2013/01/18
    ジャーナル フリー
    williams症候群は成長障害,精神発達遅滞,心血管系奇形を主症状とする常染色体遺伝病と考えられている。他の医療機関においてFluorescence in situ hybridization(FISH)法を用いWilliams症候群と診断された初診時年齢4歳7か月の男児の口腔管理を行ったので,その経過について報告する。
    患児の全身所見は,低体重,低身長,軽度の精神発達遅滞,歩行障害が認められ,心房中隔欠損症の既往もあったが2歳時に自然閉鎖していた。顔貌はwilliams症候群特有の妖精様顔貌であった。口腔内所見は多数歯の齲蝕を認めたが,エナメル質形成不全は明らかではなく,高口蓋も認めず,咬合状態は前歯部反対咬合であった。パノラマエックス線写真所見では乳歯の形態には異常は認められなかったが,永久前歯の形態と位置の異常が疑われた。
    歯科治療開始当初は泣く,体動があったりと協力状態が不良であったが,治療回数を重ねる毎に歯科的環境を受け入れるようになり,協力状態に改善がみられた。
    このような全身疾患を伴う症候群を有する小児では,口腔内の健康を保つことが重要であり,定期的な管理を行う必要がある。
feedback
Top