鶴見大学歯学部付属病院小児歯科において,昭和48年2月から昭和53年2月までの間に,全身麻酔下に歯科診療を行った患児129名の,その後の経過について調査を行った。調査期間は,昭和48年2月から昭和53年8刀までの5年7カ月間である。1
.初回全身麻酔時の一人平均未処置蘭蝕歯数は,II開始群で13.2歯,IIC~IIIA開始群で10.1歯,III以降開始群で10.2歯であった。
2.129名中,1回目の定期診査を受けたものは108二名であり,来院日時を通知したにもかかわらず,定期診査を受けなかったものが21名あった。なお,1回目以後,定期診査を継続しているが,経過年刀が短く,回数が少ないものもある。
3.管理期間中に行われた処置の主体は,永久歯のコンポジットレジン充填とシーラント填塞で,全身麻酔下診療で行われたものに比べて大幅に軽度なものであり,総処置歯数も,全身麻酔下診療の約40%と,少なくなっていた。
4.定期診査時の樋蝕は,その主体が永久歯の新生蘭蝕で,二次爾蝕はこれより少なかった。乳歯は新生騙蝕・二次爾蝕とも更に少なく,全身麻酔下に診療を行った後は,通常の歯科診療の場合と同様,管理の主眼を幼若永久歯の蘭蝕の予防と早期治i療に概くべきであると考えられた。
5.修復処置の経過では,総じて,一般小児の場合と同等,あるいはむしろ良好な結果が得られたが,日常の口腔管理が徹底している施設入所心障児に比べて,不快事項発生頻度は高く,治療および日常の管理の両面から,改善の余地が残されているものと考えられた。
6.管理期間中に,再び全身麻酔下の診療が必要となった患児は20名で,高年齢患児群で多かった。早期に徹底した治療を行うとともに,日常の口腔清掃習慣を確立することの重要性が指摘された。
抄録全体を表示