小児歯科学雑誌
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50 巻 , 5 号
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原著
  • 伊藤 三智子, 島田 陽一郎, 五十川 伸崇, 大須賀 直人, 小笠原 正
    2012 年 50 巻 5 号 p. 367-374
    発行日: 2012/12/25
    公開日: 2015/03/19
    ジャーナル フリー
    日常用いられている道具の中には,思わぬ事故を引き起こすものがある。歯科医師が指導で用いている歯ブラシによる口腔領域における事故も散見される。そこで著者らは歯ブラシ外傷の実態とそれに対する歯科医師の認識を明らかにするために,小児歯科医を中心とした歯科医師に対してアンケート調査を行い歯ブラシに起因する外傷(口腔粘膜への刺入)の予防対策を検討した結果,以下の結論を得た。1 .歯ブラシに起因する外傷(口腔粘膜への刺入)を受傷する年齢は,「2~3 歳」が最も多く,次に「4~5 歳」であった。2 .歯ブラシに起因する外傷(口腔粘膜への刺入)は,「頬粘膜」と「口蓋」の受傷が多かった。外傷部位と受傷年齢の間に有意な関連は認められなかった。3 .歯ブラシに起因する外傷(口腔粘膜への刺入)時の状況は,「歯ブラシをくわえて転倒」が最も多かった。歯ブラシに起因する外傷(口腔粘膜への刺入)の状況と受傷年齢の間に有意な関連は認められなかった。4 .治療に関して,「経過観察」が最も多かった。5 .70%以上の歯科医師は,4 歳までに歯ブラシを持たせての指導を行っていた。84.1%の歯科医師は,歯ブラシに起因する外傷(口腔粘膜への刺入)の危険性を注意していた。一方,歯ブラシに起因する外傷(口腔粘膜への刺入)を経験していたにもかかわらず,その危険性を注意しない歯科医師もいた。6 .歯科医師の「歯ブラシに起因する外傷(口腔粘膜への刺入)の経験の有無」と「子どもに歯ブラシを持たせる年齢」との間に,有意な関連は認められなかった。7 .テキストマイニング分析より,歯科医師による歯磨き指導時の具体的な注意事項は,「寝かせ磨き」,「監視する」,「歩かせない」などが平均的な内容であった。また,臨床経験が25 年以上の歯科医師は「低年齢に指導」,「歩かせない」などを特に指導していることが示された。
  • 島田 路征, 三瓶 素子, 三瓶 伸也, 吉富 美和, 城山 博
    2012 年 50 巻 5 号 p. 375-382
    発行日: 2012/12/25
    公開日: 2015/03/19
    ジャーナル フリー
    自閉症スペクトラム(以下,ASD)はコミュニケーション能力に障害を持ち,特異な行動を取ることから,歯科治療を行う上で様々な問題を起こす事がある。そのため我々歯科医療従事者は,ASD について正しい知識を持ち,患者個々の困り感に対応する必要がある。日本歯科大学新潟病院障害児・者歯科センターでは,平成18 年度よりASD の歯科治療に対応できる能力の強化に取り組んできた。そこで今回は当センターにおけるASD への取り組みを検証するために,過去10 年の患者動向を調査,分析,考察し,以下の結論を得た。1 .過去10 年間で最も多い障害病名はASD であり,平成18 年度以降ASD 患者数は増加していた。2 .平成18 年度以降,30~40 Km 圏内と当院とは離れた地域の患者数が増加した。3 .過去10 年間のASD 患者の来院動機で最も多かったのは,他院からの紹介であった。これは平成18 年度以降に他院紹介が増加したことによる。4 .過去10 年間で主訴は齲蝕治療が最も多く,この傾向は平成18 年度前後で変化がなかった。5 .過去10 年間ASD 患者に行った行動調整方法はトレーニングが最も多かった。行動調整法の比率は平成18 年度前後で変化はなかった。
  • 馬場 篤子, 渥美 信子, 林─坂井幸子 幸子, 平野 慶子, 人見 さよ子, 小田 訓子, 下村─黒木 淳子, 仲野 道代, 朝田 芳信, ...
    2012 年 50 巻 5 号 p. 383-392
    発行日: 2012/12/25
    公開日: 2015/03/19
    ジャーナル フリー
    女性小児歯科医は日本小児歯科学会会員の約40%を占めるにも関わらず,現役で活躍し続けることが難しい現実がある。したがって,女性小児歯科医が生涯にわたり安心して仕事を続け,能力を発揮していくことができるために学会としてどのようなサポートが必要かを模索する必要がある。そこで全女性歯科医師会員を対象として女性の私生活と仕事に関するアンケートを実施した。今回,対象として日本小児歯科学会に所属する女性小児歯科医1766 名のうち,回答のあった724 名(回答率41.0%)について検討した。その結果,女性歯科医は仕事の継続に対して意欲が高い回答が多かったが,現状は職場環境の整備は十分とは言い難く,それを家族の協力によって補っていることが推察された。学会主催の大会,講習会などへの参加のためには託児所の設置が必要と感じており,近郊地域での講習会の開催,在宅でのセミナー受講に関する要望が多く,専門医の申請および更新について高い関心が示された。今後,多様な人材が小児歯科医療に携わり活躍できるようなダイバーシティーマネージメントが重要である。そのためには育児,介護期などのライフステージに応じたニーズへの対応が期待される。今回のアンケートから得られた結果をもとに,女性小児歯科医へのサポートおよび基盤整備のためのシステム構築の検討が必要であると考えられた。
  • 髙森 一乗, 那須 大介, 関 信幸, 西山 未紗, 白川 哲夫
    2012 年 50 巻 5 号 p. 393-397
    発行日: 2012/12/25
    公開日: 2015/03/19
    ジャーナル フリー
    Er : YAG レーザーは歯科治療の多方面で応用されており,小児歯科においてもその例外ではない。小児においては齲蝕治療(硬組織切削)での臨床統計やその有効性等の報告は数多いが,軟組織疾患に応用された場合の症例報告等ではその有用性が指摘されているものの,予後も含めて詳細に検討された報告は少なく,不明な点が多い。今回,我々は本学付属病院小児歯科外来にて,Er : YAG レーザーを軟組織疾患に応用した症例でその予後も含めて検討したところ以下の知見が得られた。対象は49 名であり,処置内容は上唇小帯切除術が最も多かった。処置に関しては局所麻酔を併用する症例がほとんどであったが,その投与量は平均1.1 ml であった。切除後の治癒も良好で予後不良な症例は認めなかった。以上の結果より,Er : YAG レーザーは小児においても硬組織のみでなく,軟組織疾患の治療にも有用性があることが明らかとなった。
  • 榊原 章一, 中野 崇, 王 陽基, 松本 侑, 徳永 有一郎, 加藤 一夫, 福田 理
    2012 年 50 巻 5 号 p. 398-403
    発行日: 2012/12/25
    公開日: 2015/03/19
    ジャーナル フリー
    これまで我々は,NaF 溶液(250 ppmF)1 回洗口により歯垢中にフッ化物を停滞させ,これによりグルコース洗口後の乳酸産生を抑制することを明らかにしてきた。しかしながら,NaF 溶液洗口による歯垢中のフッ化物濃度の上昇は一時的であり,長時間の効果は期待できない。一方,Pearce らのME-MFP 溶液は歯垢中でフッ化物を長時間維持することが報告されている。そこで本研究では,ME-MFP 溶液(250 ppmF)の1 回洗口がグルコース洗口後の乳酸産生に与える影響について明らかにする目的で検討を行い,以下の結論を得た。ME-MFP 溶液洗口による歯垢中のフッ化物濃度はフッ化物洗口30 分後にグルコース洗口および歯垢採取をした群(以下,短時間群)では23.4 ppm,フッ化物洗口5 時間後にグルコース洗口および歯垢採取をした群(以下,長時間群)14.6 ppm,対照群4.8 ppm であり,カルシウム濃度は,短時間群450.8 ppm,長時間群339.7 ppm,対照群79.1 ppm であった。フッ化物濃度,カルシウム濃度ともに短時間群と対照群間のみに有意差(p<0.05)が見られ,長時間群と対照群間では有意差は見られなかった。乳酸の濃度は短時間群91.8 ppm,長時間群126.5 ppm,対照群147.0 ppm であり,いずれの群間においても有意差は見られなかった。以上の結果より,ME-MFP 洗口液の,特に短時間群におけるフッ化物およびカルシウムの停滞能が確認されたが,乳酸の産生抑制効果については,確認できなかった。
  • 松本 侑, 中野 崇, 岡本 卓真, 加藤 一夫, 大野 紀和, 福田 理
    2012 年 50 巻 5 号 p. 404-413
    発行日: 2012/12/25
    公開日: 2015/03/19
    ジャーナル フリー
    本研究はDown 症候群児の乳歯エナメル質表層の小柱に着目し,酸処理前後の生化学的分析と構造観察を併せて行い,定型発達児と比較した。対象はそれぞれ6 名から得た下顎乳犬歯とした。生化学的分析は小柱芯部のCa とP 濃度を測定し,構造観察は小柱の走向などの主観的な比較に加え,小柱芯部のエナメル質に占める割合(P/I 面積比)を算出した。これより,以下の結果を得た。Ca とP 濃度およびCa/P 比はDown 症候群児と定型発達児の比較において有意差はなかったが,Down 症候群児では酸処理前後でCa/P 比に違いを認めたためエナメル質アパタイトの構造に変化が生じた可能性がある。Down 症候群児において小柱の輪郭が様々であり,アーチ状のものが少なく,特徴的な形態として2 ヶ所の凸部を認める双峰性が挙げられた。構造が間質部と類似しているため全体的に平坦な像であり,配列に連続性がなく,凸弯方向に関してその走向性の判断が困難であった。さらに,小柱鞘に幅があり,有機質様の構造が確認された。P/I 面積比はDown 症候群児が定型発達児に比して有意に低い値であった。以上より,Down 症候群児は定型発達児に比してエナメル質の主成分に違いはないが,組織構造の相違から酸に対する反応性が異なると考えられ,小柱芯部の構造や密集度からもDown 症候群児はエナメル質形成時の有機質脱却が不十分であることが示唆された。
  • 簑島 直美, 小森 令賀, 横山 三菜, 菊地 暁美, 熊坂 純雄, 大久保 孝一郎, 木本 茂成
    2012 年 50 巻 5 号 p. 414-422
    発行日: 2012/12/25
    公開日: 2015/03/19
    ジャーナル フリー
    我が国の合計特殊出生率は2011 年には1.39 となり,少子化や核家族化は社会現象である。近年少子化が進む中で,現在の子どもの歯科医院への受診状況やどのように歯科医院を選択しているのか,社会における傾向は明らかでなく,これについて検討を行った報告は少ない。そこで,保護者の求める歯科医院像を把握し,より良い小児歯科医療を提供することを目的として本研究を行った。調査は平成22 年6 月に神奈川県横須賀市内の某幼稚園で健診を実施した園児183 名(3 歳~5 歳)を対象とした。1 .アンケートの回収率は総数183 名中127 名回答の69.4%であった。2 .診察または診療経験の有無では,19.7%の園児は歯科医院での受診経験がなかった。3 .歯科医院を選択する際の基準では,クラスター分析により全体を4 つのクラスターに分類し,それぞれのクラスターの傾向性を確認することができた。これにより歯科への定期的な受診の必要性を啓蒙するにあたり,グループの特徴に沿って進めていくと効率的であることが示唆された。
  • 田中 裕子, 岩﨑 真紀子, 今井 和希子, 江島 堅一郎, 髙森 一乗, 白川 哲夫
    2012 年 50 巻 5 号 p. 423-429
    発行日: 2012/12/25
    公開日: 2015/03/19
    ジャーナル フリー
    DIAGNOdent pen(KaVo, Germany,以下pen とする)は,平滑面,小窩裂溝に加え,隣接面用プローブも備えていることより,隣接面齲蝕診断が可能とされている。その特徴より,小児への応用が期待されるが,乳歯および幼若永久歯を対象とした報告は少ない。そこで,乳歯および幼若永久歯の隣接面齲蝕診断への本装置の有効性を明らかにするため,デジタルエックス線画像から計測した隣接面齲蝕深さとpen の測定値とを比較し,両者の関係について検討した。対象は小児18 名で,隣接面にCO からC2 の齲蝕を認める乳歯56 歯69 歯面,および幼若永久歯39 歯54歯面とした。測定は,対象歯を歯面清掃後,簡易防湿を行い,5 秒以上エアーで乾燥させた状態でpen 隣接面用プローブ表面と隣接歯面が並行となるように歯間にプローブを挿入した。また同部位のデジタルエックス線を撮影し,その画像をディスプレイ上で拡大し,健在なエナメル質および象牙質の濃淡を参考に齲蝕病巣最深部を決定し,エナメル質表層から齲蝕の最深部まで垂線を引いて,その直線距離を齲蝕深さとした。乳歯および幼若永久歯隣接面齲蝕におけるpen の測定値とデジタルエックス線画像の齲蝕深さとのSpearman 相関係数は,乳歯が0.82,幼若永久歯が0.78 であり,ともに統計学的に有意な相関関係が認められた。以上の結果より,本装置が乳歯および幼若永久歯における隣接面齲蝕の進行状態を把握するうえで有用性が高いことが示された。
臨床
  • 柳田 憲一, 山座 治義, 増田 啓次, 西垣 奏一郎, 大隈 由紀子, 小笠原 貴子, 野中 和明
    2012 年 50 巻 5 号 p. 430-438
    発行日: 2012/12/25
    公開日: 2015/03/19
    ジャーナル フリー
    Alagille 症候群は極めてまれな遺伝性疾患である。この疾患は,個人によりその症状や程度が異なるが,主要症状として胆道閉塞症による重度の黄疸があり,治療として生体肝移植の実施が検討される。また主徴のひとつとして心疾患を伴うことも多いとされている。これら生体肝移植や心疾患においては,全身の感染予防がとても重要であり,疾患の影響で齲蝕になりやすい環境にある。そのため齲蝕をはじめとする口腔疾患が原因となる歯性感染を予防するという観点から,できる限り幼少期からの歯科的管理がとても重要である。今回Alagille 症候群と診断され,生体肝移植前と移植後の1 歳代の患児2 名に遭遇した。この2 症例を通して,Alagille 症候群の歯科的問題点が明らかとなり,低年齢からの口腔衛生管理の重要性が認識された。
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