タンパク質合成において,tRNAは遺伝暗号をアミノ酸に変換するために必須の分子である.しかし,原始的な真核生物と考えられている始原紅藻
Cyanidioschyzon merolae の核ゲノムからは,20種のアミノ酸を運搬するのに必要な数のtRNA遺伝子が発見されていなかった.最近,
C. merolae の核ゲノム配列解析の結果,tRNAの 3' 側半分と 5' 側半分をコードする配列が逆転した構造をもつ遺伝子が発見された.“permuted tRNA 遺伝子”と命名したこの遺伝子から転写された前駆体tRNAは,環状のRNA中間体を経て,機能的な成熟体tRNAにプロセスされる.RNAの配列の順番を“入れ換え”,DNAに書き込まれたデザインとは異なる末端をつくり出すこの反応は,まったく新しいタイプのRNAプロセシング機構である.
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