臨床血液
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41 巻, 11 号
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臨床研究
  • 鳥羽 健, 布施 一郎, 小池 正, 土山 準二郎, 樋口 渉, 新国 公司, 阿部 崇, 矢野 敏雄, 高橋 益広, 柴田 昭, 相澤 義 ...
    2000 年 41 巻 11 号 p. 1151-1157
    発行日: 2000年
    公開日: 2009/07/28
    ジャーナル 認証あり
    網血小板比率は血小板回転のよい指標として臨床上重要な検査であり,広く血液臨床医の関心を集めてはいるものの,実用的といえる安定したよい測定法がなかったため一般化していない。1998年にMaticらが発表したチアゾール・オレンジ法の変法は,簡便・迅速かつ精密であるという圧倒的な利点を有し,今後網血小板比率測定のスタンダードとなりうると考え,実際の臨床例でその有用性を検定した。特発性血小板減少性紫斑病と血球貪食症候群では,血小板回転の亢進を反映して網血小板比率の増加がみられ,また血小板減少の程度と網血小板比率が強い相関を示した。造血器腫瘍で強力化学療法中の患者では,網血小板比率の減少している例と増加している例で1週間以内にそれぞれ血小板数の減少・増加がみられ,検査法としての信頼性の高さを示唆した。今後この方法が広く普及すると推測される。
症例
  • 高橋 直樹, 丸田 壱郎, 橋本 千寿子, 加藤 和伸, 田辺 寿一, 児玉 文雄, 小峰 光博
    2000 年 41 巻 11 号 p. 1158-1163
    発行日: 2000年
    公開日: 2009/07/28
    ジャーナル 認証あり
    45歳,男性。1997年2月急性リンパ性白血病と診断,寛解導入療法で完全寛解となった。Ph1染色体陽性で予後不良と考えられ,1997年6月11日HLA一致の姉からの骨髄移植を施行,移植後第113病日に退院した。1998年1月下旬,労作時の息切れを自覚,2月3日外来を受診,間質性肺炎を認められ,入院した。間質性肺炎は慢性GVHDによると考えられた。陰影が増悪したため副腎皮質ステロイド薬を開始,症状は次第に改善した。2月23日から両側頸部,鎖骨上窩に皮下気腫が出現,次第に両側胸部に広がった。胸部写真とCTで縦隔内にも気腫が認められた。安静により皮下気腫と縦隔気腫は約3週間で軽快した。同種骨髄移植後の皮下気腫と縦隔気腫の合併は比較的稀と考えられたので報告した。
  • 工藤 寿子, 堀部 敬三, 岩瀬 勝彦, 近藤 勝, 小島 勢二
    2000 年 41 巻 11 号 p. 1164-1170
    発行日: 2000年
    公開日: 2009/07/28
    ジャーナル 認証あり
    小児期発症の本態性血小板血症(essential thrombocythemia以下ETと略す)は稀な疾患で報告例も少なく,その臨床像はさまざまで予後についても不明な点が多い。今回,われわれは異なる経過をたどった小児期発症の3症例を経験したので報告する。3例の発症年齢はいずれも12歳で男女比は2: 1, 主訴は左踵の痛みと持続勃起が1例ずつ1例は無症状であった。血小板数は230∼290×104lと著明な増多を認めPolycythemia Vera Study Groupの診断基準に基づきETと診断した。血中Thrombopoietinは2例で測定し,0.33, 0.47 fmol/mlと低値であった。3例とも抗血小板剤であるdipyridamoleとaspirinを投与した。2例は血小板の減少を認めたが,1例は高値のままである。本邦でこれまでに報告された12例の小児期発症のETは重篤な合併症は少なく予後良好で白血病への移行もみられていない。小児の症例では血管系のrisk factorも少なくアルキル化剤やハイドロキシウレアのような2次性白血病発症の可能性のある薬剤の使用には慎重な配慮が必要で,血栓出血症状に注意しながら保存的な治療が望まれる。
  • 野口 雅章, 有賀 誠記, 加藤 淳, 押味 和夫
    2000 年 41 巻 11 号 p. 1171-1177
    発行日: 2000年
    公開日: 2009/07/28
    ジャーナル 認証あり
    症例は37歳男性,外科医。平成10年10月感冒様症状,四肢の点状出血が出現し,血小板減少症のため入院。体温は36.9°Cで,四肢や背部に多数の点状出血を認めた。白血球数3,700/μl, 異型リンパ球3%, CD4/CD8比0.37で,貧血はなく,血小板数は1,000/μlであった。生化学と凝固能に異常なく,骨髄は正形成で,巨核球数正常,異型細胞は認めなかった。CT上軽度の脾腫を認めた。ウイルス感染に伴う血小板減少症を疑い,入院当日よりステロイド療法を開始し,21日目には血小板数は15万/μlと改善した。PA-IgG 658 ng/107と高値を示し,その後軽度の肝機能障害と異型リンパの増加を認め,IgM CMV抗体(+), IgG CMV抗体(-)と判明したため,CMV単核症に合併した血小板減少症と診断し,16日目にgancyclovirを開始した。4カ月後ステロイドを中止したが部分寛解が続いている。成人例のCMV単核症に著明な血小板減少症を合併した例の報告は11例とまれで,予後は比較的良好である。
  • 坂牧 純夫, 平山 泰生, 長岡 康裕, 黒田 裕行, 照井 健, 古川 勝久, 加藤 淳二, 新津 洋司郎
    2000 年 41 巻 11 号 p. 1178-1182
    発行日: 2000年
    公開日: 2009/07/28
    ジャーナル 認証あり
    症例は16歳男性。急性リンパ性白血病(ALL)と診断後第二寛解期に自家造血幹細胞移植を施行した。移植後血小板数5×104l以上に回復したのがday 95と著明な遅延を示し,22カ月経過後も血小板数8.5×104l程度と低値であった。一方好中球500/μl以上に回復したのがday 17, 最終赤血球輸血はday 18とほかの2血球系はわずかな遅延傾向を認めたのみだった。そこで血小板造血に関与する骨髄ストローマ細胞機能を検討したところ細胞当たりのトロンボポエチン(TPO)発現量は正常範囲であったが,ストローマ細胞数の指標であるCFU-Fは正常人の1/4以下に低下していた。従って,総TPO発現量が低下している可能性が考えられた。一方G-CSFは細胞当たりの発現量が増加しており,細胞数低下を代償していた。移植前治療における大量の抗癌剤投与によりストローマ細胞数が低下し,総TPOの産生低下により遷延性血小板減少に至ったことが示唆された。
  • 岩瀬 さつき, 高原 忍, 関川 哲明, 伊藤 潔, 中田 秀二, 山崎 泰範, 山田 順子, 小林 正之, 山田 尚
    2000 年 41 巻 11 号 p. 1183-1188
    発行日: 2000年
    公開日: 2009/07/28
    ジャーナル 認証あり
    マクログロブリン血症をきたした全身播種のMALTリンパ腫を報告する。文献的には少数の報告例にとどまっている。症例は80歳男性,発熱を主訴に当科受診。胸部レントゲンにて左肺浸潤影,右胸水貯留を認めた。胸水には異形リンパ球の浸潤がみられCD19, CD20, HLA-DR陽性,CD5, CD10陰性であった。胸膜生検には有意所見なし。腹部CTにて胃壁の高度肥厚と近接する腹膜腫瘤を認めた。胃内視鏡検査では幽門部の多発潰瘍,粘膜生検ではcentrocyte-like cellの浸潤,lymphoepithelial lesionを認めた。34.5 g/lのマクログロブリンを認め,免疫電気泳動からIgMκのMタンパクを確認した。骨髄には胸水にみられたリンパ球が巣状に浸潤。胃,肺,骨髄浸潤を認めマクログロブリン血症をともなうMALTリンパ腫と診断した。患者の希望により治療は経口prednisoloneのみを投与した。呼吸不全にて診断から1年4カ月後に亡くなった。剖検では,全身諸臓器への浸潤を確認した。
  • 八木田 正人, 田端 理英, 小中 義照, 大野 辰治, 高月 清
    2000 年 41 巻 11 号 p. 1189-1194
    発行日: 2000年
    公開日: 2009/07/28
    ジャーナル 認証あり
    症例は67歳,男性。平成10年12月末より発熱あり,某病院にてVAHSと診断され,ステロイド治療を受けたが,ステロイド精神症を併発。平成11年2月3日,本院内科に紹介入院。入院時より著明な低酸素血症,低血圧,胸水,全身の浮腫,脾腫を認めた。検査所見で貧血,血小板減少,著明な低アルブミン血症(Alb 1.9 g/dl)を認めた。骨髄検査で著明な血球貪食像を伴う組織球が5.2%, また,幼若リンパ球を6.0%(CD5, CD19, CD20, HLA-DR陽性)認め,リンパ腫が疑われたが,低酸素血症,低血圧が進行し,積極的な化学療法は行えなかった。約2週間の経過で死亡。剖検にて諸臓器の小血管内にB細胞性リンパ腫の浸潤が認められ,intravascular large B-cell lymphomaと診断した。本症例はintravascular large B-cell lymphomaの診断および治療を具体的に考える上で貴重な症例と思われる。特に,低アルブミン血症および低酸素血症は本症に関連する重要な臨床症状である可能性がある。
  • 木口 亨, 新谷 憲治, 山脇 泰秀, 嶋 緑倫, 原田 実根
    2000 年 41 巻 11 号 p. 1195-1200
    発行日: 2000年
    公開日: 2009/07/28
    ジャーナル 認証あり
    非血友病症例で,ときに第VIII因子に対するインヒビターを生じ,重篤な出血症状を呈することがある。われわれは,過去1年間に,新たに3名の非血友病第VIII因子インヒビター症例を経験したので,ここにその3例の臨床経過およびインヒビターの性状について報告する。症例1は,69歳男性。早期胃癌にて部分胃切除施行。経過は良好であったが,術後1カ月して,吐・下血,筋肉内出血などの出血傾向出現。その時,術前正常であったaPTT (activated partial thromboplastin time)が著明に延長。第VIII因子活性は,3%であった。症例2は,生来健康であった78歳女性。数日前から出現した全身の皮下出血を主訴に入院。aPTTの著明な延長を認め,第VIII因子活性は,1%であった。症例3は,30歳男性。交通事故による左胸腔内出血,肝挫傷にて入院。胸,腹腔ドレナージなどの処置施行。入院2カ月後,ドレーン部の血腫形成などの出血傾向を認めるようになり,この時入院時正常であったaPTTが延長し,第VIII因子活性は,5%であった。それぞれの第VIII因子インヒビターの力価は,症例1は,78 BU/ml, 症例2は,870 BU/ml, 症例3は,0.5 BU/mlであった。ELISA法による抗体のサブクラスの検討では,症例1は,IgG1, 4に,症例2は,IgG2, 4(優位)に,症例3は,IgG4に属していた。さらに,症例2の抗体は第VIII因子のL鎖を認識していた。症例1, 3は,ステロイド投与により軽快したが,症例2は,メチルプレドニゾロンパルス療法などの免疫抑制療法なども行ったが,腹腔内出血にて死亡した。以上,低力価のインヒビター症例では,副腎皮質ステロイドなどの投与により軽快したが,一方,高力価のインヒビター症例は,治療抵抗性で予後不良であり,血漿交換やバイパス療法などを含めたより積極的な治療が必要であったと考えられた。
  • 和泉 典子, 熊谷 裕昭, 新藤 徹郎
    2000 年 41 巻 11 号 p. 1201-1207
    発行日: 2000年
    公開日: 2009/07/28
    ジャーナル 認証あり
    症例は16歳,女性。血液検査で貧血を指摘され1998年4月当院入院。AML(FAB分類M2)と診断した。初回寛解導入療法で寛解に至らずMEC療法で完全寛解に到達。6月22日から第1回地固め療法を開始した。約1週間後から高熱と背部痛が出現し,7月8日のCTで左肺上葉(S1+2)縦隔側に胸部下行大動脈に接して約3 cm大の腫瘤を認めた。広域抗生剤に加えfluconazoleを併用した。7月21日の骨髄は寛解を維持していた。7月24日のCTで左肺上葉の病変は空洞化しており,肺真菌症と考えられた。骨髄回復とともに症状は改善傾向にあり,抗真菌剤をitraconazoleに変更したが7月27日突然大量喀血し死亡した。部検所見:左肺上葉の空洞化病変は胸部下行大動脈と癒着し,大動脈壁を穿破していた。穿破部大動脈壁内に炎症性細胞の浸潤とムーコル菌糸の貪食像が認められた。大動脈栄養血管はムーコル菌糸により血栓性閉塞をきたしていた。
  • 福山 哲広, 小池 健一, 塩原 正明, 黒川 由美, 坂下 一夫, 沢井 信邦, 田中 雄一郎, 小宮山 淳
    2000 年 41 巻 11 号 p. 1208-1213
    発行日: 2000年
    公開日: 2009/07/28
    ジャーナル 認証あり
    20歳の女性。15歳時に急性リンパ性白血病を発症し,東京小児癌研究グループ13次プロトコールに従って治療を行った。以後,完全寛解を持続していたが,1997年11月,多飲,多尿,無月経を訴え来院した。水制限試験で中枢性尿崩症パターンを示し,arginine, LH-RH, TRHおよびCRH負荷試験ではGH, LH, FSH, TSH, ACTHとcortisolの反応が不良であった。頭部magnetic resonance imagingではガドリニウムにより均一に増強される下垂体茎の腫大を認めた。生検の結果,下垂体茎部に芽球浸潤を認めず,CD8陽性のTリンパ球の浸潤と線維化がみられたことから,lymphocytic infundibuloneurohypophysitis (LIN)と診断した。ホルモン補充療法により臨床所見は改善した。本例は,急性リンパ性白血病の経過中にLINを発症した第1例である。
  • 高木 和貴, 中村 徹, 三崎 裕史, 上田 孝典
    2000 年 41 巻 11 号 p. 1214-1219
    発行日: 2000年
    公開日: 2009/07/28
    ジャーナル 認証あり
    症例62歳,男性。前医において慢性骨髄性白血病(CML)慢性期と診断され,1990年からHydroxyurea (HU) 1.0∼2.0 g/dayを約67カ月(合計2,929 g·1日平均1.44 g)投与されていた。1995年12月当科受診時患者の全身皮膚は色素沈着と乾燥が著明であり,皮膚掻痒と落屑を伴っていた。血液学的にはCML慢性期を維持しておりHUの継続投与を開始した。経過中患者は感染症や腫瘍熱による38∼39°Cの高体温をしばしば来し,発汗量の減少が患者の高体温の増悪因子と考えられた。左肩甲骨部の皮膚生検では皮下組織は線維化が著明で汗腺を含む皮膚付属器腺の減少∼消失が明らかであり,原因としてHUの長期投与が推測された。発汗障害による高体温に対しては頻回の身体清拭やクーリングが有効であった。
  • 小塚 輝彦, 福田 俊一, 今井 利, 瀬崎 達雄
    2000 年 41 巻 11 号 p. 1220-1225
    発行日: 2000年
    公開日: 2009/07/28
    ジャーナル 認証あり
    multiple myeloma (MM)において,最近高アンモニア血症による意識障害の報告が散見される。われわれは高アンモニア血症を呈し,急速に病状の悪化を来し死亡した症例を経験した。症例は71歳,男性。平成8年5月にMM BJP (κ) stage IIIBと診断され,治療後平成9年2月退院。同年9月に骨痛,腎不全,高カルシウム血症を認めた為再入院となった。腸骨骨髄穿刺はdry tap, spicule smearではほとんどが未熟なplasma cellで占められていた。肝機能障害は軽度であったが,血中アンモニア値は高値を認めた。入院後,治療を開始したが急速に悪化し,10月2日,末梢血中形質細胞著増,血中アンモニア著明高値,脳塞栓を合併し永眠された。同日,末梢血より分離した単核球を骨髄間質細胞と共培養して細胞株を樹立した。細胞株培養上清中のアンモニア上昇を認め,骨髄腫細胞よりのアンモニア産生が推定された。
  • 増岡 秀一, 佐野 公司, 大坪 寛子, 西脇 嘉一, 片山 俊夫, 小林 正之
    2000 年 41 巻 11 号 p. 1226-1230
    発行日: 2000年
    公開日: 2009/07/28
    ジャーナル 認証あり
    45歳,女性。甲状腺機能亢進症に心房細動,心不全を合併して入院したが,白血球数2,600/μl, 赤血球数330×104l, 血小板数6.2×104lと汎血球減少を認めた。また,トランスアミナーゼの異常は認めなかったが,ヘパプラスチンテスト34%, コリンエステラーゼ1.4 U/mlなどの肝合成能の低下,ICGテストで排泄能の低下が認められた。Thiamazole 30 mg, Propranolol 20 mg/日の治療開始後,甲状腺機能の正常化に伴い汎血球減少などの多彩な異常も軽快した。甲状腺機能亢進症に汎血球減少を合併することはきわめて稀であるとされているが,抗甲状腺療法のみでさまざまな異常が改善したことから,甲状腺機能の亢進状態が病態に重要な役割を果たしたものと考えられた。
  • 西堀 佳樹, 山内 尚文, 栗林 景晶, 佐藤 康史, 森井 一裕, 平山 泰生, 坂牧 純夫, 本間 久登, 鈴木 信寛, 工藤 亮, 新 ...
    2000 年 41 巻 11 号 p. 1231-1237
    発行日: 2000年
    公開日: 2009/07/28
    ジャーナル 認証あり
    症例は18歳,男性。昭和62年(11歳時)ALL (L1)を発症,近医にてALL high risk protocol (PSL, VCR, DM, ASP)を施行され寛解となった。平成2年C型肝炎を発症し,IFN療法を施行されるもHCV-RNA陽性は持続していた。平成6年12月ALLが再発。VCR投与直後より急激な溶血(Hb 12.5 g/dl→6.8 g/dl, 間接Bil, AST, LDHの上昇)とSIADH様所見を呈し,さらにDICも併発した。in vitroで患者赤血球にVCRを添加したところ,赤血球の著明な変形を認めたことから,慢性C型肝炎発症後,抗癌剤投与による免疫抑制状態のため,きわめて短期間に進展した肝硬変症による脾腫に,変形した赤血球が補捉されたため,高度の溶血が惹起されたと考えられた。その後,中枢神経性白血病および肝不全を併発し,入院第165病日に死亡した。本症例は肝硬変症を合併したALLに,VCRによる著明な溶血とSIADH様所見を呈したきわめて稀な1例と考えられた。
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