日本心臓血管外科学会雑誌
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24 巻, 3 号
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  • 松本 雅彦, 小西 裕, 湯浅 貞稔, 三和 千里
    1995 年 24 巻 3 号 p. 141-144
    発行日: 1995/05/15
    公開日: 2009/04/28
    ジャーナル フリー
    冠動脈病変を合併した大動脈瘤症例で, 大動脈瘤手術前にPTCAにより冠血行再建を行った5症例の動脈瘤手術成績を検討した. 1987年11月から1993年11月の期間の当科での真性大動脈瘤手術症例60例 (腹部大動脈瘤(AAA)45例, 胸部大動脈瘤(TAA)15例) 中, 待機手術をした46例全例に術前冠動脈造影を施行した. 23例 (AAA 19例, TAA 4例) に冠動脈病変合併を認め, 12例 (AAA 10例, TAA 2例) に冠血行再建を併せ行った. この12例中, 動脈瘤, 冠動脈病変の診断が同時期に得られた症例は9例で, 動脈瘤手術前にPTCAを行った5例 (AAA 3例, TAA 2例) を対象とした. 性別は男性4例, 女性1例, 年齢は63~76歳(平均68歳). PTCAを6病変に行い, 成功4病変, 不成功1病変, 失敗1病変 (緊急CABGとなった) であった. 動脈瘤手術近接期, 遠隔期の心筋梗塞発症例, 死亡例はなく, PTCAは冠血行再建手段として, とくに高齢者で有用であった.
  • 心外導管修復術VS右室流出路形成術
    坂本 貴彦, 今井 康晴, 石原 和明, 星野 修一, 澤渡 和男
    1995 年 24 巻 3 号 p. 145-149
    発行日: 1995/05/15
    公開日: 2009/04/28
    ジャーナル フリー
    1980年1月より1992年12月までに当施設にて根治術を施行したファロー四徴症522例中15例, 2.9%に冠動脈走行異常の合併を認めた. 本症では従来より心外導管修復術が選択, 施行されてきたが遠隔期の心外導管の狭窄が問題となっている. そこで今回, 本症の外科治療として心外導管修復術と近年施行している右室流出路再建術に関して比較検討した. 右室肺動脈較差, 右室左室圧比は術後著明に改善し, 右室流出路狭窄に関しては両群ともに十分に解除された. また左室駆出率・右室駆出率ともに術前後において低下することなく良好に保たれ, 両群において術後心機能に有意差を認めなかった. このため本疾患に対しては遠隔期に心外導管の狭窄が発症することを考慮すれば, パッチ右室流出路形成術または肺動脈右室直接吻合による可及的右室流出路再建術を積極的に選択すべきであると考えられた.
  • 富樫 賢一, 佐藤 良智, 矢沢 正知
    1995 年 24 巻 3 号 p. 150-154
    発行日: 1995/05/15
    公開日: 2009/04/28
    ジャーナル フリー
    1986年から1992年までの7年間に, 7例の孤立性大腿動脈瘤に対し, 8回の手術を施した. 男性5例, 女性2例で, 平均年齢は62歳 (39~75歳) であった. 成因は医原性3例, 動脈硬化2例, 類粘液変性1例 (両側性), 吻合部瘤1例 (4年後再発し再手術) であった. 医原性仮性動脈瘤に対しては, 交通孔を縫合閉鎖した. 動脈硬化または類粘液変性が原因の真性動脈瘤に対しては, 動脈瘤切除後, 大腿動脈を人工血管で再建した. 破裂性深大腿動脈瘤に対しては, 交通枝の結紮のみとした. 吻合部仮性動脈瘤に対しては, パッチ形成術を施した. 再発時は破裂していたため, 人工血管で再建した. 合併症は3例に生じたが, 軽快し, 全例歩行退院した. 孤立性大腿動脈瘤の手術に際しては, それぞれの成因に応じた手術術式の選択が最も重要であると思われた.
  • 手術手技と遠隔成績
    横川 雅康, 三崎 拓郎, 鈴木 衛, 杉木 実, 阿部 吉伸, 山本 恵一, 上山 武史, 明元 克司, 富川 正樹
    1995 年 24 巻 3 号 p. 155-160
    発行日: 1995/05/15
    公開日: 2009/04/28
    ジャーナル フリー
    当科では1984年以来, 下腿動脈の血行再建に顕微鏡下手術手技を導入して開存成績の向上を図ってきた. これまでに行った下腿三分枝動脈へのバイパス術は38例40肢あり, これらの症例に対し44回の血行再建術を行った. 原則として自家大伏在静脈を使用し, 手術用顕微鏡使用下, 10倍拡大で血管内腔を観察し, 5倍拡大で縫合操作を行った. 縫合糸は7-0または8-0 polypropylene 糸を用いた. 末梢吻合部位は下腿動脈中枢側24肢, 遠位側20肢である. 入院中に早期閉塞をきたしたものが4肢9.1%あり, また遠隔期にも3肢が閉塞した. バイパス閉塞は末梢 run off 不良群に多くみられ, run off 良好群では閉塞はなかった. 累積開存率は5年79.0%, 8年67.7%で, 救肢率は92.5%であった. 入院死亡は1例2.6%であった. 下腿動脈の正確な吻合には顕微鏡下手術手技が有用であり, これにより術後の血栓形成や早期閉塞が避けられる. また遠隔成績の向上も期待される.
  • 田中 修, 古瀬 彰
    1995 年 24 巻 3 号 p. 161-169
    発行日: 1995/05/15
    公開日: 2009/04/28
    ジャーナル フリー
    低出力炭酸ガスレーザーによる雑種成犬の中口径血管吻合実験を行った. 焦点より10mm遠位での defocused beam 照射法を採った. 至適出力は動脈160~200mW, 静脈120~160mWで照射時間はともに5~10sec/mmであった. 吻合成功率は動脈の短軸切開吻合44%, 長軸切開吻合62%で静脈ではそれぞれ65%, 95%であった. 耐圧は平均値で動脈102mmHg, 静脈77mmHgであったが, シアノアクリレートによる吻合部の防護により耐圧能はそれぞれ300mmHg以上, 100mmHg以上に上昇した. 観察しえた9か月後までに血栓付着, 狭窄, 閉塞および感染はみられなかったが, 1例(1%)の吻合部動脈瘤を認めた. 血管内視鏡, 走査電子顕微鏡で観察した急性期から3か月までの良好な局所所見と光顕的組織所見からシアノアクリレート併用レーザー吻合の臨床応用への有用性を確認した.
  • 桑原 正知, 鬼塚 敏男, 中村 都英, 荒木 賢二, 矢野 裕士, 矢野 光洋, 早瀬 崇洋, 谷口 雅彦, 柴田 紘一郎, 古賀 保範
    1995 年 24 巻 3 号 p. 170-174
    発行日: 1995/05/15
    公開日: 2009/04/28
    ジャーナル フリー
    胸腹部大動脈瘤手術後の脊髄障害予防における術中脊髄誘発電位(ESP)測定の意義と限界について検討した. 9例の胸腹部大動脈瘤に対して腰部刺激, 頸部導出にてESPをモニターし, シャント法(1例), F-Fバイパス法(8例)を用いて人工血管置換術を施行した. 4例において術中ESPが消失し, 肋間動脈の灌流と再建, 下肢灌流圧を上げる, 軽度低体温などの処置を施行した. その結果2例ではESPは回復し術後麻痺は認めなかった. しかし, 2例でESPは回復せず, 1例に対麻痺を認めた. またESPが変化しなかった症例では対麻痺は認められなかった. ESPは脊髄前索の虚血モニターとしては不十分であり信頼性には限界があるが, 術中変化による対策にて対麻痺を免れる症例もあり, 現在のところは最も有用な指標である.
  • 佐藤 泰史, 石川 進, 大滝 章男, 坂田 一宏, 大谷 嘉己, 高橋 徹, 吉田 一郎, 森下 靖雄
    1995 年 24 巻 3 号 p. 175-177
    発行日: 1995/05/15
    公開日: 2009/04/28
    ジャーナル フリー
    梅毒性大動脈炎による大動脈弁閉鎖不全に右冠動脈入口部完全閉塞および左冠動脈入口部狭窄(75%)を伴った50歳男性に対し, 大動脈弁置換術と三枝バイパス術を同時に行い, 良好な結果を得た. 本症の冠動脈病変に対する術式の選択に際しては, 急性期における大動脈基部の炎症の残存や, 遠隔期での動脈硬化性変化による再狭窄の可能性を考慮する必要があるが, 低心機能症例では確実かつ熟達した術式を優先すべきと考える.
  • 市川 由紀夫, 蔵田 英志, 梶原 博一, 近藤 治郎, 松本 昭彦
    1995 年 24 巻 3 号 p. 178-181
    発行日: 1995/05/15
    公開日: 2009/04/28
    ジャーナル フリー
    成人における心房中隔欠損孔パッチ閉鎖術後に発生した乳糜瘻の1例を経験し, 保存的治療にて治癒せしめえた. 症例は55歳, 男性. 1990年6月, 両下肢腫脹を主訴に当院を受診し心房中隔欠損症の診断で, 11月, 心房中隔欠損孔パッチ閉鎖術を施行した. 術後5日目より流動食を開始したが食後2時間半ほどしてから, 前縦隔ドレーンの排液が白濁し始め貯留槽に浮遊したため, 乳糜瘻を疑い直ちに絶食とした. 以後, 中心静脈栄養にて管理したが, 250~350ml/日の排液が続いた. 外科的治療を考慮したが, 術後14日目に前縦隔ドレーンを約5cm引き抜いてみたところ排液が急激に減少し, 保存的に治癒せしめることができた.
  • 佐賀 俊彦, 井上 知, 奥 秀喬, 城谷 均
    1995 年 24 巻 3 号 p. 182-185
    発行日: 1995/05/15
    公開日: 2009/04/28
    ジャーナル フリー
    右鎖骨下動脈起始異常を合併した弓部大動脈瘤を経験した. 術前検査で弓部分枝異常が示唆されたが, 詳細な解剖学的診断はなしえず, 術中診断を余儀なくされた. 手術は4本の弓部分枝再建を含む弓部大動脈全置換を行った. 両者の合併例に対する弓部大動脈置換例は文献上みあたらない.
  • 山本 浩史, 笹嶋 唯博, 稲葉 雅史, 大谷 則史, 石川 雅彦, 東 信良, 赤坂 伸之, 郷 一知, 久保 良彦
    1995 年 24 巻 3 号 p. 186-189
    発行日: 1995/05/15
    公開日: 2009/04/28
    ジャーナル フリー
    心疾患または大動脈解離を合併した2例の腹部大動脈瘤患者の手術に際して, 大動脈遮断時の血圧上昇による後負荷の増大または解離腔への影響を軽減する目的で, 一時的体外バイパス術(腋窩動脈-大腿動脈バイパス術) を施行した. 症例1は冠動脈再建術後で大動脈弁閉鎖不全兼狭窄の合併例, 症例2は解離性大動脈瘤合併症であった. 両症例とも, 一時的体外バイパス下で術中安定した血行動態が得られ, 症例2では, 手術に伴う解離腔の拡大は認められなかった. 心臓大血管疾患を合併する腹部大動脈瘤症例の手術に際して, 術中の一時的体外バイパスの設置は, 安全な術中管理を得ることができるという点で有用であると考えられる.
  • 小谷野 哲也, 石川 進, 大滝 章男, 坂田 一宏, 大谷 嘉巳, 高橋 徹, 佐藤 泰史, 川島 修, 鈴木 政夫, 森下 靖雄
    1995 年 24 巻 3 号 p. 190-192
    発行日: 1995/05/15
    公開日: 2009/04/28
    ジャーナル フリー
    症例は51歳の女性で, 31歳時に, Starr-Edwards ボール弁 (S-E弁)を用いて, 僧帽弁置換術を受けた. 術後の経過は良好であったが, 50歳時より心不全兆候が現れ, 徐々に増悪したため, 人工弁機能不全の診断で再手術となった. Carbo Medics 弁を用いて再弁置換を行い, 併せて三尖弁輪形成術を行った. 摘出したS-E弁には, ケージへの小血栓の付着と, 被覆布の破損 (cloth wear) が認められた.弁座には過剰肉芽がみられ, ボールには変化はなかった. 通常, S-E弁における再手術までの平均期間は約8年とされ, 原因としては, cloth wear による重篤な溶血性貧血が最も多い. 自験例は術後21年と, 著者らの調べえた限りでは本邦最長例であり, 弁座周囲の過剰肉芽形成によるボール運動の障害が弁機能不全の主因と考えられた.
  • 浜田 俊之, 戸部 道雄, 尾崎 直, 内田 敬二, 佐藤 順
    1995 年 24 巻 3 号 p. 193-196
    発行日: 1995/05/15
    公開日: 2009/04/28
    ジャーナル フリー
    症例は43歳男性. 健康診断で心雑音を指摘された. 胸骨左縁3肋骨間で拡張期逆流性, および収縮期駆出性雑音を聴取した. 胸部単純X線写真では右第I, II弓の突出とII弓内側の二重陰影を認めた. 胸部CT, 心エコーおよび心臓カテーテル検査の結果, Sellers III度の大動脈弁閉鎖不全を伴う, 無冠洞より心外に発育した Valsalva 洞動脈瘤と診断, 手術を施行した. 胸骨正中切開にて心に到達すると, 上行大動脈, 上大静脈間に直径7cmの瘤を認め, より突出し, 右房と上大静脈を圧迫していた. 体外循環下に瘤を切開すると, 無冠洞の瘤化で, 無冠尖の弁輪が延長していた. これをほかの弁輪と同じ長さとするよう woven Dacron patch をあて, 瘤口を閉鎖した. 術後経過は良好だったが, 術後の心臓カテーテル検査では, Sellers II度の大動脈弁閉鎖不全が残存しており, 慎重に経過観察中である.
  • 戸部 道雄, 近藤 治郎, 井元 清隆, 平野 克典, 鈴木 伸一, 田辺 浩悌, 松本 昭彦
    1995 年 24 巻 3 号 p. 197-200
    発行日: 1995/05/15
    公開日: 2009/04/28
    ジャーナル フリー
    最近では比較的まれな梅毒性大動脈瘤の1例を経験した. 症例は72歳の女性で胸部異常陰影と腹部拍動性腫瘤を主訴とし, 梅毒反応はTPHAが160倍と強陽性であった. 血管造影では胸部下行大動脈と腎動脈下の腹部大動脈の重複大動脈瘤であり, さらに左総腸骨動脈瘤も合併していた. 胸部大動脈瘤と腹部大動脈瘤にそれぞれ人工血管置換術を一期的に施行した. 瘤壁の組織学的検索では中膜と外膜に慢性大動脈炎を示唆する所見を認めた. 重複大動脈瘤は今後も増加が予想されるが, 手術時期としては, 残存瘤の破裂の懸念がない一期的手術が好ましい. その際には手術術式, 補助手段等の面からの安全性の確認とともに, 全身状態を考慮した治療方針の決定が望ましい.
  • 堺 正仁, 財部 京美, 樗木 等, 渡辺 昭博, 米村 智弘, 林田 裕, 井島 宏
    1995 年 24 巻 3 号 p. 201-203
    発行日: 1995/05/15
    公開日: 2009/04/28
    ジャーナル フリー
    症例は, 37歳の男性で20年前に右腸骨動脈人工血管置換術を受けた. くりかえす下血および意識低下を主訴に近医を受診し, 造影CTの結果, 右腸骨動脈瘤破裂の診断で当科に紹介された. 動脈瘤-腸管瘻の診断で緊急手術を行った. 偽性動脈瘤を切開し, 離開部を縫合閉鎖した後, 人工肛門を造設し閉腹後, 非解剖学的再建術として大腿-大腿動脈バイパス術を施行した. 術後は, 重篤な感染症に陥ることなく, 二期的に人工肛門の閉鎖術が可能となり, 救命することができた.
  • 鈴木 憲, 九鬼 覚, 松村 龍一, 奥田 彰洋
    1995 年 24 巻 3 号 p. 204-207
    発行日: 1995/05/15
    公開日: 2009/04/28
    ジャーナル フリー
    感染性大動脈瘤は, 動脈硬化性のものに比べ破裂・感染などのため予後不良とされている. 今回, 多発性感染性腹部大動脈瘤の1手術例を報告する. 症例は62歳女性. 先行する重症感染症の精査加療中に腎動脈下部の多発性大動脈瘤を指摘され, 感染性腹部大動脈瘤と診断された. 炎症性癒着が強固であったため, 瘤や周囲感染組織の除去はできなかったが, 瘤内腔を可及的に除去したのち in situ の人工血管置換術を施行した. 術後感染所見は正常化し再発の徴候はない. 自験例は血中細菌の血管壁への付着により生じたものと考えられ, 本疾患の発生機序を考察する上で貴重な症例であると思われた. 感染性腹部大動脈瘤の本邦報告例17例を検討し, 治療は瘤および周囲感染組織を可及的に除去した後の in situ の血行再建が第一選択であると考えた.
  • 1995 年 24 巻 3 号 p. v-ix
    発行日: 1995/05/15
    公開日: 2009/04/28
    ジャーナル フリー
  • 1995 年 24 巻 3 号 p. x-xii
    発行日: 1995/05/15
    公開日: 2009/04/28
    ジャーナル フリー
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